【図解で説明】中小企業診断士試験の全体像 | 科目と論点、主要テーマやトピックをご紹介

中小企業診断士試験の全体像がつかめるように、一次試験と二次試験に分けて整理します。あわせて、各科目で何を学ぶのかも試験勉強の入口として見える形にします。

中小企業診断士試験は、大きく分けると一次試験と二次試験があります。

一次試験は、企業経営に必要な知識を広く問う試験です。科目は7科目です。公式の令和7年度試験案内でも、一次試験は多肢選択式で、次の7科目とされています。

目次

一次試験の7科目

経済学・経済政策

経済全体の動きや、市場の仕組みを学ぶ科目です。

主なトピックは、需要と供給、価格の決まり方、消費者行動、生産者行動、市場の失敗、独占、寡占、GDP、物価、失業、金融政策、財政政策、為替、国際経済などです。

苦手に感じやすいのは、グラフ問題です。ただし、暗記科目というより、線が右に動くのか、左に動くのかを考える科目です。

経済・経済政策は、財務会計と似て「数字」が出ますが、見ている対象は会社ではなく、市場・国・社会全体です。試験で迷子になりやすいので、まず全体像から整理します。

中小企業診断士試験の「経済学・経済政策」は、ざっくり言うと、会社の外側にある「市場・景気・物価・金利・為替・政府政策」を読む科目です。

財務・会計が「会社の中のお金」を見る科目だとすると、経済学・経済政策は「世の中全体のお金とモノの動き」を見る科目です。

主な論点は、大きく分けると次のようになります。

ミクロ経済学

ミクロ経済学は、消費者・企業・市場の動きを見る分野です。

たとえば、商品の価格が上がったら需要はどう動くのか、企業はどの数量まで生産すればよいのか、市場で価格はどのように決まるのか、といった話です。

主なテーマは、需要と供給、価格メカニズム、弾力性、消費者行動、生産者行動、市場均衡、不完全競争、市場の失敗などです。

特に出やすいのは、需要曲線・供給曲線のシフト、価格弾力性、余剰分析、課税・補助金の影響です。近年も需要・供給曲線のシフトや弾力性は重要論点として扱われています。

需要と供給

これは経済学の入口です。

需要は「買いたい量」、供給は「売りたい量」です。価格が変わると、買う人・売る人の行動が変わります。

試験では、単に「価格が上がると需要が減る」と覚えるだけでは足りません。

「需要曲線そのものが動くのか」
「曲線上を移動するだけなのか」
「供給曲線が動くのか」
「両方が同時に動くのか」

ここを区別する必要があります。

弾力性

弾力性は、「価格や所得が変わったとき、需要や供給がどれくらい敏感に反応するか」を見る論点です。

たとえば、価格が少し上がっただけで売上数量が大きく減る商品は、需要の価格弾力性が大きいと考えます。

逆に、生活必需品のように価格が上がってもあまり需要が減らないものは、弾力性が小さいと考えます。

ここはグラフと計算が絡みやすく、引っ掛け問題も多いです。

余剰分析

余剰分析は、消費者や生産者がどれだけ得をしているかを見る論点です。

消費者余剰、生産者余剰、社会的余剰が出てきます。

試験では、税金をかけると余剰がどう減るか、補助金を出すと市場がどう変わるか、価格規制をするとどこに損失が出るか、といった形で問われます。

市場の失敗

市場に任せるだけではうまくいかないケースを扱います。

代表的なものは、外部効果、公共財、情報の非対称性、独占です。

たとえば、公害は外部不経済です。企業が生産活動を行うことで、関係のない周囲の人に悪影響が出るため、市場だけでは適切な水準になりにくいという考え方です。

マクロ経済学

マクロ経済学は、国全体の経済を見ます。

個人や一企業ではなく、GDP、物価、雇用、金利、為替、財政政策、金融政策などを扱います。

主なテーマは、国民所得、GDP、消費関数、乗数理論、IS-LM分析、AD-AS分析、インフレーション、失業、金融政策、財政政策、国際収支、為替レートなどです。

乗数理論やIS-LM分析は、近年の対策でも重要論点として挙げられています。

GDPと国民所得

GDPは、国内で生み出された付加価値の合計です。

試験では、GDP、GNP、名目GDP、実質GDP、GDPデフレーターなどが出ます。

特に大切なのは、「名目」と「実質」の違いです。

名目GDPは、その年の価格で見た金額です。実質GDPは、物価変動の影響を取り除いたものです。

景気を正しく見るには、単に金額が増えたかではなく、物価上昇を除いて本当に生産量が増えたのかを見る必要があります。

消費関数と乗数理論

消費関数は、所得が増えると消費がどれくらい増えるかを見る論点です。

ここで出てくるのが、限界消費性向です。

所得が1増えたときに、消費がどれくらい増えるかを表します。

限界消費性向が高いほど、所得の増加が次の消費につながりやすく、経済全体への波及も大きくなります。

乗数理論では、政府支出や投資が増えたとき、最終的に国民所得がどれくらい増えるかを考えます。

IS-LM分析

IS-LM分析は、経済・経済政策の中でもかなり重要な論点です。

IS曲線は財市場、つまりモノやサービスの市場を表します。

LM曲線は貨幣市場、つまりお金の市場を表します。

財政政策や金融政策を行うと、IS曲線やLM曲線が動き、国民所得や利子率が変化します。

たとえば、政府支出を増やすとIS曲線が右に動きます。金融緩和を行うとLM曲線が右に動きます。

このように、「政策がどの曲線を動かすのか」を理解することが大切です。

AD-AS分析

AD-AS分析は、総需要と総供給の関係から、物価と国民所得を考える論点です。

IS-LM分析より少し広い視点で、物価水準も含めて経済全体を見ます。

インフレや不況、供給ショックなどを考えるときに使います。

試験では、総需要曲線が右に動くと物価と産出量がどうなるか、総供給曲線が左に動くと何が起きるか、といった形で出題されます。

金融政策

金融政策は、日本銀行などの中央銀行が、金利や通貨量を通じて景気や物価を調整する政策です。

金融緩和は、お金を借りやすくして投資や消費を刺激する方向です。

金融引き締めは、景気の過熱やインフレを抑える方向です。

試験では、マネーストック、貨幣需要、利子率、信用創造、公開市場操作などが関係します。

財政政策

財政政策は、政府が支出や税金を通じて経済を調整する政策です。

景気が悪いときは、公共投資を増やす、減税をするなどして需要を増やそうとします。

景気が過熱しているときは、支出を抑えたり増税したりして需要を抑えることがあります。

IS-LM分析や乗数理論と結びついて出題されやすいです。

国際経済

国際経済では、貿易、為替、国際収支などを扱います。

円高になると輸入品は安くなりやすく、輸出企業には不利になりやすいです。

円安になると輸出企業には有利になりやすく、輸入品は高くなりやすいです。

試験では、比較生産費説、貿易の利益、関税、為替レート、購買力平価、国際収支表などが出ます。

経済指標・景気循環

景気を読むための指標も出題されます。

景気動向指数、失業率、物価指数、消費者物価指数、GDPデフレーターなどです。

ここは暗記だけに見えますが、「何を測っている指標なのか」を押さえると理解しやすくなります。

たとえば、消費者物価指数は、消費者が購入する商品やサービスの価格変化を見ます。

GDPデフレーターは、GDP全体に関する物価変動を見る指標です。

試験で特に意識したい重要論点

経済・経済政策で優先度が高いのは、次のあたりです。

需要と供給
弾力性
余剰分析
市場の失敗
GDPと国民所得
消費関数
乗数理論
IS-LM分析
AD-AS分析
財政政策
金融政策
為替と国際収支

この科目は、用語を暗記するよりも、「何が動くと、何が変わるのか」を追う科目です。

需要が増えると価格はどうなるのか。
金融緩和をすると利子率はどうなるのか。
利子率が下がると投資はどうなるのか。
投資が増えると国民所得はどうなるのか。

このように、因果関係を一本の線でつなげると、急に見通しがよくなります。

財務・会計

会社のお金の状態を読む科目です。

主なトピックは、貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、経営分析、損益分岐点、原価計算、意思決定会計、投資評価、NPV、企業価値、資金調達、配当政策などです。

一次試験だけでなく、二次試験の事例Ⅳにも直結します。計算問題が多く、診断士試験の中でも特に重要度が高い科目です。

財務・会計は、最初に全体像をつかむとかなり楽になります。細かい公式を暗記する前に、「会社のお金を読む分野」と「投資や意思決定を計算する分野」に分けて整理します。

財務・会計は、中小企業診断士試験の第1次試験7科目のひとつ。令和8年度の試験案内でも、第1次試験は多肢選択式で、財務・会計を含む7科目から構成されています。

この科目は、大きく分けると「会計」と「財務」に分かれます。

会計は、会社のお金の状態を記録し、財務諸表を読めるようにする分野です。財務は、資金調達、投資判断、企業価値、リスク管理など、会社のお金をどう動かすかを考える分野です。試験案内でも、財務諸表による経営分析、割引キャッシュフローを使った投資評価、企業価値の算定などが重視されています。

主なトピックは、次のように整理できます。

簿記の基礎

仕訳、勘定科目、試算表、精算表、決算整理、貸借対照表、損益計算書の作成などです。

ここは、会社のお金の流れを「記録する」ための土台です。診断士試験では簿記そのものを深く問うというより、財務諸表を読むための前提として出題されます。

企業会計の基礎

貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書、収益と費用、資産・負債・純資産、企業結合、連結決算、会計ディスクロージャーなどが含まれます。

貸借対照表は、会社がどんな財産を持ち、どれだけ借金や自己資本があるかを見る表です。損益計算書は、一定期間にどれだけ儲かったかを見る表です。キャッシュ・フロー計算書は、実際のお金の出入りを見る表です。

税務会計の基礎

益金、損金、課税所得、税額計算などです。会計上の利益と、税金を計算するための所得は必ずしも一致しません。その違いを理解する分野です。

原価計算

原価の考え方、個別原価計算、総合原価計算、標準原価計算、直接原価計算などが出てきます。

製品やサービスにどれだけコストがかかっているかを計算する分野です。製造業の話に見えますが、診断士試験では「利益をどう管理するか」とつながります。

経営分析

収益性、安全性、生産性、成長性の分析、CVP分析、損益分岐点分析などです。

ここは非常に重要です。売上高総利益率、営業利益率、自己資本比率、流動比率、固定比率、総資本回転率などを使って、会社の状態を読みます。

たとえば、利益率が低いのか、借入が多いのか、在庫が重いのか、固定資産を持ちすぎているのかを数字から判断します。

利益と資金の管理

利益計画、限界利益、貢献利益、プロダクト・ミックス、予算実績差異分析、資金繰り、資金計画、運転資金の管理などです。

ここでは、「利益が出ているのにお金が足りない」という現象も扱います。診断士として企業を見るときに、とても実務に近い論点です。

キャッシュ・フロー管理

営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フロー、財務キャッシュ・フロー、フリー・キャッシュ・フロー、キャッシュ・フロー関連比率などです。

利益ではなく、実際に会社にお金が入っているか、出ていっているかを見る分野です。黒字倒産の理解にもつながります。

資金調達と配当政策

内部金融、外部金融、直接金融、間接金融、自己資本、他人資本、リース、社債、株式、資本コスト、加重平均資本コスト、配当政策、自社株買い、最適資本構成などです。

会社が事業に必要なお金をどこから集めるか、その資金にどれだけコストがかかるかを考える分野です。

実物投資

貨幣の時間価値、割引キャッシュフロー、正味現在価値、内部収益率、回収期間法、収益性指数法、不確実性下の投資決定などです。

設備投資をするべきか、新規事業に投資するべきかを判断する論点です。診断士試験では、NPVやIRRが苦手になりやすいところです。

証券投資

リスクとリターン、ポートフォリオ理論、効率的ポートフォリオ、CAPM、効率的市場仮説、市場モデルなどです。

株式や証券への投資を、感覚ではなく理論で考える分野です。やや抽象的ですが、「リスクを分散すると何が起きるか」「期待収益率をどう考えるか」が中心です。

企業価値

株主価値、配当割引モデル、PER、PBR、株価キャッシュフロー倍率、DCF法、残余利益モデル、M&Aにおける企業評価などです。

会社そのものの価値をどう計算するか、という分野です。中小企業の事業承継、M&A、会社売却などとも関係します。

デリバティブとリスク管理

オプション取引、先物取引、為替予約、金利スワップ、通貨スワップなどです。

為替変動や金利変動などのリスクをどう避けるかを学ぶ分野です。細かい計算よりも、コールオプションとプットオプションの違い、先物とスワップの役割を押さえることが大切です。

学習上は、次の順番で見ると理解しやすいです。

まず、貸借対照表・損益計算書・キャッシュ・フロー計算書の違いを理解する。

次に、経営分析で会社の状態を読む。

その後、損益分岐点、限界利益、原価計算で利益の仕組みをつかむ。

最後に、NPV、WACC、CAPM、企業価値、デリバティブなどの財務理論へ進む。

つまり財務・会計は、「会社のお金を記録する」「会社の状態を読む」「利益を管理する」「投資を判断する」「会社の価値を測る」という流れでできています。公式だけを暗記するより、会社のお金がどこから来て、どこに使われ、どれだけ残り、将来どれだけ価値を生むのかを追う科目として見ると、理解しやすくなります。

企業経営理論

会社の戦略、組織、人の動かし方、マーケティングを学ぶ科目です。

主なトピックは、経営戦略、競争戦略、成長戦略、組織構造、モチベーション理論、リーダーシップ、人的資源管理、労働関連知識、マーケティング、ブランド、製品戦略、価格戦略、チャネル、プロモーションなどです。

二次試験の事例Ⅰと事例Ⅱに強くつながります。文章問題が多く、選択肢の言い回しで迷いやすい科目です。

中小企業診断士試験の企業経営理論は、ひと言でいうと、会社をどう成長させ、人をどう動かし、商品やサービスをどう売るかを学ぶ科目です。

大きく分けると、次の三つの領域で構成されています。

経営戦略論

企業がどの市場で、どのように競争し、どのように成長していくかを考える分野です。

たとえば、なぜ同じ業界でも儲かる会社と苦しい会社があるのか。なぜある企業は低価格で勝ち、別の企業は高品質やブランドで勝とうとするのか。こうした企業の方向性を扱います。

主な論点は、経営理念、ビジョン、経営目標、外部環境分析、内部資源分析、競争戦略、成長戦略、事業戦略、全社戦略、事業ポートフォリオ、経営資源、コア・コンピタンス、イノベーション、技術経営、国際経営などです。

よく出るテーマとしては、SWOT分析、ファイブフォース分析、3つの基本戦略、バリューチェーン、VRIO分析、PPM、アンゾフの成長ベクトル、製品ライフサイクル、ドメイン、M&A、アライアンス、垂直統合、多角化、差別化戦略、集中戦略などがあります。

企業経営理論の中でも、経営戦略論は全体の土台です。会社がどこへ向かうのかを決める部分なので、まずここを理解すると、ほかの論点もつながりやすくなります。

組織論

組織論は、人や組織をどう設計し、どう動かすかを考える分野です。

会社は戦略を立てるだけでは動きません。実際に仕事をするのは人です。そのため、どのような組織構造にするか、社員のやる気をどう引き出すか、リーダーはどう行動すべきか、組織文化をどうつくるかが問われます。

主な論点は、組織構造、組織デザイン、職務設計、権限委譲、分業、調整、官僚制組織、機能別組織、事業部制組織、マトリックス組織、プロジェクト組織、モチベーション理論、リーダーシップ理論、組織文化、組織変革、人的資源管理などです。

よく出るテーマとしては、マズローの欲求階層説、ハーズバーグの二要因理論、マグレガーのX理論・Y理論、期待理論、公平理論、目標設定理論、リーダーシップ行動論、状況適合理論、PM理論、パス・ゴール理論、コンティンジェンシー理論、職務拡大、職務充実、エンパワーメントなどがあります。

この分野は、用語が似ていて混同しやすいのが特徴です。たとえば、職務拡大と職務充実、権限委譲とエンパワーメント、動機づけ要因と衛生要因などは、試験でもひっかけられやすい部分です。

マーケティング論

マーケティング論は、顧客に価値を届け、売れる仕組みをつくる分野です。

単に広告や販売の話ではありません。誰に、何を、どのような価値として届けるのか。価格をどう決め、どの流通経路を使い、どのように顧客と関係を築くのかを考えます。

主な論点は、マーケティング・コンセプト、消費者行動、マーケティングリサーチ、セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング、製品戦略、価格戦略、流通戦略、プロモーション戦略、ブランド戦略、サービスマーケティング、関係性マーケティング、デジタルマーケティングなどです。

よく出るテーマとしては、STP、4P、4C、AIDMA、AISAS、消費者購買意思決定プロセス、準拠集団、知覚リスク、ブランド・エクイティ、製品ライフサイクル、チャネル政策、プッシュ戦略、プル戦略、価格設定、広告、販売促進、パブリシティ、人的販売などがあります。

マーケティング論は、身近に感じやすい一方で、言葉の定義を曖昧に覚えると失点しやすい分野です。たとえば、広告とパブリシティ、販売促進と人的販売、ブランド認知とブランド連想などは、意味の違いを丁寧に押さえる必要があります。

企業経営理論の全体像

企業経営理論は、会社を見る視点を三層に分けると理解しやすくなります。

一番上にあるのが経営戦略論です。これは、会社がどこで勝つかを考える領域です。

その下にあるのが組織論です。これは、決めた戦略を実行するために、人と組織をどう動かすかを考える領域です。

さらに市場との接点にあるのがマーケティング論です。これは、顧客にどう価値を届け、売上につなげるかを考える領域です。

つまり、企業経営理論は、戦略を立てる、組織を動かす、顧客に届ける、という流れで理解すると整理しやすくなります。

出題されやすい大きなテーマ

企業経営理論で特に出題されやすいのは、次のようなテーマです。

経営戦略では、競争戦略、成長戦略、経営資源、外部環境分析、内部環境分析、事業ドメイン、PPM、イノベーションが重要です。

組織論では、組織構造、モチベーション理論、リーダーシップ理論、職務設計、組織文化、組織変革、人的資源管理が重要です。

マーケティングでは、STP、4P、消費者行動、ブランド、製品戦略、価格戦略、流通チャネル、プロモーションが重要です。

この科目で難しいところ

企業経営理論が難しく感じられる理由は、暗記だけでは解けない問題が多いからです。

用語を知っていても、設問文の中で少し表現を変えられると迷いやすくなります。特に、正しそうに見える選択肢の中に、言い過ぎ、範囲のずれ、因果関係の逆転、別理論との混同が入っていることがあります。

たとえば、差別化戦略は高価格でなければならない、リーダーシップは常に民主的なほうがよい、販売促進は長期的なブランド形成を主目的とする、といった表現は注意が必要です。一部は正しそうに見えても、理論の定義から見るとずれている場合があります。

学習するときの考え方

企業経営理論は、用語を単独で覚えるよりも、会社の現実に当てはめて考えると理解しやすくなります。

経営戦略は、会社がどの市場でどう勝つか。

組織論は、その戦略を実行するために人と仕組みをどう整えるか。

マーケティングは、顧客にどう選ばれるか。

この三つをつなげて考えると、単なる暗記科目ではなく、企業を診るための地図として見えてきます。中小企業診断士として企業を支援するうえでも、かなり中心的な科目です。

運営管理

工場や店舗の管理を学ぶ科目です。正式には、運営管理、つまりオペレーション・マネジメントです。

主なトピックは、生産管理、生産方式、工程管理、作業管理、品質管理、設備管理、在庫管理、発注方式、IE、JIT、MRP、ラインバランシング、店舗立地、店舗施設、商品陳列、販売管理、物流、まちづくりなどです。

工場系と店舗系に分かれます。二次試験の事例Ⅲに直結します。

経営法務

会社経営に関係する法律を学ぶ科目です。

主なトピックは、会社法、株式会社の機関設計、株式、組織再編、倒産法制、知的財産権、特許、商標、著作権、契約、民法、消費者保護、独占禁止法、不正競争防止法、英文契約などです。

暗記量が多い科目です。ただし、単なる丸暗記ではなく、誰を守るためのルールなのかを考えると理解しやすくなります。

経営法務は、会社のルール・取引のルール・知的財産のルールを整理する科目です。試験範囲の全体像が見えるよう、まず大きな地図としてまとめます。

中小企業診断士試験の経営法務は、ひと言でいうと、中小企業の経営者に法務面の助言をするときに必要な、会社・取引・知的財産・資本市場まわりの基礎知識を問う科目です。

公式の試験案内でも、創業者や中小企業経営者に助言するため、企業経営に関係する法律・制度・手続の実務的知識が必要だとされています。さらに、専門的な案件では弁護士などの専門家につなぐための最低限の実務知識も求められます。

経営法務の大きな柱は、次の6つです。

1つ目は、事業開始・会社設立・倒産等に関する知識です。

ここでは、個人事業を始める場合、法人を設立する場合、会社の種類、設立登記、組合、許認可、労働保険・社会保険、税務上の届出などが扱われます。さらに、合併、事業譲渡、組織変更、民事再生、会社更生、破産といった、会社の形を変える場面や事業が行き詰まった場面の手続も入ります。

ここは、経営者から見れば「会社をどう作るか」「会社をどう変えるか」「会社が苦しくなったときにどうするか」という論点です。

たとえば、株式会社と合同会社の違い、定款、株主総会、取締役、登記、合併と事業譲渡の違い、民事再生と破産の違いなどが問われます。

2つ目は、知的財産権に関する知識です。

これは経営法務の中でもかなり重要です。特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法などが中心になります。

中小企業にとって、技術・デザイン・ブランド名・ロゴ・商品名・ノウハウは大切な経営資源です。経営法務では、それをどう守るか、他社の権利を侵害しないために何を見るかが問われます。

よく出る観点は、保護対象の違いです。

特許は発明、実用新案は物品の形状・構造・組合せに関する考案、意匠はデザイン、商標は商品名やサービス名などのマーク、著作権は文章・音楽・絵・写真などの創作物を守ります。この違いを曖昧にすると、選択肢でひっかかりやすくなります。

3つ目は、取引関係に関する法務知識です。

ここでは、契約、売買、賃貸借、請負、委任、保証、債権、時効、債務不履行、損害賠償など、取引の基本ルールが問われます。

会社は日々、仕入先、販売先、外注先、顧客、金融機関などと取引します。そのため、契約書で何を確認するべきか、契約違反があったときにどうなるか、保証人や担保はどう扱われるか、といった知識が必要になります。

ここは民法の知識が中心です。暗記だけでなく、「誰と誰の間にどんな権利義務があるのか」を図で考えると理解しやすくなります。

4つ目は、企業活動に関する法律知識です。

ここは範囲が広く、会社法、民法、独占禁止法、不正競争防止法、製造物責任法、消費者保護法、金融商品取引法、トレードシークレットなどが入ります。公式資料でも、民法、会社法、金融商品取引法、独占禁止法、不正競争防止法、製造物責任法、消費者保護法などが示されています。

会社法では、株式、株主総会、取締役、監査役、会社の機関設計、会社の計算などが問われます。

独占禁止法では、カルテル、談合、私的独占、不公正な取引方法などが出ます。

不正競争防止法では、周知表示の混同惹起、著名表示冒用、営業秘密、商品形態模倣などが扱われます。

製造物責任法では、欠陥のある製品によって損害が生じた場合の責任が問われます。

消費者保護法では、消費者契約法や特定商取引法など、事業者と消費者の関係に関するルールが出題されます。

5つ目は、資本市場へのアクセスと手続です。

これは、会社が資金調達をするときの法的な手続に関する分野です。資本市場の基礎、有価証券報告書、ディスクロージャー、インベスター・リレーションズ、社債発行、株式公開手続などが含まれます。

中小企業診断士試験では、上場企業の専門的な細部まで深掘りするというより、資金調達や情報開示の基本的な考え方を押さえることが大切です。

6つ目は、その他経営法務に関する事項です。

ここには、英文契約、国際取引、個人情報保護、電子商取引、コンプライアンス、各種法改正などが入ることがあります。

特に近年は、知的財産、個人情報、デジタル取引、海外取引など、現代の中小企業にも関係しやすいテーマが出題対象になりやすいです。

全体像としては、経営法務は次のように整理すると覚えやすいです。

会社を作るルール
会社を動かすルール
会社同士が取引するルール
会社の財産やブランドを守るルール
会社が資金を集めるルール
トラブルが起きたときのルール

この科目で特に大切なのは、法律名をただ暗記することではありません。

「この法律は、会社のどの場面で使うのか」

ここを考えると、急に見え方が変わります。

会社を作る場面なら、会社法、商業登記、定款。

商品名やロゴを守る場面なら、商標法。

技術を守る場面なら、特許法や実用新案法。

デザインを守る場面なら、意匠法。

文章や写真を守る場面なら、著作権法。

取引先と契約する場面なら、民法。

競合他社との不正な競争を防ぐ場面なら、独占禁止法や不正競争防止法。

消費者に商品を売る場面なら、消費者契約法、特定商取引法、製造物責任法。

つまり経営法務は、「法律の科目」というより、会社経営で起こる出来事にどの法律が関係するかを学ぶ科目です。

出題されやすい中心論点としては、会社法と知的財産権が特に重要です。そこに民法、倒産法、独占禁止法、不正競争防止法、消費者保護、英文契約などが加わる形で考えると、学習の優先順位をつけやすくなります。

経営情報システム

ITと情報システムの基礎を学ぶ科目です。

主なトピックは、ハードウェア、ソフトウェア、データベース、ネットワーク、インターネット、クラウド、セキュリティ、システム開発、プログラミング、AI、IoT、DX、情報システムの導入・運用などです。

IT用語が多く、最初はとっつきにくい科目です。ただ、用語同士の関係が見えると一気に整理しやすくなります。

経営情報システムは、暗記科目に見えますが、実際は「企業活動を情報技術でどう支えるか」を問う科目です。試験範囲の大枠を確認したうえで、学習しやすい形に整理します。

中小企業診断士試験の経営情報システムは、一次試験7科目のうちの1科目です。令和8年度試験でも、一次試験は7科目の多肢選択式で行われ、経営情報システムは2日目に60分・100点で実施されます。

この科目を一言でいうと、企業経営に必要なIT・データ・システム活用の知識を問う科目です。

単なるパソコン知識ではなく、

会社の情報をどう集めるか
集めた情報をどう保存するか
業務に使えるシステムをどう作るか
ネットワークやセキュリティをどう守るか
経営判断にITをどう活かすか

という流れで理解すると、全体像がつかみやすくなります。

経営情報システムの主なテーマは、大きく分けると次のようになります。

コンピュータの基礎

ハードウェア、ソフトウェア、OS、CPU、メモリ、補助記憶装置、入出力装置などです。

ここでは、コンピュータの中で何が行われているかを学びます。たとえば、CPUは処理を行う中心、メモリは作業中のデータを一時的に置く場所、補助記憶装置はデータを長く保存する場所です。

試験では、CPUの処理性能、記憶装置の種類、OSの役割、仮想記憶、ファイル管理などが問われます。

データベース

経営情報システムで非常に大切な論点です。

企業は、顧客情報、商品情報、売上情報、在庫情報など、さまざまなデータを扱います。これらを整理して保存し、必要なときに取り出す仕組みがデータベースです。

主な論点は、関係データベース、テーブル、主キー、外部キー、正規化、SQL、トランザクション処理、排他制御、バックアップなどです。

特に、正規化は苦手にする人が多い論点です。データの重複や不整合を減らすために、表を整理していく考え方です。

ネットワーク

インターネットや社内ネットワークの仕組みに関する分野です。

主な論点は、LAN、WAN、TCP/IP、IPアドレス、DNS、URL、HTTP、HTTPS、ルータ、スイッチ、ファイアウォール、VPN、無線LANなどです。

ここは用語が多く、暗記に見えやすい分野ですが、情報がどのような経路で相手に届くのかをイメージすると理解しやすくなります。

たとえば、DNSはWebサイトの名前をIPアドレスに変換する仕組みです。住所録のような役割と考えると覚えやすいです。

情報セキュリティ

近年、重要度が高い分野です。

主な論点は、マルウェア、ウイルス、ランサムウェア、フィッシング、標的型攻撃、DoS攻撃、不正アクセス、認証、暗号化、電子署名、公開鍵暗号方式、共通鍵暗号方式、SSL/TLS、ファイアウォール、IDS、IPSなどです。

ここでは、攻撃の種類と防御方法を対応づけて覚えることが大切です。

たとえば、暗号化は情報を読めない形に変える技術、電子署名は本人性や改ざんの有無を確認する技術です。どちらも似ていますが、目的が違います。

システム開発

企業で使う業務システムを、どのように企画し、設計し、作り、運用するかを学ぶ分野です。

主な論点は、ウォーターフォールモデル、アジャイル開発、プロトタイピング、要件定義、外部設計、内部設計、テスト、運用保守、プロジェクト管理などです。

ウォーターフォールモデルは、上流から下流へ順番に進める開発方法です。要件定義、設計、プログラミング、テストというように段階を踏みます。

アジャイル開発は、短いサイクルで作って確認しながら改善していく方法です。変化に対応しやすい一方で、進行管理や関係者間の認識合わせが大切になります。

プログラムと言語

プログラミングそのものを深く書かせる試験ではありませんが、基本的な考え方は出題されます。

主な論点は、アルゴリズム、フローチャート、変数、配列、条件分岐、繰り返し、オブジェクト指向、HTML、XML、JavaScript、Python、Javaなどの言語や記述形式です。

特に、アルゴリズムやフローチャートは、問題文を丁寧に追えば得点しやすい一方、焦ると読み間違えやすい分野です。

経営と情報システム

この科目らしい分野です。ITを経営にどう使うかが問われます。

主な論点は、ERP、CRM、SCM、SFA、POS、EDI、EC、クラウドコンピューティング、SaaS、PaaS、IaaS、ビッグデータ、AI、IoT、RPA、DXなどです。

たとえば、ERPは企業の基幹業務を統合的に管理する仕組みです。会計、人事、生産、販売、在庫などを別々に管理するのではなく、全体をつなげて見えるようにします。

CRMは顧客関係管理、SCMは供給連鎖管理、SFAは営業支援です。略語が多いので、日本語の意味までセットで覚えると混乱しにくくなります。

インターネットとWeb技術

WebサイトやWebサービスの仕組みに関する論点です。

主な論点は、HTML、CSS、JavaScript、Cookie、セッション、Webサーバ、アプリケーションサーバ、API、CMS、検索エンジン、SEO、アクセス解析などです。

ブログ、ホームページ制作、ECサイト、SNS運用などの実務ともつながりやすい分野です。

中小企業診断士として企業支援を考えるなら、単語の暗記だけでなく、どの技術が集客、販売、顧客管理、業務効率化に関係するのかを意識すると理解が深まります。

統計・データ分析

データを使って経営判断を行うための基礎です。

主な論点は、平均、中央値、分散、標準偏差、相関係数、回帰分析、データマイニング、機械学習、BI、データウェアハウスなどです。

出題される場合は、難解な数学というより、用語の意味や分析手法の使い分けが中心です。

たとえば、相関は2つのデータの関係の強さを見る考え方です。回帰分析は、ある要因から結果を予測するために使われます。

情報システムの運用管理

システムは作って終わりではなく、安定して使える状態を保つ必要があります。

主な論点は、可用性、信頼性、保守性、障害対応、バックアップ、BCP、SLA、ITサービスマネジメント、ITIL、システム監査などです。

ここでは、システムを止めない、障害が起きても復旧できる、適切に管理されていることを確認する、という視点が重要です。

試験で特に押さえたい頻出系の論点は、データベース、ネットワーク、セキュリティ、システム開発、経営情報システムの活用です。

特に混同しやすいのは、次のような組み合わせです。

ERP、CRM、SCM、SFAの違い
SaaS、PaaS、IaaSの違い
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の違い
ファイアウォール、IDS、IPSの違い
ウォーターフォール開発とアジャイル開発の違い
主キーと外部キーの違い
正規化の目的
LAN、WAN、VPNの違い

経営情報システムは、最初は用語の多さで圧倒されます。ただ、全体を「情報を集める、保存する、つなぐ、守る、活用する」という流れで見ると、かなり整理しやすくなります。

この科目は、ITそのものに詳しくなるための科目というより、経営者や現場担当者とIT担当者の間に立って、何を導入し、何に注意し、どう業務改善につなげるかを判断するための科目です。中小企業診断士試験の中では、実務との接点がかなり強い科目だと考えると、暗記だけでなく使い道まで見えやすくなります。

中小企業経営・中小企業政策

中小企業の実態と、中小企業を支援する制度を学ぶ科目です。

主なトピックは、中小企業白書、小規模企業白書、中小企業の動向、業種別・規模別の特徴、開業、廃業、事業承継、資金繰り、補助金、融資制度、信用保証制度、商工会・商工会議所、中小企業支援機関、経営革新、ものづくり、地域資源、海外展開支援などです。

中小企業経営と中小企業政策は、暗記科目に見えますが、実際には「中小企業の実態」と「国の支援策」を結びつけて理解すると整理しやすい科目です。

中小企業診断士試験の「中小企業経営・中小企業政策」は、一次試験7科目のうちの最後の科目です。令和8年度の一次試験でも「中小企業経営・中小企業政策」として出題科目に含まれており、多肢選択式で行われます。

この科目は、大きく分けると次の2つです。

「中小企業経営」は、中小企業の実態を学ぶ分野です。

「中小企業政策」は、中小企業を支援するための法律・制度・補助金・支援機関を学ぶ分野です。

つまり、前半は「日本の中小企業は今どうなっているのか」、後半は「その中小企業を国や自治体がどう支えているのか」を問う科目です。中小企業白書は、中小企業の動向と政府の中小企業施策をまとめた年次報告として公表されています。

中小企業経営で問われるテーマ

中小企業経営は、主に「中小企業白書」「小規模企業白書」の内容をもとに、中小企業や小規模事業者の現状を読み取る分野です。

中心になる論点は、中小企業の数、従業者数、付加価値額、業種別の構成、開業率・廃業率、倒産件数、休廃業・解散、労働生産性、資金繰り、価格転嫁、賃上げ、人手不足、事業承継、後継者不足、M&A、デジタル化、海外展開、地域経済、商店街、小規模事業者の経営課題などです。

特に重要なのは、「中小企業は日本経済の中でどのような位置にあるか」という視点です。

たとえば、企業数では中小企業が大部分を占める一方で、労働生産性や賃金水準では大企業との差が出やすい。人手不足の影響も大きく、価格転嫁が進まないと賃上げの原資を確保しにくい。こうした構造を、白書のグラフや統計から読み取る問題が出ます。

中小企業経営の主な論点を整理すると、次のようになります。

中小企業の全体像
企業数、従業者数、売上高、付加価値額、業種別構成、規模別構成などです。中小企業が日本経済の中でどれほど大きな割合を占めているかを押さえます。

小規模事業者の実態
小規模事業者の数、経営者の高齢化、商圏の縮小、地域密着型ビジネス、個人事業主の動向などです。中小企業よりさらに小さな事業者の特徴を見ます。

景況感・業況判断
売上、利益、資金繰り、設備投資、業況判断DIなどです。景気が良いか悪いかを、感覚ではなく統計で読む分野です。

人手不足・雇用・賃上げ
人材確保、採用難、定着率、賃上げ、最低賃金、女性・高齢者・外国人材の活用などです。近年はかなり重要度が高いテーマです。

労働生産性・付加価値
中小企業がどうすれば稼ぐ力を高められるか、という論点です。2026年版中小企業白書でも、持続的賃上げに向けた原資の確保、労働生産性向上、経営リテラシーの強化が中心テーマとして示されています。

価格転嫁・取引適正化
原材料費、人件費、エネルギー価格などの上昇を販売価格へ反映できているかを見る論点です。下請取引、親事業者との関係、交渉力の弱さも関係します。

資金繰り・金融
借入、信用保証、資金調達、自己資本比率、金融機関との関係などです。財務・会計とも少しつながります。

事業承継・廃業・M&A
経営者の高齢化、後継者不足、親族内承継、従業員承継、第三者承継、M&A、休廃業などです。中小企業政策とも強くつながる頻出テーマです。

創業・起業
開業率、創業者の属性、創業時の課題、資金調達、創業支援などです。政策分野では創業支援制度とセットで問われます。

デジタル化・DX
IT導入、業務効率化、電子商取引、クラウド、データ活用、人材不足を補うデジタル技術などです。経営情報システムとも関連します。

海外展開
輸出、海外直接投資、インバウンド需要、海外市場への販路開拓などです。中小企業が国内市場の縮小にどう対応するかという文脈で出ます。

地域経済・商店街
地域資源、観光、地場産業、商店街活性化、地域の人口減少、地方の小規模事業者などです。小規模企業白書と相性がよい分野です。

中小企業政策で問われるテーマ

中小企業政策は、国が中小企業を支援するために用意している法律、制度、補助金、融資、相談窓口、支援機関を学ぶ分野です。

こちらは「制度名」「対象者」「支援内容」「実施機関」「根拠法」の組み合わせがよく問われます。

中心になる論点は、中小企業基本法、小規模企業振興基本法、中小企業等経営強化法、中小企業信用保険法、信用保証制度、日本政策金融公庫、商工会・商工会議所、中小企業基盤整備機構、よろず支援拠点、認定経営革新等支援機関、経営革新計画、経営力向上計画、事業継続力強化計画、事業承継支援、下請取引適正化、官公需、補助金制度などです。

中小企業政策の主な論点は、次のように整理できます。

中小企業政策の基本理念
中小企業基本法、小規模企業振興基本法などです。中小企業を単に保護する対象として見るのではなく、経済の活力、地域社会、雇用を支える存在として位置づける考え方を押さえます。

中小企業者・小規模企業者の定義
業種ごとの資本金基準、従業員数基準です。製造業、卸売業、小売業、サービス業で基準が異なるため、引っ掛け問題が出やすいところです。

経営革新・経営力向上
経営革新計画、経営力向上計画、先端設備等導入計画などです。新事業活動、生産性向上、設備投資、税制支援などと結びつきます。

創業支援
創業融資、自治体の創業支援、産業競争力強化法に基づく創業支援等事業計画などです。創業者がどこに相談し、どの制度を使えるかが問われます。

金融支援
日本政策金融公庫、商工組合中央金庫、信用保証協会、信用保証制度、セーフティネット保証、マル経融資などです。誰が融資するのか、誰が保証するのかを混同しやすい分野です。

補助金・助成制度
小規模事業者持続化補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金、事業再構築系の支援、販路開拓支援などです。ただし補助金は制度変更が多いため、最新年度の情報で確認する必要があります。

税制支援
中小企業投資促進税制、中小企業経営強化税制、少額減価償却資産の特例、事業承継税制などです。財務・会計や経営法務ともつながります。

事業承継支援
事業承継・引継ぎ支援センター、事業承継税制、M&A支援、後継者不在企業への支援などです。中小企業経営の「後継者不足」と政策側の「承継支援」をセットで理解します。

取引適正化・下請保護
下請代金支払遅延等防止法、下請かけこみ寺、価格交渉促進、パートナーシップ構築宣言などです。親事業者と下請事業者の関係を整える政策です。

小規模事業者支援
商工会、商工会議所、経営改善普及事業、経営発達支援計画、伴走型支援などです。小規模事業者は経営資源が限られるため、地域の支援機関が重要になります。

中小企業支援機関
中小企業庁、中小企業基盤整備機構、都道府県等中小企業支援センター、よろず支援拠点、商工会、商工会議所、認定経営革新等支援機関などです。どの機関が何を担当するかを整理します。

官公需・販路開拓
国や自治体が中小企業から物品・サービスを調達する官公需、中小企業の販路開拓、展示会、海外展開支援などです。

災害・事業継続支援
事業継続力強化計画、BCP、災害復旧貸付、セーフティネット支援などです。災害や感染症、急激な経営環境変化に備える制度です。

この科目の全体像を一言でまとめると、

中小企業経営は「中小企業の現実を読む科目」
中小企業政策は「その現実に対する支援策を覚える科目」

です。

勉強するときは、最初から細かい制度名を丸暗記するよりも、まず次の流れで押さえると理解しやすくなります。

中小企業にはどんな課題があるのか。
人手不足、資金繰り、後継者不足、生産性の低さ、価格転嫁の難しさ、販路不足などです。

その課題に対して、どんな政策があるのか。
金融支援、補助金、税制、相談窓口、専門家派遣、承継支援、取引適正化などです。

誰が支援するのか。
国、自治体、商工会、商工会議所、中小企業基盤整備機構、信用保証協会、日本政策金融公庫、よろず支援拠点などです。

どの法律に基づいているのか。
中小企業基本法、小規模企業振興基本法、中小企業等経営強化法、中小企業信用保険法、下請法などです。

この科目で混同しやすいのは、「白書の統計」と「政策制度」を別々に覚えてしまうことです。

たとえば、白書で「経営者の高齢化・後継者不足」が出てきたら、政策では「事業承継・引継ぎ支援センター」「事業承継税制」「M&A支援」が対応します。

白書で「小規模事業者は販路開拓が課題」と出てきたら、政策では「小規模事業者持続化補助金」「商工会・商工会議所の伴走支援」が対応します。

白書で「人手不足・賃上げ・生産性向上」が出てきたら、政策では「経営力向上計画」「設備投資支援」「IT導入支援」などが対応します。

このように、「課題」と「支援策」をペアで覚えると、単なる暗記ではなく、診断士らしい理解になります。

ポイント

前半の中小企業経営は統計、後半の中小企業政策は制度理解が中心です。年度によって白書や制度の内容が変わるため、比較的新しい教材で学ぶ必要があります。

二次試験は、一次試験の知識を使って、企業の事例を読み、診断・助言を書く試験です。筆記試験は4科目で、事例Ⅰから事例Ⅳまであります。一次試験が知識を問う試験であるのに対し、二次試験はその知識を使って、企業の課題をどう整理し、どう助言するかが問われます。

二次試験の4科目

事例Ⅰ

組織・人事を中心とした事例です。

主なテーマは、経営戦略、組織構造、組織文化、権限委譲、後継者育成、採用、配置、評価、報酬、モチベーション、リーダーシップ、事業承継などです。

一次試験では、企業経営理論の組織論・人的資源管理とつながります。

事例Ⅱ

マーケティング・流通を中心とした事例です。

主なテーマは、顧客ニーズ、ターゲット設定、差別化、ブランド、販売促進、地域密着、店舗運営、サービス業、観光、商店街、顧客関係性、口コミ、SNS活用などです。

一次試験では、企業経営理論のマーケティング、運営管理の店舗・販売管理とつながります。

事例Ⅲ

生産・技術を中心とした事例です。

主なテーマは、生産計画、工程管理、作業改善、品質管理、納期管理、在庫管理、外注管理、設備管理、多品種少量生産、受注生産、技術承継、現場改善などです。

一次試験では、運営管理の生産管理と強くつながります。

事例Ⅳ

財務・会計を中心とした事例です。

主なテーマは、経営分析、収益性、安全性、効率性、損益分岐点分析、CVP分析、投資評価、NPV、キャッシュ・フロー、意思決定会計、企業価値などです。

一次試験では、財務・会計と直結します。二次試験の中で唯一、計算力が大きく問われる科目です。

全体像としては、次のように考えると整理しやすいです。

経済学・経済政策は、会社を取り巻く世の中のお金と市場の動きを見る科目です。

財務・会計は、会社の中のお金の状態を見る科目です。

企業経営理論は、会社をどう成長させ、人や顧客をどう動かすかを見る科目です。

運営管理は、工場や店舗をどう効率よく動かすかを見る科目です。

経営法務は、会社が守るべき法律や手続きを見る科目です。

経営情報システムは、ITを経営にどう使うかを見る科目です。

中小企業経営・中小企業政策は、中小企業の現実と支援制度を見る科目です。

二次試験では、それらを使って、実際の会社に対して助言する力が問われます。一次試験が部品集め、二次試験が組み立てだと考えると、試験全体のつながりが見えやすくなります。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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