中小企業等経営強化法まとめ|経営力向上計画・認定要件・支援措置を図解で整理

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「経営強化法と経営革新支援、どう違うの?」——過去問を解いていてそんな疑問が浮かんだとき、どちらも「中小企業等経営強化法」が根拠法だと気づいて少し驚きました。同じ法律の中に、目的の異なる2つの制度が並んでいるのです。認定機関が「都道府県知事か主務大臣か」という違いを軸に整理すると、だいぶスッキリしてきました。

中小企業等経営強化法は2016年(平成28年)に制定された比較的新しい法律です。同じ法律の中に「経営革新計画」と「経営力向上計画」という2つの制度が並んでいて、認定機関・目的・支援措置がそれぞれ異なります。この記事では、法律の全体像から認定フロー、支援措置の詳細、比較テーブルまでを順に整理していきます。

目次

中小企業等経営強化法とは

制定背景と位置づけを整理する

中小企業等経営強化法は、2016年(平成28年)7月に施行されました。前身の「中小企業新事業活動促進法」(2005年)の内容を引き継ぎつつ、新たに「経営力向上計画」の認定制度を追加したものです。アベノミクスの「一億総活躍プラン」のもと、中小企業・小規模事業者の生産性向上を国が後押しする仕組みとして整備されました。

2016
年施行
中小企業等経営強化法が成立
2
つの制度
経営革新計画+経営力向上計画
20
超の業種
事業分野別指針が策定済み
中堅
企業も対象
一部措置は中堅企業にも適用

関連法との位置づけ

中小企業政策の体系の中で、この法律の立ち位置を確認しておくと整理しやすくなります。

法律 性格 主なテーマ
中小企業基本法 理念法・基本法 中小企業政策全体の基本理念・施策の方向性を定める
中小企業等経営強化法 個別施策法 経営革新・経営力向上の計画認定、生産性向上支援
小規模企業振興基本法 基本計画法 小規模事業者の持続的発展のための施策の基本計画
中小企業承継円滑化法 個別施策法 事業承継の円滑化(遺留分・株式・贈与税等)

基本法は「なぜ支援するのか」の方針を定め、経営強化法は「どのように支援するか」の具体的な仕組みを定めています。この「基本法」と「個別施策法」の区別は試験でも問われるポイントです。

対象者

SUBJECT 01
中小企業者
中小企業基本法に定める中小企業者(製造業:資本金3億円以下または従業員300人以下等)が主な対象です。業種によって定義が異なります。
SUBJECT 02
中堅企業(一部)
中小企業の範囲を超えた中堅企業でも、M&A支援等の一部の措置は適用対象となります。全措置が対象ではない点に注意が必要です。
SUBJECT 03
小規模事業者
中小企業者の中でも特に規模の小さい小規模事業者(製造業等:従業員20人以下)も対象に含まれます。使い勝手のよい制度設計になっています。

経営力向上計画とは

計画の定義・内容・認定フロー

経営力向上計画とは、人材育成・財務管理・IT利活用・設備投資などの取組によって企業の経営力を向上させるための計画です。業種ごとに主務大臣が策定する「事業分野別指針」に沿った計画であることが認定の前提条件となります。

計画に盛り込む内容

経営力向上計画の必須記載事項
現状分析:財務状況・人材・IT活用状況など経営の現状を客観的に分析する
経営力向上の目標:労働生産性や付加価値額などの数値目標を設定する
具体的な取組内容:目標達成のための人材育成・IT導入・設備投資等の施策を記載する
事業分野別指針との適合:主務大臣が策定する指針に沿った内容であることを示す

認定フロー

経営力向上計画の認定は、申請から認定まで以下のステップで進みます。認定機関が主務大臣(業種所管省庁)である点が、経営革新計画との大きな違いです。

STEP 1 計画策定
STEP 2 申請
STEP 3 内容確認
STEP 4 認定
01
計画を策定する
事業分野別指針を確認しながら、現状分析・目標・取組内容を盛り込んだ計画書を作成します。必要に応じて認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の助言を受けることもできます。
02
主務大臣に申請する
業種を所管する主務大臣(省庁)に対して申請します。例えば製造業は経済産業大臣、農業は農林水産大臣が窓口です。オンライン申請(jGrants)にも対応しています。
※認定支援機関と連名で申請することも可能です
03
内容の確認・審査
主務大臣(または委任を受けた地方経済産業局等)が計画内容を確認します。指針への適合性や目標の妥当性が審査されます。
04
認定・支援措置の適用
認定を受けると、税制優遇・融資特例・M&A支援など各種の支援措置が利用可能になります。認定後も計画の進捗をフォローアップする仕組みがあります。
経営力向上計画の認定件数は年々増加しており、特に設備投資(中小企業経営強化税制)目的の申請が多い傾向があります。計画認定は設備取得の「前提条件」になることが多いため、税制優遇のタイムラインを意識した申請スケジュール管理が実務上も重要です。
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ここで気づいたことがあります。「経営革新計画は都道府県知事、経営力向上計画は主務大臣」という認定機関の違いは、過去問でもほぼ毎回といっていいほど出題されます。「革新=知事(都道府県レベル)」「強化=主務大臣(国レベル)」という対比で覚えておくと、選択肢で迷いにくくなりそうです。

認定を受けた場合の支援措置

認定後に使える支援措置の全体像

経営力向上計画の認定を受けた中小企業者は、複数の支援措置を受けられます。税制・金融・M&Aという3つの柱から整理すると全体像をつかみやすくなります。

税制支援(2種類)

固定資産税の軽減
最大3年間、固定資産税を1/2に軽減
認定を受けた中小企業者が先端設備等を取得した場合、取得後3年間の固定資産税(償却資産)が課税標準の1/2(自治体によっては1/3や0も可)に軽減されます。市区町村が条例で定める「先端設備等導入計画」と組み合わせて利用します。
中小企業経営強化税制
即時償却 または 税額控除10%(7%)
認定を受けた経営力向上計画に基づき取得した設備について、即時償却(全額を取得年度に費用計上)または税額控除10%(資本金3,000万円超1億円以下は7%)のいずれかを選択できます。キャッシュフロー改善に直結する強力な税制です。
「即時償却と税額控除、どちらが有利か」はケースによって異なります。利益が出ていて法人税の負担が重い年度であれば税額控除が有利なことが多く、赤字が見込まれる場合は即時償却を選んで翌年以降の繰越欠損を活用するケースもあります。試験では「どちらも選択可能」という仕組みそのものが問われることが多いです。

金融支援

日本政策金融公庫
低利融資の特例
日本政策金融公庫の中小企業事業・国民生活事業において、認定計画に基づく設備投資等に対して基準利率からの優遇金利が適用されます。
信用保証協会
信用保証の特例
信用保証協会による保証を受ける際、認定計画に基づく資金調達について保証枠の拡大や保証料率の優遇が受けられる特例があります。

M&A・事業承継関連支援

登録免許税の軽減
M&A時の不動産移転に係る登録免許税を軽減
経営力向上計画に基づくM&A(合併・会社分割・事業譲渡等)によって不動産を取得した場合、登録免許税が軽減(不動産の所有権移転登記:通常2.0%→0.2%等)されます。
不動産取得税の軽減
M&A時の不動産取得税も軽減対象
上記と同様に、経営力向上計画に基づくM&Aで取得した不動産について、不動産取得税が通常税率より軽減されます。中堅企業のM&Aを後押しする制度です。

支援措置一覧テーブル

支援措置 内容 条件・備考
固定資産税の軽減 3年間1/2(最大) 先端設備等導入計画と組み合わせ。自治体により異なる
即時償却 取得価額全額を費用化 中小企業経営強化税制。税額控除との選択制
税額控除 取得価額の10%(7%) 資本金3千万超1億以下は7%。同上の選択制
低利融資(公庫) 基準利率から優遇 中小企業事業・国民生活事業
信用保証特例 保証枠拡大・料率優遇 信用保証協会経由
登録免許税の軽減 M&A時の不動産移転 合併・分割・事業譲渡等が対象
不動産取得税の軽減 M&A時の不動産取得 中堅企業も対象に含む

経営革新計画 vs 経営力向上計画の比較

よく混同される2制度を一気に整理

「どちらも同じ法律の制度」であるために混乱しやすい部分です。認定機関・目的・数値目標の有無という3つの軸で比較すると、違いが鮮明になります。

経営革新計画
根拠:中小企業等経営強化法
目的:新事業活動による経営の相当程度の向上
認定機関:都道府県知事(広域連携は国)
数値目標:付加価値額 年率3%以上 + 経常利益率 1%以上
計画期間:3〜5年
支援:保証特例・補助金・低利融資
経営力向上計画
根拠:中小企業等経営強化法(同一)
目的:人材・IT・設備等を活用した経営力の向上
認定機関:主務大臣(業種所管省庁)
数値目標:事業分野別指針に沿った労働生産性目標等
計画期間:指針により異なる(中長期が多い)
支援:税制優遇(即時償却・税額控除)・M&A支援

混同しやすいポイントの整理

比較項目 経営革新計画 経営力向上計画
根拠法 中小企業等経営強化法 中小企業等経営強化法(同じ)
認定機関 都道府県知事(原則) 主務大臣(業種所管省庁)
目的 新事業活動による経営革新 既存事業の生産性・経営力向上
数値目標 付加価値額3%以上・経常利益率1%以上(明示) 指針に基づく労働生産性向上目標等
新事業の要否 必須(新商品・新役務・新方式) 不要(既存事業の強化でもよい)
税制優遇 信用保証・補助金が中心 即時償却・税額控除・固定資産税軽減
M&A支援 対象外 登録免許税・不動産取得税の軽減あり
試験での頻出ひっかけポイントは「両方とも中小企業等経営強化法が根拠法」という点です。「経営革新計画は旧法の制度」「別の法律の制度」といった誤った選択肢が作られやすいので注意が必要です。2016年の法律改正で一本化された経緯を押さえておくと迷いにくくなります。

事業分野別指針の役割

業種ごとに細かく設計された「指針」とは

経営力向上計画を認定してもらうには、計画内容が「事業分野別指針」に沿っていることが条件です。この指針は業種(事業分野)ごとに所管の主務大臣が策定するもので、その業種特有の課題や生産性向上に向けた取組の方向性を示したガイドラインです。

事業分野別指針の役割まとめ
業種ごとの課題・重点的な取組内容(人材・IT・設備)を明示する
経営力向上計画の審査基準として機能し、指針に沿っていない計画は認定されない
同一業種でも複数の主務大臣にまたがる場合は連携して策定する
指針が策定されていない業種向けには「汎用指針(経済産業省)」が適用される

代表的な事業分野別指針の例

経済産業省
製造業、卸売業、小売業、サービス業等
最も多くの業種をカバーする。IT活用・設備の高度化・人材育成が中心テーマ。汎用指針もこちら。
農林水産省
農業・林業・漁業・食品製造業
スマート農業・ICT活用・法人化・輸出対応が重点事項。6次産業化も視野に入れた内容。
国土交通省
建設業・トラック運送業・旅館業
人手不足・ICT施工・働き方改革への対応が中心。施工管理ソフト・BIM導入なども対象。
厚生労働省
医療・介護・保育・社会福祉
ケアプランのICT化・介護ロボット導入・業務効率化など、人材定着と業務改善が主要テーマ。

試験では「業種ごとの主務大臣が異なる」こと自体は深追いせず、「主務大臣が指針を策定し、その指針に沿った計画が認定される」という仕組みの理解が問われることがほとんどです。指針の具体名を暗記するよりも、「指針への適合が前提条件」という構造を押さえておくことのほうが試験対策として有効です。

身近な場面で考えてみると

近所の定食屋さんで考えてみましょう

制度の違いが抽象的に感じる方には、こんな場面で考えると少しイメージしやすいかもしれません。

SCENE — 経営革新計画
定食屋がデリバリー事業に参入する
「うちはずっと店内飲食だけど、デリバリーに新しく参入しよう」という場合、これは新たな役務の提供方式にあたります。都道府県知事に承認してもらう「経営革新計画」の対象です。「攻め」の新展開ですね。
SCENE — 経営力向上計画
定食屋がPOSレジ・在庫管理システムを導入する
「既存の定食業をもっと効率化したい。POSで売れ筋を分析して、廃棄ロスを減らしたい」という場合、これはIT利活用による経営力の向上です。主務大臣(経済産業大臣)に認定してもらう「経営力向上計画」の対象で、設備投資の税制優遇が受けられます。

新しいことに挑戦するなら「経営革新計画(都道府県知事)」、今の事業を磨き上げるなら「経営力向上計画(主務大臣)」——という整理は、それぞれの制度の目的を直感的に理解する助けになるかもしれません。

過去問で確認する

頻出テーマを過去問で確認

経営強化法・経営力向上計画は「中小企業経営・政策」科目の中で毎年のように出題されます。以下の過去問で代表的な出題パターンを確認してみます。

令和4年度 中小企業経営・政策 第21問 経営力向上計画
中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 経営力向上計画の認定機関は都道府県知事である。
  • イ 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者は、中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)を利用できる。
  • ウ 経営力向上計画は、新事業活動(新商品の開発や新役務の提供等)を行う計画でなければ認定されない。
  • エ 経営力向上計画の策定にあたっては、事業分野別指針がない業種では申請することができない。
正解:イ / 解説
ア:誤り。経営力向上計画の認定機関は主務大臣(業種所管省庁)です。都道府県知事が認定するのは経営革新計画です。
イ:正しい。認定を受けた中小企業者は中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除10%/7%)を利用できます。
ウ:誤り。経営力向上計画は新事業活動は不要で、既存事業の人材・IT・設備改善でも申請できます(新事業活動が必要なのは経営革新計画)。
エ:誤り。指針が策定されていない業種向けには汎用指針(経済産業省)が適用されるため、すべての業種で申請可能です。
令和元年度 中小企業経営・政策 第19問 経営革新計画 vs 経営力向上計画
中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」と「経営力向上計画」に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 経営革新計画と経営力向上計画は、根拠法がそれぞれ異なる。
  • イ 経営革新計画の承認機関は主務大臣であり、経営力向上計画の認定機関は都道府県知事である。
  • ウ 経営革新計画では、付加価値額を計画期間中に年率3%以上向上させることなどの数値目標が必要である。
  • エ 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者のみが、中小企業経営強化税制の対象となる。
正解:ウ / 解説
ア:誤り。両方とも中小企業等経営強化法が根拠法です。「異なる」は誤りです。
イ:誤り。承認・認定機関が逆です。経営革新計画の承認機関は都道府県知事、経営力向上計画の認定機関は主務大臣です。
ウ:正しい。経営革新計画では付加価値額(または1人当たり付加価値額)を年率3%以上、かつ経常利益率を1%以上向上させる数値目標が必要です。
エ:誤り。「のみ」という限定は過剰です。なお、中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定が条件ですが、選択肢の表現が誤りの方向性となっています。
平成29年度 中小企業経営・政策 第22問 支援措置・固定資産税
中小企業等経営強化法に基づく経営力向上計画に関連する税制支援について、最も適切なものはどれか。
  • ア 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者が取得した設備は、取得後5年間、固定資産税が免除される。
  • イ 即時償却と税額控除は同一年度において併用することができる。
  • ウ 中小企業経営強化税制では、一定の要件を満たす設備について即時償却または取得価額の一定割合の税額控除のいずれかを選択できる。
  • エ 経営力向上計画の認定を受けた設備への税制優遇は、製造業のみを対象としている。
正解:ウ / 解説
ア:誤り。固定資産税の軽減は3年間・1/2(最大)であり、免除ではありません。
イ:誤り。即時償却と税額控除は選択制であり、同一年度に併用することはできません。
ウ:正しい。中小企業経営強化税制は一定要件(類型A〜D等)を満たす設備について、即時償却または税額控除10%(7%)の選択が可能です。
エ:誤り。製造業に限らず、サービス業・小売業・卸売業等も対象となります。業種の限定はありません。
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3問解いてみて感じたのは、「認定機関の入れ替え問題」が本当に繰り返し出題されるということです。「都道府県知事→経営革新計画」「主務大臣→経営力向上計画」という対応は、そのまま丸ごと覚えてしまうのがいちばん確実なのかもしれません。過去問で何度も同じパターンを見ていると、自然と定着してくる気がしています。

まとめ

この記事で整理したこと
  • 中小企業等経営強化法は2016年施行。経営革新計画・経営力向上計画の両制度が同一法律に根拠を持つ
  • 経営革新計画の承認機関は都道府県知事、数値目標は付加価値額年率3%以上+経常利益率1%以上
  • 経営力向上計画の認定機関は主務大臣(業種所管省庁)。新事業活動は不要で既存事業の強化でも申請可能
  • 認定を受けると固定資産税軽減(3年間1/2)・即時償却または税額控除10%(7%)・低利融資・M&A支援が受けられる
  • 事業分野別指針は主務大臣が業種ごとに策定。指針への適合が経営力向上計画認定の前提条件
  • 指針がない業種には汎用指針(経済産業省)が適用されるため、全業種で申請可能
  • 試験頻出ポイントは「認定機関の違い」「根拠法の同一性」「税制優遇の選択制」の3点
U のメモ
この分野を学ぶとき、「法律の名前が変わっているのに、制度の中身が2つ同居している」という構造が最初はわかりにくく感じました。でも、「2016年の改正で経営力向上計画という新しい柱が加わった」と理解してから、全体像がすっきりしてきました。
経営革新計画(攻め・都道府県知事・数値目標あり)と経営力向上計画(磨き上げ・主務大臣・指針への適合)——この2つの対比を軸に、支援措置の違いへと広げていくと、問われるポイントが自然につながってくるように思います。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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