U過去問を解いていて、「ROAとROEはどちらが高いほど良いの?」という選択肢で手が止まりました。どちらも「高いほど良い」はずなのに、文脈によって意味が変わる。比率分析は単体で見るより、組み合わせて読むことで初めて企業の実像が見えてくるのだと気づいてから、この分野が面白くなりました。
財務諸表(BSとPL)の数字をそのまま比較しても、企業の規模が違えば意味をなしません。比率に変換することで、初めて異なる企業・異なる期間での比較が可能になります。経営分析・財務比率分析は、中小企業診断士の財務・会計科目で毎年出題される最重要テーマのひとつです。
収益性の指標
| 指標名 | 計算式 | 意味・ポイント |
|---|---|---|
| 売上高総利益率(粗利率) | 売上総利益 ÷ 売上高 × 100 | 製品・サービスそのものの付加価値力。高いほど価格競争に強い。 |
| 売上高営業利益率 | 営業利益 ÷ 売上高 × 100 | 本業での稼ぐ力。販管費の管理効率が反映される。 |
| 売上高経常利益率 | 経常利益 ÷ 売上高 × 100 | 財務活動を含めた総合的な収益性。金融費用の大小が影響する。 |
| ROA(総資産利益率) | 利益 ÷ 総資産 × 100 | 持っている資産全体でどれだけ利益を生んだか。資金の出所を問わない。 |
| ROE(自己資本利益率) | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 | 株主の出資に対してどれだけ利益を返せたか。株主視点の最重要指標。 |
効率性の指標(回転率)
| 指標名 | 計算式 | 高いほど良い理由 |
|---|---|---|
| 総資産回転率 | 売上高 ÷ 総資産(回) | 同じ資産規模でより多くの売上を生んでいる=資産の無駄が少ない |
| 固定資産回転率 | 売上高 ÷ 固定資産(回) | 設備・建物を有効活用できているかを示す |
| 棚卸資産回転率 | 売上高(または売上原価)÷ 棚卸資産(回) | 在庫が素早く売れている=在庫リスク・資金拘束が小さい |
| 売上債権回転率 | 売上高 ÷ 売上債権(回) | 売掛金の回収が速い=資金繰りが良好 |
回転日数 = 365日 ÷ 回転率
安全性の指標
安全性指標は、貸借対照表(BS)の構造と対応しています。左側(資産)と右側(負債・資本)のどの部分を組み合わせるかを図で整理すると、計算式が自然に導けます。



流動比率と当座比率の違いで迷ったことがあります。当座比率は流動資産から「棚卸資産(在庫)」と「前払費用」を除いた当座資産を分子に使います。在庫はすぐ現金化できるとは限らないため、より厳しい基準として使われます。固定比率と固定長期適合率も同様に、分母に「固定負債も含めるかどうか」の違いです。
デュポン分析(ROA・ROE分解)
ROAとROEは単体の数値だけでなく、何が原因で高いのか・低いのかを分解することで経営改善の示唆が得られます。これをデュポン分析と呼びます。診断士の視点として「ROEを上げる方法は3つ」と即答できると試験でも実務でも役立ちます。
(利益 ÷ 売上高)
(売上高 ÷ 総資産)
純利益率
回転率
レバレッジ
(総資産 ÷ 自己資本)
| ROEを上げる方法 | 具体的な施策例 | リスク |
|---|---|---|
| 売上高純利益率を上げる | 原価低減・販管費削減・値上げ | 競合に価格で負ける可能性 |
| 総資産回転率を上げる | 在庫削減・固定資産売却・売上拡大 | 過剰な資産圧縮で機会損失 |
| 財務レバレッジを上げる | 借入増加・自社株買い | 財務安全性の低下・利払い負担増 |
成長性の指標
成長性は前期との比較で算出します。計算式の基本形は「(当期 − 前期)÷ 前期 × 100」です。
過去問で確認する
売上高 1,000万円 / 経常利益 80万円 / 総資産 500万円 / 自己資本 200万円
- ア 8.0%
- イ 16.0%
- ウ 40.0%
- エ 80.0%
- ア 流動比率は常に当座比率以上である
- イ 当座比率が200%のとき、流動比率も必ず200%以上になる
- ウ 棚卸資産が大きいほど、流動比率と当座比率の差は大きくなる
- エ 流動比率と当座比率は同じ値になることはない
- ア ROEは「売上高純利益率 × 自己資本回転率」に分解できる
- イ 財務レバレッジを高めることはROEを低下させる
- ウ ROEは「売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ」に分解できる
- エ ROAと財務レバレッジを乗じても、ROEは求まらない



過去問を解いていて感じたのですが、財務比率の問題は「公式を知っているか」だけでなく、BSとPLのどの数字が分子・分母に入るかを問われることが多いです。表で丸暗記するより、BSの構造図と合わせて「この比率は資産の左側と右側のどこを比べているか」と位置関係で覚えると、初見の問題にも対応しやすくなりました。









