MIPSとかクロック周波数とか、過去問に出てくるたびに「なんとなく知っている」で止まっていました。計算問題が出るとわかっていても、どの数値をどう使えばいいかが整理できていなくて。この記事は、ハードウェア分野の用語と計算をひとつの流れとして捉え直すために書いています。
この記事は、中小企業診断士1次試験「経営情報システム」のうちハードウェア分野を扱います。コンピュータの5大装置から、CPUの性能指標(MIPS・クロック周波数)、記憶装置の階層構造、入出力の接続規格、そして信頼性指標(MTBF・MTTR・稼働率)まで、計算問題も含めて整理します。用語を単独で覚えるより、「どの装置がどう連携しているか」という全体像を先に掴むと、あとの暗記がずっとラクになります。
目次
コンピュータの5大装置
コンピュータは5つの機能単位で構成されます。それぞれが独立して存在するのではなく、制御装置を中心に連携して動作しています。まずこの構造を頭に入れると、CPUや記憶装置の役割がぐっと掴みやすくなります。
補助記憶装置(HDD・SSD)は主記憶と連携してデータを永続保存
01 — CONTROL
制御装置
プログラムの命令を読み取り、各装置に指示を出す「司令塔」。命令をフェッチ→デコード→実行の順で処理する。
02 — ALU
演算装置(ALU)
四則演算・論理演算を実行する装置。制御装置の指示を受けてデータを処理し、結果をレジスタに格納する。
03 — MEMORY
記憶装置
プログラムとデータを格納する。主記憶(RAM)と補助記憶(HDD・SSD)に分類され、速度とコストが大きく異なる。
04 — INPUT
入力装置
人間や外部からのデータをコンピュータへ取り込む装置。キーボード・マウス・スキャナ・タッチパネルなど。
05 — OUTPUT
出力装置
処理結果を人間が認識できる形に変換して提示する装置。ディスプレイ・プリンタ・スピーカーなど。
CPUの性能指標
CPUの速さを表す指標は複数あり、それぞれ異なる側面を測っています。試験ではクロック周波数とMIPSの計算問題が頻出です。それぞれの「何を測っているか」を理解した上で計算式を押さえると、応用問題にも対応できます。
クロック周波数
CPUが1秒間に何回クロック信号を刻むかを示す値。単位はHz(ヘルツ)。1GHz = 10億回/秒。クロックが速いほど命令を短時間で実行できる。
1クロックの時間 = 1 ÷ クロック周波数(Hz)
MIPS
Million Instructions Per Second。1秒間に実行できる命令数(100万命令単位)。クロック周波数とCPI(1命令に要するクロック数)から導出できる。
MIPS = クロック周波数(MHz) ÷ CPI
Floating-point Operations Per Second。浮動小数点演算の実行速度を示す指標。科学技術計算やAI処理の性能評価に使われ、スーパーコンピュータの比較にも用いられる。
単位:MFLOPS / GFLOPS / TFLOPS
コア数とスレッド数
コア数は物理的な処理単位の数。スレッド数はOSから見た論理的な処理単位の数。ハイパースレッディングにより1コアで2スレッドを処理できる場合がある。
スレッド数 ≧ コア数(HT時は2倍)
計算例:クロック周波数とMIPSの換算
【問題】クロック周波数 2GHz、CPI = 4 のCPUのMIPSを求めよ
STEP 1 クロック周波数をMHz単位に変換
2GHz = 2,000 MHz
STEP 2 MIPS = クロック周波数(MHz) ÷ CPI
MIPS = 2,000 ÷ 4 = 500 MIPS
↑ 1秒間に5億命令(500×100万命令)を実行できる
STEP 3 1命令の実行時間 = 1 ÷ MIPS(単位:マイクロ秒)
= 1 ÷ 500 = 0.002 マイクロ秒(= 2 ナノ秒)
MIPSは「命令の複雑さ」を無視した指標だと気づいたとき、少しすっきりしました。同じMIPS値でも、単純な命令ばかりなのか複雑な命令を含むのかで実際の処理能力は全然違います。異なるアーキテクチャのCPU間で単純比較できない理由がここにあるのだそうです。過去問でも「MIPS値は命令の種類によって変わる」という注意書きが選択肢に絡んでくることがあります。
記憶装置の種類と特徴
記憶装置は「速くて高価だが容量が小さい」ものと「遅くて安価だが容量が大きい」ものが階層的に組み合わさっています。この階層構造を図として頭に入れておくと、キャッシュメモリやRAMの役割が自然と理解できます。
▲ 上にいくほど:高速・高コスト・小容量
レジスタ
速度:最高速
容量:数〜数十バイト
CPU内部
キャッシュメモリ
速度:超高速
容量:KB〜MB
L1/L2/L3
主記憶(RAM)
速度:高速
容量:GB単位
揮発性
補助記憶(SSD)
速度:中速
容量:数百GB〜TB
不揮発性
補助記憶(HDD)
速度:低速
容量:TB単位
不揮発性・安価
▼ 下にいくほど:低速・低コスト・大容量
| 種類 |
揮発性 |
読み書き |
速度 |
主な用途 |
| レジスタ |
揮発 |
読み書き可 |
最高速 |
CPU内の一時データ保持 |
| キャッシュメモリ |
揮発 |
読み書き可 |
超高速 |
主記憶の高速バッファ(L1〜L3) |
| 主記憶(RAM) |
揮発 |
読み書き可 |
高速 |
実行中プログラム・データの格納 |
| ROM |
不揮発 |
読み取り専用 |
中速 |
BIOS・ファームウェアの格納 |
| フラッシュメモリ |
不揮発 |
読み書き可 |
中速 |
USBメモリ・SDカード・SSD |
| SSD |
不揮発 |
読み書き可 |
中〜高速 |
OS・アプリ・データの永続保存 |
| HDD |
不揮発 |
読み書き可 |
低速 |
大容量データの永続保存 |
試験頻出ポイント:
RAMは揮発性(電源OFF でデータ消滅)、ROMは不揮発性(電源OFF でもデータ保持)という対比が頻出です。また「キャッシュメモリはCPUと主記憶の速度差を埋めるためのバッファ」という役割説明も問われます。フラッシュメモリはROMの一種として分類される場合と、独立した種別として扱われる場合があるので、問題の文脈で判断します。
入出力装置と接続規格
入出力装置そのものより、接続規格(特にUSBの世代別転送速度)の方が試験に出やすい傾向があります。また「シリアル転送とパラレル転送の違い」は概念として整理しておくと、他の通信分野の問題にも応用できます。
USBの世代別転送速度
| 規格名 |
最大転送速度 |
別称 |
主な用途・特徴 |
| USB 2.0 |
480 Mbps |
Hi-Speed |
マウス・キーボード等の一般周辺機器 |
| USB 3.0 |
5 Gbps |
SuperSpeed |
外付けHDD・USBメモリ等の高速ストレージ |
| USB 3.1 |
10 Gbps |
SuperSpeed+ |
高速SSD・ビデオキャプチャ等 |
| USB 4(Gen 2×2) |
40 Gbps |
USB4 |
Thunderbolt 3互換・高速映像伝送 |
シリアル転送 vs パラレル転送
覚え方:
現在の主流はシリアル転送です。「高速になるほどシリアルが有利」という逆説的な事実が試験で問われることがあります。パラレルは複数線を同時に走らせるため、長距離・高速になるとタイミングのズレ(クロックスキュー)が無視できなくなるのが理由です。
主な入出力装置の分類
主な入力装置
キーボード・マウス・トラックパッド・タッチスクリーン・スキャナ・マイクロフォン・Webカメラ・バーコードリーダー・OCR(光学文字認識)・OMR(光学マーク読取)
主な出力装置
ディスプレイ(液晶・有機EL)・プリンタ(レーザー・インクジェット)・スピーカー・プロジェクタ・プロッタ(CAD図面出力)
入出力兼用装置
タッチパネル(入力+表示)・HDD/SSD(読み書き)・光学ドライブ・ネットワークアダプタ(送受信)・モデム
信頼性指標(MTBF・MTTR・稼働率)
システムの信頼性を測る指標として、MTBF・MTTR・稼働率の3つが頻出です。計算問題では「直列接続と並列接続の稼働率の違い」が問われることが多く、式の意味を理解した上で手を動かして解く練習が有効です。
MTBF
Mean Time Between Failures
平均故障間隔
故障から次の故障までの平均稼働時間。値が大きいほど「壊れにくいシステム」を意味する。単位は時間(h)。
MTTR
Mean Time To Repair
平均修理時間
故障発生から修理完了までの平均時間。値が小さいほど「早く復旧できるシステム」を意味する。単位は時間(h)。
稼働率
Availability
アベイラビリティ
システムが正常に稼働している時間の割合。MTBFとMTTRから計算できる。0〜1(または0〜100%)で表す。
直列接続と並列接続の稼働率
直列接続(AND接続):両方が動いていないと全体が動かない
機器A
稼働率 a
→
機器B
稼働率 b
→
直列稼働率 = a × b
例:a = 0.9、b = 0.8 → 0.9 × 0.8 = 0.72
並列接続(OR接続):どちらか片方が動いていれば全体が動く
例:a = 0.9、b = 0.8 → 1 − (0.1 × 0.2) = 1 − 0.02 = 0.98
【問題】以下のシステム構成の全体稼働率を求めよ
構成:A(0.9)とB(0.8)が直列、その後C(0.9)と並列接続
STEP 1 直列部分(A-B)の稼働率を計算
A-B直列 = 0.9 × 0.8 = 0.72
STEP 2 AB直列とCの並列稼働率を計算
全体 = 1 − (1 − 0.72) × (1 − 0.9)
= 1 − 0.28 × 0.10
= 1 − 0.028
= 0.972(97.2%)
ポイント:並列化すると稼働率が大幅に向上する
直列と並列の直感的な理解:
直列は「全員合格しないと通過できない面接」、並列は「1人でも合格すれば通過できる面接」と考えると覚えやすいです。並列化によってシステム全体の稼働率が単独機器の稼働率を上回ることが、試験でのポイントになります。
過去問で確認する
ハードウェア分野は、用語の定義問題と計算問題の両方が出ます。以下は頻出パターンを過去問ベースで整理したものです。まず問題文を自分で考えてから、解説を確認する使い方がおすすめです。
クロック周波数が2倍になったとき、MIPSの値はどのように変化するか。ただしCPIは変わらないものとする。
解答:2倍になる。
MIPS = クロック周波数(MHz)÷ CPI という関係から、クロック周波数が2倍になればMIPSも2倍になる。CPIが変わらない場合、クロックとMIPSは比例関係にある。
主記憶とキャッシュメモリに関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:キャッシュメモリはCPUと主記憶の速度差を埋めるバッファとして機能し、使用頻度の高いデータを一時保存することで処理効率を向上させる。キャッシュへのアクセスが成功することを「ヒット」、失敗することを「ミス」と呼ぶ。ヒット率が高いほどシステム全体の体感速度が向上する。
MTBF = 450時間、MTTR = 50時間 のシステムがある。このシステムの稼働率として正しいものはどれか。
解答:0.9(90%)
稼働率 = MTBF ÷ (MTBF + MTTR) = 450 ÷ (450 + 50) = 450 ÷ 500 = 0.9。MTBFが大きく、MTTRが小さいほど稼働率は高くなる。
シリアル転送とパラレル転送を比較した記述として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:「高速化するほどシリアルが有利」という点が問われやすい。パラレルは複数線でビットを同時送信するが、線ごとの到着タイミングのズレ(クロックスキュー)が高速化の制約になる。現在のUSB・SATA・PCIeは全てシリアル転送を採用している。
過去問を解き直してみて、計算問題は「式を覚える」より「何を求めているかを理解する」方が断然解きやすいと感じています。稼働率の計算も、直列は掛け算、並列は「両方止まる確率を1から引く」と考えると、式を忘れても導き出せます。ハードウェアは覚えることが多く見えますが、構造的に理解すれば意外とシンプルに整理できる分野だと思っています。
この記事のまとめ
-
コンピュータは「制御・演算・記憶・入力・出力」の5大装置で構成され、CPUは制御装置と演算装置の集合体
-
MIPS = クロック周波数(MHz)÷ CPI で計算でき、MIPSは命令の複雑さを無視した指標であることに注意
-
記憶装置は階層構造を持ち、上位(レジスタ・キャッシュ)ほど高速・高コスト・小容量、下位(HDD等)ほど逆の特性
-
RAMは揮発性、ROMは不揮発性。現在の主流接続規格はUSB・SATA・PCIeを含め全てシリアル転送
-
稼働率 = MTBF ÷(MTBF + MTTR)。直列は積(掛け算)、並列は 1 −(故障率の積)で計算
関連記事
Post Views: 14