輸出入取引や海外子会社の財務諸表を日本円に換算するとき、為替レートの選択と差額の処理が問われます。外貨換算会計は、財務会計の試験では換算レートの使い分けと為替差損益の計上タイミングを中心に出題されます。
目次
換算レートの3種類
取引発生時レート(HR: Historical Rate)
- 取引が発生した時点の為替レート
- 有形固定資産・繰延資産等の非貨幣性項目に使用
- 取得原価主義に基づく考え方
決算日レート(CR: Current Rate)
- 決算日(期末日)時点の為替レート
- 外貨建金銭債権債務(売掛金・買掛金・貸付金等)に使用
- 換算差額は原則として「為替差損益」として当期損益に計上
平均レート(AR):期中の平均為替レート。収益・費用項目の換算に用いることが認められる。在外子会社の損益計算書換算に使用される。
外貨建取引の換算タイミング
①
取引発生時(売上・仕入・借入等)
外貨建取引は取引発生時の為替レート(取引日レートまたは合理的な方法で算定したレート)で換算して記帳する。
②
期末(決算日)
外貨建金銭債権債務(売掛金・買掛金・外貨預金・社債等)は決算日レートで換算替えを行う。換算差額は「為替差損益」として当期損益に計上する。
③
決済時(入金・支払い時)
実際に外貨の受取・支払いが行われた時点で、帳簿上の残高との差額を「為替差損益」として認識する。
換算替えの仕訳イメージ
例:$1,000 の売掛金、取引時 @120円 → 期末 @125円
取引時:売掛金 120,000円 / 売上 120,000円
期末:売掛金 5,000円 / 為替差益 5,000円($1,000 × (125-120))
決済時(@128円):現金 128,000円 / 売掛金 125,000円、為替差益 3,000円
期末:売掛金 5,000円 / 為替差益 5,000円($1,000 × (125-120))
決済時(@128円):現金 128,000円 / 売掛金 125,000円、為替差益 3,000円
換算レートの使い分け一覧
| 項目 | 換算レート | 換算差額の処理 |
|---|---|---|
| 売掛金・買掛金 | 決算日レート(CR) | 為替差損益(当期損益) |
| 外貨建借入金・貸付金 | 決算日レート(CR) | 為替差損益(当期損益) |
| 外貨預金 | 決算日レート(CR) | 為替差損益(当期損益) |
| 有形固定資産(取得済) | 取引時レート(HR) | 換算替えなし |
| 外貨建有価証券(売買目的) | 決算日レート(CR) | 評価差額を損益に計上 |
| 外貨建有価証券(その他) | 決算日レート(CR) | 評価差額を純資産に計上 |
為替予約
振当処理(原則)
- 外貨建金銭債権債務に為替予約を振り当てる
- 予約レートで換算した金額を帳簿に計上
- 直先差額(直物レートと予約レートの差)は期間配分する
独立処理
- 為替予約を独立したデリバティブとして時価評価
- 外貨建債権債務と為替予約を別々に評価・計上
- IFRS等の国際基準ではこちらが主流
在外子会社の財務諸表換算
| 項目 | 換算レート |
|---|---|
| 貸借対照表の資産・負債 | 決算日レート(CR) |
| 損益計算書の収益・費用 | 期中平均レート(AR) |
| 資本金・資本剰余金 | 株式発行時の歴史的レート(HR) |
| 利益剰余金 | 期中平均レートで換算した損益累計 |
| 換算差額(BSの貸借不一致) | 為替換算調整勘定(純資産の部)に計上 |
在外子会社の換算では、BSとPLで異なるレートを使うため必ず差額(為替換算調整勘定)が発生する。この差額は損益ではなく、純資産(その他の包括利益累計額)に計上される点が試験頻出。なお、財務比率分析においても外貨換算後の数値が使われる点に注意。
過去問で確認する
H27年 第6問
財務・会計換算レート
財務・会計換算レート
外貨建取引等の換算に関する記述として、最も適切なものはどれか。(売掛金・固定資産・借入金の換算レートを問う問題)
解答のポイント:外貨建金銭債権債務(売掛金・買掛金・外貨借入金等)は決算日レートで換算替えし、差額を「為替差損益」として当期損益に計上する。有形固定資産は取引時レート(歴史的レート)のまま換算替えしない点が区別のポイント。
H30年 第8問
財務・会計為替差損益
財務・会計為替差損益
外貨建売掛金の期末換算替えに関する仕訳として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:外貨建売掛金は期末に決算日レートで換算替えし、取引時レートとの差額を「為替差損益」として計上する。円安(レート上昇)の場合は為替差益、円高(レート低下)の場合は為替差損が発生する。
R2年 第10問
財務・会計在外子会社換算
財務・会計在外子会社換算
在外子会社の財務諸表を円換算する際の換算差額(為替換算調整勘定)の処理として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:在外子会社のBS換算(CR)とPL換算(AR)の差額は為替換算調整勘定として純資産(その他の包括利益累計額)に計上される。当期損益には計上しない点が重要。子会社を売却・清算した時点で初めて損益に取り込まれる(リサイクリング)。

