U退職給付会計って、仕訳のどこに出てくるのかずっとわからなかったんですよね。「退職給付費用」という言葉は知っていたんですが、確定給付型と確定拠出型で扱いがまったく違うと知って、整理してみました。
・確定給付型と確定拠出型、どこが違うのか
・退職給付債務(PBO)の4つの構成要素
・退職給付費用の計算フローと仕訳
・数理計算上の差異・過去勤務費用の処理方法
・診断士1次試験での出題パターンと引っかけ
確定給付型 vs 確定拠出型:まず「誰がリスクを負うか」で整理する
退職金制度には大きく2種類あります。最初に「誰が運用リスクを負うか」という1点で整理すると、あとの会計処理がスッと入ってきます。
Defined Benefit
Defined Contribution
退職給付債務(PBO)の4構成要素を分解する
退職給付債務(PBO: Projected Benefit Obligation)は、将来支払う退職金を現在価値に割り引いた金額です。「なぜ今の時点で負債を計上するの?」という疑問は当然なのですが、従業員はすでに今働いているわけですから、その労働の対価としての退職金はすでに「発生している」と考えるわけです。
退職給付費用は、以下の4要素の合計として計算します。
| 構成要素 | 内容 | 符号 |
|---|---|---|
| 勤務費用 Service Cost |
当期の労働によって新たに発生した退職給付債務の現在価値。1年分の「将来もらえる退職金の積み上げ」を今の価値に直したもの | + |
| 利息費用 Interest Cost |
期首PBOに割引率を掛けた金額。時間の経過で「将来支払義務が近づいてくる」分のコスト | + |
| 期待運用収益 Expected Return |
年金資産が運用で生み出すと期待される収益。退職給付費用を減らす方向に働く | - |
| 数理計算上の差異・過去勤務費用の償却 Amortization |
見積りのズレ(数理差異)や制度改定(過去勤務費用)を平均残存勤務期間で均等償却した金額 | ± |
退職給付費用 = 勤務費用 + 利息費用 − 期待運用収益 ± 数理計算上の差異償却 ± 過去勤務費用償却



「期待運用収益を引く」というのが最初ピンとこなかったんですよね。でも考えてみると、年金基金が運用で稼いでくれる分は企業側の負担が減るわけですから、費用から差し引く、という構造はなるほどなと思いました。
仕訳の流れをステップで追う
確定給付型の仕訳は「退職給付費用の計上」「年金資産への拠出」「退職金の実際支払」の3場面で整理します。
(貸)退職給付引当金 ×××
(貸)現金預金 ×××
(貸)現金預金 ×××
数理計算上の差異と過去勤務費用:「見積りのズレ」をどう扱うか
退職給付債務は割引率・昇給率・死亡率などの見積りをもとに計算します。でも実際の数字は予測と異なることが多い。このズレを「数理計算上の差異」といいます。
| 項目 | 発生原因 | 処理方法 |
|---|---|---|
| 数理計算上の差異 | 割引率・期待運用収益率の見直し、実績と見積りのズレ | 発生年度の翌期から平均残存勤務期間で按分して費用化(コリドー法も可) |
| 過去勤務費用 | 退職給付制度の改定(給付水準の引き上げ・引き下げ) | 同じく平均残存勤務期間で按分償却。一括費用化も可 |
数理差異や過去勤務費用をその期に全額費用化すると、業績への影響が大きすぎます。そのため、発生した差異を従業員が退職するまでの期間(平均残存勤務期間)にわたって均等に配分することで、費用を平準化しています。
「老後の積立」で考えるとスッと腑に落ちる
退職給付会計は複雑に見えますが、個人の老後積立に例えると構造がわかりやすくなります。
企業も個人と同じで、「将来払う約束をしている退職金」と「今積んでいるお金(年金資産)」の差額を常に把握して、不足分(退職給付引当金)として貸借対照表に載せているわけです。
診断士1次試験の出題パターンと引っかけ
| よく出る論点 | 引っかけパターン | 正しい理解 |
|---|---|---|
| DB vs DC | 「確定拠出型でも退職給付引当金を計上する」 | DC型は拠出額を費用計上するだけ。引当金・PBOは不要 |
| 退職給付費用の計算 | 「期待運用収益を退職給付費用に加算する」 | 期待運用収益は費用から差し引く(マイナス要素) |
| 数理差異の処理 | 「発生した期に全額費用化する」 | 翌期以降に平均残存勤務期間で按分償却(即時認識も可だが選択制) |
| 退職給付引当金 | 「年金資産がPBOを超えたら資産計上できない」 | PBO<年金資産の場合、前払年金費用として資産計上する |



「期待運用収益を引く」「平均残存勤務期間で償却」というポイントは、問題文で逆に書かれることが多いです。「費用に加算する」と書かれていたら×、というように選択肢ごとに引っかけを確認しておくと安心です。
まとめ
- 確定給付型(DB)は企業がリスク負担・複雑計算、確定拠出型(DC)は従業員がリスク負担・拠出額のみ費用計上
- 退職給付費用 = 勤務費用 + 利息費用 − 期待運用収益 ± 数理差異等の償却
- 退職給付引当金 = 退職給付債務(PBO)− 年金資産(差額が負債または前払費用)
- 数理計算上の差異・過去勤務費用は平均残存勤務期間で按分償却(翌期以降に費用化)
- 試験では「DC型に引当金は不要」「期待運用収益はマイナス」が定番引っかけ
確定給付型の退職給付費用計算は、「勤務費用(+)・利息費用(+)・期待運用収益(−)・差異償却(±)」の4項目を覚えるのがポイントです。特に「期待運用収益はマイナス」という点は、問題文で必ずと言っていいほど試されます。個人の老後積立のイメージで構造を捉えておくと、仕訳も計算式も自然に思い出せます。









