【中小企業診断士試験令和7年度過去問財務会計 第2問 解説】会社法の計算書類4種類・会計帳簿の保存期間・株主提供義務を図解で整理

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令和7年度の過去問を解いていて、第2問で少し戸惑いました。「計算書類って、B/SとP/Lのことじゃないの?」と思ったら、それだけでは足りなかったようで。同じように感じた方のお役に立てましたら嬉しいです。

この記事では、令和7年度 中小企業診断士1次試験「財務・会計」第2問を丁寧に解説します。会社法が定める「計算書類」と「会計帳簿」に関する知識問題です。計算は一切ありませんが、正確な条文の知識が問われます。一つひとつ確認しながら進めましょう。

目次

試験問題と選択肢

令和7年度 第1次試験 財務・会計 第2問 会社法 / 計算書類・会計帳簿
会社法における計算書類および会計帳簿に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 会計帳簿は、書面をもって作成しなければならない。
  • イ 株式会社が作成しなければならない計算書類とは、貸借対照表、損益計算書および包括利益計算書である。
  • ウ 株式会社は、会計帳簿の閉鎖の時から3年間、その会計帳簿を保存しなければならない。
  • エ 取締役会設置会社においては、定時株主総会の招集の通知に際して、取締役会で承認を受けた計算書類を株主に提供しなければならない。

4つの選択肢はすべて、一見もっともらしく見えます。「なんとなく正しそう」という感覚に引きずられないよう、一つひとつ丁寧に確認していきます。

財務・会計の全体像における位置づけ

財務・会計(1次試験)
├── 第1章 財務会計の基礎
│  ├── 簿記の仕組み(仕訳・借方・貸方)
│  └── 財務諸表(B/S・P/L・C/F)
│    └── 【会社法上の計算書類・会計帳簿の規定】 ← 今ここ
├── 第2章 決算整理(第1問はここ)
├── 第3章 原価計算
├── 第4章 財務分析
└── 第5章 管理会計・企業価値評価

第1問の「貸倒引当金」が計算問題だったのに対し、第2問は会社法の条文に関する知識問題です。試験では計算問題と知識問題が混在して出題されます。この問題では「正確な数字と用語の知識」が問われています。

頻出度・難易度・試験戦略

★3
頻出度
数年に1度出題。計算問題の間に挟まれて出ることが多い
★3
難易度
計算はゼロ。条文の数字・用語を正確に記憶しているかが全て
1〜2
本番での目安時間。知っていれば素早く解ける問題
確実
得点戦略
覚えていれば必ず得点できる。知識を仕入れておく価値が高い
この問題の特徴
4つの選択肢がすべて異なる条文(432条1項・432条2項・435条2項・437条)に対応しています。つまり1問でこの論点の「全部入り」を確認できる良問です。知識の抜け漏れがあると、消去法が使えずに迷うことになります。

解法と回答

この問題は計算ではなく「消去法」で解きます。各選択肢を会社法の規定と一つずつ照らし合わせていきます。

選択肢ア — 誤り
「会計帳簿は、書面をもって作成しなければならない」

会社法432条1項は「書面又は電磁的記録をもって作成しなければならない」と定めています。パソコンやシステムで電子的に作成することも認められており、「書面のみ」という記述は誤りです。
選択肢イ — 誤り
「計算書類とは、貸借対照表、損益計算書および包括利益計算書である」

会社法435条2項が定める計算書類は、下の図のとおり4種類です。「包括利益計算書」は含まれません(詳しくは後の基礎知識セクションで解説します)。
選択肢ウ — 誤り
「会計帳簿の閉鎖の時から3年間、保存しなければならない」

会社法432条2項は「閉鎖の時から10年間」と定めています。3年は誤りです。数字の置き換えが典型的なひっかけになっています。
選択肢エ — 正解
「取締役会設置会社においては、定時株主総会の招集の通知に際して、取締役会で承認を受けた計算書類を株主に提供しなければならない」

会社法437条のとおりです。取締役会設置会社は、定時株主総会の招集通知に際し、取締役会の承認(会社法436条2項)を受けた計算書類を株主に提供する義務があります。
答え:エ
U

選択肢を一つひとつ確認していくと、「あ、ここが違う」という発見が積み重なっていきます。消去法は単純なようで、知識の穴をはっきり見せてくれる方法だと感じています。

速く正確に解くためのチェックポイント

本番で素早く判断するために、以下の3点を押さえておきましょう。

KEYWORDS 01
問題文で即座に疑う言葉
「書面をもって」「3年間」「包括利益計算書」
これらの言葉が選択肢に出たら、まず疑ってかかる。いずれもひっかけの定番フレーズです。
NUMBERS 02
覚えるべき数字
会計帳簿の保存期間 → 10年
計算書類の種類 → 4種類
この2つの数字を確実に記憶しておくことが、この論点の要です。
ONE AXIS 03
判断の一軸
「これは会計帳簿の話か、計算書類の話か」を先に整理する。2つの概念が混在すると判断が崩れます。概念を分けてから条文と照らし合わせる順番が効果的です。

選択肢の解剖と間違えた場合の立て直し

選択肢正誤誤りの箇所正しい内容この選択肢を選びやすい思考パターン
「書面をもって」書面又は電磁的記録「帳簿=紙」という古い先入観がある
「包括利益計算書」の混入、株主資本等変動計算書・個別注記表の欠落4種類参照「財務三表」の知識が「計算書類」の定義と混同している
「3年間」10年間他の法律の保存期間(税務7年等)と混同している
会社法437条のとおり正解

間違えた場合の立て直しルート

ア(書面のみ)を選んだ方へ
会社法432条1項「書面又は電磁的記録」を確認してください。電子帳簿保存法の整備も進んでいる時代背景とセットで覚えると忘れにくくなります。
イ(包括利益計算書)を選んだ方へ
「財務三表(B/S・P/L・C/F)」と「会社法の計算書類4種類」は別の概念です。この二つが混同しているサインです。後の基礎知識セクションで整理していますので、ぜひご確認ください。
ウ(3年)を選んだ方へ
会社法432条2項「10年」を確認してください。税務上の帳簿保存期間(法人税法:7年、青色申告:7年)と混同しやすい箇所です。「会社法の帳簿は10年」と切り分けて記憶することをおすすめします。

この問題に仕掛けられた罠

この問題で試験委員が狙っているのは「知っているつもりの記憶の精度」です。3つの罠を言語化しておきます。

罠 01
「財務三表」と「計算書類」の混同(選択肢イ)
財務・会計を学んでいると「財務三表(B/S・P/L・C/F)」という言葉が頭に入ります。しかし会社法が定める「計算書類」は別の概念で、4種類の書類です(後述)。さらに「包括利益計算書」は確かに存在する書類ですが、それは連結財務諸表の話であり、単体の計算書類には含まれません。

財務の知識が増えるほど、「それっぽい言葉」に引きずられやすくなります。
罠 02
「書面で当然でしょう」という直感(選択肢ア)
帳簿というと紙のイメージがあります。「書面をもって作成しなければならない」という文章は、一見もっともらしく見えます。しかし会社法はデジタル化に対応しており、電磁的記録での作成も認めています。条文を知らないと、直感に頼って誤答を選んでしまいます。
罠 03
数字の引力(選択肢ウ)
法律の保存期間には様々な数字が登場します。税務の帳簿(法人税法)は原則7年・欠損金がある場合は10年、消費税法も7年、会社法は10年——と根拠法によって年数が異なります。そういった知識がある方ほど「3年は短すぎる」と感じつつも「確かな数字がわからない」という状態になりやすいです。「会社法の会計帳簿は10年」という数字を正確に持っていることが差になります。(「法律別の保管期間比較」は後の「経営の現場」セクションで詳しく整理しています。)

計算書類と会計帳簿の基礎知識

まず「そもそもなぜこういったルールが必要なのか」から整理します。

もし「何を作るか」が各社バラバラだったら
銀行から融資を受けようとしたとき、「決算書を出してください」と言われます。あの場面で、A社はB/Sだけ、B社はP/Lだけ、C社は独自の書類を出してきたとしたら、銀行はどう比較・評価すればよいでしょうか。株主も同様です。「この会社の実態はどうなっているのか」を判断するためには、共通のフォーマットが必要です。

だから会社法は「株式会社はこれを作りなさい」という統一ルールを定めています。それが計算書類の規定です。

会社法が定める計算書類の4種類

会社法435条2項は、株式会社が作成しなければならない計算書類として以下の4つを定めています。それぞれに役割があります。

計算書類 ①
貸借対照表(B/S)
会社が「今どんな財産を持ち、どんな借金があるか」を示す書類。資産・負債・純資産のバランスを一枚で見せます。
計算書類 ②
損益計算書(P/L)
「その期間にどれだけ稼いで、どれだけ費用がかかったか」を示す書類。5段階の利益構造で経営の成果を表します。
計算書類 ③
株主資本等変動計算書
「純資産がなぜ増えたか・減ったか」の変動理由を示す書類。B/Sだけでは見えない純資産の動きを補完します。
計算書類 ④
個別注記表
「この数字はどんな前提・方針で計算したか」を注釈する書類。会計方針や重要な事項を文章で開示します。

「包括利益計算書」はどこで出てくるか

選択肢イに登場した「包括利益計算書」は、確かに存在する書類です。ただし、それは連結財務諸表で必要なものであり、単体の計算書類(会社法の4種類)には含まれません。

会社法の計算書類(単体)
貸借対照表(B/S)
損益計算書(P/L)
株主資本等変動計算書
個別注記表
連結財務諸表
連結貸借対照表
連結損益計算書
連結包括利益計算書 ← ここにある
連結株主資本等変動計算書
連結注記表

「どちらの文脈の話をしているか」を問題文で確認する習慣がとても大切です。

会社法の条文整理(4条文まとめ)

この問題で問われた4つの選択肢は、それぞれ別の条文に対応しています。まとめて整理しておきましょう。

条文内容正確な規定ひっかけのポイント
432条1項会計帳簿の作成形式書面又は電磁的記録「書面のみ」に書き換え(選択肢ア)
432条2項会計帳簿の保存期間閉鎖の時から10年間「3年間」に書き換え(選択肢ウ)
435条2項計算書類の種類B/S・P/L・株主資本等変動計算書・個別注記表の4種類包括利益計算書を混入・③④を削除(選択肢イ)
437条計算書類の株主への提供取締役会設置会社は招集通知時に取締役会承認済みの計算書類を提供正解(選択肢エ)
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4つの条文が4つの選択肢に対応している。この問題を解いていて、そのことに気づいたとき、なんとよくできた問題だと感じました。論点の全体像を一問で確認できる構造になっています。

経営の現場に置き換えてみると

条文の話が続きましたが、少し立ち止まって経営の現場と結びつけてみます。

株主への「計算書類の提供」は何のためにあるか
株主総会の前に「計算書類を株主に提供しなければならない」というルール(選択肢エ)は、なぜ存在するのでしょうか。

株主総会では、会社の経営状況を株主が確認し、承認するかどうかを決議します。ところが株主は経営の現場にいません。事前に計算書類が届かなければ、「実際はどうだったのか」を知らないまま総会に出席することになります。そこで会社法は「招集通知と一緒に計算書類を届けること」を義務づけています。

「取締役会で承認を受けた」という条件も重要です。経営陣(取締役会)が正式に確認・承認したものを株主に届けることで、情報の信頼性を担保する仕組みです。
「10年保存」は長すぎるか?
会計帳簿を10年間保存するのは、経営の観点からも合理的です。取引先との紛争、税務調査、M&Aの際のデューデリジェンス(企業調査)など、過去の記録が必要になる場面は多くあります。

「3年も経てば古い話だろう」と思いたいところですが、会社法は慎重な姿勢を取っています。経営者として帳簿の保存期間を正確に把握しておくことは、コンプライアンスの基本でもあります。
【混同注意】法律ごとに異なる書類保管期間の比較
「帳簿・領収書の保存期間」は根拠となる法律によって年数が異なります。試験でも実務でも混同しやすいため、一覧で整理しておきましょう。

根拠法 対象書類 保存期間 備考
会社法
(432条2項)
会計帳簿・計算書類10年閉鎖の時から起算
法人税法
(施行規則59条)
帳簿・領収書・請求書等の証憑類原則 7年事業年度終了の翌日から2か月を経過した日から起算
法人税法
(欠損金あり)
同上(欠損金の繰越控除を適用する場合)10年欠損金の繰越期間に合わせて延長
消費税法
(施行令50条)
課税仕入れに係る帳簿・請求書等7年インボイス(適格請求書)も同様に7年
【法改正ポイント:欠損金の繰越期間の変遷】
欠損金がある場合の保存期間は欠損金の繰越期間と連動して変わってきました。

改正時期 繰越期間(旧) 繰越期間(新) 書類保存期間
2012年度改正7年9年欠損金あり→9年保存
2018年度改正(現行)9年10年欠損金あり→10年保存
【電子帳簿保存法の改正(2024年1月〜完全義務化)】
2024年1月1日以降、法人が電子取引(メール・Web注文等)で受け取った請求書・領収書などは、紙に印刷して保存することが認められなくなり、電子データのまま保存することが義務となりました。
(旧:紙出力でも可 → 新:電子データ保存が必須)

保存期間そのものは法人税法・消費税法の規定(原則7年/欠損金あり10年)に準じます。電帳法はあくまで「保存方法」の規定であり、「保存期間」は変更されていない点に注意が必要です。

押さえておきたいポイント

  • 計算書類は4種類:B/S・P/L・株主資本等変動計算書・個別注記表(会社法435条2項)
  • 会計帳簿の作成形式:書面または電磁的記録(どちらでもよい)
  • 会計帳簿の保存期間:閉鎖の時から10年間
  • 取締役会設置会社は招集通知時に取締役会承認済み計算書類を株主へ提供する義務あり
  • 包括利益計算書は連結財務諸表に含まれるが、単体の計算書類(4種類)には含まれない

セットで学ぶと効率がよい関連論点

論点この問題との関係
連結財務諸表の構成計算書類(単体)と連結の違いを整理すると、包括利益計算書の位置づけがはっきりする
大会社の会計監査人一定規模以上の株式会社では外部の会計監査人が必要(会社法328条)。計算書類の信頼性担保の仕組み
事業報告計算書類と並んで株主への提供が義務づけられる書類(会社法437条)。セットで覚えると確実
財務諸表分析計算書類の内容を理解した上で、財務比率分析へ進むと知識が体系的につながる

1次試験から2次試験へ

この論点は1次知識として固めれば十分
会社法の計算書類に関する条文知識は、2次試験で直接「何年保存か」と問われることはありません。この論点は1次試験の知識として確実に押さえることを目標にしてください。

ただし、2次試験で事例企業の財務諸表を読む際、「これは連結か単体か」「どの書類を見ているか」という視点が自然に使えるようになります。土台として持っておくことで、2次の財務分析がスムーズになります。

最後に

「計算書類4種類」はすらすら言えますか?
B/SとP/Lはすぐ出てくる。でも「株主資本等変動計算書」と「個別注記表」が出てこないとしたら、選択肢イのような引っかけに足元をすくわれます。

4種類の名前と役割をセットで覚えること、「包括利益計算書は連結財務諸表の話」という境界線を持っておくこと。この2点がこの論点の核心だと感じています。条文の数字(10年・書面または電磁的記録)と合わせて、一つひとつ確認してみてください。
U のメモ
この問題を解いて改めて感じたのは、「知っているつもり」がいちばん危ない、ということです。財務三表と計算書類を混同していたのは私自身でした。「B/SとP/Lは計算書類に入っているのに、なぜC/Fは入っていないのか?」と疑問に思って調べたことで、会社法の計算書類の定義をようやく正確に整理できました。疑問は大切な入口だと思っています。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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