事例Ⅳ 頻出計算パターン — NPV・CVP・経営分析を一本で整理 | 中小企業診断士2次試験 事例Ⅳ

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事例Ⅳの過去問を解いていて、「この問題、何を計算すればいいんだろう…」と設問文を読み返したことがあります。「NPVで答えよ」とは書かれていない。状況を読んで、自分で計算の種類を選ばなければならないんですね。今回はNPV・CVP・経営分析の3パターンを、コーヒーショップの例を通して一緒に整理してみます。

事例Ⅳは「計算が苦手だから…」と敬遠されがちですが、出題の大半を占めるのは経営分析・CVP分析・NPVの3パターンです。この3つを押さえることで、設問文から「どの計算を使うか」を判断できるようになります。

経営分析
財務諸表を読み解き
企業の強み・弱みを数字で示す
CVP分析
何個売れば黒字か
損益分岐点を計算する
NPV分析
将来の収益を現在価値に換算
投資の採否を判断する
目次

経営分析 — 財務諸表を3つの視点で読む

経営分析は、与件文にある財務諸表から企業の現状を数値で表す設問です。指標を計算したうえで、数字と言葉をセットで答えることが求められます。「高い方がいい指標」「低い方がいい指標」を整理しておきましょう。

視点指標名計算式望ましい方向
収益性売上高総利益率売上総利益 ÷ 売上高 × 100高い方が良い
収益性売上高営業利益率営業利益 ÷ 売上高 × 100高い方が良い
収益性ROA(総資産利益率)営業利益 ÷ 総資産 × 100高い方が良い
安全性流動比率流動資産 ÷ 流動負債 × 100高い方が良い(目安200%以上)
安全性固定比率固定資産 ÷ 自己資本 × 100低い方が良い(100%以下が理想)
安全性自己資本比率自己資本 ÷ 総資産 × 100高い方が良い
効率性売上高債権回転率売上高 ÷ 売上債権高い方が良い
効率性棚卸資産回転率売上高 ÷ 棚卸資産高い方が良い
効率性有形固定資産回転率売上高 ÷ 有形固定資産高い方が良い
試験でよく問われるパターン:「同業他社と比較して、A社の課題を経営分析指標を用いて説明せよ」という形式が多く見られます。「流動比率が○○%と低く、短期的な支払い能力に課題がある」のように数字と言葉をセットで答えることが求められます。

CVP分析 — 何個売れば黒字になるか

CVP(Cost-Volume-Profit)分析は、売上・費用・利益の関係を整理して、黒字になる最低ラインを計算する手法です。「売上がいくら下がっても赤字にならないか」「目標利益を達成するには何個売ればよいか」といった設問に対応します。

変動費:売上に比例して増える費用(材料費・仕入原価など)
固定費:売上に関係なくかかる費用(家賃・人件費・減価償却費など)
限界利益:売上高 − 変動費(固定費を回収する原資)
限界利益率:限界利益 ÷ 売上高(= 1 − 変動費率)

損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 × 100(低いほど安全)
安全余裕率 = 100 − 損益分岐点比率
01
費用を変動費と固定費に分ける
与件文・財務データから「売上に連動する費用(変動費)」と「固定的にかかる費用(固定費)」を仕分けます。変動費率が与えられている場合はそのまま使います。
02
限界利益率を求める
限界利益率 = 1 − 変動費率。変動費率が60%なら限界利益率は40%です。この40%が固定費の回収に充てられます。
03
損益分岐点売上高を計算する
損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率。この金額を売り上げれば利益がゼロ(これ以上で黒字)になります。
04
設問に合わせて応用する
目標利益を達成する売上高:(固定費 + 目標利益)÷ 限界利益率。損益分岐点比率:損益分岐点売上高 ÷ 実際売上高 × 100。安全余裕率:100 − 損益分岐点比率。

NPV(正味現在価値)— 投資の採否を判断する

NPV(Net Present Value)は、将来得られるお金を「今の価値」に換算して、初期投資額と比べる手法です。「100万円の設備投資は5年間で元が取れるか」を判断する際に使います。

理解の出発点はこの発想です。「来年の100万円は今の100万円より価値が低い」。今の100万円を投資すれば来年には増えているはず——その分を差し引いて考えるのが割引計算の核心です。

現在価値(PV) = 将来キャッシュフロー ÷ (1 + 割引率)ⁿ (n = 年数)
CF(キャッシュフロー) = 税引後利益 + 減価償却費
NPV = 各年のPV合計 − 初期投資額

NPV > 0 → 投資すべき(初期投資以上の価値を生む)
NPV ≦ 0 → 投資しない方が良い
01
各年のキャッシュフロー(CF)を確認する
設問から「税引後利益」「減価償却費」を読み取ります。CF = 税引後利益 + 減価償却費。減価償却費は現金流出を伴わないため、利益に加え直す点がポイントです。
02
各年のCFを現在価値に割り引く
割引率10%なら、1年後のCFは ÷1.1、2年後は ÷1.21(=1.1²)。問題によっては「現価係数表」が与えられるので、係数を掛けるだけです(例:5年後・10%の係数 = 0.621)。
03
残存価値・売却価値も現在価値に換算する
期末に設備を売却する場合は、売却価値も割り引いてPVに加えます。残存価値がゼロの場合はこのステップを省略します。
04
NPV = PV合計 − 初期投資額で判断する
NPVがプラスなら「投資額以上のリターンが得られる」と判断します。複数の投資案を比較する場合は、NPVが大きい方を選択します。

コーヒーショップ開業で3パターンを体感する

あなたがコーヒーショップの開業を検討しているとします。3つの計算パターンが、それぞれどの場面で役立つか見てみましょう。

経営分析
出店候補地の近くにある既存カフェの財務諸表を読む
売上高営業利益率が高ければ「収益力がある」、流動比率が低ければ「資金繰りに不安がある」と読み解けます。同業他社平均と照らし合わせて強みと弱みを見つけます。
CVP分析
1日何杯のコーヒーを売れば、家賃・人件費を回収できるか
月の固定費(家賃・人件費)が30万円、1杯の限界利益が300円なら、損益分岐点は1,000杯/月。1日約33杯売れば黒字です。「もし家賃が上がったら?」という感度分析にも使えます。
NPV分析
100万円のエスプレッソマシンは5年間で元が取れるか
毎年20万円のCF(税引後利益+減価償却費)が見込めるとして、割引率10%で5年分のPVを計算します。PV合計が100万円を上回ればNPV>0で「投資OK」の判断になります。
設問文からパターンを見抜くコツ:「財務諸表の特徴を述べよ」→ 経営分析。「目標利益を達成する売上高は?」→ CVP。「この投資案の採否を判断せよ」→ NPV。キーワードと計算パターンをセットで覚えておくと、本番でも迷いにくくなります。
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最初は3つのパターンがバラバラに見えましたが、「現状分析→黒字ライン→投資判断」という流れで整理すると、それぞれの役割がはっきりしてきました。過去問で手を動かしながら計算式に慣れていけると思います。

まとめ

  • 経営分析は「収益性・安全性・効率性」の3視点で財務諸表を読む
  • CVP分析の核心は「損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 限界利益率」
  • NPVは「各年CFを割り引いた合計 − 初期投資額」でプラスなら投資OK
  • CFの計算では「税引後利益 + 減価償却費」の組み合わせを忘れずに
  • 設問文のキーワードで計算パターンを見抜く練習を積む

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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