U「ガソリン価格が上がると、なぜ消費量が減るのか」——当たり前のようですが、価格変化が消費に与える影響は2つの経路に分解できます。「相対価格が変わったから代替品に乗り換える(代替効果)」と「実質的な購買力が下がったから全体的に節約する(所得効果)」。この2つを理解するとギッフェン財という面白い例外も腑に落ちます。
この記事でわかること
代替効果・所得効果の定義と違い / スルツキー分解の考え方 / 正常財・下級財・ギッフェン財の分類 / 需要法則の例外条件 / 試験頻出の判断パターン
代替効果・所得効果の定義と違い / スルツキー分解の考え方 / 正常財・下級財・ギッフェン財の分類 / 需要法則の例外条件 / 試験頻出の判断パターン
目次
2つの効果に分解する
X財の価格が上がったとき、消費量の変化は2つの要因に分解できます(スルツキー分解)。
代替効果(Substitution Effect)
実質所得(効用水準)を一定に保ったまま、相対価格の変化だけによる消費変化。価格が上がった財→相対的に割高になる→代替品に乗り換える。
→ 常に価格と逆方向(負の値)。需要法則が成立。
→ 常に価格と逆方向(負の値)。需要法則が成立。
所得効果(Income Effect)
相対価格を一定に保ったまま、実質所得の変化だけによる消費変化。価格が上がる→実質的な購買力が低下→全体的な消費を調整。
→ 正常財か下級財かで符号が変わる。
→ 正常財か下級財かで符号が変わる。
総効果 = 代替効果 + 所得効果
X財の価格↑ のとき:
代替効果:X財需要量↓(常に負)
所得効果:正常財なら↓、下級財なら↑
総効果:通常は↓(需要法則成立)、ただし下級財で所得効果が代替効果を上回ると↑(ギッフェン財)
X財の価格↑ のとき:
代替効果:X財需要量↓(常に負)
所得効果:正常財なら↓、下級財なら↑
総効果:通常は↓(需要法則成立)、ただし下級財で所得効果が代替効果を上回ると↑(ギッフェン財)
財の分類:正常財・下級財・ギッフェン財
財の種類
代替効果
所得効果
総効果(価格↑)
正常財(上級財)
需要量↓(負)
需要量↓(負)
所得↓→需要↓
所得↓→需要↓
需要量↓
(需要法則成立)
(需要法則成立)
下級財(劣等財)
需要量↓(負)
需要量↑(正)
所得↓→需要↑
所得↓→需要↑
通常需要量↓
(代替効果が大きい)
(代替効果が大きい)
ギッフェン財
需要量↓(負)
需要量↑(正・大)
所得↓→強く需要↑
所得↓→強く需要↑
需要量↑
(需要法則の例外)
(需要法則の例外)
ギッフェン財の具体例(仮説的):価格が上がると需要量も増える財。極端に貧しい家庭にとっての主食(イモや米)が例として挙げられます。「イモが値上がり→食費を切り詰めるためにより安い主食のイモをさらに買う(肉を諦める)」。
ギッフェン財の条件:①下級財であること(所得効果が正)②所得効果の絶対値が代替効果の絶対値より大きいこと
ギッフェン財の条件:①下級財であること(所得効果が正)②所得効果の絶対値が代替効果の絶対値より大きいこと



代替効果は「常に需要法則が成立する(価格↑→需要↓)」のに、所得効果は財の種類によって違う——この非対称性が最初は混乱しましたが、「相対価格の変化だけ見るか、実質所得の変化だけ見るか」を別々に考えると整理できました。
スルツキー分解の手順(グラフで確認)
01
初期均衡点を確認する
元の予算線と無差別曲線の接点A。X財・Y財の消費量を確認。
02
代替効果を測る(補償予算線を引く)
価格変化後の傾き(相対価格)を持ちつつ、元の無差別曲線に接する補償予算線を描く。この接点Bまでの変化が代替効果。A→B が代替効果による消費変化。
03
所得効果を測る(予算線を平行シフト)
補償予算線から実際の新しい予算線に移動。B→C が所得効果(実質所得の変化分)。正常財なら所得↓でX財需要↓(BからC、Xがさらに減る)。
04
総効果はA→C
代替効果(A→B)+所得効果(B→C)= 総効果(A→C)。正常財なら両効果が同方向でX財消費が大きく減る。
試験対策のポイント
Uのメモ
- 代替効果:常に負(価格↑→需要↓)。スルツキー補償予算線を元の無差別曲線に接させる
- 所得効果:正常財は負(価格↑→実質所得↓→需要↓)、下級財は正(実質所得↓→逆需要↑)
- ギッフェン財:下級財の中で所得効果(正・大)が代替効果(負)を上回る→需要法則の例外
- ヴェブレン財(顕示的消費):価格↑→見栄で需要↑(ただしこれは所得効果でなく「誇示」の問題)
- 試験でよく出る:「財の種類を判別せよ」→代替効果と所得効果の符号を確認
| 財の種類 | 所得↑ → 需要 | 価格↑ → 需要(通常) | 例 |
|---|---|---|---|
| 正常財(上級財) | 需要↑ | 需要↓(法則成立) | 高級レストラン・海外旅行 |
| 下級財(劣等財) | 需要↓ | 通常需要↓(法則成立) | 即席麺・格安品 |
| ギッフェン財 | 需要↓ | 需要↑(法則の例外!) | 極貧層の主食(仮説的) |
まとめ
- 総効果 = 代替効果(常に負)+所得効果(財の種類で符号が変わる)
- スルツキー補償予算線:新しい相対価格の傾き × 元の効用水準(無差別曲線)との接点が代替効果の終点
- 正常財:代替効果も所得効果も負→需要法則成立(強く成立)
- ギッフェン財:下級財で所得効果(正)が代替効果(負)を上回る→需要法則の唯一の例外



「ギッフェン財は本当に存在するのか」という議論は経済学者の間でも続いているそうです。理論的には成立する条件が厳しく、現実で観測するのはほぼ難しいとされています。でも試験では「需要法則の例外はギッフェン財」という知識が問われますので、条件を整理しておくと安心です。
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