ローレンツ曲線とジニ係数 | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

U

「ジニ係数が高い国は格差が大きい」と聞いたことがあっても、その数字がどうやって計算されるのか気になっていました。ローレンツ曲線という図を知ってから、格差の「大きさ」を面積で表せると知り、なるほどと思いました。

「格差が大きい」「格差が縮小した」という話はニュースでよく見かけます。でも「どのくらい大きいのか」を数値で示すには、何らかの指標が必要です。経済学ではローレンツ曲線ジニ係数がその役割を担っています。

目次

ローレンツ曲線とは何か

ローレンツ曲線は、所得の分布を視覚化するグラフです。横軸に「所得の低い人から順に並べた累積人口比率(%)」、縦軸に「その人々の累積所得比率(%)」を取ります。

例えば「所得が低い下位50%の人々が、全体の所得の何%を得ているか」という問いに答えるグラフです。

累積人口比率(%) 累積所得比率(%) ローレンツ曲線 完全平等線 0 100 100 面積A (格差の大きさ)

完全平等線(対角線)は、全員が同じ所得を得ている状態を示します。例えば人口の30%が所得全体の30%を得ている、というように、常に人口比率=所得比率になります。

実際の社会では、低所得者が多い分だけローレンツ曲線は対角線より下方に膨らみます。格差が大きいほど曲線は対角線から離れ、弓なり(下方)が強くなります。

ジニ係数:格差を0〜1の数値に変換する

ジニ係数の定義
ジニ係数 = 面積A ÷ (面積A + 面積B)= 面積A ÷ 0.5 = 2 × 面積A
面積Aは「完全平等線とローレンツ曲線の間の面積」、面積Bは「ローレンツ曲線より下の面積」です。A+B(三角形全体)の面積は常に0.5なので、ジニ係数は0〜1の値を取ります。
0
完全平等
全員が同じ所得。ローレンツ曲線=対角線
1
完全不平等
1人が全所得を独占。曲線は最も下方へ
0.3〜0.5
実際の範囲
先進国では0.3前後、格差が大きい国は0.5超

クラスの成績分布で考えてみると

30人のクラスで国語のテストをしたとします。

  • ケースA(平等):全員が60点。ジニ係数≒0。誰が何%を占めるかを計算すると常に人口比率=得点比率になる
  • ケースB(格差あり):上位5人が90点、残り25人が50点。上位5人(人口の17%)が全体の得点の約23%を占める。ローレンツ曲線は下方にたわむ
  • ケースC(極端な格差):1人が満点100点、残り29人が5点ずつ。1人が全体の約41%を占める。曲線はさらに大きくたわむ

この「たわみの大きさ」をひとつの数値に集約したものがジニ係数です。

日本のジニ係数と国際比較

国・地域 ジニ係数(目安) 特徴
北欧(デンマーク等)0.28〜0.29再分配政策が充実。格差が小さい
日本0.33〜0.38再分配前後で差あり。高齢化が影響
アメリカ0.39〜0.41市場所得格差が大きい
南アフリカ・ブラジル0.50以上歴史的・構造的な格差
再分配前・後のジニ係数
日本では「当初所得(市場所得)のジニ係数」と「再分配後所得のジニ係数」の差が大きいことが知られています。税・社会保障による再分配が機能している一方、当初所得の格差自体は高齢化(年金等の格差拡大)も影響し増加傾向にあります。診断士試験では「再分配後のジニ係数」が論点になることがあります。
U

ジニ係数は0に近いほど平等、1に近いほど不平等。シンプルな指標ですが「どの所得(市場所得か再分配後か)で測るか」によって値が変わる点が試験でも問われるポイントです。

ローレンツ曲線の読み方:試験に出るポイント

対角線(完全平等線)に近い = 格差小
ローレンツ曲線が対角線に近いほど、ジニ係数は0に近く、所得分配が平等に近い状態を意味します。再分配政策が効いている場合や、経済発展の初期段階で現れることがあります。
対角線から遠い(下方に膨らむ)= 格差大
曲線が下方に大きく膨らむほど格差が大きく、ジニ係数は1に近づきます。低所得層が多数いるのに彼らの所得シェアが非常に小さいことを示しています。
状況 ローレンツ曲線 ジニ係数
再分配政策の強化対角線に近づく(上方シフト)低下(格差縮小)
高所得者のみ所得増加対角線から離れる(下方シフト)上昇(格差拡大)
低所得者のみ所得増加対角線に近づく低下
全員が均等に所得増加変化なし変化なし

過去問で確認する

ローレンツ曲線・ジニ係数 — 典型問題① 1次試験 経済学
ジニ係数とローレンツ曲線に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア ジニ係数が1に近いほど所得分配が平等であることを示す。
  • イ ローレンツ曲線が対角線(完全平等線)に近づくほど、格差が大きくなる。
  • ウ ジニ係数は、ローレンツ曲線と完全平等線の間の面積を三角形全体の面積で割った値である。
  • エ 所得の再分配によって格差が縮小した場合、ローレンツ曲線は下方にシフトする。
正解:ウ
ジニ係数は「面積A÷(A+B)」で求まり、A+Bは三角形全体(面積0.5)なので、ウが正確な定義です。
ア:ジニ係数が0に近いほど平等(1に近いほど不平等)。
イ:対角線に近づくほど格差が小さくなります(逆)。
エ:格差が縮小するとローレンツ曲線は上方(対角線に近い方向)にシフトします。
ローレンツ曲線のシフト — 典型問題② 1次試験 経済学
ある国の所得分配の状況を表すローレンツ曲線について、政府が累進課税を強化して低所得者への移転支出を増やした場合、ローレンツ曲線はどのように変化するか。最も適切なものを選べ。
  • ア ローレンツ曲線は下方にシフトし、ジニ係数は上昇する。
  • イ ローレンツ曲線は対角線(完全平等線)方向に上方シフトし、ジニ係数は低下する。
  • ウ ローレンツ曲線は変化しないが、ジニ係数は低下する。
  • エ ローレンツ曲線は対角線に重なり、ジニ係数はゼロになる。
正解:イ
累進課税強化+低所得者への移転支出は再分配政策です。これにより格差が縮小し、ローレンツ曲線は完全平等線(対角線)に近づく方向(上方)にシフト、ジニ係数は低下します。エのようにゼロになることはありません。

まとめ

  • ローレンツ曲線:横軸=累積人口比率、縦軸=累積所得比率。格差が大きいほど対角線から離れる
  • 完全平等線(対角線):全員が同じ所得の場合に一致する
  • ジニ係数 = 面積A ÷(A+B)= 2×面積A(0〜1の値)
  • ジニ係数0=完全平等、ジニ係数1=完全不平等
  • 再分配強化→ローレンツ曲線が上方シフト→ジニ係数低下(格差縮小)
  • 日本のジニ係数は再分配前後で差が大きく、高齢化の影響を受けている
Uのメモ
「ジニ係数が上がると格差が大きくなる」という方向性さえ押さえれば、試験問題は解けることが多いです。ローレンツ曲線のシフト方向(上方=格差縮小、下方=格差拡大)は図のイメージとセットで記憶しておきたいですね。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次