U独占の問題を初めて解いたとき、「MR=MCで生産量を決めて、そこから需要曲線を見上げて価格を読む」という2ステップの手順が混乱のもとでした。「MCで量を決め、Dで価格を決める」という順番を図で追いながら確認すると、するっと整理できました。価格差別の3種類も合わせて整理してみましょう。
独占(Monopoly)とは、ある市場において1社だけが供給者として存在する状態です。競合他社がいないため、独占企業は価格支配力(プライス・メーカー)を持ちます。完全競争では企業は市場価格をそのまま受け取る(プライス・テイカー)ため、この点が根本的に異なります。
独占企業は生産量を自ら決めることで価格を操作できますが、経済学的には社会全体の厚生(余剰)を最大化しない点で問題とされます。この非効率性の大きさを「死荷重(死重的損失)」で測ります。
独占の利潤最大化条件(MR=MC) / 完全競争との比較と死荷重 / 価格差別(1級・2級・3級) / 自然独占と規制
独占の利潤最大化:MR=MCの仕組み
独占企業が直面する需要曲線は右下がりです。1単位多く売ろうとすると価格を下げなければならないため、限界収入(MR)は需要曲線(価格)より低くなります(MR < P)。
線形の需要曲線(P = a – bQ)の場合、MR = a – 2bQ となり、MR曲線は需要曲線の2倍の傾きで急傾斜になります(縦軸切片は同じ)。
独占均衡:MR=MCでQm・Pmが決まる。完全競争(Qc・Pc)より過少生産・高価格で死荷重が発生
独 占:P > MR = MC(価格>限界費用、価格支配者)
この「P > MC」のギャップが独占の非効率性の源泉です。Pm > Pcかつ Qm < Qcとなるため、消費者余剰の一部が独占利潤に移転し、残りが死荷重として消失します。
価格差別:1級・2級・3級の整理
独占企業は支払意欲の異なる消費者グループから、それぞれ異なる価格を設定することで利潤を拡大できます。これを価格差別(Price Discrimination)といいます。
消費者余剰がゼロになり、すべて独占利潤へ。死荷重はゼロ(生産量は完全競争と同じQcに)。
例:交渉で個別に価格を決める中古車ディーラー
最も実際に多く見られる価格差別。弾力性の低いグループに高い価格を設定するのが最適戦略。
例:学生割引・シニア割引・国際的な価格設定
| 価格差別の種類 | 価格の設定方法 | 消費者余剰 | 死荷重 |
|---|---|---|---|
| 第1級(完全価格差別) | 消費者ごとに留保価格 | ゼロ(全額独占利潤へ) | ゼロ |
| 第2級(数量割引等) | 購入量に応じた段階価格 | 一部残る | 縮小 |
| 第3級(グループ別) | 需要弾力性の違いで差別化 | グループ内で一部残る | 一部発生 |
条件:①グループ間で転売不可 ②グループ識別が可能 ③各グループの弾力性に差がある
自然独占と規制政策
電力・鉄道・水道のように、平均費用(AC)が市場全体の需要量まで逓減し続ける産業では、1社が独占的に供給する方が効率的です。これを自然独占(Natural Monopoly)といいます。
| 規制の種類 | 価格設定 | 結果 |
|---|---|---|
| 限界費用価格規制 | P = MC(社会的最適) | 生産量最大・総余剰最大。ただし固定費が回収できず企業は赤字→補助金が必要 |
| 平均費用価格規制 | P = AC(収支均衡) | 企業は赤字にならない。限界費用価格より過少生産。実際の規制に多い |
| 規制なし(独占放置) | P = MR + MC(MR=MC) | 最も過少生産・高価格。死荷重最大 |
近年は電力・通信などで「自由化」が進みましたが、設備部門(送電線・電話回線)については依然として自然独占が残るため、アクセス料金の規制が行われています。



価格差別の条件「転売不可・グループ識別・弾力性の差」を覚えるとき、映画の学生割引がすべてを満たしているのが印象的でした。学生証を見せれば別の人への転売は難しく、学生と社会人という明確なグループがあり、それぞれ映画に払える金額が違う。この身近な例で3条件を確認できます。
コンビニと映画館で考える独占・価格差別
近所にコンビニが1軒しかない深夜の場面を思い浮かべてみてください。他に選択肢がなければ、多少割高でも買わざるを得ません。これが独占の「価格支配力」です。もし同じ通りに24時間スーパーが開店したら、コンビニは値引きを迫られます。競争があると価格は消費者に有利に動くことが直感的にわかります。
一方で価格差別の例として、映画館の学生割引を考えてみましょう。映画館は「学生は収入が少ないので、高い料金だと来ない(価格弾力性が高い)」「社会人は多少高くても来る(価格弾力性が低い)」という違いを利用して価格を分けています。学生証の提示(グループ識別)があれば転売も難しく、映画館は利潤を最大化できます。
試験では「独占の場合、完全競争と比べてどう変わるか」という比較の問いが多く出ます。
独占と完全競争の比較整理
| 項目 | 完全競争 | 独占 |
|---|---|---|
| 企業数 | 多数(価格受容者) | 1社(価格設定者) |
| 利潤最大化条件 | P = MR = MC | MR = MC(P > MR) |
| 価格 | Pc(均衡価格) | Pm(>Pc) |
| 生産量 | Qc(最大) | Qm(<Qc) |
| 消費者余剰 | 最大 | Pc→Pm分が独占利潤へ移転 |
| 死荷重 | ゼロ | 発生(社会的非効率) |
| 長期利潤 | ゼロ(超過利潤は消滅) | 継続(参入障壁により) |
過去問で確認してみましょう
- ア 独占企業は限界収入(MR)と価格(P)が等しい点で生産量を決定する。
- イ 独占均衡における生産量は、完全競争均衡の生産量と等しくなる。
- ウ 独占企業はMR=MCとなる生産量を選び、その生産量に対応する需要曲線上の価格を設定する。
- エ 独占均衡では死荷重(厚生損失)が発生しないため、完全競争と社会的総余剰は等しい。
独占企業の利潤最大化条件はMR = MCです。この条件を満たす生産量Qmを求め、そのQmに対応する需要曲線(AR)上の点が独占価格Pmとなります(Pm > MR = MC)。
ア:MR = Pは完全競争(P = AR = MR)の条件。独占ではMR < P。
イ:独占はQm < Qc(完全競争より過少生産)。
エ:独占では死荷重が必ず発生し、社会的総余剰は完全競争より小さい(第1級価格差別は例外)。
- ア すべての消費者に同一の価格を設定するため、消費者余剰は最大化される。
- イ 需要の価格弾力性が高いグループに対して、より高い価格を設定する。
- ウ 需要の価格弾力性が低いグループに対して、より高い価格を設定する。
- エ 消費者全員から留保価格を徴収するため、死荷重はゼロになる。
第3級価格差別では、需要の価格弾力性が低いグループ(価格が上がっても需要がそれほど減らない)に高い価格を設定し、弾力性が高いグループ(価格が少し上がると需要が大きく減る)には低い価格を設定します。
ア:第3級は異なるグループに異なる価格を設定する。消費者余剰は分配されるが最大化はされない。
イ:弾力性が高いグループに「低い」価格を設定する(逆になっている)。
エ:消費者全員から留保価格を徴収するのは第1級価格差別の説明。
まとめ
- 独占の利潤最大化:MR = MC、そのQmに対応するD(需要曲線)上の価格Pmを設定
- 独占:P > MR = MC → Pm > Pc、Qm < Qc → 死荷重発生・消費者余剰の一部が独占利潤へ
- 第1級価格差別:消費者ごとに留保価格 → 消費者余剰ゼロ・死荷重ゼロ
- 第3級価格差別:弾力性の低いグループに高い価格、高いグループに低い価格
- 自然独占規制:限界費用価格(社会的最適・赤字)vs 平均費用価格(収支均衡・過少生産)









