スタグフレーション・供給ショック | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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過去問を解いていて、「スタグフレーション」という言葉に出会いました。スタグネーション(停滞)とインフレーションの合成語なのですが、なぜ不況なのに物価が上がるのか、最初はどうも腑に落ちなくて。需要不足なら物価は下がるはずでは?と思っていたのですが、原因が「供給側」にあると知って、ようやく整理できました。

目次

スタグフレーションとは何か——不況なのに物価が上がる謎

「景気が悪ければ物価は下がる」——これは多くの方が直感的に感じることです。需要が減れば価格も下がる、確かに需要サイドだけを見ればそうです。
ところが1970年代の石油危機(オイルショック)では、世界中で「不況なのに物価が上昇する」という異例の事態が起こりました。これがスタグフレーション(stagflation)です。

KEYWORD
スタグフレーション= スタグネーション(stagnation:経済停滞)+ インフレーション(inflation:物価上昇)
失業率上昇(不況)と物価上昇(インフレ)が同時に起こる状態。

なぜ起こるのか——原因は「供給ショック」

スタグフレーションの原因は需要側ではなく供給側にあります。これが「需要不足なのに物価が上がる」という逆説の答えです。

供給ショック(負の供給ショック)とは
原油価格の急騰・大規模な自然災害・資源の突然の枯渇など、企業の生産コストを急激に押し上げる出来事のこと。

たとえるなら、パン屋の話で考えてみます。お客さんの数(需要)は変わらないのに、小麦粉の価格が3倍になったとしたら——パン屋はどうするでしょうか。パンの値段を上げるしかありません。でも値段を上げれば買う人が減り、売上は落ちます。生産量は減り(停滞)、でも価格は上がる(インフレ)——これがスタグフレーションの本質です。

AS-AD分析で整理すると:

01
負の供給ショック(例:石油価格の急騰)
企業の生産コストが上昇。同じ価格水準では以前より少量しか供給できなくなる。
02
AS曲線が左上方にシフト
総供給曲線(AS)が左上方向へ移動。これが全てのスタグフレーション現象の核心。
03
均衡点の移動:物価上昇+GDP低下
AS-AD の交点が左上へ。物価水準(P)が上昇し、実質GDP(Y)が低下する。
04
失業増加+インフレ同時発生
GDPが下がれば企業は雇用を削減→失業率上昇。しかし物価は上昇している。スタグフレーション完成。

政策のジレンマ——どちらを選んでも痛みがある

スタグフレーションが厄介な理由は、通常の需要管理政策が効かないことにあります。

インフレ対策を優先すると…
金融引き締め(利上げ)・財政緊縮を実施
物価上昇は抑制できる
しかし需要がさらに冷え込み、景気悪化・失業増加が深刻になる
景気対策を優先すると…
金融緩和・財政拡大を実施
GDPは回復できる
しかし物価上昇がさらに加速し、インフレが悪化する

いずれの政策も「一方の問題を解決しようとすると他方が悪化する」というトレードオフから逃げられません。これがスタグフレーションの最大の難しさです。

フィリップス曲線との関係

通常の(短期)フィリップス曲線は「インフレ率と失業率のトレードオフ」を表しますが、スタグフレーションでは曲線そのものが右上方向にシフトします。インフレ率も失業率も同時に悪化する点が曲線の右上側に現れるため、「右上シフト」と表現されます。

1970年代オイルショック——歴史上最も有名な実例

4倍
原油価格上昇(1973)
第1次オイルショック。中東戦争をきっかけにOAPECが原油輸出を制限
2桁
インフレ率(先進国)
日本では1974年に消費者物価指数が前年比約23%上昇
2度
繰り返し発生
1973年(第1次)・1979年(第2次)と2度の大規模なオイルショックが起きた

このオイルショックの経験は、「ケインズ経済学の需要管理政策だけでは対処できない問題がある」という認識を世界的に広め、その後のサプライサイド経済学(供給サイド政策)台頭の一因になりました。

スタグフレーションへの処方箋——供給サイド政策

需要管理政策がジレンマに陥る中で注目されたのが、AS曲線を右下方向へシフトさせる供給サイド政策です。

政策の方向具体的な手段効果
技術革新の促進研究開発への減税・補助、産学連携支援生産性向上→コスト低下→AS右シフト
労働市場の柔軟化職業訓練・マッチング支援、規制緩和構造的失業の解消→自然失業率低下
エネルギー政策代替エネルギー開発、省エネ技術への投資石油依存度低下→供給ショック耐性強化
規制改革参入規制の撤廃、市場競争の促進非効率な企業退場→資源の最適配分
減税(サプライサイド)法人税減税、所得税の限界税率引き下げ企業・個人の生産意欲向上(※効果は議論あり)
ポイント:供給サイド政策は即効性がなく、効果が出るまでに時間がかかります。短期的な景気対策には向かず、中長期的な経済構造の改善を目指す政策です。試験では「AS曲線を右方シフトさせる政策」という切り口で問われます。

需要ショックと供給ショックの違いを整理する

試験では「需要ショック」と「供給ショック」の区別が問われます。AS-ADモデルでの動きを対比して確認してみます。

ショックの種類シフトする曲線物価(P)GDP(Y)代表的な例
正の需要ショックAD → 右シフト上昇増加財政拡大・金融緩和
負の需要ショックAD → 左シフト低下減少財政緊縮・金融引き締め
正の供給ショックAS → 右シフト低下増加技術革新・原油価格下落
負の供給ショック ⭐AS → 左シフト上昇減少オイルショック・大規模災害

⭐印の「負の供給ショック」がスタグフレーションの原因です。P上昇とY減少が同時に起こる唯一のパターンであることが確認できます。

過去問で確認してみましょう

中小企業診断士 1次試験 経済学・経済政策 スタグフレーション
石油などのエネルギー価格が大幅に上昇したとき、AS-ADモデルにおける均衡の変化として、最も適切なものはどれか。
  • ア AD曲線が右シフトし、物価が上昇してGDPが増加する。
  • ア AD曲線が左シフトし、物価が低下してGDPが減少する。
  • ウ AS曲線が左シフトし、物価が上昇してGDPが減少する。
  • エ AS曲線が右シフトし、物価が低下してGDPが増加する。
解説
エネルギー価格の上昇は企業の生産コストを高め、同じ価格水準でより少量しか供給できなくなるため、AS曲線(総供給曲線)が左上方向へシフトします。その結果、物価水準(P)は上昇し、実質GDP(Y)は減少します。これがスタグフレーションです。AD曲線(総需要曲線)は需要側の要因(財政政策・金融政策など)によってシフトするため、今回の場合は動かないことに注意してください。
中小企業診断士 1次試験 経済学・経済政策 供給サイド政策
スタグフレーション下において、物価上昇と景気後退を同時に改善するために有効な政策として、最も適切なものはどれか。
  • ア 金融緩和政策を実施して総需要を拡大する。
  • ア 財政緊縮政策を実施して物価上昇を抑制する。
  • ウ 公共投資を拡大して有効需要を創出する。
  • エ 技術革新の促進や規制緩和によって総供給を拡大させる。
解説
スタグフレーション下では、需要管理政策(ア・イ・ウ)はいずれもジレンマに陥ります。金融緩和・公共投資(ア・ウ)はGDPを回復させますがインフレをさらに悪化させ、財政緊縮(イ)は物価を抑えますが景気をさらに悪化させます。
正解はエ:供給サイド政策。技術革新・規制緩和などによってAS曲線を右方シフトさせることで、物価を下げながら同時にGDPを回復させることができます。これが唯一「両方同時に改善できる」処方箋です。

Uのまとめメモ

  • スタグフレーション=「停滞+インフレ」の同時発生。原因は需要側ではなく供給側(負の供給ショック)
  • AS曲線が左上方シフト→ 物価上昇+GDP低下が同時に発生する唯一のパターン
  • 需要管理政策(金融緩和・財政拡大 or 引き締め)はどちらを選んでも片方が悪化するジレンマ
  • 処方箋は供給サイド政策(技術革新・規制緩和・エネルギー政策など)でAS曲線を右シフトさせる
  • 短期フィリップス曲線は供給ショックで右上方シフト(インフレ率・失業率ともに悪化)
  • 歴史的な実例:1973年・1979年のオイルショック(OAPECによる原油禁輸・OPEC価格引き上げ)
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最初は「不況なのに物価が上がるなんて変だ」と感じていたのですが、「原因が供給側にある」と理解してからは、AS-ADの図がスッと頭に入るようになりました。需要管理政策がなぜジレンマになるかも、図を描いてみると実感できますよ。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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