U「弾力性」という言葉を聞いたとき、最初は計算式を丸暗記しようとしたんです。でも「どれくらい反応するか」という一つの概念さえ掴めれば、派生する指標の意味が自然と見えてきました。
「弾力性」とは一言で言えば、ある変数が1%変化したとき、別の変数が何%変化するかを示す指標です。この定義さえ押さえれば、価格弾力性・所得弾力性・交差弾力性はすべて同じフレームで整理できます。
3種類の弾力性の定義
価格弾力性(Ed)
Ed = 需要量の変化率 ÷ 価格の変化率
価格が1%変化したとき、需要量が何%変化するか。符号は通常マイナス(右下がり需要曲線)なので、絶対値で扱う。
所得弾力性(Ey)
Ey = 需要量の変化率 ÷ 所得の変化率
所得が1%増加したとき、需要量が何%変化するか。正なら上級財、負なら下級財(劣等財)。
交差弾力性(Exy)
Exy = X財需要量の変化率 ÷ Y財価格の変化率
Y財の価格が1%上昇したとき、X財の需要量が何%変化するか。正なら代替財、負なら補完財。
目次
価格弾力性の大小と総収入の関係
価格弾力性は、値下げが総収入を増やすか減らすかを決める鍵です。試験で繰り返し問われる重要な関係です。
| 弾力性の大きさ(絶対値) | 需要の性質 | 値下げ時の総収入 | 値上げ時の総収入 |
|---|---|---|---|
| |Ed| > 1(弾力的) | 価格変化に敏感に反応する | ↑ 増加(需要量の増加が価格低下を上回る) | ↓ 減少 |
| |Ed| = 1(単位弾力的) | 価格変化と需要変化が同率 | → 不変 | → 不変 |
| |Ed| < 1(非弾力的) | 価格変化に鈍感 | ↓ 減少(価格低下が需要量の増加を上回る) | ↑ 増加 |
| |Ed| = 0(完全非弾力的) | 価格が変わっても需要量が変わらない | ↓ 大幅減少 | ↑ 大幅増加 |
| |Ed| = ∞(完全弾力的) | ごく小さな価格変化で需要量が無限大に変わる | → 無限大 | → ゼロ |
覚え方:「弾力的 → 値下げで売上↑、値上げで売上↓」「非弾力的 → 逆」
必需品(食料・医薬品・電気)は価格が上がっても需要が減りにくい → 非弾力的。
ぜいたく品(高級ブランド品・海外旅行)は少し高くなるだけで購入をやめる → 弾力的。
必需品(食料・医薬品・電気)は価格が上がっても需要が減りにくい → 非弾力的。
ぜいたく品(高級ブランド品・海外旅行)は少し高くなるだけで購入をやめる → 弾力的。
弾力性の大きさを決める要因
| 要因 | 弾力性が大きい(弾力的) | 弾力性が小さい(非弾力的) |
|---|---|---|
| 代替財の有無 | 代替財が多い(コーラ↑→ペプシへ移行) | 代替財が少ない(インスリン) |
| 必需品か嗜好品か | 嗜好品・ぜいたく品 | 食料・医薬品などの必需品 |
| 支出に占める割合 | 支出割合が大きい(住宅) | 支出割合が小さい(塩・マッチ) |
| 時間的範囲 | 長期(代替行動の余地が大きい) | 短期(すぐに切り替えられない) |
| 財の定義の広狭 | 狭く定義(某ブランドのコーヒー) | 広く定義(コーヒー全般) |
所得弾力性と財の分類
Ey > 1
上級財(奢侈財)
所得増加率より需要増加率が大きい
例:高級外食・海外旅行・ブランド品
所得増加率より需要増加率が大きい
例:高級外食・海外旅行・ブランド品
0 < Ey ≤ 1
上級財(必需財)
所得が増えても需要増加は緩やか
例:食料・日用品・公共交通
所得が増えても需要増加は緩やか
例:食料・日用品・公共交通
Ey < 0
下級財(劣等財・ギッフェン財候補)
所得が増えると需要が減る
例:即席麺・バス移動(裕福になると車へ)
所得が増えると需要が減る
例:即席麺・バス移動(裕福になると車へ)
交差弾力性と財の関係
| 交差弾力性の符号 | 財の関係 | 具体例 |
|---|---|---|
| Exy > 0(正) | 代替財(Y財が高くなるとX財に移行) | コーヒーとお茶、バターとマーガリン、電車と車 |
| Exy < 0(負) | 補完財(Y財が高くなるとX財も減る) | 車とガソリン、プリンターとインク、スマホとアプリ |
| Exy = 0 | 独立財(Y財の価格変化がX財需要に無関係) | 鉛筆とガソリンなど無関係な財 |
コンビニで弾力性を考える
コンビニ経営者の立場で、価格を10%下げることを検討しています。商品ごとの弾力性が違えば、値下げの効果もまったく変わります。
| 商品 | 価格弾力性の目安 | 値下げ10%の効果 | 理由 |
|---|---|---|---|
| おにぎり(定番) | 非弾力的(|Ed|≈0.3) | 売上↓(需要増3%<価格↓10%) | 代替品が少なく必需品的 |
| ペットボトル飲料 | やや弾力的(|Ed|≈1.2) | 売上↑(需要増12%>価格↓10%) | 他ブランドや自販機との競合が多い |
| 高級スイーツ | 弾力的(|Ed|≈2.0) | 売上↑↑(需要増20%) | ぜいたく品で価格感度が高い |
| タバコ | 非弾力的(|Ed|≈0.4) | 売上↓(習慣的需要で反応鈍い) | 中毒性があり代替品が少ない |
ポイント:「弾力的な商品」を値下げすれば売上が増え、「非弾力的な商品」を値上げしても売上はあまり落ちない。
これがマーケティング戦略と弾力性の接続点です。
これがマーケティング戦略と弾力性の接続点です。



飲料の値下げセールでお客さんが一気に増えるのに、タバコの値上がりでも大して減らないのはなぜか——弾力性の違いだと気づいてから、身の回りの価格変化がずいぶん面白く見えるようになりました。
過去問で確認しよう
令和4年度 第3問
経済学・経済政策
需要の価格弾力性に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 需要の価格弾力性が1より大きい場合、価格を引き上げると総収入は増加する。
- イ 需要の価格弾力性が1より小さい場合、価格を引き上げると総収入は増加する。
- ウ 代替財が多いほど需要の価格弾力性は小さくなる。
- エ 長期より短期の方が需要の価格弾力性は大きくなる。
解説
イが正解です。
ア:弾力的(|Ed|>1)で値上げ → 総収入↓(需要量の減少が価格上昇を上回る)。逆。
イ:非弾力的(|Ed|<1)で値上げ → 需要量はあまり減らない → 総収入↑。正解。
ウ:代替財が多いほど弾力性は大きくなる(少し高くなれば代替財に切り替え)。
エ:長期の方が代替行動の余地が増えるため、長期の弾力性が大きい。
ア:弾力的(|Ed|>1)で値上げ → 総収入↓(需要量の減少が価格上昇を上回る)。逆。
イ:非弾力的(|Ed|<1)で値上げ → 需要量はあまり減らない → 総収入↑。正解。
ウ:代替財が多いほど弾力性は大きくなる(少し高くなれば代替財に切り替え)。
エ:長期の方が代替行動の余地が増えるため、長期の弾力性が大きい。
令和2年度 第6問
経済学・経済政策
財XとYの需要の交差弾力性がマイナスの値を示した。この財の関係として、最も適切なものはどれか。
- ア XとYは代替財の関係にある。
- イ XとYは補完財の関係にある。
- ウ XとYは独立財の関係にある。
- エ XとYのいずれかが下級財である。
解説
イが正解です。
交差弾力性が負(Exy<0)→ Y財の価格上昇でX財の需要が減少 → 二つの財は一緒に使われる補完財。
代替財であれば Exy>0(Y財が高くなるとX財に乗り換え)。独立財は Exy≈0。
交差弾力性が負(Exy<0)→ Y財の価格上昇でX財の需要が減少 → 二つの財は一緒に使われる補完財。
代替財であれば Exy>0(Y財が高くなるとX財に乗り換え)。独立財は Exy≈0。
まとめ
- 弾力性=「何%変化したか ÷ 何%変化させたか」。どの弾力性も同じ構造
- 弾力的(|Ed|>1)→ 値下げで総収入↑、値上げで総収入↓。非弾力的は逆
- 代替財が多い・ぜいたく品・長期・支出割合大 → 弾力性大。必需品・短期 → 弾力性小
- 所得弾力性:正なら上級財、負なら下級財。Ey>1は奢侈財
- 交差弾力性:正なら代替財、負なら補完財、ゼロなら独立財









