U「クールノー競争」という言葉を初めて見たとき、ゲーム理論との違いがよくわからなかったんです。整理してみると、寡占の各モデルは「相手の行動をどう読むか」という仮定の違いだとわかりました。
寡占市場とは、少数の大企業が市場を支配している状態です。完全競争でも独占でもなく、企業同士が互いの行動を意識しながら意思決定する「戦略的相互依存」が特徴です。
市場構造の整理
| 市場構造 | 企業数 | 価格支配力 | 代表的なモデル |
|---|---|---|---|
| 完全競争 | 多数 | なし(プライステイカー) | 需要供給均衡 |
| 独占的競争 | 多数(差別化あり) | 限定的 | 長期均衡で超過利潤ゼロ |
| 寡占 | 少数(2〜10社程度) | あり(相互依存) | クールノー・ベルトラン・屈折需要曲線 |
| 独占 | 1社 | 大きい | MR=MC で利潤最大化 |
クールノー競争:産出量で競う
クールノー競争では、各企業が「相手の生産量を所与(固定)として」自分の生産量を決めます。互いの反応関数が交わる点がクールノー・ナッシュ均衡です。
・相手の産出量は変化しないと仮定(量推測ゼロ)
・2社(複占)の場合が典型
・完全競争より高く、独占より低い価格
・企業数が増えるほど完全競争に近づく
ベルトラン競争:価格で競う
・財は同質(無差別)
・相手の価格は変化しないと仮定
・2社しかいないのに完全競争の結果になる
・「たった2社で競争すれば十分」という逆説
ベルトラン競争で均衡が完全競争価格になる理由:
もし一方が限界費用より高い価格を設定すると、もう一方は少しだけ安い価格をつけて全需要を奪えます。この「価格を少し下げれば全部取れる」競争が続き、最終的に両社の価格が限界費用まで下がります。
| モデル | 戦略変数 | 均衡産出量 | 均衡価格 | 利潤 |
|---|---|---|---|---|
| 完全競争 | — | 最大(効率的) | P = MC | ≈ 0 |
| ベルトラン競争 | 価格 | 完全競争と同じ | P = MC | ≈ 0 |
| クールノー競争 | 産出量 | 独占より多い | MC < P < 独占価格 | 正(但し独占より小) |
| カルテル(共謀) | 共同決定 | 最小(独占と同量) | 独占価格 | 最大(独占利潤) |
| 独占 | — | MR=MCで決まる | 最高 | 最大 |
屈折需要曲線モデル:価格が硬直する理由
スウィージーの屈折需要曲線モデルは、寡占市場で価格が変化しにくい(硬直する)現象を説明します。
① 自社が価格を引き上げた場合 → ライバルは追随しない(自社の需要が大きく減る → 需要曲線の傾きが緩やか)
② 自社が価格を引き下げた場合 → ライバルも追随する(自社の需要はほとんど増えない → 需要曲線の傾きが急)
この2つをつなぐと、現行価格の点で「折れ曲がった」需要曲線になります。
屈折点では限界収入(MR)が不連続になります。MCが上がっても下がってもMRの不連続の範囲内に収まる限り、均衡価格は変わりません。これが「寡占市場では費用が変化しても価格が硬直する」ことの説明です。
コンビニ3社の競争で考える
セブン・ローソン・ファミマの3社は、互いの動向を常に意識しながら価格や品揃えを決めています。
| 局面 | どのモデルが近いか | 実際の行動 |
|---|---|---|
| 弁当・おにぎりの値段がどこも似たようなもの | 屈折需要曲線 | 値上げすると一人負け、値下げしても追随されるので価格が動かない |
| 新商品を各社が一斉に投入 | クールノー的 | 商品ラインアップ(量的戦略)で差別化。競合の品揃えを見て調整 |
| プライベートブランドの価格競争 | ベルトラン的 | 同質商品(PB惣菜等)は価格で勝負し限界費用近辺まで下がる傾向 |
| 共同物流・リサイクル協定 | カルテル的(合法の協調) | 独禁法に触れない範囲で協力し、非効率を排除 |



「屈折需要曲線の屈折点でMRが不連続になる」という説明を初めて読んだとき、図を自分で描いてみてやっと納得しました。グラフを描く習慣をつけると、このタイプの論点がずいぶん記憶に残りやすくなります。
過去問で確認しよう
- ア クールノー均衡では価格が限界費用に等しくなる。
- イ クールノー均衡の産出量は完全競争均衡より多くなる。
- ウ クールノー均衡の産出量は独占より多く、完全競争より少なくなる。
- エ 企業数が増えるほど独占に近づく。
ア:価格=限界費用(P=MC)はベルトラン均衡・完全競争の特徴。クールノー均衡では P>MC。
イ:クールノー均衡の産出量は完全競争より少なく、独占より多い。
ウ:独占(最少)< クールノー均衡 < 完全競争(最多)。正解。
エ:企業数が増えると完全競争に近づく(逆)。
- ア 屈折点では限界収入曲線が連続している。
- イ 費用が変化しても価格が硬直する傾向を説明する。
- ウ 自社が値上げするとライバルも値上げすると仮定する。
- エ 完全競争市場の価格硬直性を説明するために開発された。
ア:屈折点では限界収入(MR)が不連続になります(上から下に飛ぶ)。
イ:MCが変動してもMRの不連続域内に収まれば均衡価格は変わらない → 価格硬直性の説明。正解。
ウ:屈折需要曲線では「値上げはライバルが追随しない」「値下げはライバルが追随する」という非対称の仮定。
エ:寡占市場(完全競争ではない)の価格硬直性を説明するモデル。
まとめ
- 寡占 = 少数企業の戦略的相互依存。独占でも完全競争でもない中間的な市場
- クールノー競争:産出量が戦略変数。均衡は独占より多く、完全競争より少ない
- ベルトラン競争:価格が戦略変数。同質財なら2社でも完全競争と同じP=MRになる(パラドックス)
- 屈折需要曲線:値上げはライバル追随せず・値下げは追随する非対称仮定 → 価格硬直性の説明
- 産出量比較:独占(最少)< クールノー < 完全競争(最多)









