独占市場・価格差別と死荷重 | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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「独占」と聞くと「ズルい」とすぐ感じるのですが、なぜ経済学的に問題なのかを整理すると、「死荷重」という概念が見えてきます。価格差別も、一見不公平に見えて実は社会厚生を高める面があるというのが面白いポイントです。

独占(monopoly)とは、ある財・サービスの供給者が市場に1社しか存在しない状態です。競争相手がいないため、独占企業は価格を自ら設定できる「プライスメーカー」となります。

比較項目 完全競争市場 独占市場
価格設定 プライステイカー(価格受容者) プライスメーカー(価格設定者)
需要曲線 水平(弾力性無限大) 右下がり(市場需要曲線=企業の需要曲線)
均衡条件 P = MC MR = MC(P > MR)
価格・生産量 効率的(社会的最適) 高価格・過少生産(死荷重発生)
目次

独占均衡と死荷重のしくみ

独占企業は利潤最大化のためにMR = MCとなる生産量を選びます。需要曲線が右下がりのとき、限界収入(MR)は需要曲線(=平均収入AR)より低い位置にあります。

この結果、独占均衡では:

  • 生産量が完全競争より少なく(Q独占 < Q競争)
  • 価格が完全競争より高く(P独占 > P競争 = MC)
  • 消費者余剰が減少し、その一部は独占利潤に移転、残りは死荷重(社会的損失)となります
独占の問題点
価格 P > MC → 資源配分が非効率
死荷重(deadweight loss)が発生
消費者余剰が独占利潤に移転
競争に比べ「本来取引されるはずだった財」が取引されないため、社会全体の厚生が低下します。
MRと需要曲線の関係
需要曲線が直線のとき MR の傾きは2倍急
MR = AR(1 − 1/|ed|)の関係が成立
|ed| > 1(弾力的)の領域で生産
独占企業は需要の価格弾力性が1を超える(弾力的な)領域でのみ利潤最大化できます。

価格差別:独占企業の価格設定戦略

価格差別(price discrimination)とは、同一の財・サービスを異なる消費者・状況に対して異なる価格で販売することです。消費者余剰を吸収して利潤を最大化する戦略です。

第1種
完全価格差別
各消費者の最大支払い意欲(WTP)で個別に価格設定
消費者余剰がゼロになり、すべて独占利潤に。死荷重はなくなるが分配面では問題。実現は困難。
第2種
数量差別
購入数量によって価格が異なる(逓減価格・ブロック料金)
電気・ガスの段階料金制・数量割引が例。消費者が自ら購入量を選択することで選別(スクリーニング)。
第3種
市場分割
需要の弾力性が異なるグループに別々の価格設定
映画の学生割引・シニア割引・通勤定期と観光定期の価格差など。弾力性の小さいグループには高価格。

価格差別が成立するには、①市場分割が可能(転売防止)、②グループ間で需要の弾力性が異なる、の両条件が必要です。

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映画館の割引価格が「第3種価格差別」と知ったときは驚きました。学生や高齢者は価格に敏感(弾力性大)なので割引して多く販売し、サラリーマンには高い価格で売る——まさに弾力性の差を利用した戦略なんですね。

自然独占と規制

規模の経済が強く働く産業では、生産規模が拡大するほど平均費用が低下し続けます。この場合、1社が市場全体を供給する方がコストが低い「自然独占」が生じます。電力・鉄道・通信などのインフラ産業が典型例です。

規制の種類 価格設定 特徴
限界費用価格規制(MC規制) P = MC に設定 効率的だが費用逓減産業では赤字になる → 補助金が必要
平均費用価格規制(AC規制) P = AC に設定 企業が赤字にならない。死荷重は残るが実務的に採用しやすい
収益率規制(レートオブリターン規制) 利益率に上限を設定 コスト削減へのインセンティブが失われるリスク(アバーチ=ジョンソン効果)

過去問で確認する

令和4年度 第10問(経済学・経済政策) 独占・MR=MC
独占企業の行動に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 独占企業は、限界収入(MR)と価格(P)が等しくなる生産量を選択する。
  • イ 独占企業は、需要の価格弾力性が1以下(非弾力的)の領域で利潤を最大化する。
  • ウ 独占均衡において価格は限界費用(MC)を上回り、死荷重が発生する。
  • エ 独占企業は、完全競争と比較して同じ生産量でより高い価格を設定できるが、死荷重は生じない。
解答・解説
正解:ウ
ア:独占企業は MR = MC となる生産量を選択しますが、P ≠ MR であり P > MR です(誤り)。
イ:独占企業は需要の価格弾力性が1を超える(弾力的な)領域で生産します。弾力性が1以下の領域では MR < 0 となり利潤最大化できません(誤り)。
ウ:正しい。MR = MC かつ P > MR なので P > MC。この価格と MC の乖離が非効率を生み、死荷重が発生します。
エ:独占均衡では完全競争より生産量が少なく価格が高いため、取引されない財に対応した死荷重(社会的損失)が生じます(誤り)。
令和2年度 第11問(経済学・経済政策) 価格差別
価格差別に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 第1種価格差別(完全価格差別)では、死荷重が最大となる。
  • イ 第3種価格差別では、需要の価格弾力性が大きいグループに高い価格が設定される。
  • ウ 第3種価格差別では、需要の価格弾力性が小さいグループに高い価格が設定される。
  • エ 価格差別が成立するためには、異なる市場間での財の転売が容易でなければならない。
解答・解説
正解:ウ
ア:第1種価格差別(完全価格差別)では各消費者の最大支払い意欲で販売するため死荷重はゼロになります(最大となるは誤り)。
イ:MR = MC(1 − 1/|ed|)より、弾力性が大きいほど MR は P に近づき、利潤最大化価格は低くなります(誤り)。
ウ:正しい。需要の価格弾力性が小さいグループ(価格への感度が低い)には高い価格を設定して利益を最大化します。映画の一般料金 vs 学生割引がその例です。
エ:価格差別が成立するには、転売が困難(市場分割が可能)でなければなりません。転売が容易なら割安グループが割高グループに転売してしまいます(誤り)。

まとめ

独占・価格差別・死荷重 整理メモ
  • 独占均衡条件: MR = MC(ただし P > MR → P > MC)
  • 独占は完全競争より高価格・過少生産 → 死荷重(社会的損失)が発生
  • 第1種価格差別(完全)→ 死荷重ゼロ・消費者余剰ゼロ
  • 第3種価格差別 → 弾力性が小さいグループ = 高価格・弾力性が大きいグループ = 低価格
  • 価格差別の成立条件: 転売困難(市場分割可能)+弾力性がグループ間で異なる
  • 自然独占の規制: MC価格規制(効率的だが赤字)or AC価格規制(赤字なし・死荷重残る)
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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