U映画館のシニア割引やレイトショー料金——「なぜ同じサービスなのに値段が違うの?」と最初は不思議でした。でもこれが「価格差別」の典型例で、独占企業が利潤を最大化する戦略なんですよね。そして驚いたことに、条件によっては社会全体の余剰が増えるケースもあるそうです。
- 独占市場の均衡(限界収入=限界費用)と死荷重
- 第1次・第2次・第3次価格差別の違いと具体例
- 価格差別が「社会的余剰を増やす」条件とは
- 試験での出題パターンと計算問題の解き方
もし映画館が全員同一価格なら——独占のジレンマ
映画館が「全員1,900円均一」にしたとします。高齢者・学生・社会人、全員同じ価格です。
でも、「1,900円なら行かない」という学生や「1,900円でも行く」という熱烈ファンが混在しています。均一価格を設定すると、「安ければ来たのに来ない客」が生まれ(死荷重)、「もっと高くても払う客」から余剰を取り逃がします。
価格を下げると:客は増えるが、高く払う意思があった客にも安く売ってしまう(利潤が減る)
→ この「どちらも損」なジレンマを解決するのが価格差別です
独占市場の基本:なぜ死荷重が生まれるか
価格差別を理解する前に、独占市場の基本を押さえます。
・生産量は社会的に最適
・消費者余剰+生産者余剰 = 最大
・死荷重ゼロ
・価格 > 限界費用(P > MC)
・生産量が過少 → 死荷重発生
・消費者余剰の一部が独占利潤に転化
- MR = MC:独占企業は限界収入と限界費用が等しい点で生産量を決める
- 右下がりの需要曲線に直面するため、MRは需要曲線より下に位置する
- MR = a − 2bQ(需要曲線 P = a − bQ のとき)→ MR の傾きは需要曲線の2倍
- 独占価格は MR = MC の点の Q を需要曲線に代入して求める
新幹線の料金体系で考える3種類の価格差別
新幹線の料金を思い浮かべてください。「早割21」「通常料金」「グリーン車」——これらはすべて価格差別の仕組みを活用しています。経済学では価格差別を3つに分類します。



「シニア割引は不公平では?」と感じる方もいるかもしれませんが、経済学的には、高齢者(需要の価格弾力性が高い)に安く売ることで、全体の販売量が増えて社会的余剰も増える場合があるんです。「差別」という言葉は使われていますが、社会的には中立かそれ以上のケースも多いそうです。
価格差別と社会的余剰の関係
| 価格差別の種類 | 消費者余剰 | 生産者余剰(独占利潤) | 社会的余剰合計 | 死荷重 |
|---|---|---|---|---|
| 完全競争(参考) | 最大 | 通常 | 最大(基準) | ゼロ |
| 独占(価格差別なし) | 減少 | 増加 | 減少(死荷重発生) | あり |
| 第1次価格差別 | ゼロ(全額独占者へ) | 最大化 | 完全競争と同水準 | ゼロ |
| 第3次価格差別 | 一部減少 | 増加 | 条件による(増減どちらも) | 条件による |
→ 死荷重がなくなり、社会的余剰は最大化される(ただし消費者には恩恵なし)
試験対策:第3次価格差別の計算
診断士試験で最も出題頻度が高いのが第3次価格差別の計算問題です。2つの市場(グループA・B)に異なる価格を設定するケースを解けるようにしておきましょう。
- 各市場のMRを求める:市場AのMR_A、市場BのMR_Bを需要関数から導出
- 利潤最大化条件:MR_A = MR_B = MC(2市場の限界収入を均等化してMCに合わせる)
- 各市場の価格決定:MRi = MCとなる数量Qiを需要関数に代入してPiを求める
- 需要の価格弾力性が高い(弾力的)市場 → 低い価格を設定
- 需要の価格弾力性が低い(非弾力的)市場 → 高い価格を設定
- 覚え方:「弾力的な市場(他の選択肢が多い)には安く、逃げられない市場には高く」
- ラーナー指数((P−MC)/P = 1/|弾力性|):弾力性が低いほど価格が限界費用から乖離
Uのメモ
- 独占均衡:MR = MC → MRは需要曲線の傾きの2倍急(P = a−bQならMR = a−2bQ)
- 第1次:個別に最大WTP → 消費者余剰ゼロ・死荷重ゼロ・社会余剰は完全競争と同じ
- 第2次:数量・利用状況で自己選択(早割・まとめ買い割引)
- 第3次:グループ分割・MR_A = MR_B = MC が計算の鍵
- 弾力性大 → 低価格、弾力性小 → 高価格(ラーナー指数)
- 価格差別の前提:市場間の転売防止(転売できるなら効果なし)









