会計参与 | 中小企業診断士1次試験 経営法務

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「会計参与ってどんな機関?監査役と何が違うの?」——会社法の機関設計問題で頻出でありながら、意外と混乱しやすい会計参与制度。設置できる者・役割・監査役との違いを丁寧に整理しましょう。

目次

会計参与制度とは——なぜ生まれたのか

会計参与制度の背景

2006年(平成18年)施行の会社法で新たに設けられた機関が「会計参与」です。それまでの旧商法下では、多くの中小企業の計算書類(財務諸表)の信頼性に問題がありました。中小企業が銀行融資を受ける際、財務諸表の信頼性が低いと金融機関が担保・保証人に頼り過ぎてしまい、本来の経営実態に基づいた融資が難しい——という問題意識から生まれた制度です。

項目内容
根拠条文会社法326条以下(機関設計)・374条〜381条(職務・権限)
設置形態任意設置(会社法上の強制設置義務なし)
設置目的中小企業の計算書類の信頼性向上・財務の透明性確保
導入時期2006年(平成18年)会社法施行と同時

会計参与になれる者——資格要件

会計参与に就任できる者(会社法333条)

会計参与は専門的な会計・税務の知識を持つ者でなければなれません。法律で限定列挙されています。

就任できる者備考
公認会計士個人資格者
監査法人公認会計士が組織する法人
税理士個人資格者
税理士法人税理士が組織する法人
⚠️ 試験頻出:就任できない者
弁護士・弁護士法人・中小企業診断士は会計参与になれません。また、その会社の取締役・監査役・執行役・使用人は会計参与にはなれません(会社法333条3項)。さらに、その会社の子会社の取締役・監査役・使用人も不可です。「利害関係者の排除」という観点から覚えましょう。

会計参与の職務——取締役と「共同して」計算書類を作成

会計参与の主な職務(会社法374条)

会計参与の最大の特徴は、取締役(執行役)と共同して計算書類を作成する点です。監査役が「作成された書類をチェックする」のとは根本的に異なります。

職務内容詳細
計算書類の共同作成(374条1項)取締役(執行役)と共同して計算書類(貸借対照表・損益計算書等)・附属明細書・臨時計算書類を作成する
計算書類の独自備置・開示(378条)自ら作成した計算書類・会計参与報告を自己の事務所(会計参与が独自に)に備え置く。定時株主総会後5年間(本店備置と同期間)
株主・債権者への開示(378条2項)請求があれば株主・債権者(会社の備置書類閲覧請求権者)に計算書類等を開示できる
定時株主総会への出席権・意見陳述権(376条)定時株主総会に出席して計算書類について意見を述べることができる(義務ではなく権利)
⚠️ 「共同して作成」の意味
「共同して作成」とは、会計参与が取締役の補助者として計算書類を作るのではなく、対等な立場で共同参画することを意味します。会計参与が作成に合意できない場合は、「意見を付して」提出することができます(会計参与報告書)。取締役が勝手に作成した計算書類に後からサインするだけでは会計参与の職務を果たしたことにはなりません。

会計参与報告書——独立した意見書の重要性

会計参与報告書(会社法374条4項・規則102条)

会計参与は計算書類を作成するにあたり、会計参与報告書を作成しなければなりません。この報告書には計算書類の作成にあたり採用した会計方針、計算書類が正確に作成されているかに関する事項等が記載されます。

記載事項内容
採用した会計方針減価償却方法・棚卸資産の評価方法等
計算書類の作成に際して確認した事項帳簿・証憑の確認状況
意見等がある場合の記述取締役と意見が相違した場合は相違点を記述

この報告書は会計参与が独自に備え置くものであり、取締役が管理する書類とは別に、会計参与の事務所に備え置かれます。これにより、会社の経営者から独立した形で計算書類の信頼性を担保する仕組みが構築されます。

会計参与 vs 監査役——最大の違いは「作成」か「監査」か

会計参与と監査役の比較(試験最頻出)
比較項目会計参与監査役
基本的役割計算書類の共同作成計算書類の監査(事後チェック)
就任できる資格公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人特定の資格要件なし(株主以外なら可、ただし会社・子会社の取締役・使用人等は不可)
設置義務任意(強制なし)取締役会設置会社(非公開の非大会社は任意)
書類の独自備置あり(自己の事務所に備置)なし(監査報告書を会社に提出)
株主総会での意見陳述権利(義務ではない)権利(義務ではない)
業務全般の監査権限なし(会計に限定)会計監査+業務監査(大会社等)
計算書類作成への関与積極的関与(共同作成)事後的な確認(監査)のみ
⚠️ 最重要ポイント:「作成」と「監査」の違い
会計参与は計算書類を作成する側(取締役と一緒に作る)。監査役は監査する側(作られたものをチェックする)。この点が試験で最も問われます。「会計参与は計算書類を監査する」という記述は誤りです。

会計参与と会計監査人の比較

会計参与 vs 会計監査人
比較項目会計参与会計監査人
役割計算書類の共同作成計算書類の監査
就任資格公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人公認会計士・監査法人のみ(税理士・税理士法人は不可)
設置義務任意大会社・上場会社等は強制設置
対象会社主として中小企業(任意設置)大会社・委員会等設置会社等
同一会社への設置両方の設置可能同上
⚠️ 税理士が「会計監査人」にはなれない点に注意
税理士・税理士法人は「会計参与」にはなれますが、「会計監査人」にはなれません。会計監査人は公認会計士・監査法人のみです。この違いは頻出です。

会計参与の設置意義——中小企業の財務信頼性向上

会計参与を設置するメリット
ステークホルダーメリット
会社(経営者)専門家と共同で正確な計算書類を作成できる。銀行融資・取引先との信頼関係向上
金融機関信頼性の高い財務情報を入手でき、担保・保証に依存しない本業ベースの融資が可能に
株主・投資家会計参与が独自備置した計算書類を閲覧でき、会社の財務情報に対する第三者の太鼓判を得られる
取引先・債権者会計参与設置会社は計算書類の信頼性が高いとの認識。取引安心感の向上

会計参与制度は「計算書類の信頼性を外部専門家が担保することで、中小企業が資金調達・取引においてより良い条件を引き出せるようにする」という政策的意図を持っています。診断士試験でも制度趣旨からの出題が多いため、このメリット構造を理解しておくことが重要です。

機関設計との関係——会計参与は誰と一緒に設置されるか

機関設計と会計参与(会社法326条・327条)

会計参与は取締役会設置会社かどうかを問わず設置できます。中小企業(非公開会社)では取締役のみで構成される小規模な機関設計でも会計参与を置くことができます。

会社の種類会計参与の設置主な組み合わせ例
非公開の非大会社(典型的中小企業)任意設置可取締役(会)+会計参与(監査役なしでも可能)
非公開の非大会社(取締役会設置)任意設置可取締役会+会計参与(監査役の代わりにはなれないが組み合わせ可)
公開会社任意設置可取締役会+監査役会+会計参与(追加設置)
大会社(公開)任意設置可会計監査人設置義務あり+任意で会計参与も設置可
⚠️ 会計参与は監査役の「代替」にはなれない
取締役会を設置した非公開の非大会社では、監査役または会計参与のいずれかを設置すれば監査役設置義務を免れることができます(会社法327条2項)。ただし会計参与の権限は会計に限定されており、業務監査まで担う監査役と異なります。「会計参与がいれば監査役は不要(会計監査型)」という機関設計が中小企業では可能です。

会計参与の任期・解任・報酬

会計参与の任期・報酬等
項目内容根拠条文
任期選任後2年以内の最終事業年度の定時株主総会終結まで(非公開会社は最長10年まで定款で延長可)334条
解任株主総会の普通決議でいつでも解任可能。正当な理由なく解任された場合は損害賠償請求可339条
辞任辞任した会計参与は定時株主総会で辞任の理由を述べる権利あり(任期前辞任の場合)345条
報酬定款または株主総会決議で定める(取締役とは独立して決定)379条
費用の請求職務執行に必要な費用を会社に請求できる380条

会計参与の報酬は取締役の報酬とは別枠で株主総会で決定します。これにより、取締役が会計参与の報酬を恣意的に操作して独立性を損なうことを防いでいます。

会計参与の責任——善管注意義務と損害賠償

会計参与の会社に対する責任(会社法423条)

会計参与は取締役・監査役等と同様に会社の役員として位置づけられ(会社法329条1項)、その任務を怠った場合は会社に対して損害賠償責任を負います。

責任の種類内容根拠条文
会社に対する損害賠償責任任務懈怠による損害賠償。ただし過失の有無によって額が異なる423条
第三者に対する責任悪意・重過失によって第三者に損害を与えた場合の賠償責任429条
連帯責任取締役等との連帯責任が成立することがある430条

会計参与の責任は原則として株主総会の特別決議で一部免除できますが(法定の最低責任限度額あり)、社外役員でない会計参与については免除範囲が限られます。

3機関(会計参与・監査役・会計監査人)の横断比較

比較項目会計参与監査役会計監査人
役割計算書類の共同作成業務監査+会計監査計算書類の会計監査
就任資格公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人特定資格不要公認会計士・監査法人のみ
設置義務任意条件による(取締役会設置会社等)大会社・委員会等設置会社は強制
独自備置◎(自己事務所)
業務監査✕(会計のみ)◎(大会社等)✕(会計のみ)
主な対象会社規模中小企業(中心)中小〜大会社大会社・上場会社

FAQ——会計参与に関するよくある疑問

Q1. 会計参与は全ての会社に設置義務がありますか?
いいえ。会計参与は全ての会社で任意設置です。会社法上どの会社も強制的に設置する義務はありません。取締役会設置の非公開・非大会社では、監査役を設置する代わりに会計参与を設置するという選択が可能です(会社法327条2項)。大会社であっても会計参与を任意で追加設置することはできます。
Q2. 税理士が会計参与になれるのに会計監査人にはなれない理由は?
会計監査人は公認会計士法上の「監査」を行う機関であり、独立性・専門性の観点から公認会計士・監査法人に限定されています(会社法337条1項)。一方、会計参与は計算書類を「作成する」機関であり、税務・会計実務に精通した税理士も作成業務に携われます。なお、税理士が会計参与となった場合の「作成した計算書類の信頼性の根拠」は、税理士としての専門的知識と責任に基づきます。
Q3. 会計参与と取締役が計算書類の内容で意見が対立した場合はどうなりますか?
会計参与は取締役の意見に従う義務はありません。意見が相違した場合、会計参与は会計参与報告書に意見の相違内容を記載し、自己の見解を示すことができます。会計参与が自己の事務所に計算書類を独自備置する制度は、取締役から独立した情報として株主・債権者に提供するためのものです。実質的には「会計参与のお墨付きのない計算書類」として市場に評価されることになります。
Q4. 会計参与が設置された会社では監査役は不要ですか?
一概には言えません。取締役会を設置した非公開の非大会社では、監査役または会計参与のどちらかを設置すれば監査役設置義務を回避できます(会社法327条2項)。ただし、会計参与の権限は会計に限定されており、業務全般を監視する業務監査機能はありません。大会社や公開会社では監査役(会)の設置義務は別途存在します。
Q5. 会計参与の備置場所と備置期間はどれくらいですか?
会計参与は自己の事務所(公認会計士事務所・税理士事務所等)に計算書類・附属明細書・会計参与報告を備え置きます(会社法378条1項)。備置期間は定時株主総会の終結後5年間です(会社の本店備置と同じ期間)。株主・会社債権者は理由を示さずに閲覧・謄写を請求できます(378条2項)。
Q6. 会計参与は株主総会に出席しなければなりませんか?
出席は義務ではなく権利です(会社法376条)。ただし、株主から計算書類に関する質問があった場合に備えて出席する実務上の慣行はあります。なお、定時株主総会に提出・提供する計算書類の内容について取締役と意見が異なる場合は、定時株主総会において意見を述べることができます(376条1項)。
Q7. 会計参与の報酬は誰が決めますか?
会計参与の報酬は定款または株主総会の決議によって定めます(会社法379条1項)。取締役の報酬とは別に独立して決定されます。この独立性が重要で、取締役が会計参与の報酬を恣意的に操作して独立性・客観性を損なうことを防ぐ趣旨です。複数の会計参与がいる場合は、各自の報酬額を定款・株主総会で定めるか、総額を定めて会計参与間で協議して配分します。

まとめ——会計参与のポイントを整理

会計参与は「中小企業の財務信頼性向上」という明確な政策目的を持つユニークな機関です。試験では特に以下のポイントが問われます。

試験直前チェックリスト
  • 会計参与になれる者:公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人(弁護士・診断士は不可)
  • 役割:取締役と共同して計算書類を作成(監査ではなく作成
  • 独自備置:自己の事務所に計算書類・会計参与報告を5年間備置
  • 設置:任意設置(強制なし)・全ての会社で設置可能
  • 監査役との最大の違い:「作成」か「監査」か
  • 会計監査人との違い:税理士が就任できるか否か・作成vs監査
  • 取締役会設置の非公開・非大会社では会計参与設置で監査役設置義務を回避可能

会計参与は「誰がなれるか」と「何をするか(作成)」の2点さえ正確に押さえれば、多くの問題に対応できます。監査役・会計監査人との3機関比較表を声に出して確認する方法が効果的です。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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