U「指名委員会等設置会社」と「監査等委員会設置会社」、どちらも”委員会”がつくのに何が違うのか、過去問を解きながらずっとモヤモヤしていました。整理してみたら、会社法の機関設計は「誰が誰を監視するか」という一本の軸で読み解けることがわかって、ようやく頭のなかで地図ができた気がします。
「会社の機関」は、株主・経営者・監査役がそれぞれ何をできるのかを決めるルールです。中小企業診断士の経営法務では、機関設計のパターン比較や「この機関は必置か任意か」が繰り返し出題されます。この記事では、3つの機関設計パターンを比較表で整理し、試験で迷いやすいポイントを一緒に確認していきます。
会社法が定める「機関」とは何か
「機関」とは、会社の意思決定や業務執行、監査を担う組織・人のことです。株式会社の場合、最低限「株主総会+取締役」があれば成立しますが、会社の規模や上場の有無によって、追加が義務付けられる機関が変わります。
ここで少し立ち止まって考えてみてください。もし会社に「誰かを監視する仕組み」がまったくなかったら、どうなるでしょうか。経営者がひとりで意思決定し、ひとりで実行し、誰にもチェックされない。規模の小さな会社ならそれでも回せる場面がありますが、多くの株主から資金を集めた上場会社でそれが許されないのは、容易に想像できます。会社法の機関設計は、この「誰が誰を監視するか」という問いへの答えとして設計されています。
3つの機関設計パターンを比較する
会社法は、主に3つの機関設計パターンを用意しています。「どのパターンでは何が必置か」が試験でよく問われますので、一覧で確認しましょう。
| 機関 | 監査役会設置会社 | 指名委員会等設置会社 | 監査等委員会設置会社 |
|---|---|---|---|
| 株主総会 | 必置 | 必置 | 必置 |
| 取締役会 | 必置 | 必置 | 必置 |
| 監査役 | 必置(3名以上・社外半数以上) | 設置不可 | 設置不可 |
| 監査等委員会 | なし | なし | 必置(3名以上・社外過半数) |
| 指名・監査・報酬委員会 | なし | 3委員会すべて必置 | なし |
| 執行役 | 任意 | 必置(1名以上) | 任意 |
| 会計監査人 | 大会社は必置 | 必置 | 必置 |
| 社外取締役 | 上場会社は1名以上必置 | 各委員会の過半数必置 | 監査等委員の過半数必置 |
3パターンのうち「指名委員会等設置会社」は、日本版コーポレートガバナンスを強化する目的で導入されました。トヨタ・ソニー・日立などの大企業が採用しています。「監査等委員会設置会社」はその後に追加されたパターンで、指名委員会等設置会社よりも移行しやすい構造になっています。
株主総会と取締役会、権限はどう分かれているか
「株主総会で何でも決められるのでは?」と思われた方もいるかもしれません。確かに株主総会は最高意思決定機関ですが、会社法は「日常の業務執行は取締役会に任せる」という設計になっています。
社外取締役の要件と役割
コーポレートガバナンスの文脈でよく登場するのが「社外取締役」です。会社法は社外取締役の要件を細かく定めており、試験でも「社外」の定義部分が問われます。
社外取締役の役割は「経営陣への監視・助言」です。特に指名委員会等設置会社では、社外取締役が委員会の過半数を占めるため、「誰を経営者に選ぶか」「報酬をいくらにするか」を経営陣から独立して決める構造になっています。
上場企業のニュースで機関設計を読む
経済ニュースを見ていると、「社外取締役比率を過半数に引き上げ」「指名委員会を設置へ」という記事が定期的に出てきます。これは、東京証券取引所が2021年に改訂したコーポレートガバナンス・コードで、プライム市場上場企業に社外取締役の3分の1以上(独立社外取締役)を求めたことが背景にあります。
「〇〇社が監査等委員会設置会社へ移行」というニュースは、「監査役会を廃止し、取締役会の中に監査等委員会を置く構造に変えた」という意味です。同時に「社外取締役を増やして経営の透明性を高める」メッセージも含んでいます。こうしたニュースを見たとき、「この会社は何を捨てて何を得たのか」と考えるのが、経営法務の視点です。
「監査等委員会設置会社」が2015年の会社法改正で導入されてから、多くの上場会社がこのパターンに移行しました。その理由は、指名委員会等設置会社より規制が少ないながらも「社外取締役を活用したガバナンス強化」が実現できるからです。3委員会(指名・監査・報酬)の設置が任意であるため、企業側の負担が軽くなります。
試験頻出ポイント:必置・任意の整理
経営法務の過去問では、「この機関は必置か、任意か」「この要件は何名以上か」というストレートな問いがよく出ます。以下に論点ごとに整理しました。
| 論点 | 内容 | 頻出度 |
|---|---|---|
| 取締役会の設置 | 公開会社・大会社・上場会社は必置。非公開の小規模会社は任意 | 高 |
| 監査役会の員数 | 3名以上、うち半数以上が社外監査役 | 高 |
| 会計監査人 | 大会社・指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社は必置 | 高 |
| 指名委員会等設置会社の執行役 | 必置(1名以上)。取締役会から業務執行権限を委任される | 高 |
| 各委員会の社外取締役比率 | 指名・監査・報酬各委員会とも過半数が社外取締役 | 高 |
| 監査等委員会の員数 | 3名以上、うち過半数が社外取締役(監査役とは異なる点に注意) | 高 |
| 指名委員会等設置会社に監査役 | 設置不可(監査委員会が代替)。監査役を置くと矛盾する | 要注意 |
| 会計参与 | 任意設置。公認会計士・税理士のみが就任可能 | 中 |
| 株主総会の特別決議要件 | 議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の2/3以上 | 高 |
(資本金5億円以上 または 負債200億円以上)
監査役会 or 監査等委員会 or 3委員会のいずれか必置
「大会社」の定義(資本金5億円以上または負債200億円以上)も試験頻出です。大会社かどうかによって必置機関が大きく変わりますので、フローチャートとセットで覚えておくとよいかと思います。



「監査等委員会設置会社では社外取締役が過半数」「指名委員会等設置会社では各委員会の社外取締役が過半数」——この2つを混同しやすかったので、表を繰り返し確認しました。”半数以上”と”過半数”の違い(50%の扱い)も念のりcheck対象です。
- 株式会社の必置機関は「株主総会+取締役(1名以上)」が最小単位
- 3つの機関設計パターン:監査役会設置会社 / 指名委員会等設置会社 / 監査等委員会設置会社
- 指名委員会等設置会社には監査役を置けない(監査委員会が代替)
- 指名委員会等設置会社では執行役が必置(取締役会から業務執行を委任)
- 大会社(資本金5億円以上 or 負債200億円以上)は会計監査人が必置
- 社外取締役の要件:就任前10年間、当該会社・子会社の業務執行者等でないこと等
- 株主総会の特別決議:出席株主の議決権の2/3以上(定款変更・組織再編等)









