減価償却まとめ|定額法・定率法の計算式と財務諸表への影響を図解で整理

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定率法の計算をはじめて解いたとき、「なぜ年々償却額が減るのか」がしばらく引っかかっていました。定額法は毎年同じ金額を費用にする。それはわかる。でも定率法は「残っている簿価に率をかける」という構造で、残高が減れば自然に償却額も減る。その逓減の仕組みが見えた瞬間、2つの方法の根本的な違いがはっきりしました。

減価償却は「財務・会計」の最重要テーマのひとつです。固定資産をなぜ一括で費用計上しないのか、定額法と定率法はどう違うのか、そしてキャッシュフロー計算書になぜ「加算」されるのか。この記事では計算式・年度別数値・財務3表への影響・タックスシールドまで、ひとつながりで整理します。

目次

減価償却とは何か

建物・機械・車両などの固定資産は、購入した瞬間にすべて費用にするわけではありません。その資産が使われる期間(耐用年数)にわたって、取得原価を少しずつ費用として配分します。これが減価償却の考え方です。

REASON
なぜ費用を分割するのか
収益と費用を対応させる費用収益対応の原則から来ています。5年使う機械なら、その5年間に収益に貢献するため、費用も5年間に配分する方が実態を正確に表せます。
KEY POINT
現金は動かない(非資金費用)
減価償却費は費用として計上されますが、その時点では現金は出ていきません。現金の支出は購入時に終わっています。だからCF計算書(間接法)では純利益に「加算」されます。
TERMS
主要な用語を確認する
取得原価:固定資産の購入価額。耐用年数:使用できると見込まれる期間(法定耐用年数が基準)。残存価額:耐用年数終了後に残る価値(旧制度は取得原価の10%、現行は1円)。

減価償却の対象になるのは有形固定資産(建物・機械・車両等)と一部の無形固定資産(特許権・ソフトウェア等)です。土地は価値が減らないため減価償却しません。

項目 内容 試験での注意点
取得原価 購入代価+付随費用(運送費・設置費等) 付随費用も取得原価に含まれる
耐用年数 法定耐用年数(省令で資産種類ごとに規定) 問題文に耐用年数が与えられることが多い
残存価額 旧制度:取得原価×10%/現行:1円(備忘記録) 問題文で「残存価額10%」と指定される場合あり
償却可能額 取得原価 − 残存価額 定額法の計算の分子になる

定額法と定率法を比べる

減価償却の計算方法は主に2種類あります。定額法は毎年一定額を償却し、定率法は期首簿価に一定率をかけるため初期に多く償却します。

【定額法】
減価償却費 =(取得原価 − 残存価額)÷ 耐用年数 例:取得原価1,000万円・残存価額100万円(10%)・耐用年数5年 → (1,000 − 100)÷ 5 = 180万円/年(毎年一定)
【定率法(250%定率法)】
減価償却費 = 期首帳簿価額 × 償却率
償却率 = 1 ÷ 耐用年数 × 2.5 例:取得原価1,000万円・耐用年数5年 → 償却率 = 1÷5×2.5 = 0.5(50%)/ 1年目:1,000×0.5=500万円、2年目:500×0.5=250万円…と逓減

なお、試験問題では「定率法の償却率=0.4」のように直接与えられることが多いのですが、250%定率法の場合は 1÷耐用年数×2.5 で算出できます。耐用年数5年なら0.5、耐用年数8年なら0.3125(≒0.313)です。

年度別の比較を数値で見てみます。取得原価1,000万円・残存価額0円・耐用年数5年(定率法償却率0.4)の条件で揃えます。

年度 期首簿価(万円) 定額法 償却費(万円) 定額法 期末簿価(万円) 定率法 償却費(万円) 定率法 期末簿価(万円)
1年目 1,000 200 800 400 600
2年目 200 600 240 360
3年目 200 400 144 216
4年目 200 200 86 130
5年目 200 0 52 78
合計 1,000 922

※定率法は償却不足分が生じるため、実務では最終年度に残存1円まで償却する調整(改定償却率・保証率の適用)が行われますが、試験では問題文の指示に従います。上表は単純計算の例示です。

定率法は1〜2年目に償却費が大きく、後半に向かって少なくなる構造です。初期に費用が集中するため、利益は前半に圧縮されます。これがタックスシールドの効果につながります。

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定率法の表を手で計算してみたとき、1年目(400万円)→2年目(240万円)→3年目(144万円)と、かけ算の連鎖で自動的に逓減していくのが面白かったです。「期首簿価が小さくなれば償却額も小さくなる」という当たり前の構造なのに、実際に数字を追うまでピンとこなかった。計算式よりも数値の変化を見た方がわかりやすいこともあるのだと思います。

財務諸表への影響

減価償却費を計上すると、財務3表それぞれにどう影響するかを整理します。「費用が増える→利益が減る→税金も減る→でも現金は出ていかない」という連鎖を追うことが大切です。

P/L(損益計算書)
販売費及び一般管理費または製造原価に減価償却費が計上される
費用の増加 → 営業利益・経常利益・税引前利益の減少
課税所得が減る → 法人税等も減少(タックスシールド効果)
B/S(貸借対照表)
固定資産の部の有形固定資産(純額)が減少する
B/Sには「取得原価」と「減価償却累計額」を並記して帳簿価額(純額)を示す形式が一般的
純資産(利益剰余金)も減益分だけ減少する
CF計算書(間接法)
営業CF(間接法)の調整項目として純利益に加算される
現金支出を伴わない費用のため「戻す」イメージ。営業CFを押し上げる効果がある
「減価償却費の大きい企業は営業CFが利益より大きくなりやすい」という実務上の含意がある

次に、タックスシールド(節税効果)を数値で確認します。

タックスシールドの計算例(実効税率30%の場合)
定額法 1年目の償却費
200万円
タックスシールド(定額法)
200万円 × 30% = 60万円の節税
定率法 1年目の償却費
400万円
タックスシールド(定率法)
400万円 × 30% = 120万円の節税
定率法は初期に大きな費用を計上するため、早い時期に多くの税金を圧縮できる。総節税額は同じでも、お金の時間価値を考えると定率法の方が有利になる。

タックスシールドとは「減価償却費という費用が課税所得を減らすことで得られる節税メリット」のことです。設備投資のNPV(正味現在価値)計算では、このタックスシールドの現在価値も考慮します。

減損会計との違い

減価償却と混同しやすいのが減損会計です。どちらも固定資産の価値を減らす処理ですが、性質がまったく異なります。

DEPRECIATION
減価償却
計画的・規則的な費用配分です。固定資産の取得当初から耐用年数にわたって毎期費用を計上します。経営状況に関係なく、あらかじめ決めたルールで淡々と処理します。

発生のタイミングは毎期(定期的)。金額はあらかじめ計算できます。
IMPAIRMENT
減損会計
臨時的・一時的な価値下落の認識です。資産の収益性が著しく低下し、帳簿価額を回収できないと判断されたときに、回収可能価額まで帳簿価額を切り下げます。

発生のタイミングは不規則(事業環境の悪化時等)。金額は事後的に判明します。
比較軸 減価償却 減損会計
性質 計画的な費用配分 臨時的な価値下落の認識
発生タイミング 毎期(耐用年数にわたり) 収益性低下が判明したとき
処理の根拠 費用収益対応の原則 資産の回収可能性の評価
戻し入れ 原則なし 日本基準では禁止(一度減損したら戻せない)
予測可能性 金額・時期とも事前に計算可能 金額・時期とも不確実

過去問で確認する

過去問 — 平成27年度 第10問(財務・会計) 定率法・計算
取得原価600万円、耐用年数6年、定率法の償却率0.333の機械装置について、取得から3年経過後の期首帳簿価額として、最も適切なものを選べ。(残存価額はゼロとする)
  • ア 66.7万円
  • イ 133.4万円
  • ウ 177.9万円(正解)
  • エ 266.7万円
解説
定率法は「期首帳簿価額 × 償却率」で計算します。
1年目期首:600万円 → 償却費:600×0.333=200万円 → 期末簿価:400万円
2年目期首:400万円 → 償却費:400×0.333≒133万円 → 期末簿価:267万円
3年目期首:267万円 → 償却費:267×0.333≒89万円 → 期末簿価:178万円
よって3年経過後(4年目期首)の帳簿価額は約177.9万円です。定率法では期首残高が減るほど償却費も減る、という逓減構造を追うことで正確に計算できます。
過去問 — 令和2年度 第7問(財務・会計) CF計算書・減価償却費の加算
間接法によるキャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」の計算において、減価償却費はどのように処理されるか。最も適切なものを選べ。
  • ア 当期純利益から差し引く(マイナス調整)
  • イ 当期純利益に加算する(プラス調整)(正解)
  • ウ 投資活動によるキャッシュフローに計上する
  • エ 財務活動によるキャッシュフローに計上する
解説
間接法では「当期純利益」を起点に、現金の動きとのズレを調整して営業CFを求めます。減価償却費は費用として計上されるが現金は出ていかない(非資金費用)ため、P/Lでは利益を減らしています。それを「戻す」ためにプラス調整します。「費用として引かれたが、実際にはキャッシュが出ていないので加算する」という論理です。定率法・定額法どちらでも処理の方向は同じです。
過去問 — 令和4年度 第9問(財務・会計) 定額法・定率法の比較
定率法と定額法に関する記述として、最も適切なものを選べ。
  • ア 定率法では、毎期の償却費が等しくなる
  • イ 定額法では、耐用年数の後半ほど償却費が大きくなる
  • ウ 定率法では、初期に償却費が多く計上されるため、早い時期に課税所得を圧縮できる(正解)
  • エ 定額法と定率法では、耐用年数全体の総償却額が異なる
解説
ア:定率法ではなく定額法の説明です。定率法は期首簿価に率をかけるため、年々逓減します。イ:定額法は毎期一定額なので後半に大きくなることはありません。ウ:正しい。定率法は初期に大きな償却費を計上するため、課税所得の圧縮(タックスシールド)を早い段階で得られます。エ:どちらの方法でも総償却額は取得原価(−残存価額)で同じです。違いはタイミングだけです。

まとめ

  • 減価償却は費用収益対応の原則に基づき、取得原価を耐用年数にわたって配分する仕組み
  • 定額法は毎年一定額(取得原価−残存価額)÷耐用年数。計算が単純で利益が安定する
  • 定率法は期首簿価×償却率。初期に償却費が大きく、年々逓減する構造
  • 減価償却費は非資金費用。現金は動かないため、CF計算書(間接法)では純利益に加算される
  • タックスシールド=減価償却費×実効税率。定率法は初期の節税効果が大きい
  • 減損会計は臨時的な価値下落の認識。計画的な費用配分である減価償却とは性質が異なる
U のメモ
「CF計算書(間接法)で減価償却費をなぜプラスするのか」という問いは、最初は単純暗記で乗り切ろうとしていました。でも「現金は購入時にすでに出ていった。償却時には出ていかない。だから費用として引いた分を戻す」という順番で考えると、符号の理由が腑に落ちました。タックスシールドも、「総節税額は定額法も定率法も同じ。でもお金の時間価値を考えると、早めに節税できる定率法の方が有利」というロジックを理解してから、過去問の選択肢が読みやすくなった気がします。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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