U貿易条件の問題で「FOB」「CIF」という略語が並んでいたとき、正直なところ最初は呪文のように見えました。でも「船が嵐で沈んだとき、誰が損をするのか」という一点に絞って整理したら、11条件すべてがすっきり頭に入りました。同じように感じていらっしゃる方のお役に立てましたら嬉しいです。
国際取引では「費用をどこまで売主が負担するか」「リスクはいつ買主に移るか」を明確にしないと、思わぬトラブルにつながります。インコタームズ(Incoterms)はその取り決めを国際標準化したルールです。2020年版では11条件が定められており、中小企業診断士試験でも経営法務の頻出論点のひとつです。
インコタームズとは
インコタームズ(Incoterms: International Commercial Terms)は、国際商業会議所(ICC)が制定する貿易条件の国際標準規則です。売主と買主がそれぞれ「どこまで費用を負担するか」「どの時点でリスクが移転するか」を、わずか3文字の略語で共有できます。
2020年版(Incoterms 2020)では11条件が定められており、試験ではこの2軸を正確に把握することが求められます。
11条件を4グループで整理
11条件はアルファベットの頭文字によりE・F・C・Dの4グループに分類されます。E群からD群へ進むにつれて、売主の負担する費用・リスクが大きくなっていきます。「出発地から仕向地まで、どこまで売主が責任を持つか」というイメージで捉えると覚えやすいです。
| グループ | 条件名(略語) | リスク移転点 | 売主の費用負担 | 輸送方式 |
|---|---|---|---|---|
| E群(出発地) | 工場渡し(EXW) | 売主の工場・倉庫 | 最小限(荷渡しのみ) | 全輸送方式 |
| F群(主要輸送費買主負担) | 運送人渡し(FCA) | 指定地での運送人への引渡し | 指定地まで | 全輸送方式 |
| 船側渡し(FAS) | 船積み港の船側 | 船側まで | 海上・内水路 | |
| 本船渡し(FOB) | 本船への積込み完了時 | 本船への積込みまで | 海上・内水路 | |
| C群(主要輸送費売主負担) | 運賃込み(CFR) | 本船への積込み完了時 | 仕向港までの運賃 | 海上・内水路 |
| 運賃保険料込み(CIF) | 本船への積込み完了時 | 仕向港までの運賃+保険料 | 海上・内水路 | |
| 輸送費込み(CPT) | 指定地での運送人への引渡し | 仕向地までの輸送費 | 全輸送方式 | |
| 輸送費保険料込み(CIP) | 指定地での運送人への引渡し | 仕向地までの輸送費+保険料 | 全輸送方式 | |
| D群(仕向地) | 仕向地持込渡し(DAP) | 仕向地での指定場所 | 仕向地まで(関税除く) | 全輸送方式 |
| 荷卸し込み持込渡し(DPU) | 仕向地での荷卸し完了時 | 仕向地+荷卸し費用 | 全輸送方式 | |
| 関税込み持込渡し(DDP) | 仕向地での指定場所 | 最大限(関税・輸入通関も含む) | 全輸送方式 |
試験頻出の5条件を深掘り
11条件のうち試験で問われやすいのは、EXW・FCA・FOB・CIF・DDPの5条件です。特にFOBとCIFの違いは、「リスク移転点は同じなのに費用負担が違う」という少し紛らわしいポイントがあります。
ネット通販で考えるリスク負担の感覚
インコタームズの概念を身近な場面で捉えてみます。Amazon.co.jpで商品を注文したとき、到着前に配送中の破損が起きたらどうなるでしょうか。
倉庫から発送
→ここで破損
未受取
Amazonは「配送中の破損は補償します」と言いますね。これはFOBでいえばリスクを出発地側(Amazon)が最後まで持っている状態に近いです。一方でEXWなら「工場の受け取り時点で状態を確認してください」となり、それ以降は買主の責任になります。
信用状(L/C)と船荷証券(B/L)
貿易取引ではインコタームズの条件とあわせて、決済の仕組みも理解しておく必要があります。特に試験では「信用状(L/C)」と「船荷証券(B/L)」が頻出です。
試験頻出ポイントの整理
試験でよく問われるポイントを整理します。特にFOBとCIFの関係、EXWとDDPの対称性は繰り返し出題されています。
- EXWは売主の最小義務条件:輸出通関も買主が行う。売主は工場・倉庫での引渡しのみ責任を負います
- DDPは売主の最大義務条件:輸入通関・関税まで売主負担。EXWの完全な対極です
- FOBのリスク移転点:「本船の手すりを超えた時点」という旧Incotermsの表現は廃止。現行(2010・2020)は「本船への積込み完了時点」です
- CIFの「二重構造」に注意:費用負担は仕向港まで(運賃+保険料)、リスク移転は船積み港(積込み完了時)という非対称な設計です
- FOB・FAS・CFR・CIFは海上・内水路輸送専用:コンテナ輸送などにはFCA・CIPの使用が推奨されています(Incoterms 2020)
- DATがDPUに改称(2020年版):2010版のDAT(荷卸し込み持込渡し)は2020版でDPUに名称変更。内容は同等です
私がインコタームズで最初につまずいたのは「CIFはリスクも仕向港まで売主が負う」という勘違いでした。「費用と保険料を負担するなら当然リスクも…」という直感が間違えさせるんです。
実際は「保険をかけるのは売主だが、保険金を受け取る権利(ベネフィシャリー)は積込み後は買主側」という仕組みになっています。売主が保険の手配をする義務があるだけで、リスクはとっくに移転しています。この構造を一度腑に落とすと、CIF関連の問題では迷わなくなりました。









