IS-LM分析を図解で完全理解|財政政策・金融政策の効果をグラフで読む

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ミクロ経済学の需給曲線に少し慣れてきたところで、マクロ経済学のIS-LM分析に進みました。最初は「ISって何の略?」「LMって何?」と記号の意味すら分からなかったのですが、財市場と貨幣市場を同時に見る道具だとわかってから、グッと整理できました。

IS-LM分析は、財市場と貨幣市場を同時に均衡させる利子率と国民所得の組み合わせを求めるマクロ経済学の基本ツールです。財政政策・金融政策の効果を可視化できるため、診断士1次試験の経済学科目で繰り返し出題されます。
最頻出 経済学科目内
2曲線 IS・LM
4パターン 頻出出題形式
目次

IS曲線・LM曲線とは何か

IS-LMモデルは2本の曲線で成り立っています。IS曲線は財市場の均衡条件を、LM曲線は貨幣市場の均衡条件を、それぞれ利子率(r)と国民所得(Y)の平面上に描いたものです。まず2本の曲線の意味と形状を整理します。

IS曲線
財市場の均衡ライン
Investment = Saving(投資=貯蓄)が成り立つ利子率と国民所得の組み合わせ。
利子率が上がると投資が減り、国民所得も下がります。
右下がり
LM曲線
貨幣市場の均衡ライン
Liquidity preference = Money supply(流動性選好=貨幣供給)が成り立つ組み合わせ。
所得が増えると貨幣需要が増え、利子率が上がります。
右上がり

IS曲線の詳細: Investment(投資)= Saving(貯蓄)が成り立つ利子率と国民所得の組み合わせを示します。利子率が高いと投資が抑制され、乗数効果を通じて国民所得も下がるため、曲線は右下がりになります。

IS曲線グラフ Y r IS r↑ → 投資↓ → Y↓ 利子率上昇で投資抑制
IS曲線:右下がり。利子率↑ → 投資↓ → 国民所得↓の関係を表す
IS曲線が右下がりになる理由
利子率↑ → 投資の収益性が下がり投資↓ → 乗数効果で国民所得Y↓
利子率と国民所得は逆方向に動くため、IS曲線はrY平面上で右下がりの形をとります。

LM曲線の詳細: Liquidity preference(流動性選好)= Money supply(貨幣供給)が成り立つ利子率と国民所得の組み合わせを示します。所得が増えると取引目的の貨幣需要が増え、供給が一定なら利子率が上がるため、曲線は右上がりになります。

LM曲線グラフ Y r LM Y↑ → 貨幣需要↑ → r↑ 所得増で金利上昇
LM曲線:右上がり。所得↑ → 貨幣需要↑ → 利子率↑の関係を表す
LM曲線が右上がりになる理由
所得Y↑ → 取引需要が増え貨幣需要↑ → マネーサプライ一定なら利子率r↑
所得と利子率は同方向に動くため、LM曲線はrY平面上で右上がりの形をとります。

IS-LM図解:均衡点を読む

IS曲線とLM曲線を同じrY平面に描くと、2本の曲線が交わる点(均衡点E)が生まれます。この交点が、財市場と貨幣市場を同時に均衡させる唯一の組み合わせです。均衡利子率r₀・均衡国民所得Y₀がここで決まります。

IS-LM均衡グラフ Y r E r₀ Y₀ IS LM
IS曲線とLM曲線の交点が均衡点E。このとき財市場・貨幣市場が同時に均衡しており、均衡利子率r₀・均衡国民所得Y₀が決まります。
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グラフの交点がすべての答えになっている、という見方が最初はわかりにくかったです。でも「財市場の均衡ラインと貨幣市場の均衡ラインが同時に成り立つ点」と考えると、交点が自然な答えだと感じられるようになりました。

日常の場面に置き換えてみると

IS曲線・LM曲線の理屈は抽象的に見えますが、日常的な経済現象に置き換えると直感が鍛えられます。

IS-LMを身近な例で考える
IS曲線のイメージ
住宅ローン金利が上がると家を買う人が減ります(投資減)。家が売れなければ建設業の雇用も減り、関連消費も落ちます(国民所得減)。金利↑ → 投資↓ → 所得↓という流れが「IS曲線が右下がり」の直感的な意味です。
LM曲線のイメージ
景気が良くなると企業も個人もお金をたくさん使いたくなります(貨幣需要増)。でも世の中のお金の量(マネーサプライ)は中央銀行が決めていてすぐには変わりません。需要が増えてもお金が足りないので、金利が上がります。所得↑ → 貨幣需要↑ → 金利↑が「LM曲線が右上がり」の意味です。

財政政策・金融政策の効果(IS-LM分析の真骨頂)

IS-LM分析の最大の威力は、財政政策と金融政策が国民所得(Y)と利子率(r)にどう影響するかを、グラフのシフトで視覚的に整理できる点にあります。

IS曲線がシフトする場合(財政政策)

  • 右シフト:政府支出増加・減税 → 総需要増 → IS右へ → Y↑・r↑
  • 左シフト:政府支出削減・増税 → 総需要減 → IS左へ → Y↓・r↓
  • クラウディングアウト:財政拡張でrが上がり民間投資が抑制される効果も生じます

LM曲線がシフトする場合(金融政策)

  • 右シフト:マネーサプライ増加(金融緩和)→ LM右へ → Y↑・r↓
  • 左シフト:マネーサプライ減少(金融引締)→ LM左へ → Y↓・r↑
  • 流動性の罠:極端に低いrでLMが水平になると金融政策が効かなくなる状態
財政政策 Fiscal Policy
政府支出の増減や税制変更によって財市場(IS曲線)を動かします。
公共投資拡大 → IS右シフト → Y上昇・r上昇。
IS右シフト → Y↑ ・ r↑
注意:rの上昇により民間投資が抑制される「クラウディングアウト」が発生します。
金融政策 Monetary Policy
中央銀行がマネーサプライを変化させることで貨幣市場(LM曲線)を動かします。
金融緩和 → LM右シフト → Y上昇・r低下。
LM右シフト → Y↑ ・ r↓
注意:利子率が極低水準のとき「流動性の罠」が生じ、金融政策が無効化されることがあります。
ISシフト図 Y r IS IS’ → 右シフト
財政拡張:IS右シフト
LMシフト図 Y r LM LM’ → 右シフト
金融緩和:LM右シフト
政策 シフト 国民所得Y 利子率r 備考
財政拡張(公共投資↑) IS右シフト ↑ 上昇 ↑ 上昇 クラウディングアウトあり
財政緊縮(増税) IS左シフト ↓ 低下 ↓ 低下
金融緩和(マネー↑) LM右シフト ↑ 上昇 ↓ 低下 流動性の罠で無効化も
金融引締(マネー↓) LM左シフト ↓ 低下 ↑ 上昇

流動性の罠:利子率が極めて低い水準でLM曲線が水平になる状態。マネーサプライを増やしてもrがそれ以上下がらず、Yも変化しない。

流動性の罠グラフ Y r 流動性の罠の領域 LM’ LM → マネー↑してもY変わらず
流動性の罠:LM曲線の左部が水平(青太線)になると、金融緩和でLMを右シフトさせてもYは不変
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財政政策と金融政策でIS・LMのどちらがシフトするかが最初に迷うポイントでした。財政=政府が直接お金を使う=財市場のIS、金融=お金の量を変える=貨幣市場のLM、と結びつけて覚えてから間違えなくなりました。

診断士試験 頻出パターン

IS-LM分析の頻出パターンを4つ整理します。★の数は出題頻度の目安です。

★★★ 政策の組み合わせ問題
「財政政策と金融政策を同時に実施した場合のYとrへの影響は?」という複合問題。IS・LMそれぞれのシフト方向を整理してから考えましょう。表を丸暗記より、シフトの理屈から導く方が応用が利きます。

例:財政拡張(IS右シフト)+金融緩和(LM右シフト)→ Yは確実に上昇。rはシフト幅による。
★★★ クラウディングアウト
財政拡張でIS右シフト → rが上昇 → 民間投資が抑制される。「財政政策の効果が金利上昇によって部分的に相殺される」という考え方。

LM曲線が急勾配ほどクラウディングアウトが大きく(rが大きく上昇)、LM曲線が水平(流動性の罠)に近いほどクラウディングアウトは小さい(rがほぼ変わらない)点も頻出です。
★★ 流動性の罠
利子率が極めて低い水準でLM曲線が水平になる状態。マネーサプライを増やしてもrがそれ以上下がらず(投機的貨幣需要が無限に増える)、Yも変化しない。金融政策が効かない局面として出題されます。

このとき財政政策(IS右シフト)は有効で、クラウディングアウトも発生しません(rが上がらないため)。
★★ IS・LMの傾きと政策効果(重要!)
  • IS曲線が急(投資の利子弾力性が小さい) → LM右シフトしてもrが下がりにくい → 金融政策の効果小
  • LM曲線が急(貨幣需要の利子弾力性が小さい) → IS右シフトするとrが大きく上昇 → クラウディングアウトが大きい(財政政策の効果小)
傾きと政策効果はセットで覚えましょう。
IS曲線の傾き比較 Y r 急(弾力性小)
IS曲線の傾き:急なほど金融政策の効果小
LM曲線の傾き比較 Y r 急(弾力性小)
LM曲線の傾き:急なほどクラウディングアウト大

まとめ

IS-LM分析 理解チェックリスト
  • IS曲線 = 財市場均衡の軌跡(右下がり)。利子率↑ → 投資↓ → Y↓
  • LM曲線 = 貨幣市場均衡の軌跡(右上がり)。Y↑ → 貨幣需要↑ → r↑
  • 財政拡張 → IS右シフト → Y↑・r↑(クラウディングアウトあり)
  • 金融緩和 → LM右シフト → Y↑・r↓
  • 流動性の罠・クラウディングアウト・曲線の傾きと政策効果は頻出セット
  • IS・LMの傾き(利子弾力性)が政策効果の大きさを左右する
Uのメモ
IS-LMは最初「記号が多くて難しそう」と思っていましたが、財市場と貨幣市場を「同時に見る」道具だと理解してから急に楽になりました。グラフが頭に入ると、シフトの話が「当然そうなる」と感じられるようになります。政策効果の表は一度自分の手で書いて、理屈から確認してみることをお勧めします。
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IS-LMは経済学の中でも頻出中の頻出です。グラフの形と2曲線のシフト方向を体に染み込ませておくと、応用問題でも落ち着いて対処できます。一緒に丁寧に押さえていきましょう。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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