リーダーシップ理論まとめ|PM理論・SL理論・変革型リーダーシップを図解で整理

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PM理論の「P」と「M」が何の略か、試験中に頭が真っ白になったことがあります。それをきっかけに、リーダーシップ理論を一度ちゃんと整理しようと思いました。特性理論から始まり、PM理論・マネジリアル・グリッド・SL理論・変革型リーダーシップまで、体系として頭に入ると、個別の理論が格段に覚えやすくなります。

リーダーシップ論は「どんなリーダーが組織を動かせるのか」を探求してきた学問領域です。研究の歴史は大きく3段階に分かれます。まず生まれつきの資質に注目した特性理論、次に観察可能な行動パターンを分析した行動理論(PM理論・マネジリアル・グリッド)、そして「状況によって最適なリーダーシップは変わる」という状況適合理論(SL理論)へと発展してきました。さらに近年は、部下の内発的動機を引き出す変革型リーダーシップが注目されています。
目次

リーダーシップ理論の体系|3段階の発展

「優れたリーダーとは何か」という問いへの答えは、時代とともに変化してきました。各アプローチがどのような問題意識から生まれたかを押さえると、個別理論の意味が見えやすくなります。

STAGE 01
特性理論(資質論)
1940年代まで
リーダーは生まれながらの特性(知性・自信・社交性・決断力など)を持つという考え方。「リーダーは生まれつき」が前提で、後天的育成を否定する点が批判を受けた。どんな特性が必要かを列挙できても、状況の違いが考慮されていなかった。
STAGE 02
行動理論
1940〜60年代
リーダーの「何をするか(行動)」に注目。PM理論(三隅二不二)やマネジリアル・グリッド(ブレーク&ムートン)が代表例。訓練・育成によってリーダー行動を変えられるという前向きな視点が支持された。
STAGE 03
条件適合理論(状況理論)
1960年代以降
「唯一最善のリーダーシップスタイルはない」という考え方。部下の成熟度・状況によって適切なスタイルを変えるべきとする。ハーシー&ブランチャードのSL理論が代表的。試験頻出の理論。
POINT — 試験対策の視点
  • 特性理論:個別の特性名よりも「限界(状況を考慮しない)」を理解しておく
  • 行動理論:PM理論の4類型とその名称、マネジリアル・グリッドの座標と5類型が出やすい
  • 状況理論:SL理論は「成熟度と4スタイルの対応」が最頻出、逆対応に注意

PM理論|三隅二不二の行動類型

PM理論は、日本の社会心理学者・三隅二不二(みすみ じゅうじ)が提唱した理論です。リーダーシップ行動を「P機能」と「M機能」の2軸で評価し、その大小の組み合わせで4類型に分類します。日本発の理論であることも押さえておきたいポイントです。

P
Performance function(課題達成機能)
目標達成・課題解決に向けた行動
目標を設定し、計画を立て、指示・命令によってチームの行動を方向づける機能。生産性向上・目標達成・問題解決に直結する行動群を指す。
目標設定 計画立案 指示・命令 評価・統制
M
Maintenance function(集団維持機能)
集団の一体感・良好な人間関係の維持
メンバー間の対立を調整し、モチベーションを高め、グループの凝集性・協調性を維持・強化する機能。人間関係に焦点を当てた行動群を指す。
関係維持 対立調整 動機づけ 相談対応
M機能(集団維持)の強弱
P機能(課題達成)
PM
PM型
P・Mともに高い。最も理想的なリーダー像。目標達成力と人間関係力を両立し、高い成果と組織の安定を同時に実現できる。
最も有効
pM
pM型
M機能は高いがP機能が低い。メンバーの人間関係や雰囲気は良好だが、目標達成・生産性の向上が弱くなりやすい。
人間関係重視
Pm
Pm型
P機能は高いがM機能が低い。目標達成・指示は明確だが、メンバーとの関係が希薄になりやすく、長期的には離職や士気低下を招く恐れがある。
課題達成重視
pm
pm型
P・Mともに低い。目標も人間関係も不十分で、最も機能しないリーダータイプとされる。組織の停滞・崩壊につながりやすい。
最も非効果的
M高
M低

大文字(P/M)は機能が高いことを示し、小文字(p/m)は機能が低いことを表します。PM型が4類型中で最も有効とされますが、三隅はどの型が「正しい」かより「それぞれの状況でどう補完するか」を重視しました。

マネジリアル・グリッド|ブレーク&ムートンの5類型

ブレーク(Blake)とムートン(Mouton)が提唱したマネジリアル・グリッドは、「業績(仕事)への関心」と「人間への関心」をそれぞれ1〜9の9段階で評価し、マトリクス上の座標でリーダーシップスタイルを表します。PM理論との違いは、各軸が9段階のグラデーションを持つ点です。試験では主要5スタイルの座標と名称が問われます。

(1,1)
消極型
(無関心型)
業績への関心も人間への関心も最低水準。最低限の努力しかしない。組織においては「無気力型」とも呼ばれる。
業績1 / 人間1
(9,1)
権威服従型
(タスク型)
業績への関心が最大、人間への関心が最小。成果優先で人間関係を軽視。短期的な効率は高いが、メンバーの満足度・定着率が低くなりやすい。
業績9 / 人間1
(1,9)
カントリークラブ型
(人間関係型)
人間への関心が最大、業績への関心が最小。職場の雰囲気・人間関係を優先し、生産性が低くなる傾向がある。
業績1 / 人間9
(5,5)
中庸型
(組織人間型)
業績・人間への関心が中程度のバランス型。妥協的で「そこそこ」の成果に甘んじるリスクがある。
業績5 / 人間5
(9,9)
チーム型
(理想型)
業績・人間への関心がともに最大。メンバーが自主的・協力的に高い目標に向かう状態。ブレーク&ムートンが目指すべきと主張した理想スタイル。
業績9 / 人間9

PM理論とマネジリアル・グリッドの共通点:どちらも「仕事(課題・業績)への関心」と「人間(関係・維持)への関心」の2軸でリーダーシップを評価します。違いは評価スケール(2値 vs 9段階)と提唱者です。試験では混同しないよう、三隅=PM理論、ブレーク&ムートン=マネジリアル・グリッドと結びつけて覚えておきましょう。

SL理論|部下の成熟度に応じた4スタイル

ハーシー(Hersey)とブランチャード(Blanchard)が提唱したSL理論(Situational Leadership)は、「唯一最善のリーダーシップスタイルは存在せず、部下の成熟度(レディネス)に応じてスタイルを変えるべきだ」という考え方です。行動理論への反省から生まれた、条件適合理論の代表例として頻出します。

MATURITY M1
S1:指示的スタイル
低成熟:能力も意欲も低い 仕事への意欲はあっても、能力・経験が乏しい段階。または能力・意欲ともに低い状態。
具体的な指示・方向づけを行い、細かく監視・統制するスタイル。「何を・いつ・どのように」を明確に伝える。タスク志向が高く、関係志向は低い。
MATURITY M2
S2:説得的スタイル
中低成熟:意欲はあるが能力が低い やる気はあるが、まだスキルが追いついていない段階。
指示を出しながら、その理由を説明し、部下の意見・疑問にも応答するスタイル。双方向コミュニケーションを重視。タスク志向・関係志向ともに高い。
MATURITY M3
S3:参加的スタイル
中高成熟:能力はあるが意欲が低い スキルはあるが自信がない、あるいはモチベーションが低下している段階。
意思決定に部下を参加させ、アイデアや判断を促すスタイル。リーダーは支援・励ましに徹する。タスク志向は低く、関係志向が高い。
MATURITY M4
S4:委任的スタイル
高成熟:能力も意欲も高い 自律的に仕事ができ、モチベーションも高い段階。
仕事の遂行を部下に委ねるスタイル。リーダーは大きな方向性のみを示し、細かい指示・支援は最小限。タスク志向・関係志向ともに低い。
← 成熟度:低 成熟度:高 →
重要:「成熟度が高いほど介入を増やす」は誤り。高成熟(M4)ほどリーダーの介入は減り、委任度が上がります。「指示的→説得的→参加的→委任的」という流れで、タスク志向も関係志向も最終的に低下する点が特徴です。試験では「M3で委任的」「M1で参加的」のような誤った対応を問う問題が出やすいため注意が必要です。

変革型リーダーシップ vs 取引型リーダーシップ

バーンズ(Burns)が提唱し、バス(Bass)が発展させた変革型リーダーシップ(Transformational Leadership)は、部下の価値観・信念・ニーズを変革し、期待以上のパフォーマンスを引き出す点が特徴です。これに対し、報酬と努力を交換する取引型(Transactional)との対比で理解するのが効果的です。

比較軸 変革型リーダーシップ 取引型リーダーシップ
基本原理 部下の価値観・動機・ニーズを変革し、内発的な献身を引き出す 報酬(給与・昇進・称賛)と努力・業績の交換関係を基盤にする
焦点 長期的・変革的。ビジョンで組織を変える 短期的・維持的。既存システムの範囲内で機能する
動機づけ 内発的動機。使命感・共有ビジョンへの共感 外発的動機。報酬・ペナルティへの反応
部下への影響 期待を超えた成果(Extra Performance)を生み出す 期待どおりの成果(Expected Performance)にとどまりやすい
危機・変革期 特に有効。不確実性の高い環境で組織を方向づける 安定・効率が求められる環境に適している
代表的行動 4I(理想化された影響力・鼓舞するモチベーション・知的刺激・個別配慮) 条件的報酬・例外管理(積極的/消極的)
理想化された影響力
Idealized Influence
リーダーが高い倫理観・信念を体現し、部下からのロールモデルとして尊敬・信頼を獲得する。カリスマ性とも呼ばれる。「この人のために頑張りたい」という感情が生まれる。
鼓舞するモチベーション
Inspirational Motivation
魅力的なビジョンを示し、その実現に向けて部下の熱意と行動を引き出す。高い期待を示し、チームとしての意欲・一体感を高める。単なる「目標設定」を超えた感情的な訴求が特徴。
知的刺激
Intellectual Stimulation
既存の前提・思い込みに疑問を持たせ、創造的・革新的な問題解決を促す。「当たり前」を問い直す機会を与え、部下の知的好奇心と自主的思考を引き出す。失敗を責めず、挑戦を奨励する姿勢も含む。
個別配慮
Individualized Consideration
部下一人ひとりの成長ニーズ・関心・能力の違いを理解し、個別にコーチング・メンタリングを行う。「皆同じ扱い」ではなく、個人に合わせた成長支援によって、潜在力を最大限に引き出す。
4I の語呂合わせ記憶法
  • 「理(Idealized)・鼓(Inspirational)・知(Intellectual)・個(Individualized)」— 理・鼓・知・個の4文字で覚える
  • または「カリスマ・ビジョン・疑問・個別」という行動の内容で記憶するのも有効
  • 試験では「4I」の名称の日本語訳と、それぞれがどんな行動かを問われるパターンが多い

サーバントリーダーシップとリーダーシップ vs マネジメントの違い

サーバントリーダーシップはロバート・グリーンリーフ(Greenleaf)が1970年代に提唱した概念で、「リーダーはまず奉仕者(servant)であるべき」という逆転の発想に基づきます。また、リーダーシップとマネジメント(管理)は異なる概念であることも、試験で問われるポイントです。

サーバントリーダーシップ — 提唱者:ロバート・グリーンリーフ(1970年代)
「まず奉仕し、そしてリードする(Servant first, then leader)」
中核的考え方
  • リーダーは地位・権限を使って部下を「支配」するのではなく、部下の成長・ニーズへの「奉仕」を第一義とする
  • 部下が自律的に働けるよう環境を整え、障壁を除去することがリーダーの役割
  • リーダー自身の権力や利益よりも、フォロワーと組織全体のウェルビーイングを優先する
  • 傾聴・共感・説得による影響力を行使し、命令・強制を最小化する
サーバントリーダーの10の特性(グリーンリーフ)
  • 傾聴(Listening)
  • 共感(Empathy)
  • 癒し(Healing)
  • 気づき(Awareness)
  • 説得(Persuasion)
  • 概念化(Conceptualization)
  • 先見力(Foresight)
  • 執事役(Stewardship)
  • 人々の成長への関与(Commitment to Growth)
  • コミュニティの構築(Building Community)
リーダーシップ(Leadership)
方向を示す・変革を起こす
  • 組織のビジョン・方向性を設定する
  • 変化・革新を主導し、現状に挑戦する
  • フォロワーの内発的動機を引き出す
  • 「なぜその方向か」を示す(Why)
  • 正式な権限がなくても発揮できる
  • 不確実・変革的な状況で特に発揮される
マネジメント(Management)
秩序を維持する・効率化する
  • 計画・予算・スケジュールを策定する
  • 組織・人員・リソースを調整する
  • 進捗を管理・統制し、問題を修正する
  • 「どのように達成するか」を担う(How)
  • 正式な役職・権限と結びつきやすい
  • 安定・継続的な業務運営で中心的役割を果たす
コッター(Kotter)は「マネジメントは複雑さへの対処、リーダーシップは変化への対処」と整理しました。どちらが上位概念というわけではなく、組織が健全に機能するためには両方が必要です。試験では「リーダーシップとマネジメントは同義である」という誤りを見抜く問題が出ることもあります。

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企業経営理論 — PM理論 1次試験対策

PM理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • Pは「People function(人間関係機能)」を、Mは「Mission function(使命遂行機能)」をそれぞれ表す。
  • PM型よりもpM型の方が、長期的な組織成果において有効とされる。
  • PM理論はPとMの機能を組み合わせた4類型でリーダーシップを分類し、PM型が最も効果的とされる。
  • PM理論はアメリカの研究者ブレーク&ムートンによって提唱された。
解説
正解はウ。PM理論は日本の三隅二不二が提唱した理論で、P(Performance=課題達成機能)とM(Maintenance=集団維持機能)の大小の組み合わせでPM/Pm/pM/pmの4類型に分類します。PM型が最も有効とされます。アはPとMの意味が誤り(PはPerformance、MはMaintenance)、イはPM型が最も有効なので誤り、エはブレーク&ムートンはマネジリアル・グリッドの提唱者であり誤りです。
企業経営理論 — SL理論 1次試験対策

ハーシーとブランチャードのSL(Situational Leadership)理論に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • 部下の成熟度が最も高い段階(M4)では、リーダーはタスク志向・関係志向ともに高い「参加的スタイル」をとるべきとされる。
  • 部下の成熟度に応じてリーダーシップスタイルを変えるべきであり、成熟度が最も高い段階(M4)では委任的スタイルが有効とされる。
  • SL理論では、いかなる状況でもタスク志向の高いスタイルが有効であるとしている。
  • SL理論はコッターによって提唱され、行動理論の延長として位置づけられる。
解説
正解はイ。SL理論では成熟度M1→M4の段階に応じて、指示的(S1)→説得的(S2)→参加的(S3)→委任的(S4)とスタイルを変えます。M4(高成熟)では委任的スタイルとなり、タスク志向・関係志向ともに低くなります。アはM4に対応するスタイルを誤っており(正しくは委任的)、ウは唯一最善スタイルを否定するSL理論の趣旨と矛盾し、エはハーシー&ブランチャードが提唱者であり誤りです。
企業経営理論 — 変革型リーダーシップ 1次試験対策

変革型リーダーシップの特徴に関する記述として、最も適切なものはどれか。

  • 報酬と業績の交換関係を基盤とし、外発的動機づけによって部下の行動を管理する。
  • 部下の現状の目標・ニーズの充足を優先し、期待どおりの成果を引き出すことに専念する。
  • タスク志向と関係志向の2軸でリーダー行動を分類し、(9,9)型が最も理想的とされる。
  • 理想化された影響力・鼓舞するモチベーション・知的刺激・個別配慮(4I)によって、部下に期待以上の成果をもたらす。
解説
正解はエ。変革型リーダーシップの中心は「4I(理想化された影響力・鼓舞するモチベーション・知的刺激・個別配慮)」であり、部下の価値観・動機を変革し期待以上の成果(Extra Performance)を引き出します。アは取引型リーダーシップの説明です。イも取引型の特徴で、変革型は期待を超える成果を目指します。ウはマネジリアル・グリッドの説明で、変革型リーダーシップとは別の理論です。

まとめ

リーダーシップ理論 — 試験対策まとめ
特性理論:生まれつきの資質でリーダーシップを説明。「育成に応用しにくい」という批判で行動理論へと発展した。
PM理論(三隅二不二):P=課題達成機能、M=集団維持機能。4類型(PM/Pm/pM/pm)のうちPM型が最も有効。日本発の理論であることが特徴。
マネジリアル・グリッド(ブレーク&ムートン):業績への関心と人間への関心の2軸を9段階で評価。(9,9)チーム型が理想とされる。主要5スタイルの座標と名称を押さえる。
SL理論(ハーシー&ブランチャード):部下の成熟度(M1〜M4)に応じてリーダーシップスタイルを変える。M1→指示的、M2→説得的、M3→参加的、M4→委任的。成熟度が高いほど委任度が上がる点に注意。
変革型リーダーシップの4I:理想化された影響力(カリスマ)・鼓舞するモチベーション・知的刺激・個別配慮。取引型(報酬交換型)との対比で理解する。
サーバントリーダーシップ(グリーンリーフ):「まず奉仕、そしてリード」。部下の成長支援を第一義とする現代的リーダーシップ観。
リーダーシップ vs マネジメント(コッター):リーダーシップ=変化への対処、マネジメント=複雑さへの対処。同義ではなく、両輪が必要。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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