貨幣供給・貨幣数量説とマーシャルのk | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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「お金とは何か」を改めて考えてみると、経済学的にとても奥深いテーマです。貨幣数量説の等式 MV=PY は一見シンプルですが、ここからインフレ・デフレの原因や金融政策の論理が読み解けます。マーシャルのkもセットで整理すると、貨幣需要の理解がグッと深まります。

貨幣(money)は経済活動の潤滑油です。まず貨幣の3つの機能を押さえ、そのうえで貨幣供給・貨幣数量説・貨幣需要の理論を整理します。

貨幣の機能
交換手段(媒介機能)
財・サービスの売買に使われる決済手段。物々交換の不便さを解消します。
貨幣の機能
価値尺度(計算単位)
財・サービスの価値を共通の単位(円・ドル等)で表す機能。比較・計算を可能にします。
貨幣の機能
価値保存(貯蔵手段)
将来の購買力を現時点から保存する機能。インフレが進むと価値保存機能が低下します。
指標 内容 主な構成要素
マネタリーベース(MB) 中央銀行が供給する通貨 流通現金+日銀当座預金
M1(狭義マネーサプライ) 最も流動性の高い通貨 現金通貨+預金通貨(要求払預金)
M3(広義マネーサプライ) 広義の通貨残高 M1+準通貨(定期預金等)+CD
目次

信用創造と貨幣乗数

銀行は預金を受け取り、一部を準備金として残して残りを貸し出します。この繰り返しによって、最初の預金額を大きく上回る預金(マネーサプライ)が生まれます。これが信用創造です。

マネーサプライ = マネタリーベース × 貨幣乗数(信用乗数)
貨幣乗数 = 1 ÷ 預金準備率
例:準備率10%なら乗数=10倍(100万円の注入→1,000万円の預金創出)
信用創造を身近な場面で感じてみる

A銀行に100万円預金が入ったとします(準備率10%)。A銀行は90万円を貸し出します。借りた人がB銀行に預けると、B銀行は81万円を貸し出す……。この連鎖で最終的に 100 ÷ 0.1 = 1,000万円の預金が生まれます。

これは「銀行がお金を作っている」ように見えますが、実際には貸し借りの連鎖によって経済全体の決済手段(マネーサプライ)が拡大しているのです。

貨幣数量説:MV = PY

フィッシャーの交換方程式として知られる貨幣数量説は、マネーサプライと物価水準・産出量の関係を示す古典的な理論です。

MV = PY
M:貨幣供給量 / V:貨幣の流通速度(一定と仮定)
P:物価水準 / Y:実質GDP(実質産出量)

V と Y が一定の場合(古典派の仮定):M↑ → P↑(インフレ)が成立します。つまり「貨幣量の増加は物価上昇をもたらす」というのが古典派の結論です。

変数 古典派の仮定 ケインズ派との違い
V(流通速度) 制度的に一定 ケインズ派:利子率に依存して変動
Y(実質GDP) 完全雇用水準で一定 ケインズ派:需要によって変動
M↑の効果 P のみ上昇(貨幣の中立性) ケインズ派:Y も上昇する可能性

マーシャルのk:ケンブリッジ方程式

マーシャルのkは、貨幣数量説を「貨幣需要」の視点で表した式です。人々が名目所得のうち何割を貨幣で保有するかを示します。

M = kPY (k = 1/V)
k:マーシャルのk(貨幣保有比率)= 名目所得に対する貨幣保有額の割合
kが小さい = 貨幣を多く使い回す(流通速度Vが大) / kが大きい = 貨幣を多く手元に置く
古典派(フィッシャー型)
MV = PY
V は制度的に一定
貨幣は取引目的でのみ保有
M増加→P上昇のみ(貨幣の中立性)
ケインズ(流動性選好)
L(Y, r) = M/P
Vは利子率に依存
取引的需要+予備的需要+投機的需要
利子率が低いと投機的需要が増えVが低下→貨幣の非中立性
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MV=PY の式を初めて見たとき、「等式だから当たり前では?」と感じました。でも「VとYを一定と仮定するとMの増加がPに直結する」という古典派の結論が見えてくると、金融政策の議論が急に身近になります。量的緩和がなぜインフレ目標と関係するのかも、ここからつながりますね。

過去問で確認する

令和4年度 第9問(経済学・経済政策) 貨幣数量説・MV=PY
貨幣数量説(MV = PY)に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 貨幣の流通速度(V)は利子率に依存して変動するため、Mの増加は必ずしもPを上昇させない。
  • イ 実質GDP(Y)が一定であれば、Mが2倍になるとPも2倍になる。
  • ウ マーシャルのkは貨幣の流通速度Vの2倍に等しい。
  • エ VとYが一定の場合、Mの増加率とPの上昇率は等しくなる。
解答・解説
正解:エ
MV=PY を変化率で表すと:%ΔM + %ΔV = %ΔP + %ΔY。V と Y が一定(%ΔV=0, %ΔY=0)なら %ΔM = %ΔP となります。
ア:ケインズ派的な観点です。古典派では V は制度的に一定と仮定するため、この記述は貨幣数量説の立場に反します(誤り)。
イ:Y 一定で M が2倍になると P も2倍になるのは正しい関係ですが、「V が一定」という前提が欠けています。また「必ず」という言葉に注意(正しくはあるが設問の「最も適切」はエ)。
ウ:マーシャルのk は V の逆数(k = 1/V)であり、2倍ではありません(誤り)。
令和元年度 第8問(経済学・経済政策) 信用創造・貨幣乗数
銀行の信用創造に関する記述として、最も適切なものはどれか。預金準備率は10%とする。
  • ア マネタリーベースが100万円増加すると、最終的にマネーサプライは100万円増加する。
  • イ 預金準備率が上昇すると、信用創造の倍率(貨幣乗数)は大きくなる。
  • ウ マネタリーベースが100万円増加すると、最終的にマネーサプライは1,000万円増加する。
  • エ 中央銀行が市場から国債を買い入れると(買いオペ)、マネタリーベースは減少する。
解答・解説
正解:ウ
貨幣乗数 = 1 ÷ 預金準備率 = 1 ÷ 0.1 = 10。マネタリーベース100万円 × 10 = 1,000万円のマネーサプライが創出されます。
ア:信用創造により1:1ではなく乗数倍になります(誤り)。
イ:準備率が上昇すると銀行が貸し出せる割合が減少し、貨幣乗数は小さくなります(誤り)。
エ:買いオペ(国債買入)は市場に資金を供給する操作であり、マネタリーベースは増加します(誤り)。

まとめ

貨幣供給・貨幣数量説 整理メモ
  • 貨幣の3機能:交換手段・価値尺度・価値保存
  • 貨幣乗数 = 1 ÷ 預金準備率(準備率↑→乗数↓)
  • マネーサプライ = マネタリーベース × 貨幣乗数
  • 貨幣数量説 MV=PY:V・Y一定なら %ΔM = %ΔP(古典派)
  • マーシャルのk = 1/V(名目所得に対する貨幣保有比率)
  • 買いオペ(国債買入)→マネタリーベース増加 / 売りオペ→減少
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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