AD-ASモデルと総需要・総供給分析 | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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IS-LMモデルが「利子率と所得」の平面だったのに対して、AD-ASモデルは「物価水準と実質GDP」の平面で経済を分析します。インフレや景気後退の原因が「需要側」なのか「供給側」なのかを判断するうえで、とても役立つ枠組みです。

AD-ASモデルは、横軸に実質GDP・縦軸に物価水準をとり、総需要(AD)曲線と総供給(AS)曲線の交点で均衡物価水準と均衡実質GDPを決定するモデルです。マクロ経済の物価変動・景気変動を分析する際の基本ツールです。

AD曲線(総需要曲線)
物価水準 P と均衡実質 GDP の組み合わせ。右下がりになる理由は3つ:①実質残高効果(P↓→実質貨幣量↑→支出↑)②利子率効果(P↓→貨幣需要↓→r↓→投資↑)③海外需要効果(P↓→輸出↑)
IS-LMモデルが背景にある
AS曲線(総供給曲線)
短期AS:右上がり(名目賃金が固定的→物価上昇で実質賃金低下→生産増加)

長期AS:垂直(すべての価格が柔軟→生産量は自然産出量で決定)
短期 vs 長期で形が変わる
目次

需要ショックと供給ショックの効果

経済に「ショック(外的な変化)」が加わると AD か AS がシフトし、物価と産出量が変化します。ショックの種類と方向を整理することが試験のポイントです。

需要ショック(ADシフト)
AD右シフト要因:財政支出拡大・減税・金融緩和・輸出増加
効果:物価↑・実質GDP↑(短期)
AD左シフト要因:財政緊縮・金融引締・輸出減少
効果:物価↓・実質GDP↓(短期)
長期では産出量は自然産出量に戻り、物価のみ変化します(古典派的結果)。
供給ショック(ASシフト)
AS右シフト要因:技術進歩・原材料価格低下・生産性向上
効果:物価↓・実質GDP↑(好ましい)
AS左シフト要因:原油価格高騰・賃金上昇・自然災害
効果:物価↑・実質GDP↓ → スタグフレーション
AS左シフトによるスタグフレーションは財政・金融政策での対処が難しい。
シフト 物価水準 実質GDP 原因の例
AD右シフト 上昇 増加 財政支出拡大・金融緩和
AD左シフト 低下 減少 財政緊縮・金融引締・消費減退
AS右シフト 低下 増加 技術進歩・生産性向上
AS左シフト 上昇 減少 原油価格高騰(スタグフレーション)

短期AS・長期ASの違い:ケインズ派 vs 古典派

AS曲線の形状は、「名目賃金(や価格)がどれだけ柔軟か」によって変わります。この点が、ケインズ派と古典派の大きな相違点でもあります。

短期AS曲線(右上がり)
名目賃金が短期的に固定されているという仮定。
物価が上昇すると実質賃金が低下 → 企業は雇用・生産を増やす → 実質GDPが増加。
ケインズ派的なアプローチで、短期の景気分析に使います。
長期AS曲線(垂直)
すべての価格(賃金を含む)が完全に柔軟という仮定。
実質GDPは「自然産出量(潜在GDP)」に固定され、物価水準が変化しても産出量は変わらない。
古典派的なアプローチで、長期の成長分析に使います。
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「物価が上がったのに景気も良くなってる」→ ADショック、「物価が上がったのに景気が悪い」→ ASショック(スタグフレーション)と原因を仕分けられるのが AD-ASモデルの便利なところです。1970年代の石油危機がまさに典型例ですね。

コロナ禍の経済ショックで考えてみると

身近な場面で AD-AS を感じてみる

2020年のコロナ禍を AD-AS で整理してみましょう。外出自粛や観光需要の蒸発は、総需要を一気に押し下げました(AD左シフト)。これにより物価が低下傾向となり、実質GDPも大幅に落ち込みました。

同時にサプライチェーンの混乱で生産コストが上昇し(AS左シフト)、一部の財では物価が上昇する面も見られました。これは AD と AS が同時にシフトした複合的なショックでした。

政府は給付金・持続化補助金などで AD を支え(AD右シフト)、ワクチン接種で生産活動を正常化させる(AS右シフト)という両面から対応しました。AD-AS の枠組みがあると、こうした政策の意図が読み取りやすくなります。

過去問で確認する

令和5年度 第8問(経済学・経済政策) AD-AS・供給ショック
AD-ASモデルにおける供給ショックに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 原油価格が高騰すると、AS曲線が右シフトし、物価が低下・実質GDPが増加する。
  • イ 技術進歩が生産性を高めると、AS曲線が左シフトし、スタグフレーションが生じる。
  • ウ 原油価格が高騰すると、AS曲線が左シフトし、物価が上昇・実質GDPが減少する(スタグフレーション)。
  • エ 供給ショックが発生した場合、財政政策によって物価・産出量をともに元の水準に戻すことができる。
解答・解説
正解:ウ
ア:原油価格高騰は生産コスト上昇 → ASシフト。物価上昇・実質GDP減少(誤り)。
イ:技術進歩は生産コスト低下 → ASシフト。物価低下・実質GDP増加(スタグフレーションは生じない)(誤り)。
ウ:正しい。原油高騰はAS左シフトの典型で、物価上昇と実質GDP減少が同時に起こるスタグフレーションです。
エ:AS左シフトに財政政策(AD右シフト)で対応すると、産出量は回復しますが物価はさらに上昇します。物価と産出量をともに元の水準に戻すことは一般に不可能です(誤り)。
令和3年度 第8問(経済学・経済政策) AD-AS・短期長期
AD-ASモデルに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 長期AS曲線は右上がりであり、物価水準が上昇すると実質GDPが増加する。
  • イ 短期AS曲線は垂直であり、需要ショックが発生しても実質GDPは変化しない。
  • ウ 短期AS曲線が右上がりになるのは、名目賃金が短期的に硬直的であるためである。
  • エ AD曲線が右下がりになる理由は、物価上昇が消費者の実質所得を増加させるためである。
解答・解説
正解:ウ
ア:長期AS曲線は垂直です(すべての価格が柔軟で実質GDPは自然産出量で決まる)(誤り)。
イ:短期AS曲線は右上がりです。垂直は長期AS曲線の特徴(誤り)。
ウ:正しい。名目賃金が硬直的なため、物価上昇 → 実質賃金低下 → 雇用・生産増加 → 実質GDPが増加し、短期AS曲線が右上がりになります。
エ:AD曲線が右下がりになるのは、物価低下が①実質貨幣残高増加→支出増加(実質残高効果)②利子率低下→投資増加(利子率効果)③輸出増加(海外需要効果)を通じて需要を高めるためです。「実質所得増加」という説明は不正確(誤り)。

まとめ

AD-ASモデル 整理メモ
  • AD曲線(右下がり):物価↓→実質残高↑/利子率↓/輸出↑ → 総需要↑
  • 短期AS(右上がり):名目賃金硬直的 → 物価↑→実質賃金↓→生産↑
  • 長期AS(垂直):すべての価格が柔軟 → 産出量は自然産出量で決定
  • AD右シフト→物価↑・GDP↑ / AS左シフト→物価↑・GDP↓(スタグフレーション)
  • スタグフレーションの典型例:原油価格高騰(1970年代石油危機)
  • AS右シフト→物価↓・GDP↑(技術進歩・生産性向上の効果)
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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