Uスマホの乗り換えを検討しながら、4社の料金プランを並べて比べていたときのことです。「なぜ、どこも似たような価格帯なんだろう?」と少し不思議に思いました。一社が大幅に値下げすれば、一気にシェアを取れそうなのに。この疑問を解くカギが、「寡占市場」にありました。
完全競争市場と独占市場のあいだには、現実の市場のほとんどが属する「中間地帯」があります。それが寡占市場(oligopoly)です。スマホキャリア・航空会社・ビール市場のように、少数の企業が互いの動向を意識しながら競い合っている状態のことをいいます。
寡占市場の最大の特徴は「相互依存関係」です。自社の価格や産出量は、競合がどう動くかで結果が大きく変わります。この「読み合い」の構造から、試験頻出の3概念が生まれます。
屈折需要曲線 — なぜ寡占市場では価格が動きにくいのか
あなたはA社コンビニの担当者です。弁当を値上げしたらどうなるでしょう? ライバルのB社・C社は「チャンス」とばかりに追随しません。A社からだけ客が離れます。
では値下げしたら? B社・C社は即座に追随します。値段が下がってもA社のシェアはほとんど増えません。
→ 値上げに対しては需要が弾力的(急減)、値下げに対しては非弾力的(ほとんど増えない)
この非対称性が、需要曲線を「くの字」に屈折させます。
クールノー均衡 — 産出量(数量)で競う世界
ある離島に、ガソリンスタンドがA社とB社の2社だけあります。どちらも「相手が何リットル供給するか」を見ながら、自社の供給量を決めます。
A社が「B社はたくさん出してくるだろう」と予測すれば → A社は控えめに出す
A社が「B社は少ししか出さない」と予測すれば → A社は多めに出す
この「相手の産出量を所与として、自社の利潤が最大になる産出量を選ぶ」行動を繰り返すと、最終的に一つの均衡点(クールノー均衡)に落ち着きます。この最適反応を表す式を反応関数(Best Response Function)と呼び、2社の反応関数の交点がクールノー均衡です。
② 均衡価格:独占価格 > クールノー均衡価格 > 完全競争価格(限界費用)
③ 企業数が増えるほど価格は下がり、n→∞で完全競争と一致する
ベルトラン均衡 — 価格で競うと、まるで完全競争になる逆説
クールノーが「産出量」で競うのに対し、ベルトラン均衡は「価格」で競う場合の均衡を示します。
A社が価格P₀をつけると → B社は「1円でも安くすれば全顧客を奪える」と考えて値下げ → A社も追随して値下げ → …この連鎖が続き、両社とも限界費用まで値下げしてしまいます。
結果として、たった2社しかいないのに完全競争と同じ価格・産出量になります。これが「ベルトランのパラドックス」です。
実際の寡占市場で価格が限界費用まで下がることはほとんどありません。試験では以下の理由が問われます:
① 製品差別化:各社の製品・サービスが少し違う(キャリアのサービス品質・エリアの差)
② 参入障壁:新規参入が難しいため競争が制限される
③ 繰り返しゲーム:長期関係があるため、激しい値下げ競争を避ける暗黙の協調が生まれる
クールノー vs ベルトラン — 比較整理
| 比較項目 | クールノー均衡 | ベルトラン均衡 |
|---|---|---|
| 競争変数 | 産出量(数量) | 価格 |
| 均衡価格 | 限界費用 < P < 独占価格 | P = 限界費用(完全競争と同じ) |
| 均衡産出量 | 完全競争より少ない | 完全競争と同じ |
| 超過利潤 | あり(正の超過利潤) | なし(ゼロ) |
| 社会的厚生 | 独占より高い・完全競争より低い | 完全競争と同じ(最大) |
| 現実への当てはまり | 同質財・数量競争の産業 | 完全同質・価格変更が容易な市場 |
この記事のまとめ
- 寡占市場の最大の特徴は「相互依存関係」:自社の戦略が競合の戦略に影響を与え合う
- 屈折需要曲線:値上げ→弾力的(需要急減)、値下げ→非弾力的 → 価格が粘着的になる
- クールノー均衡:産出量競争の均衡。産出量 独占 < クールノー < 完全競争
- クールノー均衡:企業数が増えるほど価格は下がり、n→∞で完全競争と一致する
- ベルトランのパラドックス:2社でも価格競争するだけで完全競争と同じ結果(P=限界費用)









