中小企業診断士試験範囲の問題を出題してください。
では、今回は企業経営理論や財務会計ではなく、過去問でよく問われる一方、このセッションでは比較的まだ扱いが少ない「経営法務・会社法」の論点から出題します。
問題
会社法における株式会社の機関設計に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 公開会社でない株式会社は、取締役会を必ず設置しなければならない。
イ 取締役会設置会社では、取締役は必ず3人以上必要である。
ウ 監査役会設置会社では、監査役は1人いれば足りる。
エ 会計参与は、すべての株式会社に必ず設置しなければならない。
正解だと思う選択肢を、ア・イ・ウ・エのいずれかで答えてください。
回答・解説
イ
正解です。
イ 取締役会設置会社では、取締役は必ず3人以上必要である。
これは正しい記述です。
取締役会は、複数の取締役で会社の重要事項を決める機関です。会社法上、取締役会を置く場合には、取締役が3人以上必要になります。
この問題の軸は、株式会社の機関設計です。
ア 公開会社でない株式会社は、取締役会を必ず設置しなければならない。
これは誤りです。
公開会社でない株式会社、つまり株式の譲渡に会社の承認が必要な会社では、取締役会を置かない形も可能です。中小企業では、取締役1人だけの株式会社もあります。
公開会社は取締役会が必要。
非公開会社は取締役会なしでもよい。
ここをまず押さえると整理しやすくなります。
ウ 監査役会設置会社では、監査役は1人いれば足りる。
これは誤りです。
監査役会を置く会社では、監査役は3人以上必要です。さらに、その半数以上は社外監査役である必要があります。
監査役1人だけなら、監査役会ではなく、単なる監査役設置会社です。
エ 会計参与は、すべての株式会社に必ず設置しなければならない。
これは誤りです。
会計参与は、すべての株式会社に必須ではありません。会社が任意で置くことができる機関です。税理士や公認会計士などが、取締役と共同して計算書類を作成する役割を担います。
覚え方は、人数で整理するとかなり楽です。
取締役会は、取締役3人以上。
監査役会は、監査役3人以上。
会計参与は、任意設置。
公開会社は、取締役会が必要。
この4つをセットで覚えると、機関設計の問題で迷いにくくなります。
次の問題に進みます。
問題
会社法における株主総会に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 株主総会は、取締役会設置会社では開催する必要がない。
イ 株主総会では、会社の所有者である株主が、会社法や定款で定められた事項について決議する。
ウ 株主総会の議決権は、株主の人数にかかわらず、全員が必ず1人1票である。
エ 株主総会は、代表取締役だけで構成される会社の業務執行機関である。
正解だと思う選択肢を、ア・イ・ウ・エのいずれかで答えてください。


経営法務は法改正の影響を受ける科目なので、試験範囲としての全体像がずれないよう、最新の公的情報に寄せて整理します。まずは「どの分野が柱か」を見える形にします。
経営法務は、中小企業診断士の第1次試験7科目のうちの1科目です。企業経営に関係する法律、制度、手続きの実務知識を問う科目で、2026年度の試験でも第1次試験科目に含まれています。
大きく分けると、経営法務には次のような論点があります。
1つ目は、会社法です。
今回扱った「株式会社の機関設計」はここに入ります。ほかにも、株式会社の設立、株式、株主総会、取締役、取締役会、監査役、計算書類、組織再編、事業譲渡、合併、会社分割などが出ます。
試験では、単に法律名を知っているかよりも、「株式会社では誰が何を決めるのか」「株主総会の普通決議・特別決議は何が違うのか」「取締役会を置くと何が変わるのか」といった形で問われます。
2つ目は、知的財産権です。
ここはかなり重要です。特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法などが中心です。
たとえば、技術的な発明を守るのが特許権、物品などのデザインを守るのが意匠権、商品名やロゴを守るのが商標権、文章・音楽・画像などの創作物を守るのが著作権です。
中小企業診断士試験では、「これは特許で守るのか、商標で守るのか」「権利の存続期間は何年か」「登録が必要か、創作した時点で発生するのか」といった比較問題がよく出ます。
3つ目は、民法・契約です。
売買契約、賃貸借契約、請負契約、委任契約、保証、時効、債務不履行、不法行為などが出ます。
中小企業の実務では、取引先との契約、店舗や事務所の賃貸借、業務委託、代金未払い、損害賠償などが起こります。そのため、経営法務では「契約関係をどう見るか」が問われます。
特に混同しやすいのは、請負と委任です。
請負は、仕事の完成を目的にする契約です。たとえば、ホームページ制作、建物の工事などです。
委任は、一定の事務処理を任せる契約です。たとえば、コンサルティング業務、専門家への手続き依頼などです。
4つ目は、企業取引に関する法律です。
下請法、独占禁止法、景品表示法、消費者契約法、製造物責任法などが出ます。
ここは、中小企業診断士らしい論点です。企業が取引先や消費者と関わるとき、どのような行為が問題になるのかを見ます。
たとえば、下請法では、親事業者が下請事業者に対して、不当な買いたたき、代金の支払遅延、不当な返品などをしていないかが問われます。
景品表示法では、実際より著しく優良に見せる表示、実際より著しく有利に見せる表示などが問題になります。
5つ目は、倒産・再建に関する法律です。
破産、民事再生、会社更生、特別清算などが出ます。
ここでは、「会社を清算する手続きなのか」「再建を目指す手続きなのか」を分けて考えることが大切です。
破産は、基本的に清算型です。民事再生は、事業を続けながら再建を目指す手続きです。会社更生は、主に大規模な株式会社を対象とする再建手続きです。
6つ目は、事業承継・相続です。
相続、遺言、遺留分、事業承継、株式の承継などが出ます。
中小企業では、経営者の交代がそのまま会社の存続問題につながります。そのため、「株式を誰に引き継ぐのか」「相続人の権利をどう考えるのか」「後継者に経営権を集中できるか」といった視点が問われます。
7つ目は、資本市場・金融商品取引法まわりです。
株式公開、金融商品取引法、有価証券報告書、インサイダー取引などが出ます。
出題量は会社法や知的財産権ほど多くないこともありますが、「上場企業ではどのような開示が必要か」「インサイダー取引とは何か」といった基本知識が問われます。
8つ目は、英文契約・国際取引です。
英文契約の基本用語、秘密保持契約、ライセンス契約、売買契約、仲裁、準拠法などが出ることがあります。
英語そのものの難問というより、契約書に出てくる基本表現を読み取れるかが問われます。
全体を試験対策として並べるなら、優先順位はこのように考えると整理しやすいです。
最優先で固めたいのは、会社法と知的財産権です。この2つは経営法務の中心です。
次に、民法・契約、企業取引法、事業承継・相続を押さえます。
余力で、倒産法、資本市場、英文契約を整理します。
経営法務は、暗記科目に見えますが、実際には「会社をつくる」「契約する」「商品名を守る」「取引先と揉める」「会社を引き継ぐ」という、経営の場面ごとに法律を当てはめる科目です。法律名だけを覚えるより、どの場面で使う法律かを結びつけると理解しやすくなります。

経営法務で出題頻度の高い論点を教えてください
経営法務は法改正で細部が変わるため、ここではまず「過去問で繰り返し問われやすい柱」と「学習上の優先順位」に分けて整理します。頻出論点は、暗記単体ではなく、会社の場面と結びつけると得点につながりやすいです。
経営法務で出題頻度が高いのは、まず「会社法」と「知的財産権」です。
中小企業診断士試験の経営法務は、例年おおむね25問前後で構成され、会社法・知的財産権・民法・その他の企業取引法務から出題されます。特に会社法と知的財産権は、過去問分析でも中心分野として扱われることが多いです。令和4年度は全25問中、知的財産権・会社法関連でかなり大きな比重を占めたという分析もあります。
優先度が高い論点を並べると、次の順で押さえると学習しやすいです。
最優先は、知的財産権です。
ここはかなり出やすいです。特許権、実用新案権、意匠権、商標権、著作権、不正競争防止法が中心です。
特に問われやすいのは、権利の違いです。
特許権は、技術的な発明を守る権利です。
実用新案権は、物品の形状・構造・組合せに関する考案を守ります。
意匠権は、デザインを守ります。
商標権は、商品名・サービス名・ロゴなど、目印を守ります。
著作権は、文章・音楽・画像・動画などの創作表現を守ります。
試験では、「これは特許か、意匠か、商標か」「登録が必要か、創作時に発生するか」「存続期間は何年か」「出願公開・審査請求・先願主義などの制度はどうなっているか」が狙われます。
次に、会社法です。
今回扱った「株式会社の機関設計」は、会社法の中でも重要論点です。
頻出なのは、株式会社の設立、株式、株主総会、取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、決議要件、組織再編、事業譲渡、合併、会社分割などです。
試験では、「誰が決めるのか」「何人必要か」「普通決議か特別決議か」「公開会社と非公開会社で何が違うか」がよく問われます。
覚える軸は、次のようにすると楽です。
株主総会は、株主が会社の重要事項を決める場。
取締役は、会社の経営を担う人。
取締役会は、取締役3人以上で構成される機関。
監査役会は、監査役3人以上で構成される機関。
会計参与は、任意で置ける機関。
会社法は、単語だけで覚えると混乱します。会社の中に「所有者」「経営者」「監査する人」がいる、と役割で分けると整理しやすくなります。
次に、民法・契約です。
ここでは、契約の成立、意思表示、代理、時効、債務不履行、不法行為、保証、売買、賃貸借、請負、委任などが出ます。
特に試験で混同しやすいのは、請負と委任です。
請負は、仕事の完成を目的にする契約です。ホームページ制作や建築工事のように、完成物が重視されます。
委任は、事務処理を任せる契約です。コンサルティング、手続き代行、専門家への依頼などがイメージしやすいです。
この分野は範囲が広いため、深追いしすぎるより、頻出の契約類型と基本用語を確実に押さえるほうが得点につながります。
次に、企業取引に関する法律です。
下請法、独占禁止法、景品表示法、消費者契約法、製造物責任法などです。
ここは、中小企業診断士らしい実務寄りの論点です。
下請法では、親事業者による支払遅延、買いたたき、不当返品などが問われます。
独占禁止法では、私的独占、不当な取引制限、不公正な取引方法などが出ます。
景品表示法では、優良誤認表示、有利誤認表示が出やすいです。
製造物責任法では、製品の欠陥によって損害が生じた場合の責任が問われます。
この分野は、「どの法律が、誰を守るためのものか」で覚えると整理できます。
次に、事業承継・相続です。
中小企業診断士試験では、事業承継も重要です。相続、遺言、遺留分、株式の承継、経営権の集中などが問われます。
中小企業では、株式を誰が持つかによって経営権が変わります。そのため、相続の知識だけでなく、「後継者にどう経営権を引き継ぐか」という実務視点で出題されます。
次に、倒産・再建に関する法律です。
破産、民事再生、会社更生、特別清算などが出ます。
ここでは、清算型か再建型かを分けることが大切です。
破産は、基本的に清算型。
民事再生は、再建型。
会社更生も再建型ですが、主に大規模な株式会社を対象とします。
特別清算は、株式会社の清算手続きです。
頻出度としては会社法・知的財産権ほどではありませんが、出ると差がつきやすい論点です。
最後に、英文契約・国際取引です。
英文契約の基本用語、秘密保持契約、ライセンス契約、準拠法、仲裁、売買契約などが出ます。
英語が得意でなくても、出やすい用語を押さえれば対応できます。NDAは秘密保持契約、license agreementはライセンス契約、governing lawは準拠法、arbitrationは仲裁、などです。
学習優先順位としては、次の感覚でよいです。
高 知的財産権、会社法
中 民法・契約、企業取引法、事業承継・相続
低から中 倒産法、資本市場、英文契約
経営法務は、細かい条文をすべて覚える科目ではありません。「会社を作る」「株主が決める」「取締役が動かす」「商品名を守る」「契約する」「取引先と揉める」「事業を引き継ぐ」という場面ごとに、どの法律が出てくるかを結びつけると、過去問の選択肢を読みやすくなります。


