Uコンビニの棚を眺めていたとき、ふと気づいたことがあります。おにぎりが売り切れそうになると補充が来る。作りすぎず、足りなくなりすぎず。あの仕組みがまさに「後工程が引っ張る」JITの本質と重なっている。そこからトヨタ生産方式の全体像が一気にくっきりしてきました。
JITとは|ジャスト・イン・タイムの定義
JIT(Just-In-Time)はトヨタ自動車が確立した生産哲学です。過剰在庫・過剰生産を「最大のムダ」と捉え、生産の流れ全体を後工程の需要に合わせて最適化します。トヨタ生産方式はJITと自働化という2本の柱によって成り立っています。
プル型 vs プッシュ型|生産方式の違い
JITを理解する上で最重要の概念が「プル型」と「プッシュ型」の違いです。情報と物の流れる方向が正反対になります。
- 需要予測に基づいて生産計画を立てる
- 前工程が生産した分を後工程へ「押し出す」
- 計画精度が低いと過剰在庫が発生しやすい
- MRP(資材所要量計画)が代表的手法
- 後工程が必要な時に前工程から引き取る
- 実需に連動して生産が動く
- かんばんが「引き取り指示」の役割を担う
- 過剰生産・過剰在庫が発生しにくい
かんばん方式の仕組み|2種類のかんばん
かんばんはJITを実現するための「情報カード」です。物の流れとは逆方向(後工程 → 前工程)に流れることで、必要な量だけ生産・補充する仕組みを維持します。
上図のとおり、モノは前工程から後工程へ流れますが、かんばんは後工程から前工程へ逆向きに流れます。この逆向きの情報循環がJITの本質です。
かんばん方式の6つのルール
- 1後工程は、必要なものを必要な時に必要な量だけ前工程へ引き取りに行く
- 2前工程は、後工程から引き取られた量だけ生産する
- 3かんばんなしには生産しない・運搬しない
- 4不良品は絶対に後工程に送らない
- 5かんばんの枚数を減らすことで在庫を減らす(改善の手段)
- 6工程の変動を安定化させ、かんばんの運用を安定させる



かんばんは「情報カード」であり、モノの流れと情報の流れが逆方向に循環しているというのが面白くて。在庫が減ってかんばんが戻ってくることで、ちょうど必要な分だけ生産が動く。需要の変化が川上まで自然に伝わる仕組みになっているのですね。
平準化生産と段取り改善(シングル段取り)
JITを安定して運用するには、生産量や生産品種を平準化し、段取り時間を極限まで短縮することが不可欠です。
シングル段取り(SMED)とは
SMED(Single Minute Exchange of Die)とは、段取り替え時間を「一桁分=10分未満」に短縮することを目標とした改善手法です。大野耐一氏がトヨタで確立しました。
| 区分 | 内容 | 改善方向 |
|---|---|---|
| 内段取り | 機械を止めた状態でしか行えない段取り作業 (刃具交換・型取り付けなど) |
内段取りを外段取りに転換する |
| 外段取り | 機械を動かしながら並行して行える準備作業 (治具の準備・次工程の段取りなど) |
外段取りの比率を増やして停止時間を最小化 |
7つのムダ|JITが排除する対象
大野耐一氏が定義した「7つのムダ」は、JITが排除すべきすべてのムダを体系化したものです。中でも「作りすぎのムダ」が最大のムダとされ、すべての下流ムダを引き起こす根源と位置づけられています。
過去問で確認する
- ア 需要予測に基づき前工程から後工程へ部品を供給するプッシュ型の生産方式である
- イ かんばんは後工程が前工程に作業を指示する手段であり、必要な量だけ生産を行う
- ウ 自働化とは機械を完全自動化し人手を一切介さない生産方式を指す
- エ 平準化とは一種類の製品を大量に連続生産することで効率を高める方式である
・イ:かんばんは後工程から前工程への指示手段。必要量のみ生産するプル型の核心 → 正解
・ウ:自働化は「異常を検知して機械が自ら停止する」仕組み。完全無人化・人手ゼロではない → 誤り
・エ:平準化は量の平準化と種類の平準化(混流生産)の両方を含む。単品大量連続生産とは逆の考え方 → 誤り
- ア かんばんは前工程から後工程に向かって流れる
- イ 後工程は引き取りかんばんの枚数分だけ前工程から部品を引き取る
- ウ 前工程は仕掛けかんばんの枚数分だけ生産する
- エ 不良品はかんばんなしで次工程に渡してはならない
・イ:引き取りかんばんの枚数が引き取り量を決める → 正しい
・ウ:仕掛けかんばんがなければ生産しない。枚数分だけ生産する → 正しい
・エ:不良品を後工程に流してはならない。自働化でラインを止めることがその実現手段 → 正しい
かんばんの「逆流」という性質は最頻出の引っかけポイントです。図を思い浮かべながら解くと確実です。
- JITの核心は「プル型」。後工程が必要な時だけ前工程から引き取り、かんばんが逆方向に流れて生産を動かす。
- 自働化は「にんべんの自働化」。異常を機械が検知して自ら止まる仕組みで、完全無人化とは別物。
- かんばんには引き取りかんばん(後工程→前工程の引き取り指示)と仕掛けかんばん(生産指示)の2種類がある。
- 平準化は量と種類の両面。混流生産によって特定品種の在庫積み上がりを防ぐ。シングル段取りは内段取りを外段取りへ転換する手法。
- 7つのムダの筆頭は「作りすぎ」。すべての下流ムダの根源として試験で問われる。









