U文化祭の準備をしていたとき、「このクラスの装飾が終わらないと次の作業に入れない」という場面があって。どの工程が一番遅れると全体に影響するのか、自然と考えていたのです。あのときの感覚がそのまま「クリティカルパス」という概念につながりました。PERT/CPMは、そのもやっとした感覚を数値で整理する技法だったのですね。
PERT・CPMとは|工程管理の2つのツール
PERTとCPMはどちらも「矢線と結合点」で構成するネットワーク図を使う点で共通しています。大きな違いは作業時間の扱い方にあります。
ネットワーク図の基本|矢線と結合点
PERT/CPMのネットワーク図は「矢線」と「結合点」の2つの要素で構成されます。どちらの意味かを正確に押さえておくことが、クリティカルパスを読み解く前提になります。
ダミー矢線は作業ではなく「先行関係だけ」を示す仮の矢線です。破線で描かれ、所要時間はゼロです。
クリティカルパスの求め方|4ステップ
クリティカルパスとは「ネットワーク図上の全経路のうち、所要時間が最長の経路」のことです。この経路上の作業に1日でも遅れが生じると、プロジェクト全体の完成が遅れます。
- 1全経路を列挙する
スタートからゴールまで通過できるすべての経路を書き出す。 - 2各経路の所要時間を合計する
経路上の矢線(作業)の所要時間をすべて足し合わせる。ダミー矢線の時間は0として扱う。 - 3最長経路 = クリティカルパス
合計時間が最も大きい経路がクリティカルパス。プロジェクト全体の最短完成日数になる。 - 4余裕時間(フロート)= 非クリティカルパスの余裕
非クリティカルパスの経路では「最長時間-その経路の時間」だけ遅れても全体に影響しない余裕がある。
具体例で計算してみる
結合点①をスタート、⑤をゴールとして、以下の数値で考えます。
①→② : 3日 ②→④ : 5日 ①→③ : 4日 ③→④ : 3日 ④→⑤ : 2日 ②→③ : ダミー(0日)
| 経路 | 計算式 | 所要日数 | 判定 |
|---|---|---|---|
| ①→②→④→⑤ | 3 + 5 + 2 | 10日 | クリティカルパス |
| ①→③→④→⑤ | 4 + 3 + 2 | 9日 | フロート1日 |
| ①→②→③→④→⑤ | 3 + 0(ダミー)+ 3 + 2 | 8日 | フロート2日 |



フロートがゼロの作業がクリティカルパス上に並んでいる、というのが腑に落ちた瞬間がありました。1日でも遅れたら即座に全体に波及する。逆に言えば、そこだけ集中して管理すればいい。プロジェクト管理って、結局「どこに注意を絞るか」ということなのですね。
最早結合点時刻と最遅結合点時刻
各結合点には「最も早く到達できる時刻(ET)」と「全体の完成を遅らせない最も遅い到着時刻(LT)」の2つの値があります。この2つを比較することでトータルフロートが求まります。
先ほどの例(①→②→④→⑤が10日)でET・LTを整理します。
| 結合点 | ET(最早) | LT(最遅) | LT − ET | クリティカル? |
|---|---|---|---|---|
| ① | 0日 | 0日 | 0 | はい |
| ② | 3日 | 3日 | 0 | はい |
| ③ | 4日 | 5日 | 1 | いいえ |
| ④ | 8日 | 8日 | 0 | はい |
| ⑤ | 10日 | 10日 | 0 | はい |
ガントチャートとの違い
ガントチャートとPERT/CPMはどちらも工程管理ツールですが、目的と得意な領域が異なります。試験では「どちらが何に向いているか」の比較問題が出題されます。
| 比較項目 | ガントチャート | PERT/CPM |
|---|---|---|
| 視覚表現 | 時間軸 × 作業の横棒グラフ | 矢線と結合点のネットワーク図 |
| 用途 | 進捗管理・スケジュール確認 | クリティカルパス特定・工期短縮計画 |
| 依存関係の表現 | 見えにくい(単純な棒グラフのみ) | 明確に表現できる(矢線の流れで可視化) |
| 適した場面 | 比較的単純な工程・日々の進捗共有 | 複雑なプロジェクト・工期最適化・コスト管理 |
| フロート計算 | できない | できる(重点管理箇所の特定が可能) |
過去問で確認する
- ア クリティカルパスとは、全経路のうち所要時間が最短の経路である
- イ ダミー矢線は実際の作業を示し、時間と費用が発生する
- ウ トータルフロートが0の作業がクリティカルパス上にある
- エ 最遅結合点時刻とは、その結合点に最も早く到達できる時刻である
・イ:ダミー矢線は先行関係のみを示す仮の矢線。時間ゼロ・費用発生なし → 誤り
・ウ:トータルフロートが0の作業は1日でも遅れると全体が遅れる。それがクリティカルパス上の作業の定義 → 正解
・エ:最遅結合点時刻はゴールから後ろ向きに計算した「最も遅くても到達すべき時刻」。最も早く到達できる時刻は最早結合点時刻(ET) → 誤り
- ア 5日
- イ 6日
- ウ 7日
- エ 9日
・経路①→②→④:3 + 4 = 7日
・経路①→③→④:5 + 2 = 7日
どちらの経路も7日で、両経路が同時にクリティカルパスとなる。エの9日は①→②(3日)+①→③(5日)の単純合算という誤解から生じる選択肢。正解はウ(7日)。
- クリティカルパス = 全経路のうち所要時間が最長の経路。最短ではない点が最頻出の引っかけ。
- ダミー矢線は破線・時間ゼロ・費用なし。先行関係だけを示すための仮の矢線。
- ET(最早結合点時刻)は前向き計算で最大値をとり、LT(最遅結合点時刻)は後ろ向き計算で最小値をとる。
- トータルフロートが0の作業が連なる経路がクリティカルパス。フロートの余裕がある経路の作業は多少遅れても全体に影響しない。
- ガントチャートは進捗把握に優れ、PERT/CPMは依存関係と重点工程の特定に優れる。用途で使い分ける。









