PERT/CPM・ガントチャートまとめ|クリティカルパスの求め方を図解で整理

U

文化祭の準備をしていたとき、「このクラスの装飾が終わらないと次の作業に入れない」という場面があって。どの工程が一番遅れると全体に影響するのか、自然と考えていたのです。あのときの感覚がそのまま「クリティカルパス」という概念につながりました。PERT/CPMは、そのもやっとした感覚を数値で整理する技法だったのですね。

PERT(Program Evaluation and Review Technique)とCPM(Critical Path Method)は、どちらもプロジェクトの工程管理に用いるネットワーク図の技法です。「どの作業が全体の完成日を左右するのか」を数値で明らかにすることが共通の目的。中小企業診断士試験・運営管理の頻出テーマであり、クリティカルパスの計算・フロートの求め方は確実に得点できる領域のひとつです。
目次

PERT・CPMとは|工程管理の2つのツール

PERTとCPMはどちらも「矢線と結合点」で構成するネットワーク図を使う点で共通しています。大きな違いは作業時間の扱い方にあります。

TOOL 01
PERT(パート)
Program Evaluation and Review Technique
作業時間に不確実性がある場合に使う技法。楽観値・最悲観値・最可能値の3点見積もりから期待時間を算出する。新製品開発・研究開発プロジェクトなど、経験値の少ない案件に向く。
TOOL 02
CPM(シーピーエム)
Critical Path Method
作業時間が確定的に決まっている場合に使う技法。各作業の所要時間が固定値として与えられ、ネットワーク上の最長経路(クリティカルパス)を求めることで工期を管理する。建設・製造プロジェクトに向く。
試験の整理:PERTは「不確実な作業時間」「3点見積もり」、CPMは「確定的な作業時間」「クリティカルパス算出」というキーワードで区別する問題が出題されます。

ネットワーク図の基本|矢線と結合点

PERT/CPMのネットワーク図は「矢線」と「結合点」の2つの要素で構成されます。どちらの意味かを正確に押さえておくことが、クリティカルパスを読み解く前提になります。

要素 01
矢線(アクティビティ)
実線の矢印 — 作業そのもの
作業(仕事)を表す矢印。矢線には時間と費用が発生する。矢印の方向が作業の進行方向を示し、矢線の上または下に所要時間の数値を記入する。
要素 02
結合点(イベント/ノード)
○印 — 作業の開始・完了点
作業の開始点または完了点を示す。時間や費用は発生しない。番号を付けて識別し(①②③…)、ある結合点に入ってくるすべての矢線が完了して初めて次の矢線が開始できる。

ダミー矢線は作業ではなく「先行関係だけ」を示す仮の矢線です。破線で描かれ、所要時間はゼロです。

高頻度難易度 ★★★
A B C D E ダミー 矢線(作業・時間あり) ダミー矢線(先行関係のみ・時間0)
試験のポイント:ダミー矢線は「作業ではない」点が頻出の引っかけです。所要時間はゼロであり、費用も発生しません。「先行関係だけを表す」という定義を正確に覚えておきましょう。

クリティカルパスの求め方|4ステップ

クリティカルパスとは「ネットワーク図上の全経路のうち、所要時間が最長の経路」のことです。この経路上の作業に1日でも遅れが生じると、プロジェクト全体の完成が遅れます。

  1. 1
    全経路を列挙する
    スタートからゴールまで通過できるすべての経路を書き出す。
  2. 2
    各経路の所要時間を合計する
    経路上の矢線(作業)の所要時間をすべて足し合わせる。ダミー矢線の時間は0として扱う。
  3. 3
    最長経路 = クリティカルパス
    合計時間が最も大きい経路がクリティカルパス。プロジェクト全体の最短完成日数になる。
  4. 4
    余裕時間(フロート)= 非クリティカルパスの余裕
    非クリティカルパスの経路では「最長時間-その経路の時間」だけ遅れても全体に影響しない余裕がある。

具体例で計算してみる

結合点①をスタート、⑤をゴールとして、以下の数値で考えます。
①→② : 3日 ②→④ : 5日 ①→③ : 4日 ③→④ : 3日 ④→⑤ : 2日 ②→③ : ダミー(0日)

3日 5日 2日 4日 3日 ダミー(0) クリティカルパス(①→②→④→⑤ : 10日) 非クリティカル(①→③→④→⑤ : 9日)
経路 計算式 所要日数 判定
①→②→④→⑤ 3 + 5 + 2 10日 クリティカルパス
①→③→④→⑤ 4 + 3 + 2 9日 フロート1日
①→②→③→④→⑤ 3 + 0(ダミー)+ 3 + 2 8日 フロート2日
フロート(余裕時間)の計算:経路①→③→④→⑤のフロート = 10 − 9 = 1日。この1日以内に収まれば全体の完成日は変わらない。
U

フロートがゼロの作業がクリティカルパス上に並んでいる、というのが腑に落ちた瞬間がありました。1日でも遅れたら即座に全体に波及する。逆に言えば、そこだけ集中して管理すればいい。プロジェクト管理って、結局「どこに注意を絞るか」ということなのですね。

最早結合点時刻と最遅結合点時刻

各結合点には「最も早く到達できる時刻(ET)」と「全体の完成を遅らせない最も遅い到着時刻(LT)」の2つの値があります。この2つを比較することでトータルフロートが求まります。

前向き計算
最早結合点時刻(ET)
Earliest Time
スタートから前向きに計算する。その結合点に入ってくるすべての矢線が完了する最も早い時刻。複数の経路が合流する場合は最大値をとる。
後ろ向き計算
最遅結合点時刻(LT)
Latest Time
ゴールから後ろ向きに計算する。全体の完成日を遅らせないために、その結合点に最も遅くとも到達していなければならない時刻。複数の経路が分岐する場合は最小値をとる。

先ほどの例(①→②→④→⑤が10日)でET・LTを整理します。

結合点 ET(最早) LT(最遅) LT − ET クリティカル?
0日 0日 0 はい
3日 3日 0 はい
4日 5日 1 いいえ
8日 8日 0 はい
10日 10日 0 はい
トータルフロートの求め方:LT(後続結合点の最遅)− ET(先行結合点の最早)− 作業時間。たとえば③→④の矢線なら:5(④のLT)− 4(③のET)− 3(作業時間)= −2……ではなく、⑤のLT=10、③のET=4、③→④→⑤ルートで 10 − 4 − 3 − 2 = 1日 となります。結合点の LT−ET がゼロの結合点が連なる経路がクリティカルパスです。

ガントチャートとの違い

ガントチャートとPERT/CPMはどちらも工程管理ツールですが、目的と得意な領域が異なります。試験では「どちらが何に向いているか」の比較問題が出題されます。

比較項目 ガントチャート PERT/CPM
視覚表現 時間軸 × 作業の横棒グラフ 矢線と結合点のネットワーク図
用途 進捗管理・スケジュール確認 クリティカルパス特定・工期短縮計画
依存関係の表現 見えにくい(単純な棒グラフのみ) 明確に表現できる(矢線の流れで可視化)
適した場面 比較的単純な工程・日々の進捗共有 複雑なプロジェクト・工期最適化・コスト管理
フロート計算 できない できる(重点管理箇所の特定が可能)
試験の整理:「作業間の依存関係や重要工程が一目でわかる」のはPERT/CPM。「進捗状況を視覚的に把握しやすい」のはガントチャート。どちらが優れているかではなく、それぞれの特性で選択することが重要です。

過去問で確認する

運営管理 — PERT/CPM H26第14問 改
PERT/CPMに関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア クリティカルパスとは、全経路のうち所要時間が最短の経路である
  • イ ダミー矢線は実際の作業を示し、時間と費用が発生する
  • ウ トータルフロートが0の作業がクリティカルパス上にある
  • エ 最遅結合点時刻とは、その結合点に最も早く到達できる時刻である
正解:ウ 解説
・ア:クリティカルパスは全経路のうち所要時間が最長の経路。最短ではない → 誤り
・イ:ダミー矢線は先行関係のみを示す仮の矢線。時間ゼロ・費用発生なし → 誤り
・ウ:トータルフロートが0の作業は1日でも遅れると全体が遅れる。それがクリティカルパス上の作業の定義 → 正解
・エ:最遅結合点時刻はゴールから後ろ向きに計算した「最も遅くても到達すべき時刻」。最も早く到達できる時刻は最早結合点時刻(ET) → 誤り
運営管理 — クリティカルパス計算 H29第12問 改
下図のネットワークにおいて、①→②の作業時間3日、②→④の作業時間4日、①→③の作業時間5日、③→④の作業時間2日の場合、クリティカルパスの所要時間として正しいものはどれか。
  • ア 5日
  • イ 6日
  • ウ 7日
  • エ 9日
正解:ウ 解説
まず全経路の所要時間を計算する。
・経路①→②→④:3 + 4 = 7日
・経路①→③→④:5 + 2 = 7日

どちらの経路も7日で、両経路が同時にクリティカルパスとなる。エの9日は①→②(3日)+①→③(5日)の単純合算という誤解から生じる選択肢。正解はウ(7日)。
U のまとめメモ
  • クリティカルパス = 全経路のうち所要時間が最長の経路。最短ではない点が最頻出の引っかけ。
  • ダミー矢線は破線・時間ゼロ・費用なし。先行関係だけを示すための仮の矢線。
  • ET(最早結合点時刻)は前向き計算で最大値をとり、LT(最遅結合点時刻)は後ろ向き計算で最小値をとる。
  • トータルフロートが0の作業が連なる経路がクリティカルパス。フロートの余裕がある経路の作業は多少遅れても全体に影響しない。
  • ガントチャートは進捗把握に優れ、PERT/CPMは依存関係と重点工程の特定に優れる。用途で使い分ける。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次