U閉店間際のスーパーで、半額シールが貼られた惣菜がみるみる売れていく場面を見たことがあります。あの「値段が下がると買い手が増える」という動きが、そのまま需要曲線の話なのだと気づいたとき、グラフが急に身近なものに見えてきました。今回は需要・供給曲線の基本から余剰分析まで、整理してみます。
需要曲線と供給曲線は、経済学の入り口にして最重要テーマのひとつです。「右下がり」「右上がり」という形の理由から、曲線がシフトする要因、均衡点のメカニズム、そして余剰分析まで——それぞれの概念がどうつながっているかを、図解を交えて整理していきます。
価格↑→需要量↓
価格↑→供給量↑
が一致する点
需要曲線とは
供給曲線とは



「右下がり=需要、右上がり=供給」と形だけ覚えていたのですが、「なぜその形なのか」という理由(代替効果・所得効果、限界費用)まで理解すると、シフトの問題でも迷いにくくなりました。
均衡価格と均衡取引量
均衡から外れたときに何が起きるかを整理すると、以下のとおりです。
実際の価格 < 均衡価格 のとき、需要量 > 供給量 になる
実際の価格 > 均衡価格 のとき、供給量 > 需要量 になる
このように市場は、価格というシグナルを通じて自動的に均衡へと向かっていきます。スーパーの閉店前値引きも、超過供給(売れ残り)を解消する価格調整の一例といえます。
曲線がシフトする要因
「需要量・供給量の変化」は曲線上の点が動くだけですが、「需要・供給そのものの変化」は曲線全体が左右にシフトします。この違いは頻出ポイントです。
| シフト方向 | 需要曲線の要因 | 供給曲線の要因 |
|---|---|---|
| 右シフト(増加) | 所得増加(正常財)/代替品の価格上昇/補完財の価格下落/嗜好・流行の変化(人気上昇) | 生産技術の向上/原材料費の下落/生産者数の増加/補助金の支給 |
| 左シフト(減少) | 所得減少(正常財)/代替品の価格下落/補完財の価格上昇/嗜好の変化(人気低下) | 原材料費の上昇/税金の課税/異常気象・自然災害/生産者数の減少 |
身近な場面で考えてみると
コロナ禍初期のマスク不足は、需要・供給曲線のシフトが同時に起きた典型例です。当時の動きを整理してみます。
その後、国内生産の拡大・布マスクの普及・需要の落ち着きにより、供給曲線が右シフトし、需要曲線も左シフトして価格は下落していきました。「曲線のシフト」が現実の市場でどう機能するかを体感できた事例です。



マスク不足の記憶がある分、このシフトの話はスッと入ってきました。過去問で「需要と供給が同時にシフトするとき、均衡価格は?」という問いに直面したとき、「あ、不確定になるケースがあるんだった」と思い出せるようにしておきたいです。
消費者余剰・生産者余剰
需要・供給曲線を使うと、市場取引で生まれる「経済的なおトク感」を数値化できます。これが余剰分析です。
定義:「支払ってもよい最大額(需要曲線上の価格)」-「実際に支払った均衡価格」
グラフ上:需要曲線の下側・均衡価格の上側の三角形の面積
消費者が均衡価格で買うことで「得をした」と感じる部分。価格が下がるほど消費者余剰は大きくなります。
定義:「実際に受け取った均衡価格」-「最低限受け取りたい価格(供給曲線上の価格)」
グラフ上:供給曲線の上側・均衡価格の下側の三角形の面積
企業が均衡価格で売ることで「もうかった」と感じる部分。価格が上がるほど生産者余剰は大きくなります。
過去問で確認する
ある財の需要曲線が右方向(右シフト)する要因として、最も適切なものはどれか。
- ア.当該財の価格が下落した
- イ.消費者の所得が増加した(当該財は正常財とする)
- ウ.補完財の価格が上昇した
- エ.代替財の価格が下落した
ア:価格の変化は需要曲線上の点の移動であり、曲線のシフトではない。
イ:正常財では所得増加により需要が増え、需要曲線が右シフトする。正解。
ウ:補完財の価格上昇→補完財の需要減少→当該財の需要も減少→左シフト。
エ:代替財の価格下落→代替財に乗り換える→当該財の需要減少→左シフト。
ある財市場において、消費者の所得が増加する(当該財は正常財)と同時に、生産技術の革新により生産費用が低下した。このとき均衡点の変化として正しいものはどれか。
- ア.均衡価格は上昇し、均衡取引量は増加する
- イ.均衡価格は下落し、均衡取引量は減少する
- ウ.均衡取引量は増加するが、均衡価格の変化は不確定
- エ.均衡価格は上昇するが、均衡取引量の変化は不確定
需要曲線は右シフト(所得増→需要増)、供給曲線も右シフト(費用低下→供給増)。
均衡取引量:需要増+供給増 → 確実に増加。
均衡価格:需要増は価格を押し上げ、供給増は価格を押し下げるため、どちらの効果が大きいかによって価格変化の方向が決まる→不確定。
需要曲線が P=12-2Q、供給曲線が P=2Q で表される市場がある。均衡価格・均衡取引量を求め、消費者余剰と生産者余剰をそれぞれ計算せよ。
- ア.消費者余剰=4、生産者余剰=4
- イ.消費者余剰=9、生産者余剰=9
- ウ.消費者余剰=6、生産者余剰=6
- エ.消費者余剰=9、生産者余剰=6
均衡点:12-2Q=2Q → 4Q=12 → Q=3、P=6
消費者余剰:需要曲線の切片(P=12)と均衡価格(P=6)の差×均衡取引量÷2=(12-6)×3÷2=9
生産者余剰:均衡価格(P=6)と供給曲線の切片(P=0)の差×均衡取引量÷2=(6-0)×3÷2=9
- 需要曲線は右下がり(需要の法則):代替効果+所得効果が理由
- 供給曲線は右上がり(供給の法則):MC=Pが最適供給条件
- 均衡点:需要量=供給量。市場メカニズムが自動的に均衡へ調整
- シフト要因:「価格変化」は点の移動、「それ以外の要因変化」は曲線のシフト
- 社会的余剰=消費者余剰+生産者余剰。完全競争均衡でパレート最適が実現
- 需要・供給が同時にシフトするとき、片方の均衡値が不確定になるケースに注意









