U過去問を解いていて、「仕訳」の選択肢に手が止まりました。借方・貸方の並びが感覚でしかわかっていなくて、少し複雑なパターンになった瞬間に迷ってしまうのです。これを機に、簿記の仕組みを基礎から丁寧に整理してみました。同じように財務会計に入り始めた方のお役に立てましたら幸いです。
財務・会計は1次試験7科目のなかでも学習時間を多く要する科目です。その土台となるのが「簿記」の知識であり、仕訳・勘定科目・借方貸方の仕組みを正確に把握しているかどうかが、財務諸表の読み解きや計算問題の正答率に直結します。この記事では、日商簿記の知識がない状態から試験対策を始めた方を念頭に置いて、必要な概念を順番に整理してみます。
簿記とは何か|財務会計の土台
簿記とは、企業の経済活動を一定のルールに従って記録・分類・集計する技術のことです。その最終目的は「財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)」を作成することにあります。
企業は日々、商品を仕入れたり代金を受け取ったり、給料を支払ったりしています。こうした「取引」を記録する手法として広く使われているのが複式簿記です。複式簿記では、すべての取引を「どこから来て、どこへ行ったか」という2つの側面から記録します。このことを「借方・貸方の2面に分けて記録する」といいます。
| 分類 | 内容 | 主な科目例 | 財務諸表 |
|---|---|---|---|
| 資産 | 企業が保有する財産・権利 | 現金、売掛金、建物、備品、有価証券 | 貸借対照表(B/S) |
| 負債 | 将来の返済義務・支払義務 | 買掛金、借入金、未払費用、社債 | 貸借対照表(B/S) |
| 純資産 | 資産から負債を引いた正味財産 | 資本金、資本剰余金、利益剰余金 | 貸借対照表(B/S) |
| 収益 | 一会計期間に得た収入・利益の源泉 | 売上高、受取利息、有価証券売却益 | 損益計算書(P/L) |
| 費用 | 一会計期間に使った支出・コスト | 仕入、給料、減価償却費、支払利息 | 損益計算書(P/L) |
借方・貸方の仕組み
簿記では、各勘定科目を「T字型の口座」として捉えます。T字の左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼びます。「借りる・貸す」という日本語の意味は意識しなくて大丈夫です。単純に「左=借方、右=貸方」という位置の名前として覚えてしまうのが早道です。
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ただし、勘定科目の分類によって「どちらが増加か」が逆になります。これが仕訳を難しく感じさせる原因の一つです。
仕訳の基本パターン
以下は試験で繰り返し登場する基本的な仕訳パターンです。勘定科目の分類を確認しながら、どちらが借方・貸方になるかを押さえておきましょう。
たとえば、近所のカフェを個人で開業した場面を思い浮かべてみてください。
→ 売上高(収益)が500円発生=貸方
→ 当座預金(資産)が80,000円減少=貸方
→ 未払金(負債)が300,000円増加=貸方
日常の取引を「何が増えて、何が減ったか(または何が生まれたか)」に分解する習慣がつくと、仕訳の判断が格段にスムーズになります。



「資産の増加は借方、減少は貸方」という点を押さえると、他の分類はその逆、または対応関係で覚えられます。負債・純資産は資産とは逆(増加=貸方)、費用は資産の増加と同じ側(増加=借方)、収益は負債と同じ側(発生=貸方)。この5つのルールが身についてくると、仕訳の選択肢を見たとき、即座に整合性を確認できるようになります。
勘定科目の主な一覧
資産の科目
| 科目名 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 現金 | 硬貨・紙幣(他人振出小切手を含む) | 流動資産 |
| 当座預金 | 当座預金口座の残高 | 流動資産 |
| 売掛金 | 商品販売後まだ受け取っていない代金(掛け売り) | 流動資産 |
| 受取手形 | 手形上の債権 | 流動資産 |
| 棚卸資産(商品・製品等) | 販売目的で保有する在庫 | 流動資産 |
| 前払費用 | 翌期以降に対応する費用の前払い分 | 流動資産 |
| 建物・土地・機械装置 | 長期に使用する有形固定資産 | 固定資産 |
| 備品 | PCや事務機器など | 固定資産 |
| のれん | 企業買収時の超過収益力の資産計上分 | 無形固定資産 |
| 投資有価証券 | 長期保有目的の株式・債券 | 投資その他 |
負債の科目
| 科目名 | 内容 | 区分 |
|---|---|---|
| 買掛金 | 商品仕入後まだ支払っていない代金 | 流動負債 |
| 支払手形 | 手形上の債務 | 流動負債 |
| 未払費用 | 当期に発生したがまだ支払っていない費用 | 流動負債 |
| 前受収益 | 翌期以降に対応する収益の前受け分 | 流動負債 |
| 借入金(短期) | 1年以内に返済期限が来る借入 | 流動負債 |
| 社債 | 発行した社債の未償還残高 | 固定負債 |
| 長期借入金 | 返済期限が1年超の借入 | 固定負債 |
| 退職給付引当金 | 将来の退職金支給に備えた引当 | 固定負債 |
純資産の科目
| 科目名 | 内容 |
|---|---|
| 資本金 | 株主からの払込資本のうち資本金に計上した額 |
| 資本準備金 | 払込超過額の一部を積み立てたもの |
| 利益準備金 | 会社法上の強制積立 |
| その他利益剰余金 | 任意積立金・繰越利益剰余金など |
| その他有価証券評価差額金 | 保有有価証券の時価評価差額(包括利益) |
収益・費用の主要科目
| 分類 | 科目名 | 内容 |
|---|---|---|
| 収益 | 売上高 | 商品・製品の販売による売上 |
| 収益 | 受取利息 | 預金・貸付金の利息収入 |
| 収益 | 受取配当金 | 保有株式の配当金収入 |
| 収益 | 有価証券売却益 | 有価証券を帳簿価額超で売却した差益 |
| 費用 | 売上原価(仕入) | 販売した商品の取得原価 |
| 費用 | 給料・賃金 | 従業員への給与 |
| 費用 | 減価償却費 | 固定資産の取得原価を期間配分したもの |
| 費用 | 支払利息 | 借入金・社債の利息支払 |
| 費用 | 貸倒引当金繰入 | 売掛金等の回収不能見込額の計上 |
| 費用 | 法人税等 | 課税所得に対する税額 |
試験での出題パターン
「A社は、商品200,000円を掛けで仕入れた。」
- ア 売掛金
- イ 仕入
- ウ 買掛金
- エ 売上高
仕入(費用)が発生したので借方、買掛金(負債)が増加したので貸方に計上します。仕訳は「(借)仕入 200,000 / (貸)買掛金 200,000」となります。売掛金は売上の未回収分(資産)、売上高は収益科目なので誤りです。
- ア 備品
- イ 減価償却費
- ウ 減価償却累計額
- エ 現金
間接法では、備品(資産)を直接減額せず「減価償却累計額」という評価勘定を貸方に計上します。仕訳は「(借)減価償却費 120,000 / (貸)減価償却累計額 120,000」。B/Sでは「備品600,000 − 減価償却累計額 XXX」として表示します。直接法(ア 備品を貸方)との違いも押さえておくとよいでしょう。
- ア 20,000円
- イ 20,000円(差額補充のため)
- ウ 40,000円
- エ 0円
期末に必要な貸倒引当金は 2,000,000 × 2% = 40,000円。期首残高が20,000円あるため、差額の20,000円のみ計上します。仕訳は「(借)貸倒引当金繰入 20,000 / (貸)貸倒引当金 20,000」。もし差額補充法でなく洗替法なら一度全額取り崩してから40,000円設定します。この違いも試験で問われることがあります。



過去問を3問解いてみて気づいたのですが、問題文の取引内容を「何が増えて、何が減ったか」に一度言い換えてから解くと、科目の選択肢を見たときに迷いにくくなりました。最初から科目名を当てはめようとすると暗記頼みになってしまうのですが、増減の方向で考えると勘定科目のルールを確認する形で解けます。焦らず丁寧に手順を踏んでいくのが、財務会計を得意にする近道なのかもしれないと感じています。
- 簿記の目的は財務諸表(B/S・P/L)の作成。複式簿記ですべての取引を借方・貸方の2面で記録する。
- 勘定科目は「資産・負債・純資産・収益・費用」の5分類。どの分類かが決まれば増減のどちらが借方かも決まる。
- 資産の増加=借方、減少=貸方。負債・純資産・収益は逆(増加=貸方)。費用の発生=借方。
- 仕訳は「何が増え、何が減ったか」を言語化してから科目を当てはめると迷いにくくなる。
- 試算表・精算表は貸借平均の原則(借方合計=貸方合計)を利用して確認・逆算する。
- 減価償却・貸倒引当金・引当金の設定は頻出。間接法と直接法の違い、差額補充法と洗替法の違いも確認する。









