U下請法は毎年のように出題される頻出テーマです。ただ「禁止行為が多くて覚えきれない」という声もよく聞きます。整理してみると、11種類の禁止行為のうち4つが特に重要で、残り7つはその延長線にあるとわかってきました。資本金基準の表と禁止行為の構造をセットで頭に入れると、一気に解きやすくなります。
下請法とは|目的と適用対象
下請法は昭和31年に制定された法律で、親事業者の優越的な地位を利用した不当な取引を防ぎ、下請事業者の利益を保護することを目的としています。独占禁止法が「個別判断」で優越的地位を認定するのに対し、下請法は「資本金要件を満たせば自動適用」という明確な基準が特徴です。
| 取引類型 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 製造委託 | 物品の製造または加工を他の事業者に委託する | 自動車メーカーが部品製造を下請工場に依頼する |
| 修理委託 | 物品の修理を他の事業者に委託する | 家電メーカーが製品修理を修理業者に委託する |
| 情報成果物 作成委託 |
プログラム・映像・文書など情報成果物の作成を委託する | システム会社がソフトウェア開発を外注する/広告代理店がデザイン制作を外注する |
| 役務提供委託 | 役務(サービス)の提供を他の事業者に委託する | 運送会社が配送業務を別の運送業者に再委託する/ビルメンテナンス会社が清掃業務を下請に依頼する |
| 取引類型 | 親事業者の資本金 | 下請事業者の資本金 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 製造委託 修理委託 |
3億円超 | 3億円以下 | 同じ資本金グループが原則。製造・修理は3億円、情報・役務は1000万円が境界線。 |
| 製造委託 修理委託 |
1000万円超〜3億円以下 | 1000万円以下 | |
| 情報成果物 作成委託 役務提供委託 |
5000万円超 | 5000万円以下 | 情報系・役務系は製造より基準が低い。個人事業主も下請事業者になりうる。 |
| 情報成果物 作成委託 役務提供委託 |
1000万円超〜5000万円以下 | 1000万円以下 |
親事業者の義務(3+1)
下請法は親事業者に4種類の義務を課しています。「3+1」と整理するのは、書面交付・書類保存・支払期日設定の3つが発注から支払までの手続き義務で、遅延利息が支払遅延が生じた場合の金銭的義務として別立てになるためです。
記載必須事項:下請事業者の名称・委託内容・下請代金の額(または算定方法)・支払期日・支払方法 など。
公取委・中小企業庁の調査に備えるための義務。電磁的記録による保存も認められている。
受領日から60日以内に期日を設定することが義務。期日を設定しない場合は受領日から60日を経過した日が支払期日とみなされる。
下請事業者が請求しなくても当然に発生する法定義務。一般の民法上の遅延損害金(年3%)より大幅に高い。



「60日以内」という数字は、2ヶ月と覚えるより「納品した月の翌々月末払いが上限」とイメージすると頭に入りやすいです。たとえば4月1日に納品した場合、6月1日が60日目なので、6月末払いでは60日超となり義務違反。5月末払い以内に設定する必要があります。数字問題として出題されやすい箇所なので、具体的なシーンで記憶しておくと安心です。
親事業者の禁止行為(11種類)
下請法が定める禁止行為は11種類あります。全部を同列に覚えようとすると混乱するため、まず「4大禁止行為」を押さえ、残り7つをその応用として整理するのが効率的です。
具体例:注文どおり完成した製品を、売れ行きが悪いからといって「都合が悪くなった」と受け取らない。仕様変更の申し出を断った下請業者への嫌がらせ的な受領拒否も該当。
具体例:資金繰りの都合で支払いを先延ばしにする。「検収が完了していない」という口実で支払を引き延ばす。支払期日を任意に変更する(合意があっても遅延は禁止)。
具体例:「値引きに協力しろ」と発注後に単価を引き下げる。協賛金・リベートと称して代金から天引きする。支払時に「手数料」名目で勝手に差し引く。
具体例:「他に発注先はいくらでもある」と脅して不当に低い単価を押しつける。市況価格を無視して一方的に原価割れに近い単価を提示する。
| 禁止行為 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 返品 | 受領後に、下請事業者に責任がないのに給付物を返品する | 売れ残りを「品質問題」と偽って返品する。季節品を需要期終了後に返品する。 |
| 物の購入強制 役務利用強制 |
親事業者が指定する物・役務を強制的に購入・利用させる | 自社の取引先の材料を強制的に購入させる。自社の指定する清掃業者を使わせる。 |
| 報復措置 | 下請事業者が公取委・中小企業庁に申告したことを理由に不利益な扱いをする | 申告した下請業者への発注を打ち切る。取引条件を意図的に悪化させる。 |
| 有償支給原材料 等の対価の 早期決済 |
有償で支給した原材料等の対価を、下請代金の支払期日より早く支払わせる | 下請代金は60日後払いなのに、原材料費は即時回収する形での差し引き。 |
| 割引困難な 手形交付 |
一般的な金融機関で割り引くことが困難な手形を交付する | 支払サイトが極端に長い(120日超など)手形や、信用力の低い金融機関の手形。 |
| 不当な経済上の 利益提供要請 |
下請事業者に対して、金銭・役務その他の経済上の利益の提供を要請する | 「協賛金を出してほしい」と任意の名目で金銭を要求する。無償の調査・作業を依頼する。 |
| 不当なやり直し 要請 |
下請事業者の責に帰すべき理由がないのに、費用を負担させてやり直しをさせる | 発注仕様と同じ成果物に対して「気に入らない」と全面やり直しを要求し費用は自己負担させる。 |
違反した場合の効果
下請法違反が認定された場合、公正取引委員会と中小企業庁が連携してさまざまな措置を講じます。行政措置と刑事罰の両面があり、独占禁止法違反との関係も整理しておく必要があります。
| 比較軸 | 下請法 | 独占禁止法(優越的地位の濫用) |
|---|---|---|
| 適用関係 | 特別法(資本金要件を満たせば自動適用) | 一般法(個別に優越的地位を判断) |
| 主な行政措置 | 勧告・公表(中小企業庁と共管) | 排除措置命令・課徴金納付命令 |
| 課徴金 | なし(下請法自体に課徴金規定なし) | あり(違反行為の取引額の1%など) |
| 刑事罰 | 50万円以下の罰金(書面義務違反等) | 懲役・罰金(課徴金とは別) |
| 両方適用は? | 可能。下請法違反が同時に独禁法違反にもなる場合、両方の措置を受けることがある。下請法の勧告+独禁法の課徴金という組み合わせも理論上あり得る。 | |
過去問で確認する
下請法は出題パターンが比較的安定しています。資本金基準の判定・禁止行為への該当性・独禁法との違いという3つの切り口で繰り返し問われています。過去問で問われた論点を確認しておきましょう。
- ア. 下請法は製造委託・修理委託にのみ適用され、情報成果物作成委託や役務提供委託には適用されない
- イ. 資本金1000万円以下の事業者は、いかなる場合も下請事業者にはなれない
- ウ. 親事業者が資本金3億円超で、下請事業者が資本金3億円以下の場合、製造委託は下請法の適用を受ける
- エ. 下請法の執行機関は公正取引委員会のみであり、中小企業庁は関与しない
- ア. 親事業者が下請事業者に有償で原材料を支給し、その対価を下請代金の支払期日より前に支払わせることは、下請法上問題ない
- イ. 下請事業者の責に帰すべき理由がある場合でも、受領後に物品を返品することは一切禁止されている
- ウ. 親事業者が発注後に、下請事業者の責に帰すべき理由なく下請代金を減額することは禁止されている
- エ. 下請代金の支払期日は、給付を受領した日から90日以内であれば下請法に違反しない
- ア. 下請法は資本金要件を満たした取引に自動的に適用されるが、独禁法の優越的地位の濫用は個別取引ごとに優越的地位の有無を判断する
- イ. 下請法違反に対しては課徴金が科されるが、独禁法違反に対しては課徴金の制度がない
- ウ. 下請法の要件を満たさない取引でも、独禁法の優越的地位の濫用として規制される可能性がある
- イ(最も不適切)



下請法を勉強していて気づいたのは、これが「当たり前のルール」を法律にしたものだということです。お金を払う、受け取ったら返さない、後から値引きしない——社会人として当然の行動が条文になっている。それなのに現実には違反が後を絶たない。法律の意味を理解するだけでなく、なぜこの条文が必要だったのかという背景を知ると、記憶に残りやすくなります。
まとめ
下請法の要点を最後に整理します。適用要件・義務・禁止行為・違反効果という4つの柱で体系を把握しておけば、どのような問われ方をしても対応できるようになります。









