ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金・事業再構築補助金——中小企業診断士試験の「中小企業政策」では、各補助金の対象・補助上限・補助率・目的の違いを正確に押さえることが求められます。比較表と個別解説で整理します。
目次
4大補助金の比較一覧
| 補助金名 | 主な対象 | 補助上限(通常枠目安) | 補助率(通常) | 目的・特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ものづくり補助金 | 中小企業・ 小規模事業者 |
750万円〜1,250万円 (従業員規模で変動) |
1/2 (小規模:2/3) |
革新的な製品・サービス開発、生産プロセスの改善 |
| 小規模事業者 持続化補助金 |
小規模事業者のみ | 50万円 (特別枠は上乗せあり) |
2/3 | 販路開拓・業務効率化。小規模事業者専用で申請しやすい |
| IT導入補助金 | 中小企業・ 小規模事業者 |
ツール種別で異なる (通常枠:〜450万円) |
1/2以内 | 業務効率化・DX推進のためのITツール(ソフトウェア・クラウド等)導入 |
| 事業再構築補助金 | 中小企業・ 中堅企業 |
成長枠:7,000万円(中小) 1億円(中堅) |
1/2(中小) 1/3(中堅) |
新市場進出・事業転換・業種転換等による抜本的な事業再構築 |
補助率と補助上限の読み方:補助率は「かかった費用のうち何割を国が補助するか」を示します。補助上限は「補助金として受け取れる金額の上限」です。補助率1/2・上限750万円の場合、事業費1,500万円なら補助金750万円(上限まで)、事業費600万円なら補助金300万円(補助率1/2)となります。
各補助金の詳細
SUBSIDY 1
ものづくり補助金中小・小規模
- 正式名称:中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
- 対象事業:革新的な製品・サービス開発、または生産プロセス・サービス提供方法の改善
- 申請要件:事業計画(3〜5年)を策定し、給与支給総額・一人当たり賃金・付加価値額の増加目標を設定
- 従業員規模別上限:5人以下750万円、6〜20人1,000万円、21人以上1,250万円(通常枠目安)
- 賃金引上げ特例:事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上の場合、補助率が2/3に引上げ(中小)
試験のポイント
「ものづくり」と名がつくが製造業限定ではない。商業・サービス業も対象。従業員規模で上限が変わる点と、小規模事業者の補助率が2/3という点が頻出。
SUBSIDY 2
小規模事業者持続化補助金小規模専用
- 対象:商工会議所・商工会の管轄内の小規模事業者
- 目的:販路開拓・業務効率化のための取り組み(チラシ・HP作成・新商品開発等)
- 補助上限:通常枠50万円(創業・後継者・事業承継特別枠などで上乗せあり)
- 補助率:補助対象経費の2/3以内
- 申請窓口:商工会議所または商工会が経営計画書の確認を行う
試験のポイント
「小規模事業者専用」の補助金。商工会議所・商工会の関与が必須。補助上限は小さいが補助率2/3は高め。「小規模事業者の定義(製造業20人以下・商業・サービス業5人以下)」と合わせて理解する。
SUBSIDY 3
IT導入補助金中小・小規模
- 目的:中小企業・小規模事業者のITツール(ソフトウェア・クラウドサービス等)導入支援
- IT導入支援事業者:経済産業省が認定したベンダー(IT導入支援事業者)経由で申請する仕組み
- 対象経費:ソフトウェア購入費・クラウドサービス利用料・導入関連費等
- 類型:通常枠(A・B類型)、デジタル化基盤導入枠(インボイス対応など)等に分類
- 特徴:ITツールはあらかじめ登録されたものに限定。汎用性の高いPCやスマートフォン本体は対象外。
試験のポイント
「IT導入支援事業者」を通じた申請という仕組みが特徴的。PC本体は対象外(ソフトウェア・クラウドが主対象)。デジタル化基盤導入枠でインボイス制度・電子帳簿保存対応が対象になった点も整理しておく。
SUBSIDY 4
事業再構築補助金中小・中堅
- 目的:ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会変化に対応した事業再構築を支援
- 主な類型:成長枠(旧:通常枠)、グリーン成長枠、産業構造転換枠、最低賃金枠、物価高騰対策・回復再生応援枠など
- 申請要件(成長枠):市場拡大が見込める業種・業態への転換、売上高10%減少要件は撤廃済み(2023年度〜)
- 認定経営革新等支援機関:事業計画の作成に認定支援機関の確認が必要
- 補助上限・率:中小は成長枠最大7,000万円・補助率1/2(小規模2/3)、中堅は最大1億円・1/3
試験のポイント
「事業再構築」の定義(新市場進出・事業転換・業種転換・事業再編・国内回帰)の分類が問われる。認定支援機関(認定経営革新等支援機関)の関与が必須。補助上限が4補助金中最大で「思い切った事業転換」を後押しする制度という位置づけを理解する。
補助金の申請・活用フロー
共通の流れ:
① 公募(公募要領の確認・締切日の把握)
② 事業計画書の作成(認定支援機関や商工会議所の確認が必要な場合あり)
③ 電子申請(GビズIDが原則必要)
④ 採択発表 → 交付申請 → 事業実施
⑤ 実績報告・確定検査 → 補助金交付(後払い方式)
① 公募(公募要領の確認・締切日の把握)
② 事業計画書の作成(認定支援機関や商工会議所の確認が必要な場合あり)
③ 電子申請(GビズIDが原則必要)
④ 採択発表 → 交付申請 → 事業実施
⑤ 実績報告・確定検査 → 補助金交付(後払い方式)
注意:補助金は「後払い」が原則。先に自己資金で投資し、事業完了後に補助金が交付される。資金繰りへの影響を見込んだ計画が必要。
GビズIDとは:法人・個人事業主が行政サービスを利用するための共通認証システム(経済産業省)。ものづくり補助金・持続化補助金・IT導入補助金・事業再構築補助金はいずれもGビズIDでの電子申請が原則。
事業再構築の定義(類型)
| 類型 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| 新市場進出 | 主たる業種・業態を変えずに新しい製品・サービスを提供し新市場に進出 | 飲食店が新商品(冷凍食品)を開発してECで販売開始 |
| 事業転換 | 主たる業種を変えずに主たる業態を変更 | 居酒屋がカフェに業態転換 |
| 業種転換 | 主たる業種そのものを変更 | アパレル製造業が介護用品製造業に転換 |
| 事業再編 | 合併・買収・会社分割等を行い事業を再構築 | 子会社を設立し新規事業を担わせる |
| 国内回帰 | 海外で製造していた製品の生産拠点を国内に移転 | 海外工場を国内に移設し製造を国内化 |
過去問で確認する
H29年 第12問
中小企業政策 / 補助金の対象
中小企業政策 / 補助金の対象
ものづくり補助金に関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:「ものづくり」という名称から製造業限定と誤解しやすいが、商業・サービス業も対象となる。また補助率は原則1/2だが、小規模事業者は2/3。申請には事業計画の策定と付加価値額・賃金の増加目標設定が必要。
R3年 第15問
中小企業政策 / 事業再構築補助金
中小企業政策 / 事業再構築補助金
事業再構築補助金の類型に関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:事業再構築の5類型(新市場進出・事業転換・業種転換・事業再編・国内回帰)の定義と違いを区別する。「業種転換」は業種そのものを変える(製造→介護等)で、「事業転換」は同業種内で業態を変える(居酒屋→カフェ等)。名前が似ているので混同注意。
R4年 第13問
中小企業政策 / 持続化補助金
中小企業政策 / 持続化補助金
小規模事業者持続化補助金に関する記述として、最も適切なものはどれか。
解答のポイント:持続化補助金は小規模事業者専用。商工会議所・商工会の支援を受けながら申請する仕組み。補助率は2/3、通常枠上限50万円と比較的小規模だが申請しやすい設計になっている。「販路開拓」に使える経費(チラシ・HP制作・展示会出展等)が補助対象。
U のメモ
4つの補助金を横断的に覚えるときは、「誰が対象か」「いくら補助されるか」「何のための補助か」の3軸で整理すると混乱しにくいです。特に持続化補助金は「小規模事業者だけ」という点が引っかけになりやすく、ものづくり補助金との対象範囲の違いを意識して覚えています。事業再構築補助金は補助上限が桁違いに大きいので「抜本的な転換向け」というイメージで紐づけています。中小企業基本法の定義や認定支援機関と合わせて学ぶと体系が見えやすいです。

