【中小企業診断士試験令和7年度過去問財務会計 第3問 解説】税抜経理方式の消費税納付額と所得金額を図解で整理

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過去問を解いていて、消費税の計算と法人税の所得金額が1問に同居していて戸惑ったことはありませんか。私も最初は「どちらを先に計算すればよいのか」と迷いました。この問題は「同じ取引を2つの視点で見る」という構造が分かると、ぐっと整理できます。

この問題は「消費税の納付税額」と「法人税の所得金額」のどちらが正しいかを4つの選択肢から選びます。税抜経理方式という前提が計算の鍵です。まず問題全体を確認してから、2つの計算を順番に整理していきます。

令和7年度 第1次試験 財務・会計 第3問 本則課税・税抜経理方式
以下の資料に基づき、法人税が課される所得金額と消費税および地方消費税(以下、消費税とする。)の納付税額として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

なお、税抜経理方式を採用しており、期首の在庫や中間納付税額はゼロとし、消費税の課税事業者であるが簡易課税を選択していない。
【資料】
・ 1個1,100円(消費税100円を含む)の商品を1,000個仕入れ、現金で支払った。
・ 仕入れた商品のうち800個を期中に1個1,650円(消費税150円を含む)で販売し、代金は現金で受け取った。
・ 期末において200個の商品が在庫として残っている。
  • ア 消費税の納付税額は20,000円である
  • イ 消費税の納付税額は40,000円である
  • ウ 所得金額は200,000円である
  • エ 所得金額は440,000円である
正解
ア(消費税の納付税額は20,000円)
消費税の計算が正しい選択肢はアのみ。所得金額は400,000円だが選択肢に存在せず、ウ・エはどちらも誤り。
目次

この問題の構造を整理する

財務・会計 目次での位置づけ
財務・会計
├── 第1章 財務会計の基礎
│ └── 消費税の経理処理(税抜・税込) ← 今ここ
├── 第2章 決算整理
│ └── 棚卸資産・売上原価の計算 ← 今ここ
└── 法人税の課税所得計算 ← 横断論点
★★★★
頻出度
消費税計算はほぼ毎年登場
★★★★
難易度
2論点複合・罠が3種類ある
3〜4
本番の目安(消費税を先に解く)

この問題が珍しいのは、消費税と法人税の2つを同時に扱っている点です。4つの選択肢のうち正しいものを一つ選ぶのですが、ア・イは消費税の話、ウ・エは所得金額の話と、論点が分かれています。

解き方のコツは「消費税を先に計算する」こと。計算が単純で数字が出やすく、アとイが絞れればウとエを確認する必要が減ります。

① 消費税の納付税額を計算する

計算構造:売上消費税 − 仕入消費税 = 納付税額

消費税は「売上で預かった消費税」から「仕入で先払いした消費税」を引いた差額を国に納めます。この差引きが消費税計算の基本です。

仮受消費税(売上)
120,000
150円 × 800個
仮払消費税(仕入)
100,000
100円 × 1,000個
=
納付税額
20,000
正解:選択肢ア
項目計算金額注意点
仮受消費税(売上)150円 × 800個120,000円販売した800個分
仮払消費税(仕入)100円 × 1,000個100,000円仕入れた全個数(在庫200個も含む)
消費税の納付税額120,000 − 100,00020,000円→ 選択肢ア が正解
最も多い誤り:仕入消費税を「800個分」で計算してしまう
仕入消費税の控除は「売れた個数」ではなく「仕入れた全個数(1,000個)」が対象です。消費税の仕入税額控除は仕入れた瞬間に控除権が生まれます。200個が在庫になっていても、仕入時に支払った消費税100,000円は全額控除できます。イ(40,000円)はここを間違えた数字です。

② 法人税の所得金額を計算する

税抜経理方式では「消費税抜きの数字」だけで計算する

税抜経理方式では、消費税を完全に取り除いた金額だけで損益を計算します。売上も仕入も、すべて消費税なしの数字で扱います。

01
売上高(税抜)を確認する
1個1,650円のうち消費税150円を除いた1,500円が売上単価。
売上高 = 1,500円 × 800個 = 1,200,000円
02
仕入高(税抜)を確認する
1個1,100円のうち消費税100円を除いた1,000円が仕入単価。
仕入高 = 1,000円 × 1,000個 = 1,000,000円
03
期末棚卸資産を計算する
200個が残っている。単価は仕入時の1,000円(税抜)。
期末棚卸資産 = 1,000円 × 200個 = 200,000円
04
売上原価を求める
仕入高から期末在庫を引いた金額が、売れた800個分の原価。
売上原価 = 1,000,000 − 200,000 = 800,000円
05
所得金額を求める
売上高から売上原価を引いた差額が所得金額。
所得金額 = 1,200,000 − 800,000 = 400,000円
400,000円は選択肢に存在しません。ウ(200,000)もエ(440,000)も誤りです。
項目計算金額
売上高(税抜)1,500円 × 800個1,200,000円
仕入高(税抜)1,000円 × 1,000個1,000,000円
期末棚卸資産1,000円 × 200個△ 200,000円
売上原価1,000,000 − 200,000800,000円
所得金額1,200,000 − 800,000400,000円(選択肢なし)
U

「所得金額は400,000円なのに選択肢にない」というのが、この問題の設計です。ウとエはどちらも間違っていて、消費税の計算が正しいアを選ぶという形になっています。消費税だけ先に解いてしまえば、所得金額は確認程度で済みます。

選択肢の罠を一つずつ解剖する

選択肢内容正誤この選択肢を選んでしまう思考パターン
消費税 20,000円✅ 正解仕入消費税を1,000個分で正しく計算できている
消費税 40,000円仕入消費税を売れた800個分のみで計算した(100×800=80,000 → 120,000−80,000=40,000)
所得金額 200,000円期末在庫200個を棚卸計上し忘れた(1,200,000−1,000,000=200,000)
所得金額 440,000円税込の金額(1,650円・1,100円)で計算してしまった(1,650×800=1,320,000、1,100×800=880,000)
罠① イ(40,000円):法人税的な感覚を消費税に持ち込む
法人税では「売れた分だけ原価計上」します。その感覚のまま消費税を計算すると、「800個売ったから控除は800個分」という誤解が生まれます。消費税の仕入税額控除は仕入れた瞬間に確定します。在庫になっても控除は消えません。
罠② ウ(200,000円):期末棚卸の「消し忘れ」
1,000個仕入れて800個売ると、在庫が200個残ります。この200個分(200,000円)を期末棚卸資産としてB/Sに計上し、売上原価から除くのが会計ルールです。計算に集中すると期末在庫の存在を忘れやすく、「1,200,000−1,000,000=200,000」という誤りに落ちます。
罠③ エ(440,000円):問題文の前提を読み飛ばす
「税抜経理方式を採用しており」という一文を見落とすと、1,650円・1,100円という税込金額をそのまま使います。1,650×800=1,320,000、1,100×800=880,000という計算になり、差額440,000という一見もっともらしい数字が出てきます。問題文の冒頭条件が勝負を決める典型的な罠です。

間違えた場合の立て直しルート

  • イを選んだ場合 → 消費税の「仕入税額控除は仕入れた全個数」を確認する
  • ウを選んだ場合 → 売上原価の計算(仕入高 − 期末棚卸 = 売上原価)を確認する
  • エを選んだ場合 → 税抜経理と税込経理の違い、計算に使う金額の単価を確認する

税抜経理方式の仕組みを根本から整理する

消費税は「あなたの売上ではなく、国に代わって預かるお金」です。1,650円で商品を売ったとき、150円はお客さんが負担した消費税であり、あなたの利益ではありません。税抜経理はそのことを帳簿の上で正確に表現する方法です。

税抜経理方式の仕訳イメージ
【仕入時】1,000個 × 1,100円(税込)を現金で支払い
仕入     1,000,000 / 現金  1,100,000
仮払消費税   100,000
【販売時】800個 × 1,650円(税込)を現金で受け取り
現金    1,320,000 / 売上   1,200,000
仮受消費税  120,000
【期末決算時】消費税を清算 → 未払消費税として計上
仮受消費税  120,000 / 仮払消費税 100,000
未払消費税  20,000

この仕訳の流れを見ると、消費税は損益に一切関与しないことが分かります。P/Lに残るのは「売上1,200,000」と「売上原価800,000」だけ。所得金額は400,000円です。

税抜経理 vs 税込経理の違い
税抜経理方式(本問)
売上・仕入を消費税抜きで記帳
消費税は仮勘定(仮受・仮払)で処理
P/Lに消費税の影響が出ない
本業の損益がクリアに見える
税込経理方式(参考)
売上・仕入を税込金額で記帳
消費税を仮勘定で管理しない
納付消費税は租税公課として費用計上
小規模事業者・免税事業者に多い

Uのまとめメモ

  • 消費税の納付税額 = 仮受消費税(売上全体)− 仮払消費税(仕入れた全個数
  • 仕入税額控除は「売れた個数」ではなく「仕入れた全個数」が対象
  • 税抜経理方式 → 売上・仕入はすべて消費税抜きの金額で計算する
  • 所得金額 = 売上高(税抜)− 売上原価(仕入高 − 期末棚卸資産)
  • 複合問題は「消費税から先に解く」と時間を節約できる

この問題に取り組んでみて、消費税と法人税が「別々の話」ではなく、同じ取引を違う視点で見ているだけだと感じていただけたでしょうか。次に同じ構造の問題に出会ったとき、「まず税抜か税込かを確認する」という手順が自然に浮かんでくると思います。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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