経済成長理論まとめ|ハロッド・ドーマーの不安定性とソロー定常状態 | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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経済成長理論の問題、過去問で手が止まった経験があります。ハロッドの「ナイフエッジ問題」とソローの「定常状態」、何が違うのか。それぞれのモデルが「何を問題にしているか」から整理すると見えてきました。

目次

経済成長理論の全体像:2つのアプローチ

経済成長理論は大きく「ケインズ系(ハロッド・ドーマー)」と「新古典派(ソロー)」の2つに分かれます。どちらも「経済が長期的にどう成長するか」を説明しますが、アプローチが違います。

ハロッド・ドーマー成長モデル
ケインズ経済学を長期に拡張。貯蓄率・資本係数をもとに「安定的な成長は偶然にしか実現しない」(ナイフエッジ問題)ことを示す。
g = s / v
g:成長率, s:貯蓄率, v:資本係数
ソロー成長モデル(新古典派)
資本と労働の代替を認め、収穫逓減の下で「定常状態」に収束することを示す。技術進歩のみが長期的な1人当たり成長を可能にする。
定常状態: Δk = sf(k) – (n+δ)k = 0
k:1人当たり資本, s:貯蓄率

ハロッド成長モデル:3つの成長率と「ナイフエッジ問題」

現実成長率(g)
実際の経済成長率
現在の貯蓄・投資によって決まる実際の成長率。g = s/v
保証成長率(gw
企業の意図が実現する成長率
企業が期待通りの収益を得るための成長率。g > gw → 過剰投資(インフレ)
自然成長率(gn
完全雇用を維持する成長率
労働人口増加率+技術進歩率。gw = gn のとき長期均衡成長。
ナイフエッジ問題(ハロッドの不安定性):
g(現実)= gw(保証)= gn(自然)が同時に成立する確率は極めて低い。
少しでもズレると 累積的に拡大 し、均衡成長から大きく外れていく。
→ 安定した成長はナイフの刃の上に立つように不安定(ナイフエッジ問題)

ハロッドのモデルが示したのは「市場メカニズムだけでは安定成長は保証されない」という警告でした。これが財政政策・金融政策による介入の必要性を理論的に支持する根拠の一つです。

ソロー成長モデル:定常状態と収束

ハロッドの不安定性問題を解決したのがソロー(新古典派)モデルです。資本と労働の代替可能性を認めることで、経済は自然に「定常状態」へ収束します。

01
1人当たり資本(k)が少ない段階
資本の限界生産物が大きいため収益率が高く、投資が活発。資本蓄積のペースが速い→ k が増加。
02
資本が増えると収穫逓減が働く
資本が増えるにつれ1単位追加した資本から得られる生産物が減少(収穫逓減)。投資の実効収益率が下がる。
03
「資本増加量=資本減耗量」の定常状態へ
新規投資による資本増加と、減耗(δ)+人口増加(n)による資本希薄化が釣り合う点が定常状態。sf(k) = (n+δ)k
04
定常状態では1人当たり成長がゼロになる
技術進歩がなければ、長期的には1人当たり産出量は一定に収束する。1人当たりの持続的成長には技術進歩(外生的)が必要。

ハロッドとソローの比較:何が違うか

比較項目ハロッド・ドーマーモデルソロー成長モデル(新古典派)
生産要素の代替資本・労働の代替なし(固定比率)資本・労働の代替可能
均衡の安定性不安定(ナイフエッジ問題)安定的に定常状態へ収束
長期成長の源泉貯蓄率・資本係数技術進歩(外生的)
収穫一定(規模に比例)資本に関して収穫逓減
主な含意市場では安定成長は困難→政策介入が必要貯蓄率増加は一時的に成長↑、長期は定常状態へ収束

身近な場面で考える:国の経済も「貯蓄率が高いほど豊か」とは限らない

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ソローモデルで驚いたのは「貯蓄率を上げても長期的な成長率は変わらない」という結論でした。貯蓄率を上げると定常状態の1人当たり資本水準は高くなりますが、成長率はゼロに収束します。長期の成長を維持するには技術進歩が必要、というのは直感と少しズレていて面白いと思いました。

黄金律(ゴールデン・ルール)の資本水準:
「定常状態での1人当たり消費を最大にする資本水準」を黄金律という。
条件:f'(k*) = n + δ(資本の限界生産物=資本希薄化率)
※ f'(k*) は資本の限界生産物。この条件を満たす k* が最適な資本水準。

過去問で確認しておきたいポイント

  • ハロッド成長式:g = s/v(s:貯蓄率、v:資本係数)
  • ナイフエッジ問題:現実成長率・保証成長率・自然成長率の3つが一致するのは偶然のみ
  • ソロー定常状態:sf(k) = (n + δ)k が成立する k* に収束
  • ソローモデル:1人当たり持続的成長には技術進歩(外生的)が必要
  • 黄金律:f'(k*) = n + δ を満たす資本水準で消費が最大化

Uのメモ

この分野で混乱したのは「現実成長率 g = s/v」の式の分母 v が「資本係数」(産出1単位に必要な資本量)であることです。v が大きいほど資本集約的な産業ということで、g は低くなります。ハロッドの3成長率(現実・保証・自然)は名称と意味をセットで覚えておくと選択肢を絞りやすいです。

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経済成長理論は、AD-AS分析や乗数効果の長期的展開として捉えるとつながりが見えてきます。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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