U為替レートの問題は「円安になると輸出が増える」くらいは知っていても、マンデル=フレミングモデルまで来ると一気に難しく感じました。でも「IS-LMモデルを開放経済に拡張したもの」と捉えると、意外とすっきり整理できました。
為替レートは「円とドルを何対何で交換するか」という比率です。日本経済にとって輸出入・海外投資・物価に直結する重要変数であり、診断士試験でも毎年のように出題されます。
まず基本的な為替の動きを確認し、次に開放経済下での財政・金融政策の効果(マンデル=フレミング)へと進みます。
為替レートの基本——円安・円高で何が変わるのか
円高:1ドル=150円→1ドル=100円 → 円の価値が上がった
名目為替レート:実際に市場で取引される為替レート
実質為替レート:名目為替レートを両国の物価水準で調整したもの(競争力の指標)
| 項目 | 円安の影響 | 円高の影響 |
|---|---|---|
| 輸出 | 外貨建て価格が下がり→輸出増加 | 外貨建て価格が上がり→輸出減少 |
| 輸入 | 円建て価格が上がり→輸入減少 | 円建て価格が下がり→輸入増加 |
| 物価 | 輸入物価上昇→インフレ圧力 | 輸入物価低下→デフレ圧力 |
| 企業収益 | 輸出企業は収益増・輸入企業は収益減 | 輸出企業は収益減・輸入企業は収益増 |
| 海外旅行 | 割高になる(しにくい) | 割安になる(しやすい) |
購買力平価説(PPP)
為替レートの長期的な決定理論として有名なのが「購買力平価説(PPP)」です。
絶対的購買力平価:e = P(国内物価)/ P*(海外物価)
例:日本でビッグマックが400円、アメリカで4ドルなら → 均衡レートは 400/4 = 100円/ドル
相対的購買力平価:為替レートの変化率 ≈ 国内インフレ率 − 海外インフレ率
例:日本のインフレ率3%・米国1% → 円は年2%減価(円安)の方向
現実には輸送費・関税・非貿易財の存在があるため、PPPは長期的な目安にとどまります。短期変動の説明力は低い点も重要です。
金利平価説と資本移動
短期の為替レート決定には「金利平価説」も重要です。
カバーなし金利平価:i = i* + 期待減価率
(国内金利 = 海外金利 + 期待される為替変化率)
例:日本の金利0.5%、米国5%なら → 投資家はドルを買う → 円安圧力
→ 将来のドル安(円高)が期待される水準で均衡する
2022年以降の急速な円安も、日米金利差の拡大が背景のひとつです。理論と現実が直結している身近な例です。



「金利が高い国の通貨が買われる → 円安」という流れは、ニュースで日銀の金利政策が為替に影響する話として毎日のように報道されていますね。理論と現実が直結しているので、ニュースを見ながら確認できる論点です。
国際収支——経常収支と資本収支
→ 経常収支が黒字(+)なら、資本・金融収支は赤字(−)になる
→ 日本が「貿易黒字」なら、それだけ海外に資本(カネ)を流出させていることになる
マンデル=フレミングモデル——開放経済のIS-LM
マンデル=フレミングモデルは、IS-LMモデルを国際資本移動を考慮した開放経済に拡張したモデルです。為替レート制度によって、財政・金融政策の効果が大きく変わることを示します。
金利が世界利子率より高ければ資本流入 → 通貨増価(自国通貨高)
金利が世界利子率より低ければ資本流出 → 通貨減価(自国通貨安)
| 政策 | 変動相場制 | 固定相場制 |
|---|---|---|
| 財政政策(拡張) | 無効:金利上昇→資本流入→通貨高→純輸出減(完全クラウディングアウト) | 有効:金利上昇→介入で吸収→マネーサプライ増→完全効果 |
| 金融政策(拡張) | 有効:金利低下→資本流出→通貨安→純輸出増加→GDP増 | 無効:金利低下→資本流出→介入→マネーサプライ元に戻る |
「変動相場制+財政政策=無効」「変動相場制+金融政策=有効」という逆説的な結論が試験の核心です。
マーシャル=ラーナー条件とJカーブ効果
輸出の価格弾力性 + 輸入の価格弾力性 > 1
→ 両弾力性の合計が1を超えれば、円安→経常収支改善
その後、輸出量増・輸入量減の効果が出てきて経常収支が改善する。
→ グラフがJの形に見えることから「Jカーブ効果」と呼ばれる
過去問で確認する
- ア 拡張的財政政策は、国民所得を増加させる効果を持つ。
- イ 拡張的金融政策は、自国通貨を増価させる。
- ウ 拡張的金融政策は、純輸出を増加させることで国民所得を増加させる。
- エ 拡張的財政政策は、金融政策と同様に有効である。
変動相場制下:財政政策は無効・金融政策は有効というのがマンデル=フレミングの結論です。
ア:財政拡張→金利上昇→資本流入→通貨高→純輸出減→GDPはほぼ不変(無効)。
イ:金融緩和→金利低下→資本流出→通貨安(減価)。増価ではありません。
ウ:正しい。金利低下→資本流出→通貨安→純輸出増加→GDP増加。
エ:変動相場制下では財政政策は無効です。
- ア 購買力平価説によると、国内物価の上昇は自国通貨を増価させる。
- イ 購買力平価説は短期的な為替レートの変動をよく説明する。
- ウ 相対的購買力平価説によると、インフレ率が高い国の通貨は減価する傾向にある。
- エ 絶対的購買力平価説では、サービスを含む全財の価格が均等化されることが前提となる。
ア:国内物価の上昇(インフレ)は通貨を減価させます。
イ:購買力平価説は長期的な傾向を説明するものであり、短期変動の説明力は低い。
ウ:正しい。相対的PPP:インフレ率が高い国→通貨減価の方向。
エ:PPPは主に貿易財を対象とします。非貿易財は一物一価が成立しにくい。
試験直前チェックリスト
- 円安:輸出増・輸入減・インフレ圧力。円高は逆
- 購買力平価:インフレが高い国の通貨は減価(相対的PPP)。短期変動の説明力は低い
- 金利平価:金利が高い国に資本流入→通貨増価(ただし期待減価で均衡)
- 変動相場制:財政政策=無効・金融政策=有効(マンデル=フレミング)
- 固定相場制:財政政策=有効・金融政策=無効(変動相場制の逆)
- マーシャル=ラーナー条件:輸出弾力性+輸入弾力性>1 → 円安で経常収支改善
- Jカーブ効果:円安直後は一時悪化→時間差で改善
Uのメモ
変動相場制 → 「変動」だから為替が動く → 財政拡張→通貨高→無効、金融緩和→通貨安→有効
固定相場制 → 「固定」だから中央銀行が介入 → 金融緩和→介入→元に戻る→無効
試験では「変動相場制・完全資本移動・小国仮定」という前提を問題文で確認することが大切です。固定相場制の問題と混同しないよう、前提条件を必ず読みましょう。









