U「独占企業はなぜ高い価格をつけられるのか」——この問いへの答えが、MR(限界収入)とMC(限界費用)の関係を理解したとき、急に明確になりました。独占市場の分析は、完全競争と比べることで「競争がない世界で何が失われるか」を浮き彫りにしてくれます。
独占市場の特徴と完全競争との違い / MRとMCから最適産出量を求める手順 / 独占利潤の計算 / 死荷重(厚生損失)のしくみ / 価格差別の基本 / 試験頻出の計算パターン
独占市場の特徴
独占(Monopoly)とは、1社だけが財を供給する市場構造です。完全競争と何が違うのかを整理すると、独占の本質が見えてきます。
| 比較項目 | 完全競争 | 独占 |
|---|---|---|
| 供給者数 | 多数(price taker) | 1社(price maker) |
| 価格設定 | 市場価格を受け入れる(P = MC) | 自ら価格を設定できる(P > MC) |
| 需要曲線 | 水平(価格所与) | 右下がり(市場需要曲線が直面する曲線) |
| 限界収入(MR) | MR = P | MR < P(産出量を増やすと価格が下がる) |
| 長期利潤 | ゼロ(超過利潤は参入で消える) | プラス(参入障壁で守られる) |
限界収入(MR)の導出
需要曲線が直線 P = a − bQ のとき、MRは傾きが2倍の右下がり曲線になります。
→ D曲線の切片は同じ、傾きは2倍急
ε = 1(単位弾力的)→ MR = 0
ε < 1(非弾力的)→ MR < 0
最適産出量と独占価格の求め方
独占企業の利潤最大化条件は MR = MC です。この条件から最適産出量を求め、需要曲線から独占価格を読み取ります。
MR = 100 − 4Q、MC = 2Q + 20
100 − 4Q = 2Q + 20 → Q* = 13.3
または π = (P* − AC*) × Q*(平均費用曲線から読む)



「MR = MC」という条件は独占だけでなく、すべての市場形態に共通する利潤最大化の原則です。完全競争ではP = MC、独占ではP > MR = MC。この違いがそのまま「独占がなぜ社会的に非効率か」を示しているのだと気づきました。
死荷重(厚生損失)とは
独占は価格を引き上げ、産出量を競争均衡より少なくします。この「生産されなかった取引」によって失われる社会的余剰が死荷重(Deadweight Loss: DWL)です。
DWL = (1/2) × (P* − MC*) × (Qc − Q*)
独占価格 P* と限界費用 MC* の差(独占の楔)に、失われた取引量 (Qc − Q*) をかけた面積の半分です。
価格差別による死荷重の削減
独占企業が消費者ごとに異なる価格を設定する価格差別は、死荷重を減らす一方で消費者余剰を搾取します。
| 種類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 第1種(完全価格差別) | 各消費者の留保価格を個別に設定。消費者余剰ゼロ・死荷重ゼロ。パレート効率的 | 個別交渉・オークション |
| 第2種(数量差別) | 購入量に応じて価格を変える(多く買うほど安くなる等) | 業務用大容量パック・電力の逓減料金 |
| 第3種(市場分割) | 弾力性の異なるグループに別々の価格。弾力的グループに安い価格 | 学生割引・地域別価格・映画の時間帯別料金 |
試験対策のポイント
- 独占の利潤最大化:MR = MC → Q*を求め → 需要曲線でP*を読む
- MR曲線:D曲線と切片同じ・傾きは2倍急(直線需要曲線の場合)
- MR = P(1 − 1/ε) → 利潤最大化はε > 1の弾力的な領域
- 死荷重(DWL)= (1/2)(P* − MC*)(Qc − Q*) の三角形
- 完全価格差別(第1種)= 死荷重ゼロ・消費者余剰ゼロ・パレート効率的
- 第3種価格差別:弾力的なグループに低価格・MR₁ = MR₂ = MCで最適化
まとめ
- 独占企業はP > MR = MCで生産し、完全競争より高い価格・少ない数量を選ぶ
- 直線需要曲線のMR:切片同じ・傾き2倍急。MR = MC → Q* → 需要曲線でP*
- 死荷重 = (1/2)(P* − MC*)(Qc − Q*) の三角形で表される社会的損失
- 価格差別は消費者余剰を搾取しながら産出量を増やし死荷重を減らす



独占の死荷重を学んだ後、身近な独占・寡占企業を見るたびに「この価格はどれくらい競争均衡から乖離しているのだろう」と考えるようになりました。規制論議の背後に経済学の論理が見えてきて、ニュースの解像度が上がった気がします。
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