U経済学では「自由な市場は効率的な資源配分を実現する」と学びますが、ではなぜ政府が介入するのでしょうか。その答えが「市場の失敗」です。外部効果・公共財・情報の非対称性——どれも試験の頻出論点で、現実の政策ともつながりがある面白いテーマです。
市場の失敗とは何か——競争市場が機能しない4つの場面
完全競争市場は、パレート最適(誰かの状況を悪化させずに誰かの状況を改善できない状態)な資源配分を実現します。しかし現実には、市場メカニズムだけでは効率的な資源配分が達成できない場合があります。これを市場の失敗(market failure)といいます。
外部効果——市場価格に乗らないコストと便益
外部効果は、外部不経済(負の外部性)と外部経済(正の外部性)の2種類があります。
| 種類 | 内容 | 具体例 | 市場均衡の問題 | 対応策 |
|---|---|---|---|---|
| 外部不経済(負) | 第三者に費用(被害)を与える | 工場の大気汚染・騒音 | 社会的費用 > 私的費用 → 過剰生産 | ピグー税(外部費用分の課税) |
| 外部経済(正) | 第三者に便益を与える | 養蜂家と近隣の果樹園・ワクチン接種 | 社会的便益 > 私的便益 → 過少生産 | 補助金(外部便益分の助成) |
・工場の私的費用(生産コスト):100万円
・近隣の漁業者への被害(外部費用):50万円
・社会的費用:150万円
市場では私的費用100万円だけを考えて生産量を決める → 社会的に望ましい水準より多く生産してしまう。
ピグー税(50万円分)を課せば、社会的最適水準に近づける。
公共財の特性——なぜ市場に任せると過少供給になるのか
公共財は次の2つの特性を持ちます。
| 特性 | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| 非競合性 | ある人が消費しても、他の人の消費量が減らない | 国防・灯台の光・花火・テレビ放送 |
| 非排除性 | 対価を払わない人を消費から排除できない | 国防・警察・一般道路・灯台 |
この2つの特性がそろうと、フリーライダー問題が発生します。誰かが公共財を供給すれば、お金を払わない人もその恩恵を受けられるため、自分では費用を負担しようとしません(ただ乗り)。結果として、市場では誰も供給しようとしなくなり、過少供給(または供給ゼロ)になります。これが政府が公共財を提供する根拠です。
情報の非対称性——知識の差が市場を歪める
情報の非対称性とは、売り手と買い手が保有する情報量に差がある状態です。この差が市場の効率的な機能を妨げます。
例:中古車市場でレモン(欠陥車)が横行する(アカロフのレモン市場モデル)、健康な人ほど医療保険に加入しない。
対策:シグナリング(学歴・資格・保証)・スクリーニング(審査・選別)。
例:全額補償の保険に入ると不注意になる、委託経営者が株主の利益より自己利益を優先する(プリンシパル=エージェント問題)。
対策:モニタリング(監視)・インセンティブ設計(業績連動報酬)。
| 問題 | 発生タイミング | 代表的な事例 | 対応策 |
|---|---|---|---|
| 逆選択 | 契約前(事前) | 中古車・医療保険・労働市場 | シグナリング・スクリーニング・政府の情報開示規制 |
| モラルハザード | 契約後(事後) | 火災保険・経営者報酬・公的融資 | モニタリング・業績連動報酬・共同保険(自己負担) |
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- ア 外部不経済が発生している財に補助金を支給することで、社会的最適水準の生産量に近づける。
- イ 外部不経済が発生している財にピグー税を課税することで、私的費用に外部費用を内部化させ、社会的最適水準の生産量に近づける。
- ウ 外部不経済は市場の失敗の一形態ではなく、市場メカニズムが自動的に解決する。
- エ 外部不経済の場合、市場均衡では社会的に望ましい水準より生産量が少なすぎる問題が発生する。
ピグー税とは外部費用相当額を税として課すことで、企業に外部費用を私的費用として「内部化」させる手法です(イが正解)。補助金は外部経済(正の外部性)に対して使う手段(アは逆)。コースの定理により取引費用がゼロなら当事者間交渉で解決できますが(ウは市場が自動解決しない場合が問題)、現実には政府介入が必要です。
- ア 公共財は競合性を持つため、一人が消費すると他の人の消費量が減る。
- イ 公共財は排除性を持つため、対価を支払わない人を消費から排除できる。
- ウ 公共財は市場で民間企業が効率的に供給できるため、政府による供給は不要である。
- エ 公共財は非競合性と非排除性を持ち、フリーライダー問題により市場では過少供給になる。
Uのまとめメモ
- 市場の失敗:①外部効果 ②公共財 ③情報の非対称性 ④独占・寡占の4つが主要原因
- 外部不経済 → 過剰生産 → ピグー税で内部化。外部経済 → 過少生産 → 補助金で促進。
- 公共財=非競合性+非排除性。フリーライダー問題で市場では過少供給 → 政府が供給。
- 逆選択=契約前の問題(悪質なものが市場に残る)。対策:シグナリング・スクリーニング。
- モラルハザード=契約後の問題(代理人が不適切な行動をとる)。対策:監視・インセンティブ設計。



逆選択とモラルハザードは「前か後か」で区別すると覚えやすいですね。契約を結ぶ「前」の情報の歪みが逆選択、「後」の行動の歪みがモラルハザード。中古車のレモン問題は特にわかりやすい例で、現実の市場でもよく見られる現象です。
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