Uスーパーで飲料を買うとき、コカ・コーラとペプシの価格が互いを意識しながら設定されているのを不思議に思ったことはありませんか。寡占市場では企業同士が「相手がどう動くか」を読みながら意思決定します。この「相互依存」を分析するのがクールノー均衡などの寡占理論です。
寡占市場の特徴と相互依存 / クールノー均衡の計算手順 / ベルトラン競争との違い / 屈折需要曲線による価格硬直性 / カルテルとの関係 / 試験頻出の計算パターン
寡占市場とは
寡占(Oligopoly)とは、少数の大企業が市場を支配する構造です。自動車・航空・携帯通信など現実に多く見られます。寡占企業は互いの行動を意識して意思決定するため、独占とも完全競争とも異なる分析が必要です。
クールノー均衡
クールノー均衡は、各企業が「相手の産出量を所与として」自社の産出量を決める数量競争のモデルです。互いの最適反応が交わる点がナッシュ均衡(クールノー均衡)になります。
∂π₁/∂q₁ = 0 → 最適反応:q₁ = (90 − q₂) / 2 ← 企業1のBR曲線
対称性から q₁ = q₂ → q* = 30 → P* = 40
各社利潤 π* = (40 − 10) × 30 = 900
・企業数が増えるほど競争均衡(P = MC)に近づく
・n社の場合:Q* = n/(n+1) × Qc(完全競争産出量)
・2社:競争産出量の2/3を生産、価格は競争価格より高い
・独占よりは産出量が多く、完全競争より少ない中間的な結果



クールノー均衡を初めて計算したとき、「2社の利潤を足すと独占利潤より小さい」という事実に驚きました。協調(カルテル)すれば2社合計の利潤が最大になるのに、各社が独自に産出量を決めると合計利潤が小さくなる——これもゲーム理論の囚人のジレンマと同じ構造ですね。
ベルトラン競争:価格競争モデル
ベルトラン競争は、各企業が「相手の価格を所与として」自社の価格を決める価格競争のモデルです。クールノーとは大きく結果が異なります。
ベルトラン(価格競争)→ P = MC、超過利潤ゼロ
同じ2社でも「何で競争するか」で結果が全く変わります。
屈折需要曲線による価格硬直性
スウィージーの屈折需要曲線は、寡占市場で価格が変化しにくい「価格硬直性」を説明するモデルです。
・競合他社は自社の値上げには追随しない(自社だけ高くなる→需要が大きく減る→弾力的)
・競合他社は自社の値下げには追随する(全社が下げる→需要はあまり増えない→非弾力的)
この非対称な反応から、需要曲線は現行価格の部分で「折れ曲がり」、MR曲線は現行産出量に「垂直の不連続部分」を持ちます。MCがこの不連続部分の範囲で変動しても、産出量・価格は変わりません→価格硬直性の説明。
カルテルと協調均衡
| 均衡タイプ | 価格 | 産出量 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 完全競争均衡 | P = MC(最低) | 最大 | パレート効率的 |
| クールノー均衡 | MC < P < 独占価格 | 競争均衡の2/3(n=2) | ナッシュ均衡(互いに離脱インセンティブなし) |
| カルテル(協調) | 独占価格(最高) | 独占産出量(最小) | 合計利潤最大・各社に離脱インセンティブあり→不安定 |
まとめ
- 寡占:少数企業が相互依存して意思決定する市場構造
- クールノー均衡:数量競争・相手の産出量所与でMR=MCを解く → q* = (a−MC)/(n+1)b
- ベルトラン均衡:価格競争・同質財2社でP = MC(パラドックス)
- 屈折需要曲線:価格硬直性を説明。値上げは追随されず・値下げは追随される
- カルテル:合計利潤最大だが離脱インセンティブで不安定(囚人のジレンマ構造)
- 企業数n → ∞ でクールノー均衡は完全競争に収束
- クールノー:数量競争、各社の最適反応関数(BR)の交点がナッシュ均衡
- ベルトラン:価格競争、同質財2社でP = MC(ベルトランのパラドックス)
- 屈折需要曲線:寡占の価格硬直性を説明(MR曲線に垂直の不連続部分)
- カルテル:不安定(離脱インセンティブ)。繰り返しゲームで維持しやすい



クールノーとベルトランで「何で競争するか」によって均衡がこれほど変わるのが面白いと思います。価格競争(ベルトラン)だと2社でも完全競争と同じ結果になるのに、数量競争(クールノー)だと利潤が残る。現実の企業が「価格よりも生産能力や数量で競争したがる」理由の一端がわかった気がします。
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