貨幣市場・流動性選好まとめ——貨幣需要・貨幣供給・LM曲線 | 中小企業診断士1次試験 経済学・経済政策

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「LM曲線って何?」「なぜ利子率が上がると貨幣需要が減るの?」流動性選好説の仕組みと、LM曲線の導出ロジックを、IS曲線との連携まで含めて丁寧に整理します。貨幣市場を理解すれば、金融政策の効果が自然に見えてきます。

目次

貨幣需要の3つの動機——なぜ人は貨幣を持つのか

📌 ケインズの流動性選好説

ケインズは「なぜ人々は利子をもたらさない貨幣を保有するのか」を分析し、貨幣需要には3つの動機があると主張しました。この分析を「流動性選好説」といいます。貨幣は最も「流動性」(すぐに交換・支払に使える性質)が高い資産です。

① 取引的動機(Transaction Motive)

日常的な取引・支払のために貨幣を保有する動機。給料日から次の給料日までの買い物・家賃支払などのために現金が必要。

  • 決定要因:所得(Y)の水準に依存
  • 所得が高いほど取引量が増え、より多くの貨幣が必要
  • 利子率とは関係が薄い(どんな利子率でも取引には貨幣が必要)
② 予備的動機(Precautionary Motive)

予期しない支出・緊急事態に備えて貨幣を保有する動機。病気・事故・突然の失業など、将来の不確実な支出への備え。

  • 決定要因:所得(Y)の水準に依存
  • 所得が高いほど「念のため」の備えも増える傾向
  • 取引的動機と合わせて「所得の関数」として扱われることが多い
③ 投機的動機(Speculative Motive)——流動性選好の核心

将来の資産価格変動に備え、機会を待って貨幣を保有する動機。「今は債券より現金で持っておいた方が得」という判断から生まれる。

  • 決定要因:利子率(r)に依存
  • 利子率が高い → 債券の価格が低い → 「今が買い時」として債券購入 → 貨幣需要は減少
  • 利子率が低い → 債券の価格が高い → 「これ以上上がらない」として債券売却・現金保有 → 貨幣需要は増加
重要:利子率と貨幣需要(投機的)の逆の関係がLM曲線の傾きを決定します
貨幣需要の動機決定要因利子率との関係所得との関係
取引的動機 所得(Y) 関係薄い 正の関係(所得↑→需要↑)
予備的動機 所得(Y) 関係薄い 正の関係(所得↑→需要↑)
投機的動機 利子率(r) 逆の関係(r↑→需要↓) 直接の関係なし

貨幣需要関数と貨幣市場の均衡

📌 貨幣需要関数

3つの動機を合わせた貨幣需要(L)は、所得(Y)の増加関数、利子率(r)の減少関数として表せます。

L = L(Y, r) (Lは流動性選好 = 貨幣需要) 所得Yが増加 → L増加(同方向) 利子率rが上昇 → L減少(逆方向)
貨幣供給(M)の決定

貨幣供給量は中央銀行(日本では日本銀行)によって外生的に決定されます。「外生的」とは「市場メカニズムではなく、政策判断で決める」という意味です。

  • 中央銀行は公開市場操作(国債の売買)や準備率操作で貨幣供給量を調整
  • 貨幣供給は利子率に関係なく一定(IS-LMモデルでは垂直な供給曲線)
貨幣市場の均衡条件:M = L(Y, r) (貨幣供給 = 貨幣需要 → 均衡利子率が決まる)

LM曲線の導出——貨幣市場均衡の軌跡

📌 LM曲線とは

「貨幣市場が均衡するような利子率(r)と国民所得(Y)の組み合わせの軌跡」をLM曲線といいます。L = 流動性選好、M = 貨幣供給の頭文字です。LM曲線上のすべての点で M = L(Y, r) が成立しています。

LM曲線が右上がりになる理由

所得(Y)が増加すると:

  • 取引的・予備的動機による貨幣需要(L)が増加する
  • 貨幣供給(M)は変わらないのにLが増えると → 貨幣が不足
  • 均衡に戻すためには、投機的需要を減らす必要がある
  • 投機的需要を減らすには → 利子率(r)が上昇する必要がある
  • 結論:所得↑ → 利子率↑(右上がりの曲線)
⚠️ LM曲線の傾きに影響する要因
条件LM曲線の形状意味
投機的貨幣需要の利子率弾力性が大きい(利子率の変化に敏感) 緩やかな右上がり(水平に近い) 少しの利子率上昇で大きく均衡が回復
投機的貨幣需要の利子率弾力性が小さい(利子率の変化に鈍感) 急な右上がり(垂直に近い) 均衡回復に大きな利子率変化が必要
流動性の罠(Liquidity Trap) 水平(完全に水平) 利子率が低すぎて全員が現金を保有。金融政策が無効

LM曲線のシフト——何が曲線を動かすか

LM曲線が右にシフトする(低金利方向への移動)
  • 貨幣供給量の増加(中央銀行が金融緩和を実施)→ 貨幣が余る → 利子率が下がる
  • 物価の下落(実質マネーサプライの増加と同等)

→ 同じ所得水準でも、より低い利子率で均衡できる

LM曲線が左にシフトする(高金利方向への移動)
  • 貨幣供給量の減少(中央銀行が金融引き締めを実施)→ 貨幣が不足 → 利子率が上がる
  • 物価の上昇(実質マネーサプライの減少と同等)

→ 同じ所得水準でも、より高い利子率でないと均衡できない

⚠️ LM曲線はシフトするが、IS曲線はシフトしない(金融政策の場合)
金融政策(貨幣供給の変化)はLM曲線をシフトさせますが、IS曲線(財市場)はシフトしません。財政政策(政府支出・税の変化)はIS曲線をシフトさせますが、LM曲線はシフトしません。この違いがIS-LMモデルの政策分析の核心です。

流動性の罠——金融政策が無効になるケース

📌 流動性の罠(Liquidity Trap)とは

利子率が非常に低い水準(ほぼゼロ)まで下がると、人々は「これ以上債券価格は上がらない(利子率は上がるしかない)」と考え、保有する資産をすべて現金で持とうとします。このとき、貨幣需要は利子率に対して完全弾力的(貨幣需要曲線が水平)になり、LM曲線も水平になります。

通常の状況流動性の罠
LM曲線の形状 右上がり 水平(ゼロ金利近辺)
金融政策の効果 有効(LM右シフト → r低下 → I増加) 無効(貨幣をいくら増やしても利子率が下がらない)
財政政策の効果 クラウディング・アウトで部分的に打ち消される 完全に有効(クラウディング・アウトが起きない)
現実の例 日本の長期デフレ・ゼロ金利政策期間

IS-LMモデルにおけるLM曲線の役割

IS曲線(財市場均衡)とLM曲線(貨幣市場均衡)を組み合わせることで、財市場と貨幣市場が同時に均衡する「均衡国民所得」と「均衡利子率」が決まります。

IS曲線(財市場均衡)
  • 右下がりの曲線
  • 利子率↑ → 投資↓ → 所得↓
  • 財政政策でシフト(G↑→IS右シフト)
LM曲線(貨幣市場均衡)
  • 右上がりの曲線
  • 所得↑ → 貨幣需要↑ → 利子率↑
  • 金融政策でシフト(M↑→LM右シフト)
政策シフトする曲線効果条件
財政政策(G↑) IS曲線→右シフト 所得増加(ただしクラウディング・アウトあり) LM曲線が急なほど効果小
金融政策(M↑) LM曲線→右シフト 利子率低下→投資増加→所得増加 LM曲線水平(流動性の罠)で効果なし

試験対策まとめ

⚠️ 診断士試験 貨幣市場・LM曲線の頻出ポイント
  • 貨幣需要の3動機:取引的・予備的(所得の関数)、投機的(利子率の関数)
  • 投機的動機は利子率と逆の関係(利子率↑→貨幣需要↓)
  • LM曲線は「貨幣市場均衡の軌跡」で右上がり
  • 貨幣供給増加(金融緩和)→ LM曲線が右シフト
  • 流動性の罠:LM曲線が水平→金融政策無効・財政政策は完全有効
  • IS曲線と交差する点が均衡国民所得・均衡利子率

よくある質問

Q1. 「利子率が上がると債券価格が下がる」の関係を詳しく教えてください。
債券は将来の固定キャッシュフロー(例:毎年1万円の利息)を約束する証書です。市場の利子率が5%のとき、毎年1万円を永続的に支払う債券の理論価格は「1万円÷0.05 = 20万円」です。市場利子率が10%に上昇すると、同じ債券の価値は「1万円÷0.10 = 10万円」になります。利子率が上がれば債券価格は下がるという関係は、この計算から来ています。逆に「利子率が低い = 債券価格が高い = これ以上上がりにくい = 現金を持った方が安全」という投機的動機が働きます。
Q2. クラウディング・アウトとは何か、LM曲線との関係で説明してください。
財政政策(政府支出増加)によりIS曲線が右シフトすると、均衡所得が増えますが同時に利子率も上昇します。利子率上昇により民間投資が「クラウドアウト(締め出し)」される効果です。LM曲線が垂直(貨幣需要の利子弾力性がゼロ)に近いほど、財政政策による所得増加はすべてクラウディング・アウトで相殺されます。逆に流動性の罠(LM水平)では利子率が上昇しないためクラウディング・アウトが起きず、財政政策が完全有効です。
Q3. 「外生的」な貨幣供給とはどういう意味か?
「外生的」とは、市場の需給メカニズムではなく、外部(この場合は中央銀行の政策判断)によって決まるという意味です。財の価格は需要と供給の均衡で決まります(内生的)が、貨幣供給量は日本銀行が「今月は○○兆円に設定する」と決めます(外生的)。IS-LMモデルでは、貨幣供給を利子率に無関係な「固定した垂直線」として描きます。現実には貨幣乗数・民間銀行の信用創造により貨幣供給量は変動しますが、モデルでは単純化しています。
Q4. 流動性の罠は実際に起きたことがあるか?
はい。日本は1990年代後半〜2000年代、バブル崩壊後の長期デフレ期に流動性の罠に近い状況を経験しました。日銀がゼロ金利政策・量的緩和を実施しても景気回復が限定的でした。これはケインズが理論的に示した流動性の罠の実例として経済学者に注目されました。2008年の世界金融危機後、アメリカ・欧州でも政策金利がゼロ近辺に達し、同様の議論が起きました。試験では「日本のゼロ金利政策=流動性の罠への対応」という文脈で問われることがあります。
Q5. LM曲線が垂直(急)になるのはどんな条件か?
投機的貨幣需要の利子率弾力性が非常に小さい(利子率が変化しても貨幣需要がほとんど変わらない)とき、LM曲線は垂直に近くなります。これは「古典派の二分法」に近い状況で、貨幣は取引だけに使われ投機的保有はしないという前提に近い。LM曲線が垂直に近いと財政政策のクラウディング・アウトが大きく(財政政策無効)、金融政策の効果が大きくなります。試験では「LM曲線が垂直に近い場合の財政・金融政策の効果」という問題で出題されます。
Q6. IS-LMモデルはどのような限界があるか?
IS-LMモデルは短期の経済分析には有用ですが、いくつかの限界があります。①物価水準が固定されていると仮定している(物価変動を考慮しない)。②時間の流れや期待(将来予測)を考慮していない。③開放経済(国際貿易・資本移動)を扱うには拡張が必要(マンデル・フレミングモデルへ)。④貨幣供給のコントロールが完全にできるという前提。これらの限界を踏まえつつ、診断士試験では基礎的なIS-LMの政策分析を問われます。モデルの限界より「どのような場合に政策が有効/無効か」の整理を優先してください。

貨幣市場とLM曲線は、経済学の後半で登場する IS-LM モデルの「もう一つの柱」です。IS曲線(財市場)と組み合わせることで、財政政策・金融政策の効果を「利子率と所得の同時均衡」という視点から分析できます。流動性の罠と金融政策の限界、クラウディング・アウトと財政政策の限界——これらは試験の定番論点ですので、グラフの形と論理を結びつけて理解してください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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