ブルーオーシャン戦略 | 中小企業診断士1次試験 企業経営理論

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「競合他社に打ち勝つ」——これが戦略の基本だと思っていませんか?ブルーオーシャン戦略は、その前提ごとひっくり返します。競争しなくていい市場を、自分たちで作ってしまえばいい、という発想です。ポーターの競争戦略とは何が違うのか?今回は、試験頻出かつ実務でも強力なこのフレームワークを、具体例と図解で完全に理解しましょう。

目次

レッドオーシャンとブルーオーシャン——血染めの海か、誰もいない海か

「レッドオーシャン」とは、既存の市場です。競合他社がひしめき、シェア争いで血(= 利益)が流れる赤い海。そこでは、差別化かコスト削減か、二択の戦いが続きます。

一方「ブルーオーシャン」は、まだ誰も泳いでいない青い海——未開拓市場です。そこには競争相手がいないため、高い利益率と急成長が待っています。

W・チャン・キムとレネ・モボルニュが2005年に発表したこの戦略理論は、「競争に勝つ」ではなく「競争を無意味にする」という根本的な発想の転換を促します。

比較軸 レッドオーシャン ブルーオーシャン
市場 既存市場で競争 未開拓市場を創造
競争 競合に打ち勝つ 競争を無意味にする
需要 既存需要を奪い合う 新たな需要を生み出す
価値とコスト 価値かコストかトレードオフ 価値とコストを同時追求
戦略整合 差別化 or コストリーダーシップ 差別化とコスト削減の同時実現
代表理論 ポーターの競争戦略 ブルーオーシャン戦略

ここが試験の急所です。ポーターは「差別化とコストリーダーシップは同時に達成できない(スタックインザミドル)」と主張しましたが、ブルーオーシャン戦略はその主張に正面から反論します。価値革新によって、両方を同時に達成できる、というのがキムとモボルニュの答えです。

ERRCグリッド——4つのアクションで市場を再定義する

ブルーオーシャンを創造するための実践ツールが「ERRCグリッド(4つのアクション・フレームワーク)」です。「既存業界が当たり前だと思っていること」を4軸で問い直します。

E:排除(Eliminate)

業界が「当然」と思い込んでいる要素を、思い切ってなくす。これにより大幅なコスト削減が可能になる。
例)シルク・ドゥ・ソレイユが「動物の出演」を排除

R:削減(Reduce)

業界標準より大幅に下げる。なくしはしないが、過剰サービスになっている部分を削ぎ落とす。
例)スター演者への高額ギャラを削減

R:増加(Raise)

業界標準より大幅に引き上げる。顧客が本当に重視しているのに見落とされている価値を突出させる。
例)独創的な演出・テント設備の豪華さを向上

C:創造(Create)

業界がこれまで提供していなかった全く新しい要素を生み出す。これが新市場を呼び込む最大の武器。
例)「芸術性・知的刺激・ストーリー」という体験価値を創造

試験でのポイント:ERRCグリッドは「E・R・R・C」の4文字で覚えること。「排除と削減の違い」が選択肢の引っかけに使われます。排除はゼロにする、削減は水準を下げる——この差を明確に押さえておきましょう。

シルク・ドゥ・ソレイユ——サーカスを「再定義」した物語

ブルーオーシャン戦略を学ぶ上で、最も有名な実例がシルク・ドゥ・ソレイユです。1980年代、サーカス業界はまさにレッドオーシャンでした。テレビゲームやスポーツに娯楽を奪われ、動物保護の世論も逆風。業界全体が縮小の一途をたどっていました。

そのとき、シルク・ドゥ・ソレイユは問いかけました。「そもそも、誰がサーカスに来てほしいのか?」——動物ショックで子ども連れが減るなら、大人を呼べばいい。高い一枚のチケットを払える、文化的・知的な娯楽を求める大人です。

アクション シルク・ドゥ・ソレイユの判断
排除(E) 有名スター演者、動物の出演、アリーナ形式の3要素を完全廃止
削減(R) 笑いと興奮の演目を大幅に削減(伝統的サーカスの代名詞的要素)
増加(R) 設備の独自性・会場の快適さ・演目の多様性を業界水準以上に引き上げ
創造(C) テーマ・芸術性・知的刺激・洗練された音楽と演技——全く新しい「大人のサーカス」体験を創出

結果、シルク・ドゥ・ソレイユは「サーカス」と「演劇」の両方の顧客を取り込み、縮小市場で急成長を遂げました。これが価値革新の本質です——コストを削りながら顧客価値を高めるという、ポーターが「不可能」と言った道を切り開いたのです。

戦略キャンバス——「価値曲線」で業界を可視化する

ブルーオーシャン戦略のもう一つの中核ツールが「戦略キャンバス」です。横軸に業界の競争要因を並べ、縦軸に各要因への投資・注力度を示す「価値曲線」を描きます。

既存業界の価値曲線と、自社の新たな価値曲線が大きく異なるとき——それがブルーオーシャンの可能性を示しています。サーカス業界で言えば次のようなイメージです。

戦略キャンバス(サーカス業界のイメージ図)
動物
ショー
スター
演者
笑い・
興奮
芸術性・
テーマ
知的
刺激
会場の
快適さ
演出の
ストーリー
既存サーカス業界 シルク・ドゥ・ソレイユ

戦略キャンバスを描くことで、自社と競合の違いが一目で分かります。重要なのは「フォーカス・独自性・明快なキャッチフレーズ」の3条件。この3つが揃った価値曲線こそ、優れたブルーオーシャン戦略の証です。

6つの経路フレームワーク——新市場はどこに隠れているか

「ブルーオーシャンを作れ」と言われても、どこを見ればいいのか——その問いに答えるのが「6つの経路フレームワーク」です。業界の枠を超えて、未利用の需要を発見するための6つの視点です。

  • 代替産業を見る
    顧客は同じ目的のために、異なる産業の製品・サービスを利用することがある。その代替先に、未開拓需要が潜む。(例:映画館と自宅動画配信)
  • 戦略グループを見る
    同一産業内でも、低価格帯・高価格帯など複数の戦略グループが存在する。グループをまたいだ需要に注目する。(例:格安航空券の登場)
  • 買い手グループを見る
    購買者・利用者・影響者など、異なる買い手グループを再定義する。これまで無視されてきたグループに価値を届ける。(例:ボトックスを医療用から美容用へ)
  • 補完製品・サービスを見る
    製品単体ではなく、購入前後も含めた「総合的な顧客体験」を視野に入れる。(例:書店がカフェを併設して滞在価値を高める)
  • 感情的価値・機能的価値の訴求を見直す
    機能重視の業界に感情価値を加える、または感情訴求の業界を機能的に整理する。(例:Swatch が時計を「ファッション」として再定義)
  • 時間軸を見る
    テクノロジーや社会の変化のトレンドを捉え、将来の市場を先取りする。変化が一方向・不可逆・明確なトレンドを探す。(例:デジタル化の波によるサブスクリプションモデル)

過去問での出題傾向と解き方

出題パターン①:ポーターとの違い
「ブルーオーシャン戦略はポーターの競争優位論と何が異なるか」——最頻出パターン。差別化とコスト削減の「トレードオフを認める vs 同時追求する」が正解軸です。

出題パターン②:ERRCグリッドの適用
ある企業の戦略記述を読み、「どのアクションに該当するか」を問う形式。排除(ゼロ)と削減(水準低下)、増加(水準向上)と創造(新規追加)の4択が紛らわしいので注意。

出題パターン③:戦略キャンバスの解釈
グラフを見て「この企業はブルーオーシャン戦略を採用しているか」を判断する問題。価値曲線の「フォーカス・独自性・キャッチフレーズ」3条件を基準に答えます。

よくある誤答:「ブルーオーシャンは中小企業向け」「差別化戦略の一種」——どちらも誤り。大企業も使い、差別化とコスト削減を「同時に」実現するのがブルーオーシャンの本質です。

Uのメモ

Uの学習メモ

ブルーオーシャン戦略でいちばんつまずくのが「ポーターとどう違うの?」という部分。整理すると、ポーターは「どの業界・どの位置取りで戦うか」を考えるフレームワーク。ブルーオーシャンは「そもそも戦わなくていい市場を作ろう」という発想なので、前提が違う。試験ではこの「前提の違い」が問われます。

ERRCグリッドは語呂合わせで「エリック!」と覚えてもいいかも。E(排除)・R(削減)・R(増加)・C(創造)。シルク・ドゥ・ソレイユの例と一緒に覚えると、選択肢のひっかけに引っかからなくなります。

6つの経路は全部覚えようとすると大変なので、「代替産業・戦略グループ・買い手グループ・補完品・感情/機能・時間軸」という6カテゴリの発想視点として理解しておくのが現実的。問われ方は「この企業はどの経路を活用したか」という事例問題が多いです。

まとめ:ブルーオーシャン戦略チェックリスト

  • ブルーオーシャン戦略は「競争を無意味にする」未開拓市場を自ら創造する戦略である
  • ポーターの「差別化とコスト削減はトレードオフ」という前提を否定し、価値革新によって同時追求を目指す
  • ERRCグリッドの4アクション:排除(ゼロに)・削減(水準を下げる)・増加(水準を上げる)・創造(新規追加)
  • 戦略キャンバスで価値曲線を可視化し、「フォーカス・独自性・明快なキャッチフレーズ」の3条件を確認する
  • 6つの経路(代替産業・戦略グループ・買い手グループ・補完品・感情/機能・時間軸)で新市場を発見する視点を持つ
  • 代表例はシルク・ドゥ・ソレイユ:縮小するサーカス市場で、大人向けの新市場を創造した
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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