簿記の基礎まとめ|仕訳・勘定科目・借方貸方の仕組みを図解で整理

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過去問を解いていて、「仕訳」の選択肢に手が止まりました。借方・貸方の並びが感覚でしかわかっていなくて、少し複雑なパターンになった瞬間に迷ってしまうのです。これを機に、簿記の仕組みを基礎から丁寧に整理してみました。同じように財務会計に入り始めた方のお役に立てましたら幸いです。

財務・会計は1次試験7科目のなかでも学習時間を多く要する科目です。その土台となるのが「簿記」の知識であり、仕訳・勘定科目・借方貸方の仕組みを正確に把握しているかどうかが、財務諸表の読み解きや計算問題の正答率に直結します。この記事では、日商簿記の知識がない状態から試験対策を始めた方を念頭に置いて、必要な概念を順番に整理してみます。

5
分類
勘定科目の大分類(資産・負債・純資産・収益・費用)
2
側面
複式簿記が1取引を記録する側面数(借方・貸方)
200
h 以上
財務・会計の平均的な学習目安時間
20
点 以上
仕訳問題が占める1次試験配点の目安(例年)
目次

簿記とは何か|財務会計の土台

簿記の目的と複式記帳の原則

簿記とは、企業の経済活動を一定のルールに従って記録・分類・集計する技術のことです。その最終目的は「財務諸表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)」を作成することにあります。

企業は日々、商品を仕入れたり代金を受け取ったり、給料を支払ったりしています。こうした「取引」を記録する手法として広く使われているのが複式簿記です。複式簿記では、すべての取引を「どこから来て、どこへ行ったか」という2つの側面から記録します。このことを「借方・貸方の2面に分けて記録する」といいます。

01
取引の認識
お金や財産、権利・義務が動いた事実(取引)を確認します。日常語の「取引」より広く、火災損失など意図しない変動も含みます。
02
仕訳(しわけ)
取引を勘定科目ごとに分類し、借方・貸方のいずれかに金額を配置します。これが「仕訳」です。
03
転記(元帳へ)
仕訳帳に記録した内容を、科目別の「総勘定元帳」に転記します。
04
試算表の作成
借方・貸方の合計が一致するかを確認します(貸借一致の原則)。
05
財務諸表の作成
貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)などを完成させます。これが最終的なアウトプットです。
勘定科目の5大分類
分類 内容 主な科目例 財務諸表
資産 企業が保有する財産・権利 現金、売掛金、建物、備品、有価証券 貸借対照表(B/S)
負債 将来の返済義務・支払義務 買掛金、借入金、未払費用、社債 貸借対照表(B/S)
純資産 資産から負債を引いた正味財産 資本金、資本剰余金、利益剰余金 貸借対照表(B/S)
収益 一会計期間に得た収入・利益の源泉 売上高、受取利息、有価証券売却益 損益計算書(P/L)
費用 一会計期間に使った支出・コスト 仕入、給料、減価償却費、支払利息 損益計算書(P/L)
POINT
資産・負債・純資産の3分類は貸借対照表(ストック)に、収益・費用の2分類は損益計算書(フロー)に現れます。どの科目がどちらの表に属するかを把握しておくと、財務諸表の読み方も整理しやすくなります。

借方・貸方の仕組み

T字勘定のイメージ

簿記では、各勘定科目を「T字型の口座」として捉えます。T字の左側を借方(かりかた)、右側を貸方(かしかた)と呼びます。「借りる・貸す」という日本語の意味は意識しなくて大丈夫です。単純に「左=借方、右=貸方」という位置の名前として覚えてしまうのが早道です。

勘定科目名(例:現金)
借方(左)
増加を記録
貸方(右)
減少を記録

ただし、勘定科目の分類によって「どちらが増加か」が逆になります。これが仕訳を難しく感じさせる原因の一つです。

分類別 増減ルール一覧
分類
借方(左)
貸方(右)
資産
増加(+)
減少(−)
負債
減少(−)
増加(+)
純資産
減少(−)
増加(+)
収益
減少(−)
発生(+)
費用
発生(+)
減少(−)
借方=「使い道・運用」の側
お金がどこへ向かったか・何に変わったか(資産の増加、費用の発生)を記録する側。
貸方=「出どころ・調達」の側
お金や価値がどこから来たか(資産の減少、負債・純資産・収益の増加)を記録する側。
覚え方
「貸借平均の原則」により、仕訳の借方合計=貸方合計は必ず一致します。金額が合わないときは仕訳のどこかに誤りがあるサインです。試験の計算で詰まったときもここを確認すると整理できることがあります。

仕訳の基本パターン

よく出る仕訳パターン 6選

以下は試験で繰り返し登場する基本的な仕訳パターンです。勘定科目の分類を確認しながら、どちらが借方・貸方になるかを押さえておきましょう。

現金売上(商品を現金で販売) 資産+ / 収益発生
(借)現金
(貸)売上高
例:100,000円の現金売上
現金(資産)が増加するので借方、売上高(収益)が発生するので貸方に記入します。
掛け仕入れ(商品を掛けで仕入れ) 費用発生 / 負債+
(借)仕入
(貸)買掛金
例:60,000円の商品を掛けで仕入れ
仕入(費用)が発生するので借方、買掛金(負債)が増加するので貸方に記入します。
給料の支払い 費用発生 / 資産−
(借)給料
(貸)現金
例:300,000円を現金で支払い
給料(費用)が発生するので借方、現金(資産)が減少するので貸方に記入します。
減価償却費の計上 費用発生 / 資産−(間接法)
(借)減価償却費
(貸)減価償却累計額
間接法の場合:備品本体は動かさず、累計額で控除
間接法では資産の減少を「減価償却累計額」という評価勘定(資産のマイナス科目)に記録します。B/Sでは備品から差し引いた形で表示されます。
借入金の返済(元本+利息) 負債− / 資産− / 費用発生
(借)借入金
(貸)現金
(借)支払利息
例:元本100,000円+利息5,000円を現金で返済
借入金(負債)の減少と支払利息(費用)の発生が同時に起こります。合計105,000円が貸方の現金(資産減少)と一致します。
売掛金の回収 資産+ / 資産−
(借)現金
(貸)売掛金
例:売掛金80,000円が当座預金に入金
現金(資産)の増加が借方、売掛金(資産)の減少が貸方です。資産同士の入れ替わりなので、損益には影響しません。
日常の場面で考えてみると

たとえば、近所のカフェを個人で開業した場面を思い浮かべてみてください。

コーヒーを現金で1杯500円売った
→ 現金(資産)が500円増加=借方
→ 売上高(収益)が500円発生=貸方
月末に家賃80,000円を口座から支払った
→ 地代家賃(費用)が80,000円発生=借方
→ 当座預金(資産)が80,000円減少=貸方
エスプレッソマシンを30万円で購入(後払い)
→ 備品(資産)が300,000円増加=借方
→ 未払金(負債)が300,000円増加=貸方

日常の取引を「何が増えて、何が減ったか(または何が生まれたか)」に分解する習慣がつくと、仕訳の判断が格段にスムーズになります。

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「資産の増加は借方、減少は貸方」という点を押さえると、他の分類はその逆、または対応関係で覚えられます。負債・純資産は資産とは逆(増加=貸方)、費用は資産の増加と同じ側(増加=借方)、収益は負債と同じ側(発生=貸方)。この5つのルールが身についてくると、仕訳の選択肢を見たとき、即座に整合性を確認できるようになります。

勘定科目の主な一覧

分類別 主要勘定科目

資産の科目

科目名 内容 区分
現金硬貨・紙幣(他人振出小切手を含む)流動資産
当座預金当座預金口座の残高流動資産
売掛金商品販売後まだ受け取っていない代金(掛け売り)流動資産
受取手形手形上の債権流動資産
棚卸資産(商品・製品等)販売目的で保有する在庫流動資産
前払費用翌期以降に対応する費用の前払い分流動資産
建物・土地・機械装置長期に使用する有形固定資産固定資産
備品PCや事務機器など固定資産
のれん企業買収時の超過収益力の資産計上分無形固定資産
投資有価証券長期保有目的の株式・債券投資その他

負債の科目

科目名 内容 区分
買掛金商品仕入後まだ支払っていない代金流動負債
支払手形手形上の債務流動負債
未払費用当期に発生したがまだ支払っていない費用流動負債
前受収益翌期以降に対応する収益の前受け分流動負債
借入金(短期)1年以内に返済期限が来る借入流動負債
社債発行した社債の未償還残高固定負債
長期借入金返済期限が1年超の借入固定負債
退職給付引当金将来の退職金支給に備えた引当固定負債

純資産の科目

科目名 内容
資本金株主からの払込資本のうち資本金に計上した額
資本準備金払込超過額の一部を積み立てたもの
利益準備金会社法上の強制積立
その他利益剰余金任意積立金・繰越利益剰余金など
その他有価証券評価差額金保有有価証券の時価評価差額(包括利益)

収益・費用の主要科目

分類 科目名 内容
収益売上高商品・製品の販売による売上
収益受取利息預金・貸付金の利息収入
収益受取配当金保有株式の配当金収入
収益有価証券売却益有価証券を帳簿価額超で売却した差益
費用売上原価(仕入)販売した商品の取得原価
費用給料・賃金従業員への給与
費用減価償却費固定資産の取得原価を期間配分したもの
費用支払利息借入金・社債の利息支払
費用貸倒引当金繰入売掛金等の回収不能見込額の計上
費用法人税等課税所得に対する税額

試験での出題パターン

出題の主な形式と論点
出題タイプ 01
仕訳の選択問題
取引の説明文を読み、正しい仕訳(借方・貸方の科目と金額)を選ぶ形式。勘定科目の分類と増減ルールを組み合わせて判断します。科目名の微妙な違い(「未払費用」vs「未払金」)も問われることがあります。
出題タイプ 02
試算表・精算表の穴埋め
残高試算表や精算表の空欄を埋める計算問題。貸借平均の原則(借方合計=貸方合計)を利用して逆算する問題も多く、仕訳の積み重ねが基礎になります。
出題タイプ 03
財務諸表の読み取り計算
B/S・P/Lの数値から各指標(売上総利益率・流動比率等)を算出する問題。勘定科目がB/SとP/Lのどちらに属するかの理解が前提になります。
出題タイプ 04
CVP分析との連携
変動費・固定費の区分は管理会計(CVP分析)の基礎。費用を勘定科目ごとに変動費と固定費に振り分ける判断が問われます。減価償却費は固定費の代表例として頻出です。
CVP分析との関係
CVP分析では「売上高 − 変動費 = 限界利益」として計算を進めます。この「変動費」「固定費」の判断根拠は勘定科目の性格理解から来ています。仕訳・勘定科目を押さえることは財務会計だけでなく、管理会計の理解にも直結しています。
過去問チャレンジ — 仕訳(借方科目の判定) H27年度 第1問 改題
次の取引について、借方に計上すべき勘定科目として最も適切なものはどれか。

「A社は、商品200,000円を掛けで仕入れた。」
  • ア 売掛金
  • イ 仕入
  • ウ 買掛金
  • エ 売上高
解答・解説
正解はイ 仕入
仕入(費用)が発生したので借方、買掛金(負債)が増加したので貸方に計上します。仕訳は「(借)仕入 200,000 / (貸)買掛金 200,000」となります。売掛金は売上の未回収分(資産)、売上高は収益科目なので誤りです。
過去問チャレンジ — 減価償却の仕訳(間接法) R2年度 第3問 改題
備品(取得原価600,000円、耐用年数5年、残存価値ゼロ、定額法)の当期減価償却費を間接法で仕訳する場合、貸方に計上する勘定科目として適切なものはどれか。
  • ア 備品
  • イ 減価償却費
  • ウ 減価償却累計額
  • エ 現金
解答・解説
正解はウ 減価償却累計額
間接法では、備品(資産)を直接減額せず「減価償却累計額」という評価勘定を貸方に計上します。仕訳は「(借)減価償却費 120,000 / (貸)減価償却累計額 120,000」。B/Sでは「備品600,000 − 減価償却累計額 XXX」として表示します。直接法(ア 備品を貸方)との違いも押さえておくとよいでしょう。
過去問チャレンジ — 貸倒引当金の設定 R4年度 第2問 改題
期末において、売掛金残高2,000,000円に対して2%の貸倒引当金を設定する(差額補充法)。期首の貸倒引当金残高は20,000円であった。当期計上する貸倒引当金繰入の金額として適切なものはどれか。
  • ア 20,000円
  • イ 20,000円(差額補充のため)
  • ウ 40,000円
  • エ 0円
解答・解説
正解はイ 20,000円(差額補充法)。
期末に必要な貸倒引当金は 2,000,000 × 2% = 40,000円。期首残高が20,000円あるため、差額の20,000円のみ計上します。仕訳は「(借)貸倒引当金繰入 20,000 / (貸)貸倒引当金 20,000」。もし差額補充法でなく洗替法なら一度全額取り崩してから40,000円設定します。この違いも試験で問われることがあります。
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過去問を3問解いてみて気づいたのですが、問題文の取引内容を「何が増えて、何が減ったか」に一度言い換えてから解くと、科目の選択肢を見たときに迷いにくくなりました。最初から科目名を当てはめようとすると暗記頼みになってしまうのですが、増減の方向で考えると勘定科目のルールを確認する形で解けます。焦らず丁寧に手順を踏んでいくのが、財務会計を得意にする近道なのかもしれないと感じています。

この記事のまとめ
SUMMARY
  • 簿記の目的は財務諸表(B/S・P/L)の作成。複式簿記ですべての取引を借方・貸方の2面で記録する。
  • 勘定科目は「資産・負債・純資産・収益・費用」の5分類。どの分類かが決まれば増減のどちらが借方かも決まる。
  • 資産の増加=借方、減少=貸方。負債・純資産・収益は逆(増加=貸方)。費用の発生=借方。
  • 仕訳は「何が増え、何が減ったか」を言語化してから科目を当てはめると迷いにくくなる。
  • 試算表・精算表は貸借平均の原則(借方合計=貸方合計)を利用して確認・逆算する。
  • 減価償却・貸倒引当金・引当金の設定は頻出。間接法と直接法の違い、差額補充法と洗替法の違いも確認する。
U のメモ
財務会計の学習を始めたころ、借方・貸方の「意味」を日本語から考えようとして混乱していました。「借りる側が左にいるはず…」と解釈しようとするのですが、実際はそういう意味ではないので、ますますわからなくなっていました。ある時、「借方は左の列の名前、貸方は右の列の名前、それだけ」と割り切ったら、ずいぶん見通しがよくなった気がします。意味を深追いするより、ルールとして受け入れてしまう方が早い、という気づきでした。同じように感じている方がいましたら、少し気が楽になれば嬉しいです。
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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