組織再編まとめ|合併・会社分割・株式交換・株式移転の違いを図解で整理

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簡易合併と略式合併、どちらの手続きが省略されるか——過去問でその選択肢を見るたびに、頭の中でパーセンテージが混乱していました。20分の1なのか5分の1なのか、どちらが「存続会社」の話なのか。数値だけ覚えようとするといつも崩れてしまうので、今回は合併全体の仕組みから整理し直してみました。

組織再編は会社法の中でも範囲が広く、「合併・会社分割・株式交換・株式移転」の4手法が横断的に出題されます。それぞれ「何を統合・分離するのか」「どんな対価が使われるか」「どんな手続きが必要か」という3点が論点の軸になります。この記事では4手法の全体像を図解で整理したうえで、簡易・略式手続きの数値要件、保護措置の仕組みまでまとめました。

目次

組織再編の全体像

会社法上の組織再編は4つの手法に分類できます。「会社そのものをまとめる」のが合併・株式交換・株式移転、「事業の一部を切り出す」のが会社分割という整理が出発点です。

手法①
合併
2社以上が1社に統合。消滅会社の権利義務を存続会社(または新設会社)が包括承継します。対価は原則として株式ですが、金銭等も可能(対価の柔軟化)。
会社法 748条〜782条
手法②
会社分割
事業の全部または一部を他社(または新設会社)に承継させます。会社そのものは消滅せず、事業だけを切り出す点が合併との違いです。
会社法 757条〜766条
手法③
株式交換
既存の会社を完全子会社化する手法。子会社となる会社の株主全員が保有株式を親会社に交付し、代わりに親会社株式等を受け取ります。新会社の設立は不要。
会社法 767条〜782条
手法④
株式移転
1社または複数の会社が新たに設立する完全親会社に、全株式を移転する手法。持株会社(ホールディングス)を設立する際に使われます。株式交換との違いは「親会社を新設する」点。
会社法 772条〜774条
整理の軸:「既存会社を活用するか・新会社を設立するか」で4手法を分けると理解しやすくなります。吸収合併・吸収分割・株式交換は既存会社が受け皿、新設合併・新設分割・株式移転は新しく会社を作ります。

合併(吸収合併・新設合併)

合併は「2社以上の会社が1社にまとまる」組織再編です。吸収合併と新設合併で、受け皿となる会社が異なります。

種別 仕組み 存続・消滅 特徴
吸収合併 消滅会社が存続会社に吸収される 存続会社は残る。消滅会社は解散・清算不要で消滅 実務上の大半はこちら。手続きが比較的シンプル
新設合併 合併する全社が消滅し、新たに設立される会社に権利義務を承継 合併当事会社は全社消滅。新設会社が権利義務を包括承継 設立手続きが加わるため実務では少ない。対等合併のイメージ

対価の柔軟化(平成17年会社法改正)により、合併の対価は存続会社の株式だけでなく、金銭・社債・新株予約権等も使えます。いわゆる「三角合併」では存続会社の親会社株式を対価とすることも可能です。

合併の手続きには原則として株主総会の特別決議が必要ですが、要件を満たす場合は「簡易合併」「略式合併」として手続きを省略できます。

手続き 対象会社 省略できる要件 省略される手続き
簡易合併 存続会社 消滅会社に交付する対価の額が、存続会社の純資産の5分の1以下(定款で引き下げ可) 存続会社の株主総会の承認決議を省略
略式合併 消滅会社 存続会社が消滅会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有(特別支配会社) 消滅会社の株主総会の承認決議を省略
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簡易合併の「5分の1以下」は存続会社が使う要件、略式合併の「10分の9以上」は消滅会社に対して存続会社が持つ比率——という整理をしてから、数値が混乱しにくくなりました。「どちらの会社を基準にした数値か」を意識するのが、この論点のコツのようです。

会社分割(吸収分割・新設分割)

会社分割は「会社はそのままに、事業の一部だけを切り出す」手法です。不採算事業の売却、グループ内の事業再編、持株会社体制への移行などに活用されます。

吸収分割
分割会社の事業(の一部)を、既存の承継会社に承継させる手法。分割会社は存続し、切り出した事業の権利義務だけが承継会社に移ります。
新設分割
分割会社の事業(の一部)を、新たに設立する会社に承継させる手法。事業部門を独立した子会社として切り出すケースで多く使われます。

また、会社分割は対価を誰が受け取るかによって2つに分類できます。

種別 対価の受取先 特徴・使われ場面
物的分割 分割会社自身が対価(承継会社の株式等)を受け取る 分割会社が承継会社の親会社となる。持株会社体制の構築に多用
人的分割 分割会社の株主が対価を受け取る(分割型分割) 分割会社の株主が承継会社の株主になる。いわゆる「スピンオフ」に近い形
試験のポイント:会社分割では分割会社が消滅しない点、対価が分割会社に交付されるか株主に直接交付されるかで「物的分割」と「人的分割(分割型分割)」に分かれる点が問われます。合併と混同しないよう、「会社が残る」という点を軸に整理しておきましょう。

株式交換・株式移転

株式交換と株式移転は、いずれも「完全親子会社関係を作る」手法です。会社を解散・消滅させず、株式のやり取りだけで親子会社化を実現できます。

株式交換の仕組み
完全子会社となる会社の株主全員が保有株式を完全親会社に移転し、代わりに親会社株式等を受け取ります。完全親会社は既存の会社です(新設しない)。
株式移転の仕組み
1社または複数の会社が、新たに設立する完全親会社に全株式を移転させます。ホールディングス(持株会社)を設立するときの典型的な手法です。
項目 株式交換 株式移転
親会社 既存会社 新設会社
子会社 既存会社(完全子会社化) 既存会社(完全子会社化)
利用場面 特定企業を子会社化したい場合 ホールディングス設立・グループ再編
対価 親会社の株式・金銭等 新設親会社の株式
手続きの原則 完全子会社となる会社の株主総会特別決議 移転する会社の株主総会特別決議
試験のポイント:株式交換・株式移転では当事会社が「消滅しない」点が重要です。また、株式交換では完全親会社となる既存会社が対価の柔軟化により金銭等も対価にできますが、株式移転では対価は新設会社の株式のみです(新設会社に既存の財産がないため)。

組織再編の手続き・保護措置

組織再編は当事会社の株主・債権者に大きな影響を与えるため、会社法はさまざまな保護措置を定めています。手続きの流れと保護措置をあわせて押さえておきましょう。

1
組織再編契約・計画の作成
合併・分割・株式交換等の契約または計画を作成します。存続会社と消滅会社の双方が合意する書面が必要です(新設の場合は計画書)。
2
事前開示(書類の備置き)
株主・債権者が内容を確認できるよう、組織再編契約・計画の内容等を記した書類を本店に備え置きます(株主総会日の2週間前から)。
3
株主総会の特別決議(原則)
原則として各当事会社の株主総会の特別決議(出席議決権の3分の2以上)が必要です。簡易・略式手続きの要件を満たす場合は省略可能。
4
債権者保護手続き
債権者が異議を申し立てる機会を保障するため、官報公告・個別催告を行い、一定期間(1か月以上)を設けます。異議ある債権者には弁済・担保提供等が必要です。
5
反対株主の株式買取請求権
組織再編に反対する株主は、会社に対して公正な価格での株式の買取を請求できます。再編の効力発生日の前後20日以内に行使する必要があります。

簡易・略式手続きの適用範囲を4手法で比較しておきます。

区分 手続き 要件 省略できる決議
合併 簡易合併 存続会社が消滅会社に交付する対価が存続会社の純資産の1/5以下 存続会社の株主総会
合併 略式合併 存続会社が消滅会社議決権の9/10以上を保有 消滅会社の株主総会
会社分割 簡易分割 承継会社が分割会社に交付する対価が承継会社の純資産の1/5以下 承継会社の株主総会
会社分割 略式分割 承継会社が分割会社議決権の9/10以上を保有 分割会社の株主総会
株式交換 簡易株式交換 完全親会社が子会社に交付する対価が純資産の1/5以下 完全親会社の株主総会
株式交換 略式株式交換 完全親会社が子会社議決権の9/10以上を保有 完全子会社となる会社の株主総会
覚え方の整理:「簡易」は受け入れ側(存続・承継・親会社)の視点で「負担が軽い(対価が小さい)から自社の株主総会は不要」、「略式」は対象側(消滅・分割・子会社)の視点で「どうせほとんど親会社の株だから子会社の株主総会は不要」という流れで理解すると区別しやすくなります。

身近な場面で考えてみると

2016年にファミリーマートとサークルKサンクス(ユニーグループ・ホールディングス傘下)が経営統合した事例は、複数の組織再編手法が組み合わされた実例です。4手法がどのような場面で使われるかを確認してみます。

株式交換(統合の第一歩)
ユニーグループHDとファミリーマートが経営統合に際し、株式交換を活用して一方を他方の完全子会社とするステップが踏まれました。既存の親会社株式を対価に、相手先を完全子会社化できます。
吸収合併(ブランド統一)
サークルKサンクスをファミリーマートに吸収合併することで、コンビニブランドを「ファミリーマート」に一本化。消滅会社の店舗・人員・契約等の権利義務が存続会社に包括承継されます。
会社分割(事業の切り出し)
スーパー事業など、コンビニ事業と切り離したい部門は会社分割で別会社(ユニー株式会社)として分離されました。グループ内の事業ポートフォリオを整理する際に会社分割が力を発揮します。
株式移転(持株会社化)
グループ全体を統括する持株会社(ホールディングス)を設立する際に株式移転が使われます。複数の事業会社が株式を移転して新設の親会社を共同で作る構造は、多くの業界再編で見られる形です。
U のメモ
実際の企業再編を調べてみると、1つの組織再編に複数の手法が組み合わさっているケースがほとんどです。試験問題では手法を1つずつ問われますが、「なぜこの手法が使われるか」という目的の理解があると、選択肢の絞り込みが速くなると感じています。ニュースで「合併」「分社化」「ホールディングス化」という言葉を見かけたとき、どの手法にあたるかを意識してみると、知識が定着しやすいのではないかと思います。

過去問で確認する

平成29年度 経営法務 第16問(改題イメージ) 簡易合併・略式合併
吸収合併に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 略式合併は、存続会社が消滅会社の総株主の議決権の過半数を保有している場合に、消滅会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
  • イ 簡易合併は、消滅会社の純資産額が存続会社の純資産額の5分の1以下である場合に、存続会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
  • ウ 略式合併は、存続会社が消滅会社の総株主の議決権の10分の9以上を保有している場合に、消滅会社の株主総会の承認を省略できる手続きである。
  • エ 吸収合併における対価は存続会社の株式に限定されており、金銭等を対価とすることはできない。
解説
正解はウです。略式合併は、存続会社が消滅会社の議決権の10分の9以上(特別支配会社)を保有する場合に、消滅会社の株主総会承認を省略できます。
ア:「過半数」ではなく「10分の9以上」が要件です。イ:簡易合併の要件は「消滅会社に交付する対価の額が存続会社の純資産の5分の1以下」であり、消滅会社の純資産との比較ではありません。エ:対価の柔軟化により、金銭等も対価とすることができます(三角合併も可能)。
令和3年度 経営法務 第14問(改題イメージ) 株式交換・株式移転
株式交換・株式移転に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 株式移転では、完全親会社となる既存の会社に対して子会社の株式を移転するため、新会社を設立する手続きは不要である。
  • イ 株式交換において、完全親会社が完全子会社の株主に交付できる対価は、完全親会社の株式のみに限られる。
  • ウ 株式移転は、新たに設立する会社(完全親会社)に既存の会社が全株式を移転する手法であり、複数の会社が共同で持株会社を設立する場合にも活用できる。
  • エ 株式交換を行う場合、完全子会社となる会社の株主総会の承認は一切不要である。
解説
正解はウです。株式移転では新設する会社(完全親会社)に全株式を移転し、複数の会社が共同で持株会社(ホールディングス)を設立する際にも活用されます。
ア:株式移転では必ず新会社を設立します(既存会社に移転するのは「株式交換」)。イ:株式交換の対価は、株式のほか金銭等も可能です(対価の柔軟化)。エ:原則として完全子会社となる会社の株主総会特別決議が必要です(略式株式交換の要件を満たす場合のみ省略可)。
  • 合併・会社分割・株式交換・株式移転の4手法を「会社が消滅するか」「新会社を設立するか」で分類できる
  • 簡易合併は「対価が純資産の1/5以下」のとき存続会社の総会省略、略式合併は「議決権9/10以上保有」のとき消滅会社の総会省略
  • 株式交換は「既存の親会社」へ、株式移転は「新設する親会社」へ株式を移転する
  • 組織再編には原則として株主総会の特別決議(出席議決権の2/3以上)が必要
  • 反対株主は公正な価格での株式買取請求権(効力発生日前後20日以内)を行使できる
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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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