U「ドメインの定義」は企業経営理論の最初の関門ですが、近所の文房具屋がAmazonに負けた理由を考えると、急に身近になりました。
「文房具を売る屋」と定義した店と、「便利な買い物体験を提供する」と定義したAmazon——この差がドメインの話です。
目次
物理的定義 vs 機能的定義
物理的定義(NG)
WHAT IT IS
「何を作っているか・何を売っているか」という製品・サービスそのもので事業領域を定義する方法。
例:「私たちは文房具を販売する会社です」「鉄道を運営する会社です」
機能的定義(推奨)
WHAT IT DOES FOR CUSTOMERS
「顧客にとってどんな価値・機能を提供するか」という便益ベースで事業領域を定義する方法。
例:「私たちは仕事の生産性を高める会社です」「人々の移動を支援する会社です」
機能的定義のほうが事業の可能性を広く捉えられ、環境変化への適応力が高まります。ただし広すぎる定義は経営資源の分散を招くため、バランスが重要です。
エーベルの3次元モデル
①
CUSTOMER GROUP
顧客層
(誰に?)
(誰に?)
どのような顧客セグメントを対象とするか。年齢・業種・地域・規模など。
例:個人 / 中小企業 / 大企業
②
CUSTOMER FUNCTION
顧客機能
(何を?)
(何を?)
顧客のどんなニーズ・課題・便益に応えるか。
例:移動・娯楽・情報収集・節約
③
TECHNOLOGY
技術・代替技術
(どうやって?)
(どうやって?)
その便益をどの技術・手段・方法で実現するか。
例:鉄道・タクシー・バス・バイクシェア
この3軸を組み合わせて「誰の、何を、どうやって」を定義するのがエーベル(Abell)モデルです。診断士試験では3軸の名称と意味、事例への当てはめが出題されます。
身近な事例で整理する
REAL WORLD EXAMPLES
近所の文房具屋
物理的定義:「文房具を売る店」
→ 機能的に再定義するなら:「オフィスワーカーの作業効率を支援する店」
Netflix
物理的定義:「動画配信サービス」
→ 機能的定義:「エンターテインメント時間の提供」(睡眠が競合と公言)
コダック
物理的定義:「フィルムを製造する会社」
→ 機能的に再定義できれば:「思い出を記録・共有する会社」でデジタル移行も可能だった
Amazon
物理的定義:「ECサイト」
→ 機能的定義:「最も便利な購買体験の提供」(AWS・物流・動画まで展開)
ドメインの設定が狭すぎる・広すぎる罠
狭すぎる定義
「フィルムを作る会社」
→
結果
デジタル化の波に対応できず衰退
→
本来あるべき定義
「思い出を残す体験を提供する会社」
広すぎる定義
「あらゆる人のあらゆる課題を解決する会社」
→
結果
経営資源が分散し、競争優位を築けない
→
適切な定義
強みを活かせる範囲で機能的に定義する
診断士試験 頻出パターン
頻出 ★★★
事例企業のドメインを定義せよ
与件文にある企業の事業を読んで「顧客層・顧客機能・技術」の3軸で整理する問題。「物理的 vs 機能的」のどちらで定義されているかを見極め、問題点や再定義の方向性を述べます。
頻出 ★★★
ドメインの再定義と多角化の関係
ドメインを機能的に広く再定義すると、新事業への参入が正当化されます。「なぜA社はB事業に進出したか」という問いに対して、ドメインの再定義を軸に答えるパターンが頻出です。
頻出 ★★
エーベルの3次元の名称・説明の正誤問題
「顧客層・顧客機能・技術」の3軸の名称と意味を正確に覚えているかを問う選択肢問題。「技術」は製造技術だけでなく提供手段・方法論を含む点が引っかかりやすいポイントです。
まとめ
- ドメインとは「企業が戦う事業領域」の定義。物理的より機能的に定義するほうが柔軟で強い
- エーベルの3軸:①顧客層(誰に)②顧客機能(何を)③技術(どうやって)
- 狭すぎると環境変化に対応できず、広すぎると経営資源が分散する
- 試験では「ドメインの再定義→多角化の根拠」というロジックがよく問われる
- コダックの失敗・AmazonやNetflixの成功はドメイン定義の典型事例として押さえておく
U のメモ
「ドメイン」、最初はピンと来なかったのですが、「自分がやっている事業は何屋なのか?」と問いを立てたとき、急に身近になりました。定義の仕方次第で提供できるサービスの幅がまったく変わってきます。診断士として将来クライアントに問いかけてみたい視点のひとつです。



ドメインの定義はSWOT分析や多角化戦略とも深く絡んでいます。
「なぜこの事業をやるのか」の根拠になる大切な概念なので、しっかり押さえておきましょう。









