雇用調整助成金——景気後退・災害時に雇用を守る仕組みを図解で整理 | 中小企業診断士1次試験 中小企業経営・政策

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コロナ禍で「雇用調整助成金」という言葉がニュースに溢れました。飲食店や観光業の事業者が従業員を解雇せずに休業させ続けられたのは、この制度があったからです。試験でも問われますが、「なぜこの制度があるのか」という背景から理解すると、細かい要件が自然に頭に入ってきます。

目次

「解雇するしかない」その前に——国が休業費用を肩代わりする

売上が急に半分になった。でも来月には回復するかもしれない。そのとき経営者が直面する問いは「従業員を解雇するか、休業させるか」です。

解雇すれば、回復したときに人材がいない。でも休業させると、仕事をしていない人に賃金を払い続けなければならない——。

この二択に、国が第三の道を示します。それが雇用調整助成金です。「解雇せずに休業させた事業者に、その休業手当の一部を国が補助する」という仕組みです。

雇用調整助成金の目的は「雇用の維持」です。景気後退・災害・感染症などで事業活動が縮小せざるを得ないとき、解雇という最終手段を使わずに済むよう、休業コストを社会全体で分担する制度です。

制度の基本構造——3つの要件と助成の計算式

雇用調整助成金を受けるには、大きく3つの条件を満たす必要があります。

1
売上・生産量が一定以上減少している
最近3か月の売上や生産量が、前年同期比で10%以上(中小企業)または15%以上(大企業)減少していること。単なる「売上が減った」だけでなく、一定の減少率が必要。
2
雇用保険の適用事業者である
雇用保険に加入している事業者が対象。個人事業主本人や役員は対象外で、あくまで「雇用している労働者」の休業手当が補助される。
3
従業員に休業手当を支払っている
事業者が労働基準法に基づく休業手当(平均賃金の60%以上)を実際に支払うことが前提。先払いして、後から助成金で補填するイメージ。
項目中小企業大企業
助成率(通常時)休業手当の2/3休業手当の1/2
1人1日あたり上限額8,490円(2024年度)※毎年改定同左
支給限度日数1年間で100日(教育訓練を行った場合は150日)同左

助成率・上限額は法改正や特例措置で変わります。試験では「中小企業は2/3、大企業は1/2」という基本の助成率の違いが問われやすいです。

休業手当と雇用調整助成金の関係——お金の流れを整理する

お金の流れが少しわかりにくいので、具体的な数字で整理します。

例:アルバイトAさんの平均賃金が1日8,000円。休業させたとき、会社は労働基準法により最低60%(4,800円)の休業手当を払う義務があります。

登場人物やること金額(例)
会社(事業者)Aさんに休業手当を支払う4,800円/日
国(助成金)会社に助成金を支給(休業手当の2/3)3,200円/日
会社の実質負担休業手当 − 助成金1,600円/日

会社が最終的に負担するのは休業手当の約1/3。従業員を解雇せずに「つなぎ留める」コストを、国が大部分負担してくれる仕組みです。

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「助成率2/3」という数字は、休業手当に対して2/3を国が補助するという意味です。休業手当自体が平均賃金の60%以上なので、従業員の賃金全体に対しては40%程度の負担で雇用を維持できる計算になります。この多層構造が最初は混乱しやすいので、お金の流れを一度図で整理してみると頭に入りやすいです。

「在籍型出向」との組み合わせ——産業雇用安定助成金

雇用調整助成金が「休業させる」場合の支援なら、産業雇用安定助成金は「余剰人員を一時的に他の企業に出向させる」場合の支援です。

制度対象となる行動目的
雇用調整助成金従業員を休業させる解雇を避けて雇用を維持
産業雇用安定助成金従業員を他社に在籍型出向させる出向先での就労機会を確保しつつ雇用維持

在籍型出向とは、雇用関係を元の会社に残したまま、他社で働いてもらう仕組みです。コロナ禍では観光・飲食業から食品・物流業への出向が注目されました。

過去問で確認——助成率の数字が狙われやすい

中小企業診断士 1次試験|中小企業経営・政策 雇用調整助成金の出題パターン
雇用調整助成金に関する記述として、最も適切なものはどれか。
  • ア 雇用調整助成金は、事業活動が縮小した事業者が従業員を解雇した場合に、その解雇手当の一部を助成する制度である。
  • イ 中小企業における助成率は、支払った休業手当の1/2である。
  • ウ 中小企業における助成率は支払った休業手当の2/3で、大企業の1/2より高い。事業者が先に休業手当を支払い、後から助成金を受給する仕組みである。
  • エ 雇用調整助成金の受給には、雇用保険の適用を受けていない事業者であることが要件のひとつである。
解説
正解は
ア:誤り。雇用調整助成金は「解雇ではなく休業させた場合」に支給される。解雇した場合は対象外。制度の目的は「解雇の回避」。
イ:誤り。中小企業の助成率は2/3。1/2は大企業の助成率。
ウ:正しい。中小企業2/3・大企業1/2の違い、先払い後払いの仕組みを正確に押さえている。
エ:誤り。雇用保険の適用事業者であることが要件。適用を受けていない事業者は対象外。

まとめ——3点で試験に対応できる

1
目的は「解雇の回避」。解雇した場合は対象外
休業させた場合の休業手当を補助する制度。解雇手当ではない。
2
助成率:中小企業2/3、大企業1/2
この数字の違いが試験で最も問われやすい。中小企業の方が手厚い。
3
雇用保険適用事業者が対象。事業者が先払いして後から受給
先に休業手当を払い、後で助成金を受け取る順番。受給前に解雇してしまうと対象外。
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コロナ禍での経験は、雇用調整助成金が「いざというとき本当に機能する制度」であることを証明しました。診断士として中小企業の経営支援をするとき、この制度を知っているかどうかで、クライアントに提案できる選択肢の幅が変わります。試験の知識がそのまま実務に直結する論点のひとつです。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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