U中小企業白書を読んでいて、人手不足と賃上げのプレッシャーが中小企業の最大の経営課題になっているというデータに目が止まりました。「上げたいけど、利益が消える」——そのジレンマを和らげるために、国がいくつかの助成金を用意しています。試験でも頻出ですし、実務でも直接使える知識です。
「時給を上げると赤字になる」——その悩みに国が答える仕組み
居酒屋を経営するAさんの話です。アルバイトの時給が最低賃金に近く、このままでは採用できない。でも時給を上げると月の人件費が20万円増える。利益がギリギリの中でどうすればいいか——。
こういった状況に対応するため、厚生労働省は業務改善助成金という制度を設けています。「設備投資で業務を効率化し、その分だけ賃金を上げた事業者」に、設備投資費用の一部を助成する仕組みです。
業務改善助成金——生産性を上げた分だけ賃金を引き上げる
業務改善助成金は、「生産性向上のための設備投資」と「事業場内最低賃金の引き上げ」をセットで行う事業者を支援します。
| コース(引き上げ額) | 助成上限額(労働者数10人未満) | 助成率 |
|---|---|---|
| 30円コース | 30万円〜60万円 | 9/10 |
| 45円コース | 45万円〜110万円 | 9/10 |
| 60円コース | 60万円〜130万円 | 9/10 |
| 90円コース | 90万円〜200万円 | 9/10 |
上限額は対象労働者数によって変わります。試験では「助成率9/10」「生産性向上と賃上げのセット」という2点が問われやすいです。
キャリアアップ助成金——非正規を正規にした事業者への支援
キャリアアップ助成金は視点が少し違います。業務改善助成金が「設備投資×賃上げ」のセットなのに対し、こちらは「非正規労働者の処遇改善・正社員化」に取り組んだ事業者を支援します。
キャリアアップ助成金で試験によく出るのは「正社員化コース」の1人あたり助成額と「事前にキャリアアップ計画書を作成・提出する必要がある」という手続き要件の2点です。



業務改善助成金とキャリアアップ助成金、どちらも「賃上げ支援」という共通の目的がありますが、アプローチが違います。業務改善は「設備投資→生産性アップ→賃上げ」という順番、キャリアアップは「雇用形態の改善→処遇改善」という順番です。この方向の違いを意識すると、試験の選択肢で迷いにくくなりました。
2つの助成金の違いを整理する
| 項目 | 業務改善助成金 | キャリアアップ助成金 |
|---|---|---|
| 主管省庁 | 厚生労働省 | 厚生労働省 |
| 目的 | 生産性向上による賃上げ | 非正規労働者の処遇改善・正社員化 |
| 必要な行動 | 設備投資+最低賃金の引き上げ | 正社員転換または基本給3%以上増額 |
| 申請先 | 都道府県労働局・ハローワーク | 都道府県労働局・ハローワーク |
| 事前提出 | 交付申請書(設備導入前) | キャリアアップ計画書(転換等の前) |
過去問で確認——選択肢のどこが間違いか
- ア 業務改善助成金は、事業場内の最低賃金を引き上げた事業者であれば、設備投資を行わなくても受給できる。
- イ 業務改善助成金の助成率は、引き上げるコースにかかわらず一律2/3である。
- ウ 業務改善助成金は、生産性向上のための設備投資と事業場内最低賃金の引き上げを組み合わせて行う中小企業事業者を対象とした制度で、助成率は原則9/10である。
- エ 業務改善助成金の申請はキャリアアップ計画書の提出が必要で、労働者の転換を実施した後でなければ申請できない。
ア:誤り。業務改善助成金は「設備投資+賃上げ」のセットが条件。賃上げだけでは受給できない。
イ:誤り。助成率は原則9/10。2/3ではない。
ウ:正しい。「生産性向上の設備投資+事業場内最低賃金引き上げ」「助成率9/10」という2つのポイントを正確に押さえている。
エ:誤り。キャリアアップ計画書はキャリアアップ助成金の要件。業務改善助成金では不要。
まとめ——試験で確実に取れる2点



最低賃金が毎年上がっているいま、この2つの助成金の存在を知っているかどうかで、中小企業経営者の行動が変わります。診断士として「こういう助成金がありますよ」と伝えられるかどうか——試験の知識が直接使える場面だと感じています。









