NPV・IRR・回収期間法を整理する|投資意思決定の考え方と判断基準

U

投資意思決定って最初、なんとなく難しそうに見えたんですよね。

NPV、IRR、回収期間法……似たような名前が並んでいて、どれが何をしているのかが混乱しました。

でも「将来のお金を今の価値に換算する」という一本の軸を掴んでから、急に整理できた感覚があります。

目次

3つの投資評価指標:全体像の把握から始める

投資意思決定では、「この投資をすべきか?」を判断するために3つの代表的な指標が使われます。まず全体像を掴みましょう。

正味現在価値法NPV法
将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いて合計し、初期投資を差し引いた値。プラスなら投資実行。
試験の最重要指標。理論的に最も正しいとされる。
内部収益率法IRR法
NPVがゼロになる割引率(収益率)を求め、資本コストと比較する。IRR>資本コストなら実行。
直感的に理解しやすい。ただし欠点もある。
回収期間法Payback Period
初期投資を何年で回収できるかを計算。回収期間が基準以下なら実行。
シンプルで使いやすいが、時間価値を無視する欠点がある。

すべての根拠:「お金の時間価値」とは何か

NPV・IRRを理解するうえで絶対に必要な前提が「お金の時間価値」です。これは「今の100万円と3年後の100万円は同じ価値ではない」という考え方です。

お金の時間価値 — 将来のお金を「今の価値」に換算する
現在(0年目)
−100万円
初期投資
1年後
+40万円
÷(1+r)¹
2年後
+40万円
÷(1+r)²
3年後
+40万円
÷(1+r)³
将来の各キャッシュフローを割引率(r)で割り引くことで「今のお金に換算」します。遠い未来ほど大きく割り引かれます。これが現在価値(PV)です。
なぜ今の方が価値が高い?今もらえる100万円は運用すれば将来105万円になる。だから将来の105万円は「今の100万円と同じ価値」。逆算すると、将来のお金は今より価値が低い。
割引率(r)は何を表す?資本コスト(資金調達にかかるコスト)。この率を使って将来のお金を現在価値に換算する。試験ではあらかじめ与えられる。

NPVの計算ステップ|考え方と流れを整理する

NPVは「理論的に最も正しい投資評価指標」とされています。なぜ最も正しいのか、その計算の流れから理解しましょう。

1
毎年のキャッシュフローを確認する
投資によって毎年いくら入ってくるか(キャッシュインフロー)を整理する。減価償却費・税金も考慮したフリーキャッシュフローが対象。
2
各年のCFを現在価値(PV)に割り引く
資本コスト(割引率)を使い、各年のキャッシュフローを現在価値に換算する。
n年後のCFの現在価値 = CF ÷(1+割引率)ⁿ
※試験では現価係数表が与えられるので CF × 係数 で計算する
3
現在価値の合計を求める(PV合計)
各年の現在価値をすべて足し合わせる。これがキャッシュフローの現在価値合計
4
初期投資額を差し引く → これがNPV
NPV = PV合計 − 初期投資額。この値がプラスなら投資による価値増加。マイナスなら価値の減少。
NPV = Σ[CFₙ ÷(1+r)ⁿ]− 初期投資額
NPV ≥ 0 → 投資実行 / NPV < 0 → 投資回避
5
複数案件なら NPVが大きい方を選ぶ
相互排他的な投資案(AかBかを選ぶ場合)では、NPVが大きい方が企業価値の増加が大きい。これがNPV法の強みのひとつ。
▍ 試験 POINT NPV計算では現価係数(割引現価係数)が問題文に与えられます。「1年後の現価係数0.952」とあれば、1年後のCFに0.952を掛けるだけ。計算式の仕組みより、係数の使い方を正確に押さえましょう。

IRR(内部収益率)とは|NPVとの違いを整理する

IRRは「NPVがちょうどゼロになる割引率」のことです。言い換えると、「この投資がちょうど元がとれる収益率」を意味します。

NPV法
金額で評価する
何を求める
投資による価値の増減額
判断基準
NPV ≥ 0 → 実行
複数案比較
NPVが大きい方を選べる
規模の違い
金額ベースのため正確に比較可能
試験での扱い理論的に最も正しい。最終判断はNPVを優先する。
IRR法
収益率で評価する
何を求める
NPV=0となる割引率
判断基準
IRR ≥ 資本コスト → 実行
複数案比較
投資規模が違うと比較しづらい
規模の違い
小さい投資も大きく見える場合がある
試験での扱い直感的に理解しやすい。欠点があるためNPVを補完する位置づけ。
▍ 試験 POINT IRRの欠点として「投資規模が異なる案件の比較に弱い」ことが頻出。100万円の投資でIRR=20%、1000万円の投資でIRR=15%なら、IRR法だと前者が優秀に見えるが、絶対的な価値増加(NPV)は後者の方が大きい可能性がある。

回収期間法|シンプルさの裏にある欠点

回収期間法は「初期投資額を何年で回収できるか」を計算する最もシンプルな手法です。中小企業では実務でもよく使われますが、試験では欠点も押さえておく必要があります。

回収期間法の仕組みと欠点
計算の仕組み
初期投資額 ÷ 毎年のCF(一定の場合)
= 回収期間(年数)

判断:回収期間 ≤ 基準年数 → 実行
複数案:回収期間が短い方を優先
例:初期投資1,000万円、毎年CF250万円 → 回収期間 = 4年
2つの欠点(試験頻出)
① 時間価値を無視1年後の現金も3年後の現金も同じ価値として扱ってしまう。割引計算をしない。
② 回収後のCFを無視回収期間を過ぎた後のキャッシュフローをまったく考慮しない。長期投資の評価に向かない。

3指標の判断基準まとめ

指標
判断基準
注意点・特徴
NPV法最重要
NPV ≥ 0 → 実行
複数案はNPVが大きい方を選ぶ。理論的に最も正しい指標。規模の異なる案件の比較にも有効。
IRR法補完的
IRR ≥ 資本コスト → 実行
投資規模が異なる案の比較に弱い。NPVと結論が食い違う場合はNPVを優先。
回収期間法補助的
回収期間 ≤ 基準 → 実行
時間価値・回収後CFを無視。シンプルだが理論的正確性は低い。実務では流動性リスクの把握に有用。

1次・2次試験での出題ポイント

投資意思決定 — 試験で押さえるべき5点
NPVがプラスなら投資実行 — 「企業価値が増える」という判断の根拠がNPV。プラスの意味を説明できるようにしておく。
現価係数の使い方 — 「n年後のCF × 現価係数 = 現在価値」。係数表が与えられる形式が多いので、掛け算で計算する流れを体に覚えさせる。
IRRの欠点 — 「投資規模の異なる案件の比較に弱い」が頻出。NPVと結論が違う場合はNPVを優先することを記憶しておく。
回収期間法の2つの欠点 — 「時間価値を無視」「回収後のCFを無視」。どちらが問われても答えられるように整理する。
2次試験との接続 — 設備投資の助言問題では「NPVがプラスなので投資を推奨する」という論理構造を使う。計算+理由説明がセット。
U

最初は「なんで割り引くの?」というところから混乱していましたが、

「今もらえるお金の方が価値が高い」という直感を先に持てると、NPVもIRRも自然に理解できるようになりました。

計算の練習より先に、この考え方を腑に落とすのが大事だと思っています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次