U「MRPの正味所要量を求めなさい」という過去問で、最初は何を逆算しているのか全然わからなかったんです。でも「今夜のハンバーガーを作るために、材料を何個買えばいいか」という場面に置き換えたとたん、すっきり見えました。図でまとめながら、一緒に整理していきます。
MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)は、製品の完成スケジュールを出発点にして、「いつ」「何を」「どれだけ」発注すればよいかを自動的に計算する生産管理の仕組みです。単なる在庫の補充ルールではなく、「必要なものを、必要なときに、必要な量だけ」手配するための”逆算エンジン”です。今回は計算問題の手順を含め、試験で問われるポイントを整理してみます。
部品が1つ欠けるだけで工場は止まる——MRPが生まれた理由
製造業の現場では、長い間「在庫が減ってきたら補充する」という発注点方式が主流でした。この方法は比較的シンプルで使いやすい反面、大きな弱点があります。
在庫が一定量(発注点)を下回ったら発注する
需要が安定している品目には有効だが、製造業の部品管理には弱点がある
課題:過剰在庫 or 欠品リスクが常に残る
「製品をいつ何個作るか」が決まれば、必要な部品の数と発注タイミングが計算できる
需要の変動に応じた計画的な管理が可能
狙い:過不足なく、タイムリーに用意する
たとえば自転車を100台組み立てる工場で、フレームは100本あるのにタイヤのバルブが5個だけ欠品したとします。完成品は1台も出荷できません。逆にネジを1万本余分に抱えていれば、倉庫代も資金も無駄になります。
この「全部品をちょうどよく揃える」という問題を解くために、1960年代にアメリカで開発されたのがMRPです。コンピュータの普及とともに製造業に広まり、現在も生産管理の基礎として試験で問われます。
独立需要と従属需要——MRPはどちらに使うか
MRPを理解するうえで最初に押さえたい概念が「独立需要」と「従属需要」の違いです。
| 区分 | 具体例 | 需要の決まり方 | 適した管理手法 |
|---|---|---|---|
| 独立需要 | 完成品(自転車・スマホ)、補修用タイヤ | 顧客の注文・市場動向で変動する | 発注点法・EOQ |
| 従属需要 | 自転車のフレーム・タイヤ・ネジ・チェーン | 完成品の計画数量に比例して自動決定 | MRP |
「自転車を50台作る」と決まった瞬間に、タイヤは100本・チェーンは50本…という具合に、すべての部品の必要数が計算できます。これが従属需要の本質です。
「MRPは独立需要品目の在庫管理に適した手法である」→ 誤り。MRPが扱うのは従属需要。独立需要には発注点法・EOQが適しています。



「従属」という言葉が難しく感じましたが、「親品目の数量に依存(従属)する」と考えると、ストンと入ってきました。親品目が決まれば子品目は自動計算——まさに”親子関係”ですね。
MRPの3つの入力情報
MRPが計算を行うために必要な入力情報は3つです。「MRPに必要なインプットとして適切なものはどれか」という知識問題で頻出です。
(MPS)
(BOM)
(IRF)
製造指示
MRP展開の4ステップ——計算の流れを整理する
MRPの計算は4つのステップで行われます。試験の計算問題では「正味所要量」と「発注タイミング」が特に問われます。
例:自転車を50台作る計画 × タイヤ2本/台 = タイヤの総所要量 100本
正味所要量 = 総所要量 − 有効在庫
例:タイヤが第4週に必要・リードタイム2週間 → 第2週に発注
正味所要量の計算式を完全に理解する
計算問題で最もミスが多いのが正味所要量です。式の各要素の意味をしっかり押さえておきましょう。
| 用語 | 意味 | ミスポイント |
|---|---|---|
| 総所要量 | MPS×BOMで求まる必要数の合計 | — |
| 手持在庫 | 今この瞬間に手元にある在庫 | — |
| 発注残 | すでに発注済みで未着の数量 | 忘れると正味所要量が多く出すぎる |
| 安全在庫 | 欠品バッファとして取り置く在庫 | 有効在庫から引く(加えない) |
| 有効在庫 | 実際に使える在庫の合計 | 手持 + 発注残 − 安全在庫 の3要素セット |
正味所要量 = 60 − 25 = 35個
※ 「発注残を足す」「安全在庫を引く」の2点が見落としやすいポイントです。



計算問題を解いていて気づいたのですが、「安全在庫は有効在庫から引く(=使えない)」という点が直感に反しやすいんです。「安全在庫は触れてはいけないバッファ」と覚えておくと、符号を間違えにくくなりました。
BOM展開の具体例——自転車で部品を分解してみる
部品表(BOM)の仕組みを自転車の例で確認してみます。製品を階層的に分解していくことを「MRP展開」と呼びます。
自転車を50台作る計画(MPS)があれば、BOMを使って次のように展開できます。
| 部品名 | 1台あたりの使用数 | 50台の総所要量 | 手持在庫 | 正味所要量 |
|---|---|---|---|---|
| フレーム | 1個 | 50個 | 10個 | 40個 |
| タイヤ | 2本 | 100本 | 30本 | 70本 |
| チューブ | 2本 | 100本 | 50本 | 50本 |
| チェーン | 1本 | 50本 | 0本 | 50本 |
| ブレーキ一式 | 2セット | 100セット | 20セット | 80セット |
このように、完成品の計画数が決まれば、すべての部品の「あと何個必要か」が一気に計算できます。これがMRP展開の基本です。
ハンバーガーショップで考えるMRP——材料管理の身近な例
製造業の話はやや抽象的に感じやすいので、ハンバーガーショップの例で整理してみます。
さらに「仕入れ業者への発注から納品まで2時間かかる」とわかっていれば、ランチ開始の2時間前には発注する必要があります。これがリードタイムを考慮したオフセットです。
チーズバーガー100個
バンズ300個
チーズ100枚…
を算出
(オフセット)
飲食店は毎日このような計算を経験と勘でやっていますが、製造業では部品が数百〜数万点に及ぶため、コンピュータを使ったMRPが不可欠になりました。
MRPのメリットと限界——万能ではない理由
MRPは強力な仕組みですが、弱点もあります。試験でも「MRPの限界」を問う問題が出ることがあります。
計画的な在庫削減が可能(過剰在庫の抑制)
欠品リスクの低減(タイムリーな発注指示)
リードタイムを考慮した発注タイミングの最適化
複雑な部品構成でも一括計算できる
生産計画の変更を関連部品に自動反映
MPSやBOMのデータ精度に依存する(ゴミを入れればゴミが出る)
リードタイムが固定前提のため、変動対応が難しい
需要の急変動(需要変動)への即応が弱い
生産能力(設備・人員)の制約を考慮しない
データ維持のコスト・工数が大きい
特に「生産能力の制約を考慮しない」という点は重要です。MRPが「部品を300個発注せよ」と計算しても、工場のラインが200個しか処理できなければ、計画通りには進みません。この限界を補うために、次の段階でMRP-IIが開発されました。



「データ精度に依存する」という点、実は試験より実務で重要な話なんですよね。BOMに古いデータが入っていたら計算結果もずれる。「GIGO(Garbage In, Garbage Out)」という原則が思い浮かびます。
MRP-IIからERPへ——進化の流れを押さえる
MRPは生まれてから半世紀以上、大きく進化してきました。試験では「MRP→MRP-II→ERP」の流れが問われることがあります。
MRP-IIはMRPに「生産能力の制約」を加えたもの。ERPはさらに企業全体(財務・人事・販売等)を統合したシステム。「MRP⊂MRP-II⊂ERP」の包含関係で覚えると整理しやすいです。
過去問の出題傾向——何が問われるか
運営管理のMRP分野は計算問題と知識問題の両方で出題されます。出題パターンは大きく2種類です。
ある部品の総所要量が80個、手持在庫が25個、発注残が15個、安全在庫が10個であるとき、正味所要量はいくつか。
= 25 + 15 − 10 = 30個
正味所要量 = 総所要量 − 有効在庫
= 80 − 30 = 50個
ミスしやすい2点:① 発注残を有効在庫に「加える」② 安全在庫を有効在庫から「引く」
イ「MRPの入力情報には基準生産計画・部品表・在庫記録ファイルが含まれる」→ 正しい。この3つがMRPの必須インプット。
ウ「MRP-IIはMRPに生産能力計画を加えたものである」→ 正しい。CRP(能力計画)との統合が特徴。
エ「ERPは製造部門のみを対象としたシステムである」→ 誤り。ERPは財務・人事・販売・調達等を統合する。
第8週に部品Aが50個必要である。部品AのリードタイムはLT=3週間である。第何週に発注すればよいか。
= 第8週 − 3週 = 第5週に発注
「第8週に届くためには、3週間前の第5週に発注する」という逆算の発想です。
まとめ——試験前に確認したいポイント
- MRPは製品の完成計画(MPS)から部品の必要数を逆算する手法——従属需要の管理に用いる
- 3つの入力情報:① 基準生産計画(MPS)② 部品表(BOM)③ 在庫記録ファイル(IRF)
- 正味所要量 = 総所要量 − 有効在庫(手持在庫+発注残−安全在庫)
- 発注タイミング = 需要発生日 − リードタイム(オフセット)
- 発注点法・EOQは独立需要向け、MRPは従属需要向け——対比でセットで覚える
- MRP-IIはMRPに生産能力計画(CRP)を追加したもの。ERPはさらに企業全体を統合したシステム
- MRPの限界:リードタイム固定前提・需要変動への弱さ・生産能力制約を考慮しない
MRP-IIとERPの違いも、「製造資源の管理」対「企業全体の統合管理」というスコープの違いで押さえておくと、選択肢の正誤判定で迷いにくくなると思います。









