事例IVの過去問傾向分析 | 中小企業診断士2次試験

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令和5年度の事例IVで、NPV計算の設問が3問連続で出た年がありました。「これってたまたま?」と思って過去問を20年分さかのぼってみたら、全然たまたまではなかったんです。事例IVには出題テーマにはっきりした傾向があって、年度ごとのウェイトの変化まで把握しておくと、本番での優先順位の付け方がまったく変わります。

目次

事例IVの全体像と出題構成

事例IVは4事例の中で唯一、計算問題が中心の科目です。記述中心の事例I〜IIIとは性質が大きく異なり、「計算の正確さ」と「どのテーマが出るかの事前予測」が得点を左右します。まず全体の構造を数字で押さえましょう。
80
試験時間
4事例中最も計算量が多い
34
大問
大問構成
経営分析が大問1に固定
100
満点配点
大問1(経営分析)は約30点
20
年分
傾向分析の対象
平成16年度〜令和5年度

事例IVの大問1は経営分析(財務比率の計算・指摘)が毎年ほぼ固定で出題されます。大問2以降に何が来るかが、その年の難易度と対策のポイントを左右します。配点分布は年度によって変動しますが、下記の構成が標準的です。

大問 主なテーマ おおよその配点 特徴
大問1 経営分析(財務比率) 25〜30点 毎年必出。収益性・効率性・安全性の3視点
大問2 CVP分析 or NPV/DCF 20〜30点 交互に出やすい。計算量が多い年も
大問3 CF計算書 or 追加投資分析 20〜25点 近年は与件活用型の文章問題が増加
大問4 デリバティブ・その他応用 15〜25点 令和以降に頻度上昇。難問になりやすい
事例IVの本質:「計算が速い人が勝つ」試験ではなく、「どのテーマが出たか瞬時に判断して、確実に得点できる問題から手をつけられるか」の試験です。出題パターンを知ることが、時間配分戦略の土台になります。

頻出テーマランキング(過去20年)

平成16年度〜令和5年度(約20年間)の出題を集計すると、テーマ別の出題頻度に明確な差があります。上位3テーマは対策必須、下位テーマはコスパを考えた優先順位付けが重要です。
高頻度(15〜20回/20年)
中頻度(8〜14回/20年)
低〜中頻度(3〜7回/20年)
経営分析(財務比率)
20
NPV・DCF分析
18
CVP分析
17
CF計算書
13
追加投資・設備更新
12
デリバティブ(先物・オプション)
9
リース会計・資金調達
6
企業価値評価
4
税効果会計・その他
3

上位3テーマ(経営分析・NPV/DCF・CVP)は合わせて50点以上を占めることがほとんどです。この3テーマを完全に習得するだけで、合格ライン(60点)の大半をカバーできます。CF計算書・追加投資分析まで手を広げると70〜75点圏が狙えます。

優先度 テーマ 出題頻度 難易度 対策コメント
最優先 経営分析 毎年必出 ★★☆ 指標の選び方・根拠の記述まで完璧に仕上げる
最優先 CVP分析 ほぼ毎年 ★★☆ 固定費・変動費の分解と損益分岐点の計算を反射的にできるまで
最優先 NPV・DCF ほぼ毎年 ★★★ 税引後CF・残存価値・割引計算の手順を体系化する
優先 CF計算書 2年に1回 ★★☆ 間接法の加減算ルールを丸暗記せず原理から理解する
優先 デリバティブ 令和以降増加 ★★★ 先物・オプション・スワップの基本概念と損益計算のみ押さえる
余力 企業価値評価 3〜4年に1回 ★★★ DDM・FCF法の公式のみ把握。深追いしない

出題トレンドの変遷(平成〜令和)

事例IVの出題傾向は「計算中心の平成型」から「思考プロセス重視の令和型」へと大きく変化しています。時代別の変遷をタイムライン形式で整理しました。
平成16〜20年(2004〜2008年)
基礎計算型の確立期
CVP・経営分析・NPVの三本柱が確立。計算そのものの正確さが問われる。設問文が短く、与件文との連携は少ない。財務知識の暗記と計算スピードが得点の決め手だった時期。
平成21〜26年(2009〜2014年)
複合問題・多段階計算の深化期
CF計算書・追加投資分析が本格的に登場。設問が連動する「多段階問題」(前問の答えを次問で使う形式)が増加。一問を外すと連鎖的に失点するリスクが生まれた時期。デリバティブが散発的に出題され始める。
平成27〜令和元年(2015〜2019年)
与件活用・文章問題の台頭期
「計算して終わり」ではなく、計算結果を踏まえて経営判断を述べる設問が増加。「〇〇すべきか否かを根拠を示して答えよ」という形式が定着。デリバティブ(先物・オプション)が頻出化。企業価値評価も登場。
令和2〜5年(2020〜2023年)
思考プロセス重視・記述量増加の現代型
計算の正確さと同等以上に「なぜその判断をするか」の論述が求められる設問が増加。与件文に書かれた事業特性や経営課題と計算結果を結びつける「連携型」問題が主流に。デリバティブ・価値評価は確固たる頻出テーマへ昇格。
変遷のまとめ:「計算の正確さ → 多段階の正確さ → 与件と計算の連携 → 思考プロセスの記述」という進化軸です。令和以降は「計算の途中式や根拠の記述」を求める設問が増えており、答えだけ合っていても部分点しか取れないケースが出てきています。

テーマ別 解法の要点と頻出パターン

頻出4テーマ(経営分析・CVP・NPV・CF計算書)について、計算パターンと試験での問われ方を整理します。「何をどの順番で計算するか」の型を先に知っておくことが、本番での対応力につながります。
経営分析(収益性・効率性・安全性)
大問1として毎年出題。「問題のある指標を3〜4つ選び、競合他社と比較しながら根拠を述べる」形式が定着しています。計算ミスより「なぜその指標を選んだか」の記述力が差を生みます。
  • 収益性売上高総利益率・売上高営業利益率・売上高経常利益率。低い方が問題のある指標
  • 効率性総資本回転率・売上債権回転期間・棚卸資産回転期間。回転期間が長いと要注意
  • 安全性流動比率・当座比率・自己資本比率・負債比率。低すぎ・高すぎの判断基準を持つ
  • 記述のコツ「〇〇率が同業他社と比較して低く(高く)、〜が原因と考えられる」の形で根拠を述べる
CVP分析(損益分岐点分析)
「固定費・変動費・貢献利益」の3要素を正確に分解し、損益分岐点売上高・目標利益達成売上高・安全余裕率を求める問題が定番です。複数製品・複数チャネル版の応用問題にも対応が必要です。
  • 基本公式損益分岐点売上高 = 固定費 ÷ 貢献利益率(貢献利益率 = 1 − 変動費率)
  • 目標利益(固定費 + 目標利益)÷ 貢献利益率 = 目標利益達成に必要な売上高
  • 頻出応用製品ミックス変更・追加設備導入後の損益分岐点の変化を問う問題
  • 最近の傾向「この施策を実施すべきか否か、CVP分析の観点から述べよ」という記述形式が増加
NPV・DCF分析(投資意思決定)
「投資案件のキャッシュフローを現在価値に割り引き、NPVがプラスなら投資すべき」という判断フレームです。税引後CF・減価償却の扱い・残存価値・割引率の適用が出題の核心です。
  • 税引後CF(営業利益 × (1 − 税率))+ 減価償却費 = 毎期のCF(減価償却は非現金費用のため加算)
  • 残存価値耐用年数末の売却価値と帳簿価額の差(売却益・損)を計上し税金処理する
  • NPV計算各年のCF × 現価係数の合計 − 初期投資額。現価係数表の読み方を事前に慣れておく
  • 頻出応用2案件の比較・段階的投資・リース vs 購入の比較判断
CF計算書(間接法・資金繰り)
損益計算書(P/L)・貸借対照表(B/S)の増減から「営業CF・投資CF・財務CF」を作成する問題です。「非現金項目の加算・運転資本の変化の加減算」という原理を理解していないと暗記が崩れます。
  • 営業CF当期純利益 + 減価償却費 ± 運転資本増減(売上債権増加→マイナス・仕入債務増加→プラス)
  • 投資CF設備投資・資産売却の現金収支。有形固定資産の増減から読み取る
  • 財務CF借入金の増減・株式の発行・配当金支払いなど
  • 最近の傾向「この会社のCF構造から経営上の問題点を指摘せよ」という分析問題が増加

近年の傾向(令和3年〜)

令和3年以降、事例IVの出題スタイルが明確に変化しています。「正確に計算できるか」だけでなく「計算結果から何を読み取り、どう判断するか」が問われる方向へシフトしています。
変化の観点 平成〜令和2年ごろ 令和3年以降
設問の形式 「〇〇を計算せよ」「金額を答えよ」 「〇〇すべきか否か、理由とともに答えよ」
与件文の活用 計算に必要な数値のみ参照 経営課題・事業特性を計算結果の解釈に使う
部分点の取り方 計算プロセスが正しければ部分点あり 判断の根拠記述が部分点の鍵になるケースも
デリバティブの扱い 散発的・試験的な出題 確固たる頻出テーマとして定着
計算量 年度によってばらつき大 やや複雑化しつつ、記述量も増加
実践的な対応策:令和以降の問題では、計算結果を出した後に必ず「この結果から何が言えるか」を一言添える練習を積むことが重要です。「NPVが正であるため投資すべきである。ただし△△リスクがあるため留意が必要。」という形の結論付けを習慣化してください。

また、令和5年度の試験ではデリバティブ(オプション取引)の損益計算が大問として出題され、配点が大きく変動した年度もあります。「デリバティブは難しいから捨てる」という戦略は、令和以降は得点機会の損失につながるリスクがあります。

効率的な対策プラン

頻度と難易度の分析をもとに、学習の優先順位を整理します。時間が限られている場合でも、このステップを守ることで最大効率で得点力を伸ばせます。
1
STEP 1 — 基礎固め(2〜3週間)
経営分析の指標を完全習得する
収益性・効率性・安全性の主要指標(計12〜15種)を計算できるだけでなく、「何が問題になっているかを根拠付きで述べる」練習をします。財務諸表の読み方に慣れることが第一目標です。過去問は平成26〜28年度の大問1から取り組むと型を掴みやすいです。
2
STEP 2 — 計算の型を習得(3〜4週間)
CVP・NPVの計算パターンを反射化する
CVPは「固定費・変動費の分解→貢献利益率→損益分岐点」の手順を5秒以内で思い出せるレベルへ。NPVは「税引後CF算出→割引→合計→判断」の流れを体系化します。どちらも計算式の暗記より「なぜこの計算をするか」の理解を優先してください。
3
STEP 3 — 応用力の強化(2〜3週間)
CF計算書・多段階問題に慣れる
CF計算書は間接法の加減算ルールを原理から理解した上で、過去問で反復します。多段階問題(前問の答えを使う構造)では、「前問の答えが出なくても仮置きして次に進む」技術が重要です。一問に詰まって時間を失わない練習をします。
4
STEP 4 — 令和型対策(1〜2週間)
計算結果の「言語化」訓練
計算して答えを出した後、「この結果が意味すること」を30〜50字で述べる練習を加えます。令和3〜5年度の過去問を使い、設問の文章表現(「〜すべきか否か」「〜の観点から述べよ」)に対応した解答構造を体に馴染ませます。
5
STEP 5 — デリバティブ・仕上げ(1週間)
デリバティブの基本と時間配分戦略を完成させる
先物・オプション・スワップの基本的な損益計算を押さえます。全テーマの模擬演習で80分の時間配分(大問1に20分・大問2〜4に各15〜20分、見直し5分)を体に覚えさせます。本番では「解ける問題を確実に取る」戦略が最優先です。
Uのメモ
事例IVで一番やってはいけない失敗が「難しい問題に時間をかけすぎて、解ける問題を落とす」ことです。大問4のデリバティブで詰まった年度、気づいたら大問1の経営分析の記述が雑になっていた、という経験をしてから、「最初に全体を俯瞰して時間配分を決める」を鉄則にしました。テーマの傾向を知ることは、本番の時間配分判断を速くすることにもつながります。

まとめ

事例IVは「出題パターンを知っている人が圧倒的に有利」な科目です。20年分の傾向を把握した上で、優先順位を持って準備することが合格への近道です。
  • 事例IVは80分・大問3〜4構成。大問1の経営分析は毎年必出で、ここを落とさないことが大前提
  • 頻出3テーマ(経営分析・CVP・NPV)を完全習得するだけで合格ライン近くまで到達できる
  • 平成→令和にかけて「計算中心」から「思考プロセス・与件連携型」へシフト。結果の言語化訓練が必須
  • デリバティブは令和以降に確固たる頻出テーマへ昇格。「捨てる」戦略はリスクが高い
  • 本番では「解ける問題を確実に取る」時間配分戦略が最優先。テーマ把握が速さにつながる
U

傾向がわかると、20年分の過去問が単なる練習問題ではなく「出題者のメッセージ集」に見えてきます。経営分析→CVP→NPVという土台を固めてから応用へ広げていくと、事例IVが一番得点計算できる事例に変わります。各テーマの詳細な解き方は関連記事でまとめていますので、ぜひあわせて確認してみてください。

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この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

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