U「新QC7つ道具」という名前を見たとき、最初は旧QC7つ道具と何が違うのかよくわかりませんでした。特性要因図や管理図は「数値データ」を扱う、というのは知っていたのですが。調べていくうちに「そうか、新しい方は言語データ——現場の声や課題記述——を整理するためのものなのか」とようやく腑に落ちたのです。その違いを軸に7つをまとめてみました。
新QC7つ道具(N7)は、1970年代に日本で体系化された品質管理手法の総称です。数値データを扱う旧QC7つ道具に対し、新QC7つ道具は言語データ(定性情報)を構造化・可視化することに特化しています。企画・設計・開発など現場以外の部門でも使えるツール群として位置づけられており、中小企業診断士試験では運営管理の頻出テーマです。各手法の目的と構造、そして旧QC7つ道具との違いをセットで押さえることが求められます。
目次
新QC7つ道具とは何か|旧QC7つ道具との違い
旧QC7つ道具が主に製造現場の「測定値・件数」を分析するのに対し、新QC7つ道具はアイデアや問題を言葉で書き出し、それを構造的に整理することを得意とします。両者を比較すると、それぞれの守備範囲が明確に見えてきます。
| 比較軸 | 旧QC7つ道具(QC7) | 新QC7つ道具(N7) |
|---|---|---|
| 扱うデータ | 数値データ(計量値・計数値) | 言語データ(定性情報・アイデア・課題記述) |
| 主な活用場面 | 製造工程の品質管理・工程監視 | 企画・設計・開発・方針管理・問題解決全般 |
| 目的 | 問題の発見・原因分析・工程の安定化 | 問題の構造化・アイデア整理・計画立案 |
| 代表ツール例 | パレート図・特性要因図・管理図・散布図 | 親和図・連関図・系統図・アローダイアグラム |
| 体系化 | 1960年代(石川馨氏ら) | 1970年代(日科技連 N7委員会) |
| 試験での頻出度 | 各ツールの構造・用途の識別 | 各手法の名称・目的・アローダイアグラムの計算 |
試験のポイント:「新QC7つ道具は言語データを扱う」という点が最重要です。旧QC7つ道具との違いを問う選択肢が頻出であり、「管理図・特性要因図は旧QC7つ道具、連関図・親和図は新QC7つ道具」という仕分けを即答できるレベルで覚えておく必要があります。
7つの手法を個別に読む
手法 01
親和図法(KJ法)
目的:混沌とした言語情報を親和性でグループ化する
特徴・使用例
バラバラに集まったアイデアや問題記述をカードに書き、似た内容(親和性の高いもの)を近くに集めて島(グループ)を形成する。文化人類学者・川喜田二郎氏が考案した「KJ法」がベースとなっており、「KJ法=親和図法」として試験でも問われる。
使用例:新製品の不満点を顧客の声から集め、テーマ別に分類する
試験 POINT
「KJ法=親和図法」の等号関係は頻出。ブレインストーミングで出たアイデアを分類・整理する場面で使う手法であり、「問題が混沌として全体像が見えないとき」が使用の起点となる。
手法 02
連関図法
目的:複雑に絡み合った原因と結果の連鎖を矢印で可視化する
特徴・使用例
問題(結果)と要因(原因)を楕円や四角のノードに書き、「原因→結果」の方向に矢印を引く。矢印が多く集まるノードが「根本原因(キーとなる要因)」として浮かび上がる。特性要因図との違いは、原因どうしの連鎖・複雑な因果関係を表現できる点。
使用例:クレーム増加の背景にある複数の要因とその連鎖を可視化する
試験 POINT
「矢印の出入りが多いノード=根本原因」という読み解き方が問われる。特性要因図(フィッシュボーン)との違いとして「複雑な因果の絡み合いに対応できる」点を押さえること。
手法 03
系統図法
目的:目標達成のための手段を階層的に展開する
特徴・使用例
「目的→手段→さらに具体的な手段」という階層構造を左から右(または上から下)へ展開し、目標を達成するための手段・方策を洗い出す。方針管理や品質機能展開(QFD)と組み合わせて使われることが多い。「ツリー構造で展開する」という形が特徴的。
使用例:「不良率ゼロ」という目標に対して、必要な手段を段階的に細分化する
試験 POINT
「目的と手段の関係をツリー状に展開」するのが系統図。連関図(原因と結果の矢印)・親和図(グループ化)との混同に注意。「目的→手段の階層」というキーワードが識別の決め手となる。
手法 04
マトリクス図法
目的:2つの要素群の対応関係・関連の強さを行列で整理する
特徴・使用例
行と列に異なる要素群を配置し、交差するセルに関連の強さ(強・中・弱など)を記号で表現する。品質要求と設計特性の対応を可視化するL型マトリクスが典型例。T型・Y型・X型など複数の構成がある。
使用例:顧客の要求品質と部品特性の関係を一覧表で整理する(QFDへの応用)
試験 POINT
「2つの要素群の対応関係を行列で整理」が定義。後述の「マトリクスデータ解析法」と混同しやすい。マトリクス図法が「関係の整理」、マトリクスデータ解析法が「数値データの多変量解析」と覚えると区別しやすい。
手法 05
アローダイアグラム法(矢線図)
目的:プロジェクトの日程計画を作成し、クリティカルパスを特定する
特徴・使用例
作業をノード(丸)と矢印で表し、各作業の所要日数・前後の依存関係を図にする。最長経路(クリティカルパス)がプロジェクト全体の最短完了日数を決める。PERT(Program Evaluation and Review Technique)と同様の考え方を用いる。ダミー矢印(点線)で論理的依存関係のみを表現できる。
使用例:新工場の立ち上げ工程を図示し、最短完了日数とボトルネック工程を特定する
試験 POINT
最頻出の手法。クリティカルパスの計算問題が頻繁に出題される。「最早結合点時刻(前向き計算)」「最遅結合点時刻(後ろ向き計算)」「余裕時間(フロート)=0の経路がクリティカルパス」の手順を確実に身につけること。
手法 06
PDPC法(過程決定計画図)
目的:計画実行中に起こりうる問題を予測し、対応策をあらかじめ組み込む
特徴・使用例
目標から出発し、「もしこの問題が起きたら」という分岐を加えながらフロー図を描く。想定外の事態への対応を計画段階で織り込む「リスク管理型の計画立案ツール」として機能する。Process Decision Program Chart の略。
使用例:新設備の試運転計画で、機器トラブル・供給遅延などのリスク対応を先回りして設計する
試験 POINT
「PDPC=事前に問題の発生を予測して対応策を計画に組み込む」という定義を押さえる。PDCAのPDPCとの混同は起きにくいが、「プロセスを決定するための計画図」という名称の意味を理解しておくと定義を忘れにくい。
手法 07
マトリクスデータ解析法
目的:多変数の数値データを主成分分析で2次元に圧縮・可視化する
特徴・使用例
新QC7つ道具の中で唯一、数値データを扱う手法。多数の変数(特性)からなるデータを主成分分析(PCA)で2〜3の主成分に集約し、散布図上に可視化する。7つの中では最も高度な統計手法であり、実務ではコンピュータを用いることが一般的。
使用例:製品の品質特性(強度・耐久性・外観など)の相関構造を2次元で把握し、改善の優先軸を特定する
試験 POINT
「新QC7つ道具の中で唯一、数値データを扱う」「主成分分析を使う」の2点が頻出の識別ポイント。他の6つが言語データを対象とする中で、この手法だけ性格が異なることを特記事項として覚えておく。



7つを並べてみると「アローダイアグラムだけ計算が発生する」「マトリクスデータ解析法だけ数値を扱う」という2つの例外が目立ちます。この2つを特別扱いして頭に刻むと、残り5つを「言語データを整理・構造化するツール」として一括りに覚えられるのです。試験の選択肢は大抵、この例外の性質をひっくり返してくるので要注意です。
各手法の使いどころ|問題解決フェーズとの対応
新QC7つ道具は、問題解決の各フェーズで役割が異なります。「今どのフェーズにいるのか」を意識することで、適切なツールを選べるようになります。
現状把握
問題の全体像を掴む
問題の全体像を掴む
親和図法
バラバラな問題・意見を親和性でグループ化し、テーマの全体構造を見渡す
バラバラな問題・意見を親和性でグループ化し、テーマの全体構造を見渡す
マトリクスデータ解析法
多変数の数値データを可視化し、問題の構造的特徴を把握する
多変数の数値データを可視化し、問題の構造的特徴を把握する
原因分析
根本原因を特定する
根本原因を特定する
連関図法
複雑に絡み合った原因と結果の連鎖を矢印で可視化し、根本原因を洗い出す
複雑に絡み合った原因と結果の連鎖を矢印で可視化し、根本原因を洗い出す
マトリクス図法
要因と結果の対応関係を行列で整理し、影響の強い組み合わせを特定する
要因と結果の対応関係を行列で整理し、影響の強い組み合わせを特定する
対策立案
具体的な手段を展開する
具体的な手段を展開する
系統図法
目標達成のための手段をツリー状に階層展開し、具体策を網羅的に洗い出す
目標達成のための手段をツリー状に階層展開し、具体策を網羅的に洗い出す
PDPC法
対策実行中に起こりうるリスクを予測し、代替手順を計画に組み込む
対策実行中に起こりうるリスクを予測し、代替手順を計画に組み込む
実施計画
日程・工程を管理する
日程・工程を管理する
アローダイアグラム法
作業の順序・所要日数を矢印で図示し、クリティカルパスで最短完了日数を求める
作業の順序・所要日数を矢印で図示し、クリティカルパスで最短完了日数を求める
覚え方の補足:問題解決の「入口(現状把握)→中間(原因分析・対策立案)→出口(実施計画)」の流れで、新QC7つ道具が一連のストーリーを構成していると捉えると整理しやすくなります。親和図で問題を拾い上げ、連関図で因果を整理し、系統図で対策を展開し、アローダイアグラムで工程を管理する——という流れです。
アローダイアグラムの読み解き方
アローダイアグラムは試験で最も頻繁に出題される手法です。図の読み方と計算の手順を、具体例で確認しておきます。
| 経路 | 作業の組み合わせ | 所要日数の合計 |
|---|---|---|
| 経路 1 | 1→2→4→6(作業A+C+E) | 4+5+3 = 12日 |
| 経路 2 | 1→3→4→6(作業B+ダミー+C+E) | 3+0+5+3 = 11日 |
| 経路 3(CP) | 1→3→5→6(作業B+D+F) | 3+6+4 = 13日 ← 最長 |
クリティカルパスの特定手順:全経路の所要日数を計算し、最も長い経路がクリティカルパス(CP)になります。CPの所要日数がプロジェクト全体の最短完了日数です。CP上の作業が1日でも遅れると全体が遅延するため、重点管理の対象となります。余裕時間(フロート)がゼロの経路=クリティカルパスという定義で押さえておきましょう。
過去問で確認する
運営管理 — 新QC7つ道具の識別
R3第14問 改
新QC7つ道具に関する記述として、最も適切なものはどれか。
- ア 親和図法は、2つの要素群の対応関係を行列(マトリクス)で整理し、関連の強さを記号で表現する手法である
- イ 連関図法は、目的と手段の関係をツリー状に階層展開することで、具体的な手段を網羅的に洗い出す手法である
- ウ アローダイアグラム法は、作業の順序と所要日数を矢印と結合点で図示し、プロジェクトの最短完了日数を求める手法である
- エ PDPC法は、複数の言語データをその親和性によってグループ化し、問題の全体像を浮かび上がらせる手法である
正解:ウ 解説
・ア:2つの要素群の対応関係を行列で整理するのはマトリクス図法の定義。親和図法はバラバラな言語データを親和性でグループ化する手法 → 誤り
・イ:目的と手段をツリー状に階層展開するのは系統図法の定義。連関図法は原因と結果の連鎖を矢印で可視化する手法 → 誤り
・ウ:アローダイアグラム法(矢線図)の正確な定義。作業の依存関係と所要日数から最長経路(クリティカルパス)を求め、プロジェクトの最短完了日数を特定する → 正解
・エ:言語データを親和性でグループ化するのは親和図法(KJ法)の定義。PDPC法は問題発生を予測して対応策を計画に組み込む手法 → 誤り
・イ:目的と手段をツリー状に階層展開するのは系統図法の定義。連関図法は原因と結果の連鎖を矢印で可視化する手法 → 誤り
・ウ:アローダイアグラム法(矢線図)の正確な定義。作業の依存関係と所要日数から最長経路(クリティカルパス)を求め、プロジェクトの最短完了日数を特定する → 正解
・エ:言語データを親和性でグループ化するのは親和図法(KJ法)の定義。PDPC法は問題発生を予測して対応策を計画に組み込む手法 → 誤り
運営管理 — アローダイアグラムの計算
H29第16問 改
下図のアローダイアグラムにおいて、プロジェクトの最短完了日数として正しいものはどれか。なお、各矢印横の数字は作業日数を示す。
(経路)
経路①:1→2→4→5 日数:3+4+2 = 9日
経路②:1→2→3→5 日数:3+2+5 = 10日
経路③:1→3→5 日数:6+5 = 11日
※ノード3は経路②と③の合流点
(経路)
経路①:1→2→4→5 日数:3+4+2 = 9日
経路②:1→2→3→5 日数:3+2+5 = 10日
経路③:1→3→5 日数:6+5 = 11日
※ノード3は経路②と③の合流点
- ア 9日
- イ 10日
- ウ 11日
- エ 12日
正解:ウ 解説
各経路の合計日数を算出し、最も長い経路(クリティカルパス)がプロジェクトの最短完了日数になります。
・経路①(1→2→4→5):3+4+2 = 9日
・経路②(1→2→3→5):3+2+5 = 10日
・経路③(1→3→5):6+5 = 11日(最長 → クリティカルパス)
最短完了日数は最長経路の日数と一致するため、11日が正解。経路③上の作業が1日でも遅延するとプロジェクト全体が遅延します。
・経路①(1→2→4→5):3+4+2 = 9日
・経路②(1→2→3→5):3+2+5 = 10日
・経路③(1→3→5):6+5 = 11日(最長 → クリティカルパス)
最短完了日数は最長経路の日数と一致するため、11日が正解。経路③上の作業が1日でも遅延するとプロジェクト全体が遅延します。
運営管理 — 新旧QC7つ道具の区別
H25第14問 改
QC7つ道具および新QC7つ道具に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
- ア 管理図は、工程の時系列データをプロットし、管理限界線によって工程の異常を検出するツールであり、旧QC7つ道具に含まれる
- イ 特性要因図は、問題の原因を魚の骨状に体系化するツールであり、旧QC7つ道具に含まれる
- ウ マトリクスデータ解析法は、言語データを行列で整理し関連の強さを可視化するツールであり、新QC7つ道具に含まれる
- エ PDPC法は、計画実行中に起こりうる問題をあらかじめ予測し対応策を組み込む手法であり、新QC7つ道具に含まれる
正解(不適切):ウ 解説
・ア:正しい記述。管理図は計量値の時系列管理ツールで旧QC7つ道具に含まれる
・イ:正しい記述。特性要因図(フィッシュボーン)は旧QC7つ道具の代表格
・ウ:不適切。マトリクスデータ解析法は「言語データ」ではなく数値データを扱う手法であり、主成分分析を使う。新QC7つ道具の中で唯一の数値データ処理ツールというのが正しい説明 → 誤り
・エ:正しい記述。PDPC法は問題を事前予測して対応を計画に組み込む手法で新QC7つ道具に含まれる
・イ:正しい記述。特性要因図(フィッシュボーン)は旧QC7つ道具の代表格
・ウ:不適切。マトリクスデータ解析法は「言語データ」ではなく数値データを扱う手法であり、主成分分析を使う。新QC7つ道具の中で唯一の数値データ処理ツールというのが正しい説明 → 誤り
・エ:正しい記述。PDPC法は問題を事前予測して対応を計画に組み込む手法で新QC7つ道具に含まれる
U のまとめメモ
- 新QC7つ道具は「言語データを構造化する」ツール群。唯一の例外がマトリクスデータ解析法(数値データ+主成分分析)で、この点は頻出の引っかけポイント。
- KJ法=親和図法。川喜田二郎氏の考案で、混沌とした情報を親和性でグループ化する。ブレインストーミングの整理に使う起点的な手法。
- 連関図法は「原因→結果の矢印の出入り数でキー原因を特定」する。特性要因図が4Mの階層構造なのに対し、連関図は複雑な因果連鎖に対応できる点が違い。
- 系統図法は「目的→手段→より具体的な手段」とツリー状に展開。方針管理・QFDと組み合わせる場面でよく登場する。
- アローダイアグラムはほぼ毎年出題される計算問題。全経路の日数を計算し最長経路(クリティカルパス)を求める手順を体で覚えること。ダミー矢印は「日数ゼロ・論理的依存のみ」を表す点線。
- PDPC法は「リスクを先読みして代替手順を計画に織り込む」ツール。問題解決の終盤(実施計画フェーズ)でアローダイアグラムとセットで使われる。









