ポーターの競争戦略|ファイブフォース・3基本戦略・バリューチェーンを図解で整理

ポーターの競争戦略 - ファイブフォース・3基本戦略・バリューチェーン図解
U

競争戦略を学んでから、ニュースを読むたびに「このコンビニの新業態、移動障壁を越えようとしているな」とか「この業界、サプライヤーが強くなりすぎている」と感じるようになりました。

フレームワークが「見る目」そのものを変えてくれる感覚があります。

目次

ファイブフォース分析|5つの競争要因で業界構造を読む

ポーターは、企業の収益性を決めるのは業界内での競争だけではないと主張しました。業界の利益水準は、5つの競争要因(ファイブフォース)によって構造的に決まるという視点がこの分析の出発点です。5つの力が強いほど競争は激しくなり、利益は出にくくなります。

新規参入の脅威
新たな企業が市場に入ってくる圧力 参入障壁が低いほど競合が増え、既存企業の利益が圧迫される。
参入障壁になるもの規模の経済・経験曲線・スイッチングコスト・ネットワーク効果・特許・法規制
売り手の交渉力
サプライヤーからの仕入れコスト圧力 売り手が強いと高コスト仕入れを余儀なくされる。
売り手が強くなる条件売り手の数が限られる・スイッチングコストが高い・垂直統合の可能性がある
業界内の競争
既存企業同士の競争激度 価格競争・品質競争・マーケ競争が激しいほど利益が削られる。
競争が激化する条件競合が乱立・業界成長が鈍い・差別化が難しい・撤退障壁が高い・固定費が大きい
買い手の交渉力
顧客からの値下げ・条件変更圧力 買い手が強いと価格引き下げを迫られ利益率が落ちる。
買い手が強くなる条件製品が差別化されていない・代替が容易・買い手が垂直統合の可能性を持つ
代替品の脅威
別の手段で同じニーズを満たす製品・サービスの存在 代替品が安価・高機能なほど、価格上限が抑えられ利益が出にくくなる。
代替品の例音楽CD → 音楽ストリーミング/タクシー → ライドシェア/銀行融資 → クラウドファンディング
U

5つの力すべてが「どれだけ利益が取りにくい構造か」を示しているというのが見方のコツです。

「自社が置かれた業界はどの力が一番きついか」を起点に考えると、整理しやすくなります。

戦略グループ・移動障壁・撤退障壁

同一業界内でも、企業は似た戦略をとるグループ(戦略グループ)を形成します。グループ間の移動を阻む要因が移動障壁、業界そのものから撤退できなくする要因が撤退障壁です。これらが存在すると、特定グループや業界内で競争が長期化・激化しやすくなります。

移動障壁(Mobility Barrier)
ある戦略グループから別のグループへ移ることを困難にする要因。
  • 大規模な設備投資・ブランド構築コスト
  • 蓄積されたノウハウ・技術・人材
  • 専有的な流通チャネルや顧客関係
  • 規制・特許などの制度的保護
移動障壁が高いほど、グループ内の企業は競争から守られる一方、グループ間競争は起きにくくなる。
撤退障壁(Exit Barrier)
業界の収益が悪化しても撤退できない要因。競争の慢性化を招く。
  • 固定費・専用設備のサンクコストが大きい
  • 撤退に伴う多額のコスト(解雇費用・契約違約金)
  • 事業への強い経営者のコミットメント・プライド
  • 政府・地域社会からの撤退規制・圧力
撤退障壁が高い業界では、採算割れ企業が居座り続け、業界全体の競争が激化する。

ポーターの3つの基本戦略|どこで・どのように戦うかを決める

競争環境を分析したうえで、次に「自社がどのポジションで戦うか」を決めます。ポーターは、競争優位のタイプ(コスト優位 vs 差別化)ターゲットの幅(業界全体 vs 特定セグメント)の2軸から、3つの基本戦略を導きました。

ターゲットの幅 競争優位のタイプ
コスト優位 差別化
業界全体
STRATEGY 01
コストリーダーシップ
業界全体を対象に、競合より低コストで提供する。規模の経済・経験曲線効果を最大活用。
例:トヨタの大量生産体制 / IKEA
STRATEGY 02
差別化戦略
業界全体を対象に、他社が真似しにくい独自価値を提供。顧客が高価格を受け入れる状態を作る。
例:Apple(デザイン・エコシステム)/ スターバックス
特定セグメント
STRATEGY 03-A
コスト集中
特定のセグメントに絞り、そこでコスト優位を実現する。
例:地域限定の格安スーパー
STRATEGY 03-B
差別化集中
特定セグメントのニーズに特化し、そこで際立つ独自価値を提供する。
例:高級時計ブランド / ニッチ向けSaaS
⚠ スタック・イン・ザ・ミドル(中途半端):コスト優位でも差別化でも徹底できず、どちらの戦略も中途半端になった状態。低コスト企業と差別化企業の両方に挟まれ、競争優位を確立できない。ポーターはこれを最も危険な状態と位置づけた。
U

診断士の試験では「この企業の戦略はどれか」を問う問題がよく出ます。

事例企業の特徴を読み取って「コスト優位か差別化か」「広いターゲットか絞っているか」の2軸で判断するのがコツです。

バリューチェーン|どこで価値を生んでいるかを分解する

競争優位がどの企業活動から生まれているかを可視化する枠組みがバリューチェーンです。活動を主活動(価値を直接生み出す流れ)と支援活動(主活動を支えるインフラ)に分け、どの部分でコスト優位または差別化が実現されているかを分析します。

支援活動(SUPPORT ACTIVITIES)
全般管理(インフラ)経営企画・財務・法務・情報管理
人事・労務管理採用・育成・評価・報酬制度
技術開発R&D・プロセス改善・ノウハウ蓄積
調達活動原材料・設備・サービスの購買管理
主活動(PRIMARY ACTIVITIES)
購買物流原材料の受入・在庫・ハンドリング
製造製品への変換・組立・加工・品質管理
出荷物流完成品の保管・配送・注文処理
販売・マーケティング広告・販促・価格設定・チャネル管理
サービス据付・修理・アフターサポート・クレーム対応
MARGIN(利益)
ポイント:各活動の「コスト構造」と「差別化のドライバー」を分析することで、競争優位の源泉を特定できる。付加価値を生む活動が多いほど模倣は困難になり、活動間の連携(リンケージ)がシナジーを生む。個別最適ではなく全体最適が重要。

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)|市場集中度の測り方

業界の競争構造を定量的に把握するための補助指標がハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)です。各企業の市場シェアを二乗して合計した値で、独占度・集中度を数値化します。

ハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)
HHI = Σ(各企業の市場シェア)²
  • HHI = 10,000:完全独占(1社が100%のシェアを持つ)
  • HHI が高いほど市場集中度が高く、少数企業が支配している
  • HHI が低いほど多くの企業がひしめき合い、競争が激しい
計算例 A社50%、B社30%、C社20%の業界:
HHI = 50² + 30² + 20² = 2,500 + 900 + 400 = 3,800
→ 中程度の集中。上位3社で市場の大半を占める寡占状態。
過去問 企業経営理論 類似問題
問:ポーターの競争戦略に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア コストリーダーシップ戦略と差別化戦略を同時に追求することで、最大の競争優位が得られる。
イ ファイブフォース分析は、業界の平均的な収益水準を決定する構造的な要因を分析するフレームワークである。
ウ バリューチェーンにおける支援活動とは、購買物流・製造・出荷物流・販売・サービスを指す。
エ 撤退障壁が低いほど、業界内の競争は激化しやすくなる。
解説ポイント ア:コストと差別化の同時追求は「スタック・イン・ザ・ミドル」のリスクがある(×)。ウ:主活動の説明であり支援活動ではない(×)。エ:撤退障壁が高いほど競争が激化する(×)。正解はイ。

まとめ

  • ファイブフォース分析:業界の収益水準は5つの競争要因(業界内競争・新規参入・代替品・売り手・買い手)の強さで構造的に決まる
  • 5つの力が強いほど競争は激しく、利益は出にくくなる。分析の目的は「競争を回避できる構造を見つけること」
  • 移動障壁:戦略グループ間の移動を阻む要因。撤退障壁:収益悪化でも撤退できなくする要因。どちらも競争の形を左右する
  • 3つの基本戦略:コストリーダーシップ(業界全体×コスト)・差別化(業界全体×独自価値)・集中(特定セグメント)の3択。中途半端(スタック・イン・ザ・ミドル)が最も危険
  • バリューチェーン:主活動(購買物流→製造→出荷物流→販売→サービス)と支援活動(インフラ・人事・技術・調達)に分解し、競争優位の源泉を特定する
  • HHI:各企業のシェアの二乗和。高いほど独占度が高く、低いほど競争が激しい市場構造を示す
U

ポーターの理論は「どこで戦うか(業界・グループ選択)」と「どのように戦うか(3基本戦略)」がセットになっています。

バリューチェーンはその「どのように」を内側から分解するツールです。3つが一本の線でつながって見えると、試験でも実務でも使いやすくなります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

中小企業診断士試験勉強中のアラフィフシングルマザーです。
大学卒業後から現在まで、数々の失敗をしながらずっと自営業として試行錯誤を重ねてきました。
もっときちんと経営やビジネスの知識を身につけて、将来は他の事業者の方のお役にも立てたらいいな、と思うようになり、中小企業診断士の試験に挑戦中です。

目次